ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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アインクラッド∕紅炎の英雄編
80:それが、わたし(幕間)


どれだけ望んでも、私には幸せなんてものは訪れなかった。

そう、ただの一度も、私にはそういったものはなかった。

 

 

姉とも、両親とも違った私は学校でも異端者扱いされた。

それはそうだ。

蒼い目、そんな特徴を持つのは周りにはいるわけもなく。

小学生にはそれが「珍しい」ではなく「気持ち悪い」と見えるんだ。

 

 

だから──

だから私は、それを「仕方ない」と受け入れた。

抗っても、何を言おうとも何か出来るわけじゃないから。

 

 

あの時から私は全てを拒んだ。

 

 

 

 


 

中学になってからも私は身体のことについて周りから酷い扱いをされ続けた。

中学生にもなれば、知識がついて様々な羞恥を受けることもあった。

でも、それも仕方なかった。

助けを求めても、私は誰にも助けて貰えなかった、だから、これは「私が受けるべきこと」だと言い聞かせた。

 

 

でも、すぐに限界が来て私は不登校になった。

学校からの連絡も全て無視し、親の説得も聞かずに私は自室にひきこもり続けた。

そんな私にずっと声をかけてきたのは姉だった。

 

 

クリスマスの時も、誕生日だって、どんな時も姉は私に話しかけてきた。

でも私はそれが鬱陶しくて、何度も拒んだ。

それでも姉は諦めずに私に構ってきた。

 

ずっと、ずっと姉は私のそばにいてくれた。

 

 

 

 

……でも、そんな時は長く続かない。

姉が高校に入ってからは忙しくなり、私の相手をする時間はなかった。

そして、親は勉強の出来る姉を見習えと何度もしつこく言ってくる。

 

何も聞いてくれなかったのに、助けてくれなかったのに。

 

 

 

そしてしばらく経ち私は本来なら高校2年生となる年齢になったある日、姉のオススメでとあるゲームに出会った。

 

それがこのゲーム、《ソードアート・オンライン》だ。

 

 

最初は姉と一緒にやろうと話していたけど、ずっと忙しい姉と一緒に出来るかも分からず一人でやると姉の誘いを断った。

そんな時、私はこのゲームの開発者のひとりが書いたPR文を見つけた。

それはどうってことない紹介文だったけど、そんな文の中に一際興味をひく言葉があったんだ。

 

 

「自由」とか、そんな在り来りな言葉だったけど、その時の私には何より欲しいものだったから、姉がβテストを当てて私にプレイさせてくれた。

 

 

 

そして、私は出会った。

()()()()()()()()

別にゲームだから相手する必要は無い、そう思っていたはずなのに無意識のうちに助けて、手を伸ばしていた。

自分はそうされなかったのに、それでもその子を助けたいと思ったんだ。

 

 

あれから少しの間離れ離れになって、また再会した。

すぐにお別れになると思っていた関係は、いつの間にか大切になっていた、だから──

 

 

いつか、切り捨てられる時が来る。

そう、自分の中に不安が過った。

 

そんなことないはずなのに。

大丈夫なはずなのに。

 

 

周りと仲良くしてる彼女を見たら、いつか離れてしまう恐怖に襲われた。

 

 

 

 

 

あの時に。

 

 

 

 


 

ある日。

迷宮区攻略後。

 

私と彼女はボス攻略後の宴に呼ばれ、その席に座っていた。

 

「ナイスファイトだったぞ!」

「いえ、そんなことないですよ」

「んにゃ、あれは判断も行動力も凄かった」

「あはは……ありがとうございます」

 

彼女はボス戦で中衛を勤めていたけど途中から前衛に変わり、機転を利かせてボスの撃破に貢献した。

その勇姿を称えるだとかで彼女はあっという間に参加メンバーに囲まれ、私は離されてしまった。

 

 

その時だ。

彼女がプレイヤー達から質問攻めにあって、労いの言葉を貰ってるその姿が私には何故か遠く見えてしまったのは。

いつも見て、受け取っているもののはずなのに。

 

ただその時は、妙な胸騒ぎと共に寂しさが私を襲った。

 

 

 

 

彼女(コハル)を労う言葉はあっても、その言葉に《私》はいない。

彼女(コハル)は活躍してるけど、《私》は何もしていない。

 

あぁ、そうだ。

私は、いつも独りだ。

どれだけ誰かといても、一緒にいて楽しいと感じたその瞬間があったとしても、()()()()()()()()()を見つけたとしても。

どんな時だって、私は独り。

コハルと一緒に剣を取った時も、ただそれは()()()()()()()()()()()()ずっとそばにいただけ。

彼女と、そして()と一緒にいる時の温もりが、何よりも心地よかった。

 

 

でも。

目の前で一人、称賛を受ける彼女の後ろ姿がとても遠くて。

そんなことないと、わかっているはずなのに、私といる時よりも楽しそうに見えて。

 

 

()()()()()のは《彼女》であり、《私》じゃない。

私は、必要ない。

そういう気持ちが、とても重くて。

それが、耐えられなくて。

 

 

その日、私は彼女の前から去った。

最後に、お別れの言葉を残して。

 

 

 

 

 

 

あれから、何があったのかは上手く思い出せない。

(葉月)はきっともう死んだ。

死んでいてくれと、死にたいと強く願って。

 

 

───恨んでいるのなら、手を出せばいい。

 

行き場の無くなったわたしにそう囁く声が、

 

───ここで殺したって君は罪を背負う必要は無い。

 

そんなの、綺麗事で、

 

───馬鹿にされたなら、相応の報復を与えればいいだろ?

 

違う、そうわかってるのに、

 

───君を拒む者は、邪魔者は殺せばいい。

 

目の前にいる()()の言葉は、間違っている。

でも、それしかない(正しい)んだ。

 

───ボクにはわかるよ。

───君のやることは()()()()()()()()()()

 

うるさい……

 

───さぁ、()()()においで。

 

 

嫌だと、断ろうとしても。

もう、私には居場所は無い。

だから───。

 

 

足を、踏み入れてしまった。

人を、なんの罪もないプレイヤーを………この手で、殺した。

 

 

 

 

それがプレイヤーたちの間に広がるのはあっという間で。

()()()()()()()()()()()()()()が消えた、それと同時期に私が、()()()()()()()()()がプレイヤーを殺した姿を見た人がいた。

そんな噂が拡がってからは私はやっと1人になった。

 

 

ある日、夕立の霧雨と会ったっけ。

何を話したのかは覚えてないけど、あの時のライムは───

 

まるで、私を助けようとしてる、そんな顔をしていた。

 

 

 

 

 


 

「よお、蒼いの」

「……何」

 

このギルドの《ボス》と呼ばれてる男が私の横に座る。

私がギルドに入った時は疑いの目を向けていたけどそれも直ぐに無くなり私は()()と共にこのギルドの中位になっている。

 

「あんたにオススメの()()()()があるんだが、行くか?」

「ギルドイベント……ね、誰が出るとかは」

「こいつぁいいぜ?」

 

男がみせてきたのは参加者のリスト。

その中には、私の見覚えのある名前があった。

 

 

「……わかった、()()と行く」

「あぁ、頼んだぜ……?」

 

そういうと《ボス》は闇の中に消えていった。

 

 

 

「ライム……まさか、ね」

 

第10層を攻略した後、ギルドから抜けたと言っていた彼の顔をうかべた。

彼ならこういうとこに来そうだけど、別のギルドに入ることもしなそうだろうし、さすがに───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドイベントに参加すると決めて数日後。

 

 

「……はは、そっか」

 

目の前には、お姉ちゃんが。

 

「なん、で……」

 

目の前の────が力なく倒れる。

何も言わず、剣を取ろうともせず、私を抱きしめて。

 

「ごめんね、ハヅキ──」

 

 

それだけ言葉にして──────




その少女は、全てを失い
その少女は、手を汚し
その少女は、堕ちていく



救いを求め、救われることなく、堕ちていく。


なら、光を。
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