ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
ギルドイベント当日
迷いの森中部
「ラギ、準備できてるよ」
「こっちもオーケー」
「わざわざ言わなくていいんだけど」
「何言ってんの、リーダーたるものメンバーの状態チェックは必要でしょ」
開始数分前、各自装備を終えたところでライムとユミがお互い剣を振りながら報告をしてきた。
相変わらず両手剣を片手で振るユミの姿は怪力すぎるような気がするが……
「お前らが万全なのは見るだけでわかるから」
「1人を除いて、ね」
「そうだな……」
前日に顔合わせした時点でやる気に満ちた顔をしていた彼女達は今日になって更にやる気の顔をしている。
そんな中1人だけずっとソワソワしてウィンドウの操作すら安定していない。
「す、すみません……」
「気持ちはわかるけど、気負いすぎるなよ」
「は、はい!」
深呼吸して少し落ち着いた様子のコハルは改めて装備を確認し小さく頷く。
問題のないようで安心した俺はヨシノに袖を引かれた。
「ハル兄、何その装備」
「ん?」
「だから、そのマフラーと指輪何?」
ただ知りたいだけのような、どこかすごく気にしてるような顔で俺を見てくる彼女の発言でサキが少し慌てた様子を見せた。
別に隠しても何かあるわけじゃないんだけど……
「どっちも俺なりの思いの現れ……程度に思ってくれ」
「えー……なにか隠してる気がする」
「別に何も隠してねぇよ?」
「ふーん……何か知らない?サキ姉」
「えっ、な、何も?」
「それ知ってるって言ってるようなもんじゃん」
適当に流した後に突然質問されたサキは隠す気のない慌てっぷりでシラを切った。
それに冷静にツッコミをするユミは呆れている。
「装備に関して聞くのはルール違反だよ、よしのん」
「はーい」
「ありゃ素直」
「コト姉に言われたらルール破れないもん」
「嬉しいけどなんか引っかかるなぁ」
深く追求しようとするヨシノはミコトに止められて渋々従った。
その後に言われた言葉で思いっきりダメージ貰ってるが気にしないでおこう、そのうちケロッと機嫌直るだろう。
それより───
「ん、ラギクンどうした?」
「……いや、気のせいか」
森の奥──正確には奥かは分からないが──から妙な気配を感じる。
もちろんSAOに気配察知系のスキルは無いんだが、それでもこの気配は──
なんて森の奥に意識をやっているとシズクたちとの話を途中でやめたライムが横にたっていた。
「あんたも感じたみたいだね」
「も、ってことは」
「周りの空気に敏感だからね、いやでも感じるよ」
「あれは紛れもなく──」
「殺気、だね」
今もひしひしと感じるこの気配は誰かが発しているであろう殺気だ。
だがそれは
「……ソラ、お前か」
臆病者だと聞いていた
ならば────
同時刻
「──へぇ」
とあるギルドとして参加したソラは準備の最中突然殺気を拡散した。
普通ならば目の前の相手にしか感じられないものだが、
それは味方であるハヅキにも強く響き、そして反対の位置にいる《標的》へ届いた。
単なる威嚇程度に済ませようとしたその行為が彼を本気にさせるなど知らずに。
「今の……」
「うん、ラギって人だろうねぇ」
反対側から、彼のいるであろう方角からソラが放った以上の殺気が飛んできたのだ。
(面倒だなぁ……こっちはまともな戦力ないってのに)
《作戦》のために今彼女らの待機場所にはソラとハヅキしかいない。
もちろんその作戦が成功するなどソラは微塵も思っていない。
それ故に彼女は彼が放った殺気で作戦が開始すらできず終わらないかだけが心配だった。
「……ま、どう足掻いても君は勝てない。
そうだろ、ハヅキちゃん」
「……さぁ」
余裕そうなソラの質問を濁した彼女は殺気の矛先がソラのみに向いていたことを話すことは無かった。
ギルド:???
「ね、ねぇやっぱやめとかない?」
「何言ってんの、いマサラタウンだぞ」
「つまんね」
「いや、みんな落ち着けって」
「そ、そうでごんす」
「あんたが落ち着け」
とあるギルドは一切殺気などを感じ取ることは出来なかったが、明らかに雰囲気の変化が起きたことだけは感じ、不安に駆られていた。
「ここはウチら──ヤマ
リーダーが何かを言い切る前に先程とは違い明らかな《やばい気配》が彼らを襲った。
「ちょ、あんた今の」
「ん、悪い」
「後輩君何したん?」
「売られた喧嘩は買うだけですよ」
ソラから送られてきた殺気に対する返答を殺気で返すと後ろにいたメンバーが全員驚いた様子を見せていた。
そんなに広範囲に放ったつもりは無いし、なんなら広範囲に殺気飛ぶとか有り得ないと思うんだが。
「ラギ……」
「別に海賊王になろうとかそういう気は無いし、何より……本気で行かないとこっちが死ぬ」
「……そうだよね」
相手は本気でこっちを殺す気だ。
もちろん全ギルドが敵とも限らないが、全員が敵、それぐらいの気持ちは持ってないといざと言う時に危ない。
「全員、死んでも死ぬなよ」
「何それ」
「死ぬ気なんてもとよりないから」
時間を見るとあと数分でギルドイベントが始まる。
改めて全員を見るとそれぞれ覚悟を決めた顔をしていた。
ハヅキを助ける、そのために集まってくれたメンバーだ。
絶対、誰も死なせはしない。
最後はハッピーエンドにする。
……そこに俺が居なくても。
「ラギ、カウントダウン」
「よし、みんな──行くぞ!」
ギルドイベント開始の合図が鳴り響く。
それと同時に俺が発した言葉が全員の士気を上げ、そして──
「最後尾の雑魚、討ち取ったり!」
俺たちが立てた作戦のために最後尾にいたヨシノの背後から3人が飛び出してきた。
新章、ついに開幕です。
前回不穏な女の子の話を挟みましたが今回からやっと本格的にスタートします。
更新ペースは亀ですが
ラギ、そしてソラが放った殺気はどちらかと言うと転〇ラの魔王の方の覇気に近いものですね、決して覇王の方じゃないです、覇気に違いは無い
次回、襲われたヨシノ、一体どうなる……!?