ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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82:初陣

振り下ろされた剣は、彼女に当たることはなく。

ガキィンという鋭い金属音により防がれる。

 

 

 

「裏取り狙おうとしたんなら残念、()の読み通りだ」

 

帽子を深く被り、軽装に身を包んだライムが奇襲をかけたプレイヤー二人の剣を弾き飛ばす。

彼女の声には、殺意が込められていた。

 

「え、ライム!?」

「あんた先頭にいたよね!?」

「……ラギ!」

 

シズクとユミの言葉に返事することなく彼女は俺へと言葉を飛ばしてきた。

だいたい何を言うかは予想できるが……

 

「ここは私に任せて先に行って」

「わかった、だが……」

「もちろん無茶はしないって、あんたじゃないんだから」

「……そうだな」

 

彼女の言葉に深く追求することはせずに森の奥へと再度進んでいく。

なにか言いたそうなシズクとカエデだったが、ライムに背を向けて走り出した。

 

 

 

「ライム1人にする必要ある!?」

「そうですよ先輩!」

 

ライムが見えなくなってすぐ、2人に問い詰められた。

古くからの友人ってこともあって心配は人一倍あるのだろう。

もちろん、他のみんなも平気そうにしながらもそれぞれ心配してる雰囲気だ。

 

「ライムにも考えがあるんだよ、俺はそれに賛同しただけだ」

「だからって、1人にするのは違うでしょ」

「あいつの覚悟を無駄にする気か?」

「覚悟って、あんた……」

 

大袈裟な言い方なのはわかってる。

でも、彼女があの場に1人で残ったのは──

なるべく、シズク達に罪を背負わせないため、だろう。

 

「それにこの先のことを考えたらこんな初陣でこっちの人数を減らす訳には行かないだろ」

「敵の数は未知数、それもわかるけどもしもの事があったら……」

 

ソラにハヅキ、それ以外にも厄介なやつが潜んでないとも限らない。

相手の手駒がわからない以上はライムに任せて先に進むのが最適だ。

そして、向こうも数を減らさないために最低限の戦力で奇襲を行ったはず。

 

「相手もそれは想定内だ、だから2人だけを奇襲に使った」

「……ってことは?」

「当初の作戦通りでいくぞ」

 

作戦、それは簡単なもので、ハヅキ捜索隊とソラを抑える組で人数を分けて別行動するというだけ。

メンバーはそれぞれ立候補で決めたり、ソラという脅威を抑えるために全力を出すと決めてる人だったりを分けた。

 

「そろそろポイントだ」

「ちゃんと守れよ、後輩」

「こっちは任せて」

「もちろん、失敗はしませんよ」

 

作戦開始と決めていた場所にあっという間に到着した俺たちは1度向き合った。

それぞれ、やることは違うが約束は同じ。ただ一つ、死なないこと。

何度も繰り返し約束したそれを破らないためにも、とミコトとシズクに拳を合わせた。

 

「──作戦、開始!」

 

俺のその合図で俺たちは各チームに別れた。

 

 

 

 


 

その頃。

 

「余裕そうにしてるがお前は一人、勝てると思ってんのか?」

「そうだぜ?」

 

ラギに先を任せた私はさっきヨシノを狙った2人と睨み合っていた。

2人だから勝てる、そう思ってるこいつらがいちばん調子乗ってるだろ、と言いたいのを我慢しながら剣先を奴らに向ける。

 

「やってみればいいじゃん、()に2人で勝てるなら」

「随分強気だな?」

「そりゃ……お前らを殺す覚悟なら出来てるからな」

 

帽子を被り直して奴らに向けた剣を持つ手に力を込める。

初撃、相手がどう動くかを確認してそれに合わせてこちらも動きを変える、そんな戦い方を教えてくれたのはもちろんアイツだ。

今となっては叶わぬ思いを向けたアイツが救うもん救う為にも私はここにいる。

 

「その強気な態度へし折ってやるよ!」

「おらぁ!」

 

予測通り一斉に攻撃してきた2人の剣を避けて背後に回る。

まさか避けられるとは、なんて聞こえてきそうな反応をする2人目掛けてソードスキルを発動させて隙を襲う。

間抜けな声と共に吹き飛んだ2人は立つこともせずにそのまま後ずさっていく。

 

「ふ、ふざけんなよ!?」

「たった一撃でそれ、ね」

「どんなチート使いやがったお前!!」

「チートも何も、あんたらが弱いだけでしょ?」

 

たった一度の攻撃、それに対する一撃のカウンター。

それだけの流れでこいつらが雑魚であることが即座にわかる。

 

戦闘になれてない、言い方を変えれば「戦わずして勝つ」を繰り返してきただけの暗殺者達。

もちろん戦闘経験を積んできたけど対人戦に慣れてない──のが当たり前だけど──プレイヤーの可能性も少し考えたけどそれは無い。

モンスターを狩ることに慣れているなら攻撃の隙を狙ったカウンター程度なら対処出来るようになるはずだろうし、何より()()

ヨシノに奇襲をかけた時もだけど、こいつらは同時攻撃をするためにわざと動きを遅くしてるところがある。

そんなことをモンスターの前でやろうもんならすぐさま攻撃を食らってダウンするだろう。

 

まぁ、それでも多少なりとも()()()()んだろうけど。

 

「こうなったら奥の手だ……!!」

「やっちまえ!」

 

どう処理するか考えていると片方がウィンドウを操作し、何かを決定。

そして次の瞬間、男たちと私の間にMOBの出現エフェクトが2個発生し、そこからモンスターがポップした。

 

 

「なるほど、これがラギの言ってた……でも」

 

ポップしたのは1層によくいたボア2体。

よく見ればレベルも1層相当の雑魚だ。

 

「な、なんでだよ!?」

()()()の説明じゃ強いやつ出るって言ってたぞ!?」

 

MOBを呼び寄せた張本人がそんなことを口にする。

あの人とやらが気になるけど、それは後で考えるとして、問題はこいつらの発言の中身。

 

どんな仕組みかは分からないけどこいつらはMOBを召喚する手段を持ってる、そしてそれはラギが8層で出くわしたボスモンスターを使役したプレイヤーと同じだろう。

となればこの雑魚2匹ではなくボスモンスターか、それ同等のネームドモンスターを呼べると説明されたってとこだろう。

で、いざ使えば出てきたのがこれ、と。

 

「騙されたんだろうね、あんたら」

「なっ、そんなわけ……!?」

「騙されてないとしたらあんたらの実力不足でしょ」

「調子に乗るなよクソガキ……っ!!」

 

ザコ敵みたいなセリフを吐いたあとボア2匹に対して「やれ!」と指示を出した。

威勢といざと言う時のやる気だけはまともに見えるのが腹立つ。

 

そんな気持ちを内に秘めて剣に力を込めて一気に踏み込んでソードスキルを放つ。

 

対象を4回、四角を描くように切る『ホリゾンタル・スクエア』。

ラギのような速さと鋭さこそまだないけど、ボア2匹を一掃し、その後に繋げるには充分。

 

「……っと危ない、それで何か言い残すことは?」

「ま、待ってくれよ!俺たちだって好きでやろうとしてた訳じゃ──」

 

ホリゾンタルスクエアの2撃でボアを倒して残りの2つを後ずさりしていた2人目掛けて放ち真横に振り落とす。

「ひぃぃ!!」なんて情けない声を上げる2人の間に剣を通して今の言葉を言ってみれば返ってきたのは言い訳、呆れた私は彼らの足元に剣を刺した。

 

「何甘えてんだお前ら──私の友達に剣を向けたその時点でお前らを殺す理由には十分なんだよ」

「それは指示されたからで……」

「誰に」

「言えねぇ……それだけは」

「なんで?」

「言えば俺ら殺されるんだよ!()()()によ!!」

 

最後の弁明を聞いてやろうと思いつつ情報を抜き出そうとしたけどこいつらは何がなんでも言わない気で、出たのは『あの方』とやら。

さっきのMOB召喚とおなじ奴だろうけど、言えば殺される、ね……。

 

「悪いけど慈悲を与える気は無い、お前らここで──」

 

痺れを切らした私はそのまま剣を持ち上げて()()()とした。

だが、それは突然飛んできた()()により防がれ、その代わりにその飛んできた物が2人に刺さった。

 

 

「おにーちゃんここにいると思ったんだけどなぁ、っと、ごめんね──邪魔だったから代わりに殺ってあげたよ」

「あんたは……」

 

死亡エフェクトをかき消すようにその場に降り立った私よりも小さな影。

迷いの森の木々から差し込む微かな光が照らしたのは白髪に赤い目、そして2本の剣。

 

「はじめまして、かな」

 

静かに歩み寄ってくるその影は静かに笑みを浮かべこう名乗った。

 

 

 

「──私はジャック。()()()()を探しに来たんだ」




めちゃくちゃお久しぶりですね?

なんか色々してたらこんなに空いてた。


やっと始まったギルドイベント、強襲を受けたヨシノを庇いつつも先陣を切ったライム。
やる気に満ちてますねぇ


そんなライムですがこのイベントから武器が変わり、『ゼデュース・ホーリーソード+9』になってます。
なんか見覚えありますね、覚えてる人いるかは別。

不穏な終わり方ですが次回は……どうなるのやら。
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