ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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84:剣鬼と死神

「協力?」

「だからそう言ってるじゃん」

「こら、そう威圧しない」

 

後輩くんたちと別れてから数分後、私とあっちゃんの前に1パーティが立ち塞がりそんな申し出をしてきた。

人数は5、男女比は2:3の平凡なそのメンバー、ぱっと見た感じでは実力がないわけではなさそうだし、何より初対面でこの発言は怪しい。

 

「協力って、これは対抗戦でもなんでもないんやけど」

「それは分かってる、でもこちらとしては人数が多い方がいいんだ」

「というと?」

「人を探してる、そいつが」

 

リーダーっぽい人が指さしたのは1番後ろでソワソワしてるどこかで見たことある雰囲気の女性プレイヤー。

急に指されて驚いた様子を見せながらも前に出てきたその子は真剣な顔付きで私とあっちゃんをみてくる。

 

「私の妹を探してるの」

「「妹?」」

「事情までは言えないけど……どうしてもその子と会いたいの」

 

人探しを手伝う暇なんてない、と誘いを断ることも出来たけど()()()()()()()をすぐに言われて断ろうとした思考が遮断された。

見た目といい妹ってところといい、何となく嫌な予感はする。

でも、詳しく教えてくれないのであれば流石に警戒するしかない。

 

「それで場所教えても安全かは保証出来ないやろ」

「安全、ね」

「私達もそうすぐに人の話に乗っかるほど甘くはないってことや」

 

よくSNSでみる人探しのツイートなんかは特にそうだけど知り合いを装って情報を集めて居場所を特定し犯行する、なんて手口があると聞く。

今回はその対象者であろう子が向こう側にいるから疑う必要は少ないとは思うけど、これで一緒に行動してる途中で背中からアゾられ──刺されるなんてこともありえない訳じゃない。

だからこそ、ここは慎重になっておかないと私たちはともかく他の子らに影響が出てしまう。

 

「信用して貰えないとダメ、ってことかい」

「そうだね、私もあっちゃんも君たちを怪しいと思ってるから」

「……ならどうすれば信用してもらえる」

「手荒な真似はしたくないんだけど、そこの今すぐにでも飛びついてきそうな狂犬2人」

 

初対面から相手のことを信用できる後輩くんみたいにあとから危険を排除する対応力をもちあわせてるわけじゃない。

とはいえどう相手を見極めるかもわからないからこそ相手の手の内を知るって意味も込めて暴れだしそうな2人を指名。

 

「誰が犬じゃ」

「剣取り出そうと構え続けてるんだからもう狂犬でしょ」

「それで俺らと何を……って聞くまでもねぇか?」

「ご名答」

 

本当なら言い出しっぺの姉(仮)とやるべきなんだろうけどギルド全員を信用できるか確かめるためにも実力がありそうな2人を選んで、もちろんやることは……

 

「2対2、やろか」

「いいぜ、楽しめそうだ」

「やってやるよ」

 

イベント参加してるって扱いだからかデュエル申請のボタンが消えていた。

そのためルールなんかを細かく決めることが出来ず終わりも見えなそうな戦いが始まりそうなため勝手にルールを決めた。

一撃でも入れればそこで終わり、ただそれだけのルール。

審判はリーダーっぽい子に任せて位置に着く。

 

 

「……あっちゃん、攻撃当てるのは禁止だよ」

「うん」

 

開始の合図前にあっちゃんとそんなことを話して審判の開始の合図を待つ。

この子らと会う直前、私たちの元に後輩くんからメッセージが飛んできてそこに書かれてた警告が脳裏をよぎる。

 

ペインアブソーバーとやらがどんな働きをしてるかしっかりは知らないもののそれが低く設定されてるからどんな影響があるかは後輩くんのメッセージに書かれていた。

その危険を知ってるからあまり対人戦なんてしちゃいけないけど、こちらに危害を加える可能性があるかを見極めるには仕方ない。

 

なんて考えてるうちに審判役から開始の合図が飛んだ。

 

 

「せいっ!」

「……遅い!」

「っ!?」

「油断しちゃダメだぞー!」

 

開始の合図と同時に踏み込んできた2人の連携攻撃をあっちゃんが大剣で防ぎ動きの止まったところに私の剣が振りかざされる。

本来ならこうなれば防げるのは相当至難の業で案の定2人も武器を手放すことでギリギリ回避した。

 

「おっと残念、外した」

「くっそ、今ので負けてたかもしれないのかよ……」

「ほら、折れてる暇は無いよ」

「なっ……はや!?」

 

手抜いたとはいえ避けられるとは思ってなかった、かすり傷ぐらいにはなってくれるかな〜なんて期待してみたけどかすり傷ですら致命的な可能性あるから避けてくれてありがとうってところかな。

 

でも隙も油断も与える気は無い。

2人が体制を立て直したところで一気に目の前まで行き剣を構えてソードスキルを発動させる。

咄嗟のことで反応が一瞬遅れたことで限られた回避手段を先読みしてあっちゃんが避けた先に大剣を構えて待機。

 

「よそ見厳禁」

「「嘘だろ!?」」

 

私のソードスキルを避けれたもののまさか予測されるとは思ってなかったみたいであっちゃんの大剣が当たる──という寸前のところであっちゃんが剣を止めた。

本来のデュエルならこのまま一撃が入って2人は即敗北、でも今回は傷つける訳には行かないため攻撃を当てることはしなかった。

 

「驚いた、これが噂の剣鬼と死神か」

「ありゃ、知られてたん?」

「そのわかりやすい見た目が噂にならないわけないだろう」

「人気者はつらいねぇ」

 

私たちのデュエルは審判の拍手により中断された。

いつの間にか呼ばれていた私たちの二つ名を口にされてただ通りかかったやつに声をかけた訳では無いことがわかる。

 

「そんな有名なふたりに改めてお願いしたい」

「だ、そうだけどあっちゃんどうする?」

「そこはミコトが決めなよ」

「えー……」

 

裏切られる可能性もあるため判断力が人一倍あるあっちゃんに頼もうとしたら見事に押し返されてしまった。

相手の実力は夕立ちゃん達よりは下だけど多少は戦えるぐらいにはあると思うしもし裏切られようもんなら私たち二人でどうにか出来そうではある。

それ以前にもし殺人ギルド側なら私たちがデュエルしてる時に何かしらアクションを起こすだろうからそこは信用してもいい、のかな。

 

後輩くんや他の子達に迷惑はかけられない、でも……

 

「妹ちゃん……ハヅキちゃんでしょ」

「……はい」

「なんで探しとるん?」

「あの子を、救いたいんです」

 

申し出の大本であるプレイヤーに質問をしてみればそんな答えが帰ってきた。

どこかの自己犠牲の塊な彼と同じことを言われて思わず笑みがこぼれる。

 

「わかった、協力しよう」

「ありがとう、ございます」

「私はミコト、あなたは?」

「……ヒヨリです」

 

急に笑ったからか少し警戒されたけど誘いに乗るって答えたら自己紹介を返してくれた。

ヒヨリ……本名っぽいけどそこは気にしないとしていい名前じゃん。

 

「急な申し出ですまない、改めて私たちの無茶に答えてくれてありがとう」

「ええよ、目的は同じやから」

 

完全に信頼しきっていいのかまで即座に判断はできない、それでも彼と同じようなことを口にしたヒヨリちゃんは少なからず悪では無い、はず。

それに彼なら同じ場面になれば協力するって決める、彼はそういう子だからね。

 

「それって……?」

「……さ、そうと決まれば行くで!」

 

私とあっちゃんの目的はあくまでソラ(害敵)の排除やけど、見捨てる判断はできない。

 

 

 

でも、この決断は。

ハヅキちゃんを、なによりもこのギルドを大きく変えることになる。

 

そんなことも知らずに私は自分の決断を正しいと思い込んで先に進んでいく。





夕立星屑連合チーム

チームB(ソラ捜索班)
ミコト
ヤヨイ



以下キャラ紹介(長)
ギルド:夜想曲(ノクターン)

ミケ∕mike
夜想曲のリーダーでありミコト達が剣鬼と死神ということを知って協力を申し出た女性。
使用武器は細剣、本人曰く片手直剣使い多いから、とのこと。
ちゃんと場を判断する能力はある方(本人談)


シロ∕shiro
協力の申し出に対してオウム返ししたミコトに噛み付いた気の強い女性プレイヤー。
ミケのことを誰よりも信頼してる故の噛みつきであり、誰彼構わずこういうことをする訳じゃないらしい(本人談)
使用武器は短剣、でも中衛。


オカゾー∕okazo
狂犬一匹目、男性プレイヤー。
ミコトの言う通り実力は夕立の霧雨3人の中でもあまり戦闘向きでは無いカエデよりも劣っている。
語尾に「~じゃ」がたまに付くが本人は全く意識してない、口癖は「なんでじゃ」
使用武器はカタナ、だが本人はあまり扱えていないらしい(シロ談)


モチコ∕mochico
狂犬二匹目、こんな名前だが男性プレイヤー。
現実世界で餅ばかり食べていたからつけられたあだ名らしい。
たまにずん〇もんとか呼ばれたりする(オカゾー談)
狂犬2人として扱われたがオカゾーとタッグを組むことが多く基本的にはシロやミケの身を守る役割をしている。
もう一度言うがカエデより実力はしたである。


ヒヨリ∕hiyori
ハヅキの姉、を名乗る女性プレイヤー。
真偽は不明だが、探してるという彼女は発言に偽りがないように見える。
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