ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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89:戦地の悪意

~ミコトside~

 

私たちの目的とヒヨリの目的が同じことを確認しギルド夜想曲と協力関係を組んだ私たちは順調に足を進めていた。

とはいえ、全く平和という訳でもなく。

 

 

「シロ、そっちいった!」

「おーけい、オカゾー、モチ、任せた!」

「「人遣い荒い!」」

 

奥、中心部へ進むにつれてやけにモンスターの出現数と強さが上がっていく。

そして、時折プレイヤーらしき影が木の上にチラホラ見えてる。

これはつまり、誘い込まれてる……かもしれない。

 

でも、ミケ達はちゃんと連携を取ってくれるしなんだかんだ言って狂犬2人も私たちに合わせてくれる、合わさせられてるの方が近いけど。

 

 

「にしても数減らんな」

「ミコト、やっぱりこれって……」

「後輩くんの言ってたMOB出しを延々とやられてる、ってことやな」

 

場所を把握されてる、のかは怪しいけど少なからず私らを狙った召喚を続けてる輩がいる。

そいつを探し出さないと、もっといえばその中心核を潰さないとこの討伐は続く。

まったくもって厄介、面倒くさい。

 

「……ミコト、ヤヨイ!」

「「……っ!」」

 

打開策を練っているとミケから危険だという声色で私たちに指示が飛んだ。

咄嗟に避けると飛んできたのは……片手直剣。

 

「……これ」

 

道中何度か遭遇した雑魚とは違い、この片手直剣は明らかに熟練度の高いプレイヤーの装備。

これを投げれるようなプレイヤー、それは──

 

 

「──はー!」

「……え?」

 

ヒヨリが突然叫び出した。

何事かと思って彼女が向いてる方を見るとそこには木の影からこちらを黒髪ショートの女の子──十層で私たちが見た、そしてラギ君が説明していた特徴、蒼い眼を持った子が見ていた。

あの子が……

 

「──ハヅキちゃん、か」

「ま、待って!はー!──待って!」

 

ハヅキちゃんはヒヨリの言葉に耳を傾けることも無く森の奥へと消えていく。

そして、ヒヨリはそれを追いかけるように走って言ってしまった。

 

「あ、ちょっと!」

「ミコト、追いかけ──「待ちな」──!?」

 

ヒヨリをこの環境下で一人にするわけにはいかないため追いかけようとした私とあっちゃんの前に明らかに強そうなプレイヤーが立ちはだかった。

 

「……邪魔しないでくれへんか?」

「残念ながら、俺の仕事は時間稼ぎなんでね、邪魔しかしない」

「……二対一でも勝つ、ってこと?」

「あぁ、俺は強いからな」

 

余裕そうに笑う男の手にはこれまた雑魚とは違い洗練されたように見える短剣。

ラフコフのメンバーということは確実に麻痺毒のひとつぐらいは塗られてる、厄介な武器。

だとしても、私たち二人を相手にこの余裕、何を企んで──

 

「ミコト、一気に決めるよ」

「もちろん、いっせー──!」

 

の、と言うより早く同時に踏み出し剣を振る。

同時、というけどあっちゃんは両手剣、攻撃のモーションが重い分同時でもタイミングはズレる。

そこは計算内、むしろそれを狙っての攻撃。

私の片手直剣による攻撃で怯んだところに両手剣による攻撃が刺さる、そしてその間に私の攻撃を当てる、ほら簡単。

 

まぁ、問題は──

 

「……へっ」

 

攻撃が当たったと同時に鈍い金属音が響く。

それは、不発……否、防がれたという意味を持ち、続いたあっちゃんの攻撃も全く同じように防がれた。

 

 

「……残念、無傷だ」

「──フルアーマー、ってことね」

 

ポンチョで隠されてて見えなかったけど、こいつは全身を鎧のような装備で固めて防御力を格段に上げている。

あっちゃんの腕力すら防いだことが奇妙だけど、いつもの作戦が通らないのはかなりマズイ。

 

「ミコト、ヤヨイ、手伝う!?」

「……いや、あんたらは下手に手を出さないで」

「そう、あなた達は周りのモブをお願い」

「「了解」」

 

こんな奴、私らですら苦戦しそうな以上はミケ達に相手してもらう訳には行かない。

とはいえヒヨリを追いかけてもらおうにも周りには結構な量のモブが湧いている。

なら、雑魚処理を任せて私たちでこいつを倒す。

 

「ほう、二人だけで倒すか」

「その調子に乗った声、すぐ悲鳴に変えてやるわ」

 

なんてカッコつけたものの、防御を崩すにはちょっと手間がかかる。

 

「あっちゃん」

「ん、大丈夫」

「そっか大丈夫……え?」

 

あっちゃんは両手剣を放り投げて鎧男に突っ込んでいく。

突然すぎる行動に混乱していると、あっちゃんが鎧男を殴り始めた。

え、殴り……?

 

「血迷ったか、女?」

「……ばーか」

「はっ、笑わせてくれる──さっさと死──」

 

鎧男が剣を持ち上げると突然鎧が粉々に砕け散った。

そしてその一瞬目掛けてあっちゃんは回し蹴りを食らわせて遠くへ吹き飛ばす。

吹き飛んだ男は気に衝突しその場に倒れて動かない。

 

「……あっちゃんこわぁ」

「これ、だよ」

 

あっちゃんは右拳を見せてくる。

いつの間にかあっちゃんの右腕にはメリケンサックのようなものが装備されていてそれを見せてきた。

メリケンサックなんてあるとか、聞いてないんだけどなぁ?

 

「とりあえず、みんなに──」

 

判断を誤った。

否。

()()()()()()()()()()

後ろには、ミケ達が確かに立っていた、でも。

彼女達の前に、()()()がいる。

そして、ふたつ。

 

『プレイヤー名、《シロ》にスキル──()()()を付与。』

『──このフィールドにいるプレイヤー全てに麻痺毒を付与』

 

「──は」

「な、に……言っ──」

 

ピエロ姿のプレイヤー、体格的に太めな男であろうこのプレイヤーがそういった瞬間、シロが黒い霧に包まれた。

嫌な気配、言葉に出来ないようなどす黒く重い、そんな得体の知れないものがシロへと向かっていくのを感じる。

 

「あんた、何を──」

『残念ながら、さようなら、無様で愚かなプレイヤー諸君』

「行かせな──っ!?」

 

立ち去ろうとするピエロに攻撃しようとしたその時、私とあっちゃん──他のみんなも、全員が動きを止めた。

いや、正確には麻痺をくらい動けなくなった、というのが正解。

そうか、はったりや脅しじゃなく、この男が言ったのは──

 

『転移、第一層──』

 

麻痺毒を食らったことを確認したピエロ男は前にラギ君が言ったことのある言葉を口にして光に包まれ消えていく。

これは、管理者権限──?

後輩君がこんなことをするわけが無い、とすればこれは──

 

 

「ミコト!」

「あっちゃん、どうし──」

 

刹那、シロのいた場所からモンスターの気配が。

そして。

 

『grrrrraaa!!!!』

 

耳を刺すような声、酷く、悲しい、恨みの声が森中にこだました。

想定外の最悪が、イレギュラーな悪意が戦地を混乱させていく。

 

 

 

《The phantom beast:shiro》

 

恨みと憎しみを抱えた獣が、顕現する。




其れは、悪意。
其れは、殺意。
ほんの少しの歪みを、英雄の妨げを起こす、異物。
その悪意は、牙を剥く。


──────────
ヤヨイのメリケンサック
実はリズベットに頼み込んで作らせた逸品。
効果は『対装備&武器破壊A+』、武器破壊(ウェポンブレイク)をクリティカルヒット抜きで起こしてしまうかつ武器の耐性値を一撃だけで大幅に削るもの。
ヤヨイは右ストレート3発で鎧を破壊した。
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