ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
「そういや、名前……コハルさんだっけ」
「コハルでいいよ、アキちゃん……だっけ」
「じゃ、私もアキでいいよ」
お兄ちゃんを先に行かせた後、戦闘開始の前にふときになったことを聞いた。
周りから呼ばれてるのを聞いてはいたけど、直接話すのはこれがほぼ初。
今回の主目的の蒼目の子、ハヅキちゃんを真っ先に探したいはずなのにお兄ちゃんを先に行かせることにしたみたい。
まぁ、お兄ちゃんから
ギルドイベント前日
夕立の霧雨ギルドハウスにて作戦会議中。
「ルナちゃんがずっと狙われてた!?」
「それって、ソラって奴に?」
「関係がない、とは言いきれないがそっちじゃなくて……」
お兄ちゃんは班分けの最中にボソッととんでもないことを呟いた。
それに真っ先に反応したのが夕立の霧雨のリーダー、シズクちゃんとライムちゃん。
ライムちゃんの質問に言葉を濁したお兄ちゃんは言うか悩む素振りを見せたあと小さく頷き説明してくれた。
「アルゴに情報を拡散するように伝えてはあるが、《切り裂きジャック》、そう呼ばれてるプレイヤー、そいつが理由はわからないがルナを狙ってる、そして今回出てくる可能性がある」
「……来るって確証は?」
「ルナを狙ってるのがソラの指示だとすれば、あれだけの騒動を起こしたソラをルナが止めに来ると向こうが考えるならきっとジャックを参加させるはずだ」
もちろん絶対じゃない、そう付け足して。
ソラって人が何故そのジャックって子を利用してるのかもわからない、そう言おうとしたけどお兄ちゃんは真剣だった。
「もし、本当にあいつがいた場合、俺が対処する」
それだけはお前らに任せるわけにはいかない、お兄ちゃんはそう言った。
「アキ!来るよ!」
「おっ、と!」
回想してるうちに2体のボスが同時に攻撃をしてきた。
どっちも攻撃速度が早いとは言えず気付いてから避けることが出来た、とはいえ中ボスクラスのモンスター二体、油断は出来ない。
「さて、どう戦う?」
「どっちも叩く!」
「え?」
作戦を練ろうとしたらとんでもない発言をされた。
普段大人しそうなのに戦闘になると化ける、
まぁお兄ちゃんと一緒にいたみたいだし、他のみんなよりはまともな気はするからいいんだけど。
「……わかった、でも短剣なら無茶はしないでね」
「大丈夫、近接戦は
「でも危なくなったら下がってね、じゃ……ゴー!」
色々聞きたいことはあるけど今は置いといて作戦を決めたところで私の合図で同時に踏み込む。
スケルトンナイトとかいう骨型とコングコングとかいうふざけた名前をしたゴリラのモンスターの攻撃を同時に避けて息を合わせてソードスキルを放つ。
「はぁぁ!」
「せやぁぁ!」
同時に放った攻撃は私がスケルトンを、コハルちゃんがコングへダメージを与える。
一層ボス(らしい)を一撃で倒したお兄ちゃんのような大ダメージはさすがに与えられる訳もなく、せいぜい怯む程度。
でも、怯んだならチャンス──
「追撃──「アキ!」…っ!?」
怯んだ隙を狙って追撃を行おうとしたその時、私の体は思いっきり横へ突き飛ばされた。
そして、私の目の前でダメージエフェクトの赤い閃光が発生し、コハルがその場に力無く倒れた。
「……コハル?」
返事は無い。
たった一撃、でもボスクラスの攻撃二つを同時に受けたんだ、それは致命的なダメージになる。
油断した私を庇って、コハルが傷ついた。
「……い」
きっと、お兄ちゃんもこんな気持ちだったんだろう。
「……ごめんなさい」
その一言を呟いて、剣を握る。
どう勝つとか、戦い方とか、そんなものは捨てる。
これが怒りなのか、悲しみなのか、それとも別の何かなのかは分からない。
でも、今はただ。
「殺す、お前ら全員」
自然と口に出していたその一言はボス二匹に向けたものなのか、それとも
「……っ!」
コハルからタゲが外れて私に向けられたと同時に目の前にいる標的へと攻撃を開始。
ソードスキルの技後硬直もなければ油断もしていない今なら簡単に避けることが出来た。
距離を取り深呼吸して意識を固める。
お兄ちゃんも、こうだったのかな。
──私も、本気で。
再度ボスの攻撃を避けて攻撃を与えまた攻撃を避ける。
いわゆるヒットアンドアウェイな戦い方を繰り返す。
ソードスキルは一人の今は下手に使えない、もちろん一人で使う人もいるけどそれは論外。
ただでさえコハルに庇ってもらうぐらい隙を晒しているんだから、技後の硬直で動けなくなる無駄なことは出来ない。
なら、このままジリ貧になるまで──
「───たぁぁぁ!!」
攻撃をしようとした直後、ボス二匹の頭上から振り下ろされた武器によりボス達は一瞬で消えていった。
「……大丈夫?アキ姉」
「ヨシノちゃん……?」
武器──鎌を携えてポリゴン片の奥から現れたのは私のギルドのリーダーであるヨシノちゃん。
この子はユミさんたちと同じ……探索チームの方にいたはず、だとしたら何故ここに…?
「はる兄が目的を見つけたら絶対二人と別行動して戦力が減るからって手伝いに来たんだ、あの中で一番動けて速いのがボクだったから」
ヨシノちゃんは「いぇい!」とぎこちないピースサインを向けてきた。
ソロじゃ厳しかったから正直助けられた。
「ありがと、……コハルに回復を!」
「ボクはる兄から回復薬預かってる、これ!」
ヨシノちゃんからポーションを受け取り戦闘を早く終わらせることに集中していたせいで疎かになってしまったコハルの回復を行う。
ボス二匹とはいえそこまで強くなかったことが功を奏し彼女のHPはイエローゾーンで止まっていた。
少し無理やりだけど口にポーションを流し込み飲ませてすぐにHPが全快してコハルが目を覚ます。
「……ごめん!」
目を覚ましたコハルへ第一声に謝った。
「大丈夫だよ、アキ」
なんて言ってくれてるけど、私は自分を許せない。
油断していなければ、
「……少し休も、アキ姉も、コハルさんも」
ヨシノちゃんが気を使ってくれて私たちは少し休むことにした。
そして、その直後。
お兄ちゃんの進んで行った先から
守られてるだけじゃ、何も出来ない。
でも、守ることが出来なければ、そこに強さはない。