ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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94:その眼にうつるのは

ギルドイベント開始後

 

「君は行かなくていいの?」

「……私は勝手に動く、そう言った」

 

いたずらな笑みを浮かべながら何かを操作する少女に声をかけられる。

名はソラ、この「ギルドイベント」というものを利用しようと考えて《ボス》とやらから参加するよう言われたらしい《ラフィンコフィン》の1人。

手始めに別働隊としてヤマダなんとかをどうこうしたとか言ってたけど、そんなことはどうでもいい。

 

「そういえばそうだったね、なら好きにすればいい」

「……そうする」

 

二本の短剣を持った女の子がどこかに走っていったのを見送ってから私も森の奥へと進んでいく。

誰もいないことを願って、ただ一人歩いていく。

 

 

そもそも、こんなイベントに誰も参加するはずない。

それはいくら私でもすぐに理解できた。

なら、なんでラフィンコフィンはそこを狙ったか、そして──

 

 

参加者一覧に出てきた名前、あれが意味するのは……

 

 

「……関係ない」

 

そういいきかせて剣を振るう。

ただひたすら、自分を**すため。

 

 

人を斬る感触を何度もこの手で感じた。

それは許されることじゃない。

でも、もう私にはそれしか無くて。

 

私には、() () () () ()()がない。

そんなこと、わかってる。

ずっと、そんなものはSAOを始めるよりも前から決まってたことなんだから。

 

 

私は、なんで

 


 

「……はー!」

 

森を進んでいると、知っている声が私を呼ぶ。

それは、現実での私の実姉。

 

「(なんで……)」

 

姉の横にはラギのことを知ってる口ぶりだった女性二人、それと知らない男女。

ラギの知り合いがいるということは、きっと彼もいる。

 

それよりも、今は。

 

「待ってよ、行かないで!」

 

そんな声が走り去ろうとした私の背後から聞こえてくる。

意識をそらす、そうして見たくないものを見捨てる。

それは、私のよく知るやり方。

 

 

姉は何かを話したい、そんな顔をしていた。

でもあいにく私には何も話すことがない、だからこうして逃げた。

 

でも、それで良かったのか。

自問自答は何も解を出さない、出すわけがない

 

そもそも私は

姉を

姉と

ちゃんと

 

──意味は?

 

無い。

 

──あるならとっくにそうしてる

 

何もせず、知りながら知らんぷりをした。

そんな相手を、はいそうですかと許せるのか、と問う

 

──嫌なもんは全て排除する、それがいいだろ?

──ここはそれに快適な場所、そうだろ?

 

『***』と別れた後、行くあてのない私にそう声をかけてきた男がいた。

おかしいと、否定すればいいはずなのに、静かに首を縦に動かしてしまって

でも。

 

 

 

 

求められず

誰からも冷たい目を受けて

救いの手は誰も差しのべてくれず

生きる意味なんてみいだせない私にとっては、そんな間違いすらも受け入れて

 

 

仕方ないことだと、そう言ってしまえば聞こえはいいだろうけど。

 

「──、───」

 

誰かの声が聞こえる。

鬱陶しく、何度も誰かを呼ぶ声。

 

「────、──」

 

思わず右手の剣を振りかざすけど当たった感触はないし誰かがいる気配もないでもまだ声は続いている

 

「───、──、──して」

 

()()()が聞こえたと思いつつも剣は誰かに握られて引っ張られていく。

抵抗しようと引いても《なにか》の力が強く剣を動かせない。

 

「───、───」

 

全力で手を引いてみるとすぐに剣は開放された。

 

「うる、さい──!!!」

 

そう言って目の前で剣を振り上げる。

すると、思いっきり切り込んだ感触。

 

これは幻だから、感触なんてものは無いはずなのに。

現実(リアル)での全てを忘れたくて、目を閉じて瞑想しようとしてただけなのに。

明らかな感触は私の感覚を狂わして

 

 

「……、て」

 

「──私の邪魔、しないで……!」

 

幻の()()に向けて剣を突き刺す。

ズン、と重い感触が訪れると共に私の身体は温もりに包まれて。

 

 

私は、なにをしていたかを今更理解した。

 

「……おねえ、ちゃん…?」

 

私が突き出した剣は、先程までチームで行動していたはずの姉──ヒヨリの心臓部分を貫いていた。

 

「やっと、気づいた、ね──」

 

お姉ちゃんは私を抱きしめたままそう言葉を発する。

優しくて、包み込んでくれるような声で、呟いて。

 

 

「はや、く回復……」

 

ポーションを取り出そうと手を伸ばすけどその手は姉に阻止されてしまい回復させることが出来ない。

 

「こんなに……思い詰めてたのに……」

「いいから、剣を──」

 

心臓部分を貫いた剣は姉に刺さったまま、抜こうともせず私に抱きついて。

 

「……ほんと、姉として失格だよね」

「そんなことない!だから「いいよ」……え?」

 

「これは私の罪、ハヅキをここまで追い詰めたのに何もしてあげられなかった愚か者への制裁だから」

 

否定しようとしても、口は指で止められて身体も抱きしめられたまま動けずどうしようも出来なくて。

 

「ハヅキ」

 

より一層優しい声で私の名を呼んだ。

 

「もっとはやく、あなたの苦しみに気づいてあげたかった」

 

悔やむように呟いて。

 

「……あなたは、生きて」

 

そう言い残して

身体が光を放ち。

 

「ぁ……ま、って……」

 

言いたいことも。

感謝も

愚痴も

笑い話も

初めての友達も

 

何も言えずに

私の過ちで

 

「ダメ……!」

 

戻れと力を強く込めても

それに意味はなくて

 

「お姉ちゃん……!!!」

 

お姉ちゃんは、ポリゴン片となり、空に昇っていく。

 

 

「………」

 

残されたのは、貫いていた私の剣と。

生きる意味を持たない、少女の抜け殻。

 


 

 

足音が近づいてくる。

その足音は私の目の前で止まる。

 

「……ハヅキ」

 

声は、静かに名前を呼ぶ。

 

「──誰を、殺した」

 

最悪なタイミングで、私たちは再会を果たした。




あとがきはありません。


約2ヶ月空いたことだけは謝罪します
休養的なものとってました
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