ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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95:意味

ジャックを見送り託された双剣をセットした俺は宛もなく森の奥へと進んでいた。

木々を避けながら影から出てくるモンスターを片っ端から切り捨てながら双剣の使い勝手に少し慣れたその時。

 

「──お姉ちゃん!!!!」

 

そんな叫び声が森の奥から聞こえてきた。

何が起きてるかまでは分からないが、声の主は──

 

「……あっちか」

 

声のした方に向かうとそこには──

 

 

 


 

「……ら、ぎ」

 

声の主……ハヅキがその場に膝をついて空を見上げ手を伸ばしていた。

俺が到着した時点で彼女の前にはポリゴン片が散っていてさっきの叫び声的にハヅキは多分、誰かを……

 

「ハヅキ」

「………」

「お前、誰を殺した」

 

わかりきってる質問だと自覚してる。

彼女を追い詰めることになるということもわかってはいる、だけど……。

 

「……ごめん」

 

ハヅキは俯き静かに呟く。

 

「私……は……」

「ハヅキ、こっちを向け」

「……無理、だよ」

「逃げるのか?」

「……っ、違……で、も……」

 

俺の言葉に反論しようとするがすぐに言葉を詰まらせて再び俯いてしまう。

放っておけば彼女は全てを捨てようとする、だからこそここで彼女には選択してもらうしかない。

 

「もう一度聞く、誰を殺した」

「……それを聞いて、何になるの」

「お前が何をしてたか知らないと、お前を助けられない」

 

何を抱えて、どうしてこうなっているのかを俺は知らない。

とあるお人好しが言っていた通り、相手のことを知らないのに助けようなんて勝手すぎる話だ。

 

「助けてなんて、言ってない」

「あぁ、言われてないな」

「なら、ほっといてよ」

「それは出来ない話だ」

 

彼女の前に立つ。

俯いていたハヅキは顔を上げ光を失った目を覗かせる。

 

「ハヅキ、お前の口から聞かせてくれ」

「私は……」

 

「……お姉ちゃんを殺したの」

 

地面に落ちた自分の剣に手を添えながら彼女はそう言った。

 

「ずっと……ずっと見ていてくれたのに、それすら気付かずに、勝手に見捨てられたって、そう思い込んで……手を差し伸べようとしてくれたのにその手すら掴まないで……剣を……」

「……お姉さんはなんて?」

「……生きて、って」

 

「そうか、なら──」

 

ハヅキのお姉さんがこの場にいたという事も気になることではあるが、それ以上に彼女のお姉さんの言葉は──

 

「お前を助ける理由になる」

「言ったでしょ、もうほっといてよ」

「……本心か?」

「そうだよ、これが本心」

 

そういうとハヅキは立ち上がり剣を抜いた。

その目は本気では無い、迷いを抱えている。

 

「ラギが言ったんだよ、剣で伝わるって」

「……わかった、受ける」

 

彼女が何をしたいのか、何を伝えたいのかを受け取るためにも剣を取る。

左右の腰に付けた二刀を同時に抜きハヅキに向けと彼女の表情が少し曇った。

 

「それ、は……」

そっち(ジャック)といたならわかるか」

「どうして……あの子の武器を…?」

「……お前と同じだよ」

「それって、どう……──っ!?」

 

ハヅキの質問に答えるよりも早く彼女の足元へ滑り込み二刀を連続で切りあげる。

俺の言葉に動揺した彼女は反応が遅れ剣を弾き飛ばされ体制を崩した。

 

「……同じ、って」

「それはお前のことを聞いてからだ」

「本気、なんだ」

 

数歩下がり息を整えた彼女はこちらの出方を伺う形で剣を構える。

ハヅキがコハルのもとからいなくなってからどれほど強くなったかわからない以上は全力で剣を交えるしかない。

 

 

「はぁ!」

「く……っ!」

 

先程までとは違い速度をあげることによる手数の増加で攻撃を与えていく。

 

「何にとらわれてるのか知らないが、今のお前には負けないぞ」

「やってみないとわからないでしょ──《スキルレコード》!」

 

 

さすがに押されすぎたことに焦ったのかハヅキはスキルレコードを発動する。

使ったのは初めて獲得した時の《イグナイト・スクエア》、本来SAOでは有り得ない《属性》を付与したソードスキル。

受け止めることもできるがそれは自殺行為に近いため避けに徹する。

 

「隙あり──」

「そう来ると思った……!」

 

普通のソードスキルよりも長い技後硬直を狙って振りかぶった短剣が硬直をほんの一瞬かいくぐったハヅキの一撃で弾き飛ばされ彼女の後ろ側へと飛んでいく。

そのままハヅキは片方を弾き飛ばされた勢いで体勢を崩した俺へと剣を振りかぶる。

 

──が、それは当たることはなく。

 

当たる直前、彼女が吹き飛ばしたはずの短剣がブーメランのように俺の手元へと返ってきてその途中で彼女の剣に当たり軌道を逸らした。

 

「えっ!?」

「油断したな」

 

ジャックから譲り受けた《双剣》スキル、短剣を二刀持ちできるようになるだけでなく様々な特殊効果が付与される。

そのうちの一つが《二本一対》、装備している二本がどちらかが手元にある場合もう片方が装備中の扱いなら二本が引かれ合う、というもの。

わかりにくい話だが例えるなら片方を投げてもさっきみたいに返ってくるという特性を持っている。

 

これを攻撃に活かせると教えてくれたのは他でもない、元の持ち主(ジャック)だ。

 

 

それにしても……

 

「お前、手抜いてるだろ」

「そんなことない」

 

何度か鍔迫り合いを行ったりこちらへの攻撃を見ていて明らかに動きが違うことに気がついた。

第十層の頃に比べれば確実に成長しているというのはわかるがそれでも彼女の動きは鋭さがない。

 

「私はいつだって本気、スキルレコードだって使ってるしラギみたいに硬直をどうにかしようともした、これで手を抜いてるって言うの!?」

「丸わかりだよ」

 

手を抜いてるということも、そしてなにより──彼女が()()()()()()()()ということも。

 

「勝手なこと言わないで!何も知らないくせに──!」

 

俺の言葉に動揺したハヅキは剣をデタラメに振るう。

もちろんそれが当たることはなく、ただ空を切るだけ。

 

「あぁ、お前の気持ちなんて何も知らない」

「なら──なら……!ほっといてよ…!」

 

《イグナイト・スクエア》による炎が身体を掠める。

ダメージはほぼ無いし剣撃も当たることはない。

 

「ハヅキ」

「うるさい……!」

「聞け」

「嫌だ、何も聞きたくない!」

 

俺の言葉を聞かないようにと無我夢中で剣を振るうハヅキに言葉を伝えようと話しかけるが全て反対される。

 

「なら勝手に言わせてもらう──なんで、()()()()してるんだ」

「──え?」

 

ずっと、なんならライムが遭遇した時にもフードの下から感じ取れたと聞いたが、彼女は──

全てを拒むような、憎しみを抱いた顔ではなく。

誰かに助けを求めるような、悲しそうな顔をずっとしている。

 

「……改めて聞くぞ、ハヅキ」

「……なに」

 

 

本当に距離を離したいなら、こんなイベントに参加する必要も無いしわざわざライム達の前に現れることもしないだろう。

だからこそ、彼女には聞かなくちゃいけない。

 

「お前は、どうしたいんだ」

 

彼女の選択と答えを。




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