ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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98:想定外の規格外

ソラとラギが対峙する少し前。

第一層はじまりの街:《教会》

 

そこは、デスゲームに参加してしまったまだ小さな子達を匿う所謂保護施設の役割を持っている建物。

そしてここに、ラギと離れて教会の日銭の支援をしている少女──ルナがいた。

 

「サーシャさん、そろそろ狩りに行く時期だよね?」

「うん、だからみんなで行こうかなって」

「……なら、私が行ってくるよ!」

 

教会に身を置く子達が先生と呼ぶ女性、サーシャが支度している横から様子を伺いながらルナが代わりに行こうと手を上げる。

 

「え、でも……ずっと手伝ってもらう訳にも……それにあの方、ラギさん?ともそろそろ一緒にいた方がいいんじゃない?」

「なんでそこでラギが出てくるの!?……じゃなくて、今はこう……危ない?からさ」

 

建物の中という秘匿空間ではあるが、聞き耳を立てられて()()()しまわぬように濁しながら会話を広げ、続いていく。

 

「そう……だったわね、それなら任せちゃっていいかしら」

「うん、()()()()()()()()()()もいるから、任せて!」

 

そういうとルナは足早に支度を済ませて扉を開ける。

すると、扉の先──外から複数人の悲鳴が聞こえてきてサーシャが耳を塞ぐ。

 

「──あ、悪い」

「もー、ラギと決めたじゃん!」

「オレっちは止めたんだけどナ、キー坊が抑えきれずに圧をかけたんだヨ」

 

外には黒服に身をつつみ冷静を保っているようで少しキレているのが隠せていないソロプレイヤー、キリトとルナにとっては特別な情報も与えてくれる街の情報屋、アルゴが男性プレイヤーの胸ぐらを掴んでいた。

なぜこのふたりがこんなところにいるのか、それはギルドイベント中のルナとそのまわり……つまりは()()()()()()()()()()()()()を監視する役割を任せられる人物としてラギが選んだ、ということ。

 

「子供たちに聞かせたらダメだからってラギ言ってたじゃん」

「面目ない……というかそのラギはどこに?」

「ラギなら──」

 

ギルドイベントに参加している、とは聞いていないキリトの質問をルナは少し考える素振りを見せたあとこう答えた。

 

───お姫様を迎えに行った、と。

 

 

 

 


 

side:ラギ

 

ギルドイベント内

 

「……な、どういうことだ?」

 

嘲笑ってたソラのもとに一本のメッセージが飛んだ。

きっと今頃、護衛を頼んだふたりが刺客を追い払った頃なんだろう。

タイミングとしてはちょうどいい、調子乗ってたソラが動揺を見せた。

 

「お前がルナの参加を《しない》と読むだろうとこっちも読んでボディーガードを参加者以外に頼んだだけだ」

「……チッ、余計な──」

「人を殺す奴が身内だけはと温情を向けるわけがないってのも、全部ルナが言ったことなんだよ」

 

 

──お姉ちゃんは多分、私を殺そうとする。

──私は、嫌われてるみたいだから

 

ギルドイベント前にルナがそう言ってきた。

なにか悩んでいた様子を見せていながら何も教えてくれなかった、何かを抱えたままいなくなって、あんな事を起こした、と。

 

「ルナはお前を心配してたんだぞ」

「……っ、黙れ──っ!」

 

ソラは身に余る大剣を振りかざしてきた。

ルナと瓜二つでありながら、その内面は全く逆、暗さと荒々しさだけが目立つ少女の欠けた物が嫌という程醜く移る。

 

「ボクは……アイツのように全てを持ってない──優秀なアイツに、ボクの気持ちがわかるわけないだろ──っ!」

 

先程までの冷たさを持った言葉から一変し、怒りだけが彼女を動かしている。

目の前の俺をなんとしてでも潰そうと無我夢中に剣を振るう姿だけはルナと同い年だと思わせるものがある。

 

「落ち着けお前──っ!」

 

片手直剣に持ち替えてソラの大剣をはじき飛ばす。

彼女が身に纏う《権限》が外れない限り、防戦一方になってしまうが、今はそれで彼女を止めて撤退させるしかない。

 

「落ち着け……?お前に、お前らにボクの気持ちなんてわかるわけない……舐めるなよ、恵まれてるだけの偽善者──っ!」

「劣等感で勝手に暴走してんじゃねぇ──っ!」

「──ラギ、ソラをこっちに投げて!」

 

武器を失ってもなお俺に掴みかかってきたソラは我を失ったように何かを口にし続ける。

そんなソラを見かねたのか召喚されたボス達を蹴散らしたハヅキが指示を出してきたためソラをそのまま後ろにぶん投げる。

 

「お姉ちゃんのことを、私のことをバカにしといてそんな勝手なこと……言わないで──!」

 

赤いエフェクトとともにハヅキの片手直剣が火を纏う。

彼女にはまだソラの権限を話していないが、それは今言うのは野暮だろうし何よりハヅキの怒りをぶつけさせるべきだ。

 

「──っ、な、んで─!?」

 

イグナイトスクエア──スキルレコード片手4連撃。

そのハヅキの攻撃は全て防がれてソラには届かず弾かれる。

 

「ハヅキ、下がれ」

「ラギ、なんでソラに……」

「……ソラは──」

 

説明をしようとしたその瞬間、ソラが何かを呟いたかと思うと足元が突然盛り上がり直後───

 

「──は?」

 

俺の体は空中に吹き飛ばされていた。

 

「ラギ──!!」

 

そう叫ぶハヅキの声が遠くなっていき、その代わり俺らのパーティそれぞれがいるであろう地点にMOBの出現エフェクトが微かに確認できた。

 

(くそ……何があったのかわからないが……とりあえず今は──)

 

落下に対しての対応よりも先に、散り散りになっている仲間たちへの指示を優先で考える。

こういう時のために決めておいた《合言葉》を落ち着いた上で口に出す。

 

 

「《夕立の霧雨》、スタンバイ──!!」






ソラの思惑とラギの先読み
・夕立、星屑の両メンバー全員をギルドイベントに招集したため守れる人がいない……と思わせておいてルナの数少ない知り合いであるキリトとアルゴを護衛に
・圏内なので武器は使えないものの《ビーター》と《鼠》が守護しているという点だけでだいぶ圧になる
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