ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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101:動き出す黒幕

 

ギルドイベントが終わり、失ったものはあれど前に進むことを決めてから数日後。

 

俺とハヅキはリズの鍛冶屋に来ていた。

 

 

「よ、やってる?」

「なにそのテンション、というかハヅキじゃない」

「リズ、武器のメンテを……わぷっ」

 

扉を開けて中に入るとリズは鉄打ちの最中で俺たちに気づくと区切りのいい所で止めて保護具を外してこちらに来た。

何も無かったかのように振舞ってはいたがハヅキの件はしっかり知っていたためリズはハヅキの頭をわしゃわしゃと撫で回し肩を叩く。

 

「おかえり、でいいのよね」

「……うん、ただいま」

「挨拶も済んだしメンテを頼む」

「少しくらい仲間の帰還を喜ばせなさいよ、というかハヅキはともかくあんたの武器開始前にメンテしたじゃない」

 

髪ボサボサにしながら何かを察したハヅキは目を逸らした。

たしかに、リズにメンテしてもらって耐久値は回復してからギルドイベントに参加したが、道中の連戦とジャックとの激突、そしてハヅキと戦って片手直剣の耐久値はだいぶ削れている。

さらにジャックから託された2本も耐久値は高いもののずっとメンテなんてされてなかったからか崩壊ギリギリまで減っている。

 

「良くもまぁこんな武器で戦ってたわね」

「……形見だから、丁重に扱ってくれ」

「あんたそれ先に言いなさいよ!?」

 

なんて会話をしながらリズのメンテが終わると俺たちはそのまま買い出しに向かう。

 

「コハルは今頃何をしてるんだ?」

 

移動中、買い物リストを復唱し続けるハヅキにふと気になったことを聞く。

ギルドイベントが終わってからというもの、ハヅキとコハルはそれぞれ別で色々なことをすることに決めたらしく、宿は同じ場所を使ってはいるものの昼間は基本的に別行動を取っている。

 

「たしかライムと一緒にはじまりの街でカフェに行ってる、カエデやヨシノも合流するって聞いた」

「お前は行かなくていいのか?買い出しくらい俺だけでいいし女子会だろ?」

「ラギが来るなら行く」

 

話を聞いたところ、コハルからの提案で決まったことらしく、お互いに好きなように活動していざと言う時は助け合う、そんな二人になりたい、とのこと。

どうやらそれ以外にも理由はあるみたいだけど、そこに踏み込むことはしなかった。

 

「なんで俺なんだよ、女子会に混ざるわけにはいかないだろ」

「……?」

「なぜ首を傾げる」

 

コハルが攻略の最前線から離れることを決めた中、ハヅキもある意味では変化がありなぜかちょっと常に俺の隣にいる。

 

「ラギは、ずっと一緒にいる」

「……なるほど」

 

今、コハルがハヅキと離れることを承諾した理由が明確になった、そんな気がする。

 

「ハヅキがいいならそれでいいよ、俺は女子会に割り込みたくないから」

「なら、いかないよ」

「はいはい……終わったら合流するか」

 

我ながらハヅキを甘やかしすぎてる気もするけど、今の彼女にはきっと落ち着ける相手が、場所が必要だろうから、と言い聞かせることでなんとか自分を制御する。

 

「ほら、次あっち」

「わかったから、手を引くな!」

 

訂正しよう、ちょっと甘えられすぎてる気がする。

 

 


 

「カエデちゃんー!おーい!」

 

建物内にその声が響く。

だが返事は無い。

 

「こっちに行くの見たんだけどな……かくれんぼ、なんてしなさそうだしどこ行ったんだろ……」

 

見たはずの少女の姿を追って内部を散策し始める。

すると、壁の一部がやけに新しい色をしているのに気づきそこを押してみた。

 

「わわっ……っ、て……」

 

迷い込んだ少女の目の前には、信じられない光景が広がっていた。

危険を感じ後ずさるが、入ってきたはずの壁は閉じており、押しても反応しない。

 

「マズイ……よね……」

 

そう感じた瞬間、少女の意識は暗闇に沈んだ。

 

 

 

「いいの見っけた……」

 

そんな声の主は少女を持ち上げると奥へ消えていく───。

 

 

 


 

少し後

第十層:夕立の霧雨ギルドハウス

 

「お前ら、無事か!?」

「私はずっとここにいたし、ライムもいるけど……」

 

ライムからのメッセージを受け取った俺はハヅキを連れて夕立の霧雨が持つギルドハウスに帰ってきた。

 

「それで、コハルとカエデとヨシノが居なくなったってのは」

「……ごめん、私が注意不足だったせいだ」

「落ち着こ、ね?」

「とりあえず、何があったのか聞かせてくれ」

 

明らかに取り乱しているライムをシズクに落ち着くよう慰めてもらいつつ事情を聞く。

 

コハルと先にカフェで談笑していたらカエデからメッセージが来たらしく、迎えに行くと言ってコハルが一人で飛び出して行った。

そしてしばらく待っても帰ってこず、更にはヨシノも来る気配がなくメッセージも返信が無かった、とのこと。

 

「それだけなら行方不明とは言い難い……が」

「3人とも、ってのはさすがに怪しいというか、ほぼ確実だと思う」

「一応ユミさん達が第一層をくまなく探してるらしいけど、目撃情報も無いらしくて」

 

ライムの早とちり、と簡単に済ませられれば楽だったが、そうもいかないようだ。

カエデもコハルも仲間からのメッセージを返さないような性格ではないし何かあればすぐ連絡するだろう。

 

まずは第一層で情報を、と思考を巡らせているとギルドハウスのドアが開く。

 

「捜索隊とは別で原因を潰しに行かなきゃ捜索隊にも被害出るよ」

「原因……って、この一件の犯人の目処が?」

 

入ってきたのは最近ぱったりと話を聞かなかった先輩二人──ミコトとヤヨイだった。

心当たりがあるような言い方をしているミコトは右手に持っていた一枚の紙を取り出して机に置く。

 

「これは……そうか、ギルドイベントで手一杯で任せっきりだった──」

 

とある情報屋が世間にばら蒔いたニュース記事。

『女性プレイヤー失踪事件』がでかでかと載ったその一枚を叩きミコトは言葉を続けこう言った。

 

 

「私とあっちゃんがこの犯人を───」

 

 

殺す、と。




ギルドイベント準備編でちょっと語られてるんですよね、件の話


心当たりがあるようだが、はたして……
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