ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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105:思わぬ評価

 

管理者による大規模な事件から数日。

行方不明だった女性プレイヤー達が全員元の環境へと戻るにはまだ少し時間がかかるようで、第一層の公園等には見た事のある顔も多く、そして──

 

視線がやけにこちらに向いている。

なにか狙われるようなこと……に心当たりはあるが、それにしてもなんでこんなに見られているんだろう。

 

「……あ、あの!」

「……?」

 

寝て忘れようとしたところで声をかけられて顔をあげる。

声の主は最初に《赤銀》が檻を解錠し無理やり外に出していた子、のはず。

赤銀と一緒に出口に向かうのを見ていたからその後どうなったのかは分からないが、元気そう……だが何故かちょっとオドオドしている。

 

「ご、ごめんなさい邪魔して……」

「いや、大丈夫。それで、なにかあった?」

「あの……《英雄様》のお名前を、教えてください!」

「………え?」

 

聞き間違い、じゃない、よな?

 


 

それからというもの、買い物してる最中、街歩きしてる時、どんなタイミングでも助けた女の子から似たようなことを言われる。

 

英雄様……なんでそんなことを言われてるんだ、俺。

そんな大層なことしてないし、なにより最後にみんなを帰らせたのは女子組だ。

 

「そんなルー坊にこの記事をプレゼント」

「急に後ろに現れるなって……《件の事件、一人の少年とその仲間により無事解決》……お前なぁ」

「オレっちはNO関係ダ!他の情報屋が女性プレイヤーにでも聞いたんだヨ、多分」

 

後ろから記事を見せてきたアルゴなら大袈裟な記事を書きそう、というのは黙っておくとして、変に脚色されてる気がする。

この記事を書いた奴には後でしっかり問い詰めるとして、だから変な呼び方が流行ってるのか……

 

「オレっちはルー坊呼びで変わらないケド、どうする?」

「どうするも何もないだろ、英雄なんて呼ばれる程のことはしてないし」

「そういうと思って、ルー坊に提案ダ」

 

アルゴは更なる記事を持ち出してきた。

そこには、《紅炎》の文字。

 

「……なに?」

「服も、最近のソードスキルも発動時の見た目が炎っぽいし赤だロ?」

「それは否定しないけど、それが何か?」

「こうダ」

 

ドラムロールでも鳴ってそうな溜め方をした後、アルゴはもう一枚の紙を取り出した。

そして、そこに書かれていたのは───

 

 

 

 


 

「《紅炎の英雄》かぁ、カッコイイじゃん」

「やめてください」

 

アルゴからの提案を受けた俺は却下し場所を移動した。

そして昨日メッセージで呼び出しをくらいミコトとヤヨイが借りている宿に向かっている最中だ。

 

「それで何の用ですか?」

「あるものを見て欲しくてね」

 

宿につくと入ることを許可されて中に招かれる。

入ってすぐに部屋の隅にある扉の前に連れてこられて中に入れと指示され踏み入れる。

 

「あ、如月君」

 

中には大きなベッドとその横にヤヨイが座っていた。

そして、ベッドには誰かが寝ていて……

 

「この子は……」

「前にあっちゃんから聞いたと思うんだけど、()()()()のあと、現場に倒れてた……()()()()()()()()()()

 

ヘイへ──下田によってモンスターにされ、《夜想曲》というギルドを壊滅に追い込ませて()()()()少女。

 

「どんな要因でモンスターになったのか、そしてどうやってモンスターから元に戻ったのかわからないけど、見た目も名前も──なによりプレイヤーアイコンである以上は助けないといけない、そう思ったの」

「だから、後輩君達に連絡も入れず帰ったってこと──それで、ここからなんだけど」

 

いつにもなく真面目に、ミコトは頭を深く下げた。

 

「この子が起きるまで、私たちは前線から離れる、だから──迷惑かけるけど、あの子達を見守って欲しい」

「星屑の流星には聞いたんですか」

「めっちゃ反対されたよ、でも、納得もしてくれた」

「なら俺はそれを否定することはしませんよ、引き受けます」

 

先輩たちなりの考えがあっての事だろうし、何より二人は《仇》をとったあとだ。

攻略組として前線に立つことも必要ではあるが、目の前にいる()()()()()()()を保護するのも大事な役割だ。

いちばん関わっている他のメンバーが良しと言うなら俺は止める事はしない。

 

「それと後輩君」

「なんです急に頭撫でて」

「……また汚れ役を引き受けさせてごめん」

 

それはこないだの件、ヘイへを突き落としたのが俺だということに対しての謝罪。

そもそもあそこまで至る経緯にいちばん関わってるミコトがそんな謝ることは無いだろうし、何よりあそこで生かしておいても何も得られないのは明確だったから()()()()ことだろう。

 

()()()()()気にしなくていいですよ、俺は──」

 

 

その先の答えは、口から出ることはなかった。

 


 

「あ、ラギさん」

「おそい」

 

第10層にある甘味処《いっつみゃいごん》。

そこの屋外に置かれている椅子に座っているコハルとハヅキと合流して腰を下ろす。

 

「仕方ないだろ、色々対応してたんだ」

「なにしてたんです?」

「浮気?」

「えっ」

「違うわ、コハルも真に受けた顔しないでくれ」

 

ハヅキの冗談で場の空気が凍りかけたりしながらも談笑に花を咲かす。

コハルも一日とはいえ囚われていた身、なにもされてないらしいがそれでもあの現場にいた以上はなにかしらメンタルケアが必要だと思ったが、そんなことはないようで、いたって普通に生活している。

 

「ラギはこれからどうするの?」

「俺は前線に戻るよ、攻略組もだいぶ手一杯らしいし」

「なら、私も──コハル、行く?」

「私は……」

 

当たり前のようにハヅキは一緒に来るらしいが、コハルは悩んでいる様子。

ハヅキと別々になると決めた以上は、一緒にいるのはどうかという彼女の悩みが見え隠れする。

 

「なら、言い換える」

「え?」

「私()ラギと行く。コハルはどうするの?」

「……意地悪」

 

コハルの答えは出た。

ハヅキのちょっと意地悪な質問が効いたみたいだ。

その後も談笑を続け、俺とハヅキは上層へ。

コハルは()()()()()()()()()()()()に。

ちょっとした事件はあったものの、俺たちは改めてそれぞれの道へと進んでいくことになった。

 


 

それからしばらくの時が経ち。

攻略が第74層まで進んだ。

そして

 

「──ラギ!」

 

俺は、新たな決断を迫られていた。





英雄と呼ばれるようにはなったが、英雄と自称することはしてない。


ということで晴れて黒幕をしばいたラギ達、平和が戻ってきたと言いたいがそもそもここはSAO、平和なわけがない


次回
アインクラッド編《最終章》、開幕──。


寝たきりの少女
ギルドイベント編でミコトたちが出会ったギルド、夜想曲の唯一の生存者。
その名はシロ。
モンスター化した後、効力が切れたのか通常の人間に戻り倒れていたところをヤヨイに保護される形で助けられ二人の専用宿にて匿われている。
モンスター化したことによる後遺症で現在は植物人間状態となっている。


赤銀

銀髪ショートヘアに赤い瞳のどこか神秘的な雰囲気すら感じ服装に言動が緩めな不思議すぎる女の子。
何故かラギの指示を聞き懐いている
その正体は───
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