ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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107:第74層ボス攻略

攻略の合間に起きたプチ休息から数日がたったある日。

俺とハヅキはまたキリトに呼ばれて迷宮区の入口に来ていた。

 

「それで撤退してきた、と」

「仕方ないだろ……あれは逃げるって」

 

到着するとキリトはアスナが手作りしたサンドイッチを食べていた。

そして、俺たちを呼び出した経緯を話すと考える素振りを見せる。

 

どうやら俺たちを呼ぶ前に二人でボス部屋の中を確認しに行ったらしく、そこでボス部屋に鎮座するボスモンスターの咆哮にビックリして逃げてきた、と。

そもそも二人で行くなという話だが、それは置いといて、キリト達すら即撤退を選択するレベルの相手、か……

 

 

「というかラギは何食べてるんだ?」

「アメリカンドッグ、みたいなもん」

 

味までは再現できない、と思いきや実はケチャップ(のようなもの)とからし(のようなもの)をアスナから教わっていたハヅキの努力によってだいぶ近いものを食べれている。

 

「ほーん、ハヅキが作ったのか?」

「なんでそうなるの……はっ、ラギ!?」

「違うから、何も話してないから」

 

そんなことを話していると、見覚えのある男が歩いてくるのが見えた。

 

「おー、久しぶりだな、って……なんか美人いるじゃねぇか、どういうことだおめぇ!」

 

ギルド、風林火山のリーダーで俺たちもたまに一緒に戦っていた男、クラインが俺たちに気づくと手を振りながら近づいてきた。

かと思えばアスナに気づいてキリトを質問攻めにし始めたため聞かないようにしてアルゴから送られてきた情報を覗く。

 

ボスの名前は《ザ・グリームアイズ》、通称《青眼の悪魔》。

手に持つ武器の攻撃だけでなく、炎を残すタイプのブレス攻撃も仕掛けてくるとの事。

それ以上の特殊なギミックは特にない(はず)らしいが、かと言って油断するわけにはいかない。

それにしても、《青眼》、ね……

 

「ラギ、あの人たち」

「ん、あれは……《軍》か?」

 

アスナにアプローチしてるクラインの後ろの方から大勢を引き連れた大柄の男性プレイヤーが歩いてきた。

さすがのキリト達も話をやめて歩いてくる奴らの方に視線を向ける。

 

軍──元々キバオウが率いていたギルド、ALSが25層にて起きた一件の後にMMOトゥデイの管理人、シンカーが立ち上げたギルドが合併した事で結成された《アインクラッド解放軍》。

25層以降は主格だったキバオウが抜けたことや先程言った《一件》による傷心があったのか、下層の治安維持や犯罪者プレイヤーの制圧などを主な活動としていた組織だ。

夕立やルナにも声をかけてきたことがあったらしいが、オレンジプレイヤーへの処遇がだいぶブラックだとかでいい噂は聞かない。

そんなギルドがなぜこんな上層に……?

 

「《アインクラッド解放軍》の中佐、コーバッツだ」

「……キリト、ソロだ」

「君たちは既に攻略を進めているのか?もし進めているのなら……()()()()()()()()()()()()()()()

「「なっ……」」

 

コーバッツと名乗った男はそれが当たり前かのような提案をしてきた。

下層にいるだけの集団にはマッピング一つでもどれだけ苦労するか、それすら理解していないようだ。

 

「……いいよ、それくらいなら」

「キリト、お前……」

「マッピングデータで金稼ぎする趣味はないからな」

「協力、感謝する……では、行くぞ!」

 

キリトからマッピングデータを受け取ったコーバッツは仲間たちに立ち上がるよう指示を出す。

何かを察してボス戦はやめとけとキリトが言うが、「私の決めることだ」と一蹴。

 

「さっきボスの部屋を覗いたが、生半可な人数で、それもそんな消耗した仲間で行けるもんじゃない!」

「私の部下達はその程度で音を上げるほどヤワじゃない、立てお前たち!」

 

コーバッツはそう仲間たちを無理やり鼓舞するとそのまま迷宮区の奥へ向かっていく。

どう見てもフラフラしている奴もいるのに、それすら気づかないで良くもまぁ『仲間』なんて言えたもんだ。

 

「一応、見に行くぞ」

「俺たちも行くぞ、キリト」

「……ったく、お人好し達が」

 

嫌な予感がするため軍を追うことにした俺たちを横目に、何かをクラインとアスナ、そしてハヅキが話していたが、よく聞こえなかったのと何故か少し嬉しそうな二人に聞ける雰囲気じゃなかったため、気にしないことにした。

 

 

軍をおって迷宮区を進むこと数分。

迷宮区のメインモンスターであるリザードマンを個々の連携で倒していき特に体力を消耗することもなくボス部屋の前まで進むことが出来た。

そして、ボス部屋の扉は開いたまま、正確には俺たちが到着したタイミングでコーバッツ達がボス部屋に突撃して行ったところだった。

止めても聞かず、ボス部屋の扉が閉まりそうになりアスナを先頭に俺たちもボス部屋に入ったが、すでに始まった戦闘は止まることはなく。

 

「全員、何としてもボスを倒すのだ!」

「あのバカ……っ!」

 

加勢するよりも早く、ボスの薙ぎ払い一発でメンバーの半数が吹き飛んだ。

そして、その中にはリーダーを務めていたコーバッツも。

 

「ば、かな……」

 

ボスの一撃で体力を失ったコーバッツはそう言い残し消滅。

その後もリーダーを失った軍のメンバーは為す術なくHPを全損。

悲鳴、なんでこうなったという声、それらが徐々に消えていく。そんな中、武器を装備したアスナとハヅキがボスへと突っ込んでいく。

 

「「あのバカ……っ!」」

 

どう考えても周りが見えていない状態になっている二人を追うように俺とキリトも飛び出した。

二人の攻撃がボスを怯ませてはいるがソードスキルの隙をつかれた攻撃を防ぐ手段がないため俺たちが間に入り込み防御する。

何とか間に合ったものの、さすがはギミックが無いボス、普通のステータスが明らかに高く設定されているようで一撃だけでも防ぐのが精一杯だ。

というか、俺に関してはリーチが足りないからしんどいという話なだけな気もする。

 

「俺たちだけで、こいつを倒すのか……」

「仕方ないだろ、もう逃げられない」

 

ボス部屋の扉は閉まっているし、もちろんのこと転移結晶は機能しない。

こうなってしまえばあとは死ぬか倒すかの二択、つまりはこいつを倒すだけだ。

 

「気ぃ引き締めるぞ、お前ら」

「ハヅキ、パリィを任せる」

「ん、任せて」

 

風林火山の半分とハヅキに防御を任せることでリーチによる防御面の心配を極力減らす。

その分アタッカーが減ってしまうが、そこは仕方ないとこだと諦めるしかない。

 

「ブレス来るぞ、下がれ!」

「薙ぎ払い、防御陣形!」

 

至ってシンプルな攻撃方法をしているが故に攻撃パターンはつかみやすいが、それを全くデメリットとしないほどの重さが俺たちを徐々に追い込んでくる。

そもそもがこの人数で挑む想定をしていないというのもあるだろうが、それにしてもこれだけの実力者がいてこんなに苦戦するというのは、残りの階層を考えるとあまりにも厳しいと思えてしまう。

 

「こうなったら……全員、攻撃に転じてくれ!」

「でもそれじゃあ……」

「わかってる、でもこうでもしなきゃジリ貧になる」

 

攻撃をしつつ防御もする、その作戦で行かないとこのままだとこちらが負ける。

それだけは避けないといけないからこそ、少しでも無理をして攻撃を増やす。

 

「……っ、ハヅキ、スイッチ!」

 

グリームアイズの太刀をスレスレで防ぎつつ全力で弾き飛ばし体勢を崩す。その隙にハヅキ達に攻撃してもらいつつ俺も攻撃を与える。

それを何度か繰り返すが、それでもボスの体力はまだかなり残っている。

 

これ以上、攻撃に全力を投じるのはかなり危険だ。

だから、あとは一人に賭けるしかない。

 

 

「キリト」

「な、なんだ?」

 

なにかを出し惜しみしているのは目に見えてわかる。

それがどんな理由かまではわからないが、今はそんな迷い捨てるべきだ。

 

 

「お前に、任せる──使え」

「……わかった」

 

 

俺の言葉が伝わったのか、キリトはウィンドウを操作し始めた。

 

「みんな、十秒だけ稼いでくれ!」

 

それだけをみんなに伝えて。

 

 

「よくわからないけど、任された!」

「よーし、みんな気張るぞ!」

「ハヅキも、全力で頼む」

「ん、わかった!」

 

キリトがある物を準備する間、なんとしてでも彼に繋ぐために一斉に攻撃を仕掛ける。

ほんの数秒という時間だが、油断はせずに攻撃をしていくと、何かを装備する音と共に「スイッチ!」というキリトの声が響く。

ハヅキとアスナがボスの攻撃を弾いたと同時にボスへと()()()二連撃が放たれる。

 

「……ラギ、もう一度弾いてくれ!」

「短リーチによく言えるな……!」

 

キリトの無茶に答えるためボスの攻撃をなんとか弾くと、それと同時にキリトはソードスキルを発動する。

 

「スターバースト……ストリーム──!」

 

 

体力を出来る限り減らしていたのもあり、キリトが放ったソードスキルでボスは倒された。

そして、ボスの攻撃を受けながらもなんとか倒したキリトのHPは赤く、ミリで残っていた。

 

 

 

「キリトくん……!」

「アスナ……そのまま力入れると俺の体力なくな─痛いって!」

 

ボスを倒しその場に倒れ込んだキリトに駆け寄ったアスナはそのままキリトを抱きしめた。

風林火山のメンバーからは冷やかしの声が上がる中、クラインだけは羨ましがりながらもそれ以上に気になることを質問する。

 

「お楽しみのところ悪いけどよぉキリト、なんだあのスキルは」

「……言わなきゃダメか?」

「ったりめーだろ!」

 

アスナとの時間に水をさすようにクラインがキリトにまた問い詰め始める。

そりゃあ目の前で片手直剣を二本持って連続技を使われれば気にもなるだろう、本来スキルの詮索は禁止だが俺も同じ立場なら聞いたと思う。

 

「《二刀流》、ユニークスキルだよ」

「ユニークスキルだぁ!?んだよそれ、というかラギも見た事ないスキルだよな!?」

「ちょっ、俺もかよ……《双剣》、同じくユニークスキルだよ」

 

サラッと使っていてもなにも聞かれなかったためやり過ごせると思ったが、キリトのせいで巻き込まれる形で俺も聞かれてしまった。

()()()は譲渡されたスキルだったが元の持ち主が消えたことで《複製》されたこのスキルが元のスキルとして扱われたらしくちゃんと名実共にユニークスキルとして扱えるようになった。故に表立って使っているが特に何も聞かれずにここまで来たので気にしてもいなかったが、やはり物珍しさはあるらしい。

というか多分、同じ武器を使ってる奴を見たことがある人もいたんだろうが、そこは聞かないでいてくれて助かった。

 

「……さ、次の層の解放に行くぞ」

「だな、アスナも離してくれ」

「……うん」

 

幸い、どこで手に入れたのかなどは聞かれずに済んだ。

ハヅキは何故か納得のいかない顔をしていたが、頭を撫でると普段の機嫌に戻ったため俺たちはそのまま次の層の転移門をアクティベートしに進んでいった。

 

 

 




すっごい詰め込んだ
でも仕方ない、この回分けれるほどの話無いんだ

一気に飛んでついに終わりが見えて……?
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