ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
次の日。
第74層にて起きた一件、軍の攻略班が壊滅したことと共に俺とキリトのユニークスキルに関してが早くも表沙汰になっていた。
その話をエギルの店で聞いた俺たちのもとにアスナが急いでやってきて、こう言った。
「二人とも、《団長》が会いに来いって……」
その一言で俺たちは血盟騎士団の本部へと赴くことに。
血盟騎士団、わりと序盤層の頃から活動していたが最初の頃は攻略の前線にいながらそこまで大規模なギルドではなかったらしい。
というのも、軍の前身、ALSと同じくライバル関係にあったDKBの2ギルドが存在感を放っていたこともあり出始めた頃は静かに活動していた。
二大ギルドが崩壊した頃から代替えのように大きくなっていき、後半層からはずっと前線を支えるSAO攻略組には必要不可欠な存在だ。
アスナもギルドが小さい頃から加入しており、ここ最近はともかく少し前まではキリトとは別行動も増えていたらしい。
「で、なんの用だ」
「そんなに身構えなくていい、その前に……はじめまして、私が血盟騎士団団長、ヒースクリフだ」
「俺はキリト、でこっちが」
「ラギだ、横にいるのがハヅキ」
そんな大規模ギルドを率いているのが目の前で大きな椅子に座りこっちを品定めするような目をしている男、ヒースクリフ。
警戒するなというのは無理があるだろう、どう見てもこの状況はなにか企んでるとしか思えない。
そして、俺とキリトだけの呼び出しなのに何故かハヅキも付いてきた。
「そうか、君が……まぁいい、君たちには提案をしたいと思ってね」
「提案?」
ヒースクリフは俺を見て何かを言いかけたのを辞めて話を戻した。
ものすごく気になる目線を向けてきたが、その意図は分からない。
「あぁ、ユニークスキルを待つ君たちに
「……断る、そう言ったら?」
「もちろんそう言うと思ったよ、だが……こちらとしてはアスナ君のギルドへ赴く回数が減るのは困るのでね、キリト君は要望を飲んでもらうことになる」
なんか物凄い身勝手に聞こえる要望が出た気がする、堅物だと思っていた団長様はなぜこんな要求を……?
「どんな圧のかけ方だよ、つまり団長殿はアスナが俺に会いに来る時間で攻略の手が減るから困る、その状況を変えるために何かを俺にさせよう、と?」
「ご名答、ラギ君はどちらでもいいが、キリト君には私とデュエルしてもらう、それで君が勝てばアスナ君が君と会う時間を作ることに関しては別に構わない、もし私が勝てば……君を血盟騎士団に入れる」
「俺はおまけだったわけか、なら俺はパスするよ」
団長としては俺は本当におまけで本命はキリトの方だった、というわけだ。
それはそうと、だいぶ勝手な事を言われてる気がするが、キリトが否定しても別に問題は……
「よくわからないが、アスナに自由な時間を与えるには俺が団長殿とデュエルしなきゃダメってことか、なら受けて立つよ」
「ちょっとキリト君!?団長も何言って……」
「二刀流スキルを扱うプレイヤー、そんな君の実力を見たいというのが本音だがね、アスナ君を前線に……ギルドに置いておきたいというもの本当だ」
「……だそうだ、悪いなアスナ」
なんて話をした数日後、いつの間にかものすごい大事になり、出店なんかが並ぶ一大イベントが開催されることに。
二刀流スキルを持ち74層のボスを倒したプレイヤーと大手ギルド血盟騎士団の団長がデュエルする、なんて聞けば確かにだいぶビッグイベントなのは否定できないが、それにしても大事すぎる。
「人、多い……」
「別にお前は来なくても「ラギが行くって言ったから」あー……そうですね」
コロシアムのような建物に満員で人が入りみんながまだかまだかと期待の声を上げている。
俺は呼ばれたわけじゃないがヒースクリフの戦闘を見たいというのがあるため観戦しに来た、そしてもちろんハヅキは付いてきた。
もし、ヒースクリフの要望が俺にも出されていたら、ハヅキがどんなことを言い出すかわからなかったため、今思うと安心だ。
「お、そろそろか」
二人がフィールドに出てくると観客の声が一気に大きくなる。
あまりにも声が大きいためキリトが一瞬びっくりしたのが見えた。
そして、すぐにデュエル開始の合図──正確にはゴングが鳴り響く。
キリトが即座に距離を詰めて二刀流による素早い連撃を繰り出す。
だが、ヒースクリフが持つ《神聖剣》による防御はキリトの手数すら全て簡単に防ぎ弾く。
そしてキリトが距離を取ると逆にヒースクリフが距離を詰め、そして──盾で攻撃を繰り出した。
防げず吹き飛ばされたキリトにヒースクリフが追い打ちをかけるがそれを防ぎ反撃を行う。
二刀流スキルでも発動できる片手直剣スキル、《ヴォーパルストライク》は再び防がれ再度2人は距離を取る。
「素晴らしい反応速度だな、キリト君」
「それはそっちもだろ、硬すぎるわ」
そんな会話の後、更なる攻防が続く。
観客の歓声がさらに大きくなると先程以上にキリトの攻撃が激しくなり、スピードが上がっていく。
そして少しずつヒースクリフの防御よりも速い攻撃が出るようになり、そのタイミングでキリトがソードスキル、《スターバースト・ストリーム》を放つと勢いのままヒースクリフの防御体勢を崩して一撃が入る──はずだった。
だがその瞬間、ヒースクリフが
あれは、まさか──
それから数時間後、キリトは約束通り血盟騎士団へ所属して証としていつもとは正反対の色──赤と白を基調とした制服を着ることに。
「さすがは《HPが半分を切らない》が伝説になってる団長殿だったよ」
「そう、だな……」
「ラギ?」
あのデュエルからずっとヒースクリフの動きとプレイヤー間で噂になっている伝説のふたつがどうしても引っかかっている。
下田のような件もあるためまさかと思ってしまうが、だとしたら違和感がある。
まぁそれを今考えてもなにか出来るわけでもないからこれ以上は考えるのを辞めるとしよう。
「さ、キリトも捕まったわけだし俺らは俺らでやることやりに行きますかね」
「え、変態……」
「なんでだよ!?」
考えを別のことにシフトするためにもハヅキと今できることをやろうとしたが変な誤解を生んだ。
なんか日を増すごとにハヅキが変な方向に俺の言動を解釈している気がするが、気の所為ということにして俺たちはとある場所へ向かう。
俺たちが向かったのは第10層の主街区、そのはずれにある大きな紅葉が綺麗な木。
ここは元は俺が夕立の霧雨を一度辞める時に彼女達を集めた場所であり、そして今は勝手に墓として扱っている場所だ。
もちろん他プレイヤーにそんなことを公表するつもりもなければ私有地にするつもりもないが、個人的にここを彼女──ジャックの思いを眠らせる場所にしている。
とはいえ何かしらつくってるわけでもないため、本当に気持ちだけにはなるが、彼女を弔うぐらいは許されるべきことだと思いギルドイベント後にここを個人的にそういう場所とした。
「ジャック、お前のためにも、これからも進むよ」
「……ラギ」
「悪いな、付き合わせて」
ハヅキにもここをジャックを弔った場所としているのは初めて伝えた。
個人で何度か訪れてはいたが、その時だけはハヅキをコハルたちの女子会に行かせるなどで回避していた。
だが、
「さ、次は新居探し」
「え、なんで?」
「そりゃ、決まってるだろ」
そして、ハヅキにとあることを伝えると直前までちょっとムスッとしていたハヅキの表情が一気に赤面へと変化していく。
「ら、ラギがいい、なら……」
「いいから言ったんだけど」
「──ばか」
今までの冗談交じりだった一言とは違う、それでいていつもよりも小さく照れた声でハヅキはそう言った。
そして、続けて
「よろしく、お願いします──」
そう言ってぎこちない笑顔を見せた。