ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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115:戻る日常

ソードアート・オンライン(以下SAO)がクリアされてから1ヶ月が経った頃。

SAOから帰還した俺は病院内でのリハビリを続けて問題ないということで退院をした。

そしてその足で自宅に帰る前にとある場所へと寄ることに。

 

『表はロックしてるから、近くのコンビニに来てくれ』

 

と送られてきたメッセージを閉じて指定された場所に向かう途中、公園の横を通りかかる。

平日かつ冬かつ昼間ということもあり人通りも少ないそんな公園の入口から人影が飛び出してきて正面衝突してしまう。

 

「いっ……大丈夫ですか!?」

「俺は、まぁ……それより君こそ大丈───」

 

向こうが飛び跳ねていたのか、見事に顔面に肘をぶつけられた痛みをどうしてやろうかと頭をよぎったが、そんな思考は飛び出してきた人物の姿をみて吹き飛んでしまう。

見た目は普通の中高生くらいで、帽子は被っているが髪も少し長いショートボブくらいの黒、服装もパーカーに長ズボンと、至って普通の女の子。

ただ、動き回り暑くなったのか捲られていたパーカーから出ている細い腕には複数の切り傷のようなものが付いていてアザもところどころに見えている。

 

「ご、ごめんなさい……っ」

「あ、待──」

 

俺が差し伸べた手を振り払い少女は立ち去ってしまう。

追いかけようとしたが少女の足はものすごく速くあっという間に見失ってしまった。

あまり踏み込むべきではないというのはわかっているが、声と背丈に見覚えがあったため、どうしても気になってしまう。

 

そんな遭遇から数分後。

一旦本来の目的を達成するために指定されたコンビニの前にいる人物が俺に気づくと手を上げてこっちだと手招いてくる。

駆け寄ると何も言わずに歩き始めたためその後を静かについて行き、街中の見た目は封鎖されたオフィスビルの裏口から中へ入り3階の会議室まで会話もなしに進んだ。

 

 

「さて」

 

会議室の扉を閉めると俺を誘導した男が口を開く。

ため息混じりのその声はどこか安堵も含んでいる気がする。

 

「おかえり、でいいか」

「ええ、それで」

 

顔を上げた男──白澤直樹は俺の返答に改めて深く息を吐く。

 

「まず、お前と後輩──楓ちゃんに全てを委ねたこと、本当にごめん」

「先輩たちのせいじゃないですよ、それと北沢先輩たちもいたでしょ」

「お前はそういうよな、あとあいつらは()()()()だから」

 

白澤先輩は深く頭を下げた。

それは、デスゲームを俺たちに背負わせたことに対する謝罪と罪悪感から来るものだろうが、先輩たちが気負うものではない。

それ以上に気になることを言われたためそっちに意識がいく。

 

「途中参加……?」

「あれ、聞いてなかったんか?いや、あの二人なら言わなそうか」

 

先輩たち北沢琴海と新田やよいの二人はデスゲームが開始されてから1ヶ月が経った頃にアーガスが残していたナーヴギアでログインをした、と。

デスゲーム開始後にログインが可能だったということも驚いたが、先輩達が危険を承知で飛び込んでいたということもなにより驚いた。

それも宮田先輩に対して暴言を吐いて無理を言ったという、なんとも琴海先輩らしいことまでして。

 

「あとで嫌でも会うことになるけど、俺たちアーガス社員は一部を残して解散した。それを指示した総務省の仮想科ってとこから来た菊岡って男とSAO内部のログを確認していた」

 

白澤先輩はそう言いながらパソコンの画面を見せてくる。

そこには、プレイヤーのログイン時間と何層にいるかのデータ全てが表示されていた。

そして、ログイン時間はデスゲーム開始後にも複数……少なくとも10以上が記録されている。

 

「デスゲーム開始後すぐのログインと北沢達みたいな特殊なパターンは抜きにしてもだいぶログインした痕跡があるんだよ」

「……全員が善人ならいいですけど」

「その言い方的に悪人もいたか」

 

確証は無い、だが下田のような悪意を持ったプレイヤーが好機と見てデスゲームに参加した可能性がある。

それこそ、笑う棺桶(ラフィンコフィン)のような殺人ギルドに参加した奴らの中に後入りもいたかもしれない。

 

──結構経ってたのに初期装備だったんだ

 

ふと、ある日ヨシノから聞いた言葉を思い出す。

あれは、()()()もデスゲーム後に参加した、ということなのかもしれない。

 

いや、そこを今気にしても無駄、か。

 

「話したいことは色々あるけど、時間だから話は後で」

「時間?ってのはどう──」

 

白澤先輩の言葉に聞き返す前に会議室の扉が開く。

なにやらワイワイと楽しそうな声が聞こえたと思った矢先、振り返った俺はなにかに抱きつかれた。

 

「はる兄……っ!」

「先輩……!」

 

俺に抱きついてきたふたつの影により俺は床に押し倒される。

幸い床にはなにも置かれていなかったため誰も怪我はしなかった。

 

「ほらほら、人前でいちゃつかないでね」

 

扉に寄りかかり呆れ顔をした三人目が二人を持ち上げる。

軽々しく持ち上げられたふたりはしっかり怒られてしゅんと落ち込んでいた。

 

「助かりました、木田先輩」

「もう先輩って呼べないでしょ、とりあえずおかえり」

「無事帰ってきました、()()()()と一緒に」

 

現実で頑張ってくれていた木田先輩に帰還の挨拶をして落ち込んでいる二人の頭をポンと叩く。

 

「久しぶりだな」

「連絡も何も無くて心配したんですよ」

「ほんとにそう!ずっと二人で心配してたんだからね!」

 

二人──楓と結がムッとしながら俺の方に顔を向ける。

聞いたところ二人はアーガスでSAOにログインしていて、先程名の出た菊岡の采配で二人とも身の安全をしっかり保証されていたらしい。

そのためデスゲームが終わった後はアーガス内でリハビリを続けていたとの事。

 

「というか……」

「ボクのことだよね」

 

さらっと流していたが、結が現実で動き回れている。

SAOログイン前は幼い時に遭った事故の後遺症でずっと仮想世界にいた少女が今目の前で元気そうにしているのだ。

結もそれを聞かれるとわかっていたのか息を落ち着かせて説明を始めた。

 

「ボクもビックリしたんだけど、ログインしてる間の医療管理で動けるだけの体力が回復したとかなんとかで、リハビリは凄い大変だったけどなんとか動けるようになったんだ」

「……よかった」

つい結の頭をワシャワシャと撫でる。

「んへへ~、くすぐったいよ〜」

「楓も無事でよかった」

「私はシズクとモミジがいてくれたので、あの状況もどうにかできました」

「「管理者権限もあったからね」」

 

楓にも安堵の言葉をかけると先輩二人が呆れた様子で言葉を付け加えた。

 

「あれが無きゃ危なかったですね」

「こっちはホント大変だったけどな」

 

(多分)下田が色々と無理やりアインクラッド内を弄ったことにより生まれた穴を利用して外部──先輩たちに連絡を取り無理やり色々としてもらったことで本当に助かった場面が多い。

その事に苦言を投げられたが木田先輩が手を叩いて天井を指す。

 

「まぁその話もまた後でしようか、上に行くぞ」

「「「上?」」」

 

一緒に動いていた楓と結も何も聞いてなかったようで同じように首を傾げた。

 

「そういえば楓、ちょっと聞きたいんだけど」

「なんですか?」

「お前、()()()の事情って知ってるか?」

「……はい、知ってます」

 

道中、楓にとあることを聞く。

その答えをちゃんと聞く前に上階に到着して会話が中断された。

 

到着したのは内部管理班が利用していたオフィス。

そこが色々と改造されて大きなモニターが三倍ほど設置され、そしてそれを見守るようにスーツの男が立っていた。

 

「おっと、来たか」

 

明らかに胡散臭い見た目の男はこちらに気づくとこれまた怪しい笑みを浮かべる。

 

「はじめまして、帰還者の皆さん。僕は総務省の仮想科から来た菊岡誠二郎、よろしく」

 





帰還編とでも呼ぼうか
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