ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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ALO/帰還編
116:残された課題


 

「菊岡……さん、俺らを呼んで何を企んでるんだ」

「企んでるとは失敬な、SAOを生き残り無事帰還した君たちから色々な話を聞きたい、ただそれだけだよ」

 

楓と結を庇うように前に立ち、菊岡と名乗った男に質問を投げる。

白澤先輩達が合わせようとしてきたから危険なことはないだろうが、ろくに詳細を聞いてない今、どう見ても怪しいこの男に警戒心を向けてしまう。

 

「見た目はともかく、この人は信頼していいよ」

 

ふと横にいる木田先輩に肩を叩かれる。

後ろにいる二人もちょっと呆れた様子を見せながらこちらに頷いてきた。

 

「……わかった、まず説明してくれ」

「まったく、()と同じく礼儀を……まぁいいか、僕はこの会社──元アーガスにて社員の代わりにサーバーの管理をしている……いや、していた、か」

 

話によるとSAO開始後、しばらくしてアーガスの社員一部を残してこの男率いる仮想課……総務省の人間がサーバーの管理やその他色々を引き継いだ、との事。

内部に囚われたプレイヤー達の人名優先という条件を立てた上で白澤先輩達残されたメンバーでクリアまで見守っていた、と。

 

「SAOがクリアされた以上、関わらなくていいんじゃないのか」

「そうだね、()()()()それでいい」

 

サーバーの管理をする必要が無くなった今、総務省の人間がここに拠点を置く必要はほぼ無いはず。

だが、その答えはどこか曖昧で

 

 

「……まだ、全員帰ってきてないんだ」

「……は?」

 

勿体ぶる菊岡の代わりに口を挟んだ白澤先輩が衝撃の言葉を発した。

あの時、茅場が全員のログアウトを確認したはず。

 

「どういうことだ!?」

「SAOがクリアされ、プレイヤー達のログアウト処理が始まった時に誰かが外部からSAOサーバーにアクセスし、そのままプレイヤー達を強制的に別のゲームへと送ったんだ」

「でも、SAOサーバーはここにあるから……」

 

仮想課か白澤先輩達の誰かが、その外部の人間とやらにそれを送った?

いや、それは無い……と思いたい。

 

「俺達もまず身内を疑ったよ、でも俺たちにそれをする利点もなければ()()()()()()()()()()()()()()()()。で、問題は──お前も利用した()をそいつが利用したかもしれないんだ」

「まだ、確信は持てないけどね」

「それで……そのプレイヤー達はどれくらいいるんだ」

「300人程、それだけの人数がログインしたまま戻ってきていない」

 

誰が仕掛けたものかはわかっていないが、やっていることは到底許されるものじゃない。

 

「菊岡……さん」

「菊岡でもいいよ、それで何かな」

「囚われているプレイヤー名はわかるのか?」

「ログアウトしたプレイヤーは見れるよ」

「見せてくれ」

 

囚われているプレイヤーの中に、正確にはログアウト出来たプレイヤー達の中に、その名前を探す。

ユミ、ライム、シズク、ヤヨイ、ミコト、アキ──そして、ハヅキ。

彼女たちはログアウトの一覧に名前が載っている。

ただ、一人の名前を覗いて。

 

「……それで、白澤先輩達じゃなくて俺なのは」

「先に、囚われの姫を救いに行ってる人からの推薦だ」

 

事態の解決なら別に俺じゃなくていい。

二年間仮想世界にいたとはいえ、俺より事を荒らげずに進められる人材ならここにいくらでもいる。

それでも俺を名指ししてきたのは、菊岡が見せてきたメッセージに書かれた男の名前。

 

 

───────────────────

 

ラギ、きっとこれを見てる時は菊岡さんと

話をつけてる頃だと思う

俺は囚われてるアスナを助けるために

《アルヴヘイム・オンライン》

というゲームにログインする

 

《桐ヶ谷 和人》

 

──────────────────

 

 

「彼はキリトと名乗っていた」

「……なるほどわかった、けど──」

 

──必ず迎えに行く。

 

俺はあの時、そう約束した。

待ってる、そう言われた。

 

「それなら、私たちが行きます」

 

俺の迷いを見透かしたのか、楓が俺の服の裾を掴んできた。

結もそれに気づき反対側を掴んでくる。

 

「でも、どんなゲームかも分からないんだぞ」

「大丈夫です、SAOをクリアした私たちに怖いもの無し、です!」

「それにはる兄もずっと来ない訳じゃないんでしょ?」

「それはそうだけど……」

 

自分で少し躊躇っておきながら、この二人に救出の手助けに行かせるのは色々と心配がある。

約束した、()()()以上は彼女を優先したい。

 

「先輩」

「え、な──」

 

楓の声に振り向こうとすると背中に拳を当てられた。

 

「ハヅキちゃんを迎えに行くのを躊躇うほうがあの子怒ると思いますよ」

「……でも」

「早く迎えに行って、あとから合流してください」

「……ごめん、ありがとう」

 

楓と結の目は、本気で任せてくれと訴えていた。

これ以上迷っても二人が引き下がることはしないとわかるため今やることを決め直す。

 

 

「俺はハヅキを迎えに行く。その過程で色々と情報も集めてくる」

「その間に私達はキリトさんの手伝いをしにアルヴヘイム?にログインします!」

「なお兄たちは来ないの?」

「その呼び方やめてね……悪いけど、()()()()がするからアーガスを拠点にしたまま現実で動く」

「右に同じく、また任せちゃうけど、お願いね」

「「「了解!」」」

 

 

俺たちはそれぞれの役割を決めて動くことになった。

キリト……和人から話を聞いていた菊岡により、アルヴヘイムオンラインのソフトとそれに必要な新しい機器、《アミュスフィア》を受け取り俺は別行動として菊岡から聞いた住所へ向かうことに。

 

その道中、知らない番号からの電話がかかってきて出ると、聞き覚えのある声が一言。

 

──今から会えないか

 

 

 


 

「それで、お前が……」

「初めまして、だな……えっと、ラギ……だよな?」

「そういうお前はキリト、だな」

 

電話をかけてきたのはキリトこと和人だった。

菊岡からいつの間にか話が行ってたらしく、早速集めた情報を俺に共有したいとのことらしく、ちょっと寄り道をしてここにいる。

 

和人曰くアスナが囚われているというのを菊岡経由で知り、そしてそれがアルヴヘイム、通称ALOだと突き止めた。

事を企てた男によりアスナが結婚させられそうになっていることを知り、それを止めるために今動いている、と。

 

「事の経緯はわかった、だが──」

「ハヅキを迎えに行くんだろ、それもさっき聞いた」

 

情報を漏らすのが早い、そうツッコミたくなるが当人は今ここにいないため心に飲み込む。

 

「……その代わり、俺の仲間が二人ログインする」

「わかった、それだけでもだいぶ助かるよ」

「悪いが任せた、和人」

 

黒の剣士にこの一件を任せる形で話を終えた。

そして別れようとしたところで和人はこの事件の犯人の名前を出した。

 

「ALOの開発、レクトにいる須郷、そいつがこの一件を起こした男だ」

「一応、顔の広い人へ伝えてみるよ」

 

それだけ会話して和人は自宅へ、俺はハヅキの元へと改めて向かった。

その道中、聞いた名前を白澤先輩達へと共有したが、その後やけに連続した通知に目を通すのはだいぶ先のことになる。

 

 




改めて
帰還編、始まります。


キャラ説

如月 春揮
20歳/男
SAOでは《紅炎の英雄》と呼ばれていた双剣使い。
現実世界帰還後はリハビリを終えて次なる事件へと頭を突っ込む。


小嵐 楓
17歳/女
SAOで妖猫のモミジを飼っていた少女、夕立の霧雨のメンバー。
本人曰く実力はないが、傍から見ればどう見ても実力者
春揮の代わりに先にALOへログインする


佐倉 結
17歳/女
SAOで鎌を持ち星屑の流星を率いた最年少の少女。
鎌の使い手に色々と聞いたらしいが、本人はその場の勢いで戦うほうが好きとの事で半日を無駄にしたことがあるらしい。
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