ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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118:歌を武器に出来る世界

カエデがアルンに到着する少し前

結/ヨシノはアルンの近くにある森、本来彼女が選択した種族に設定されている初期地とはことなる場所にログインした。

 

「文字通り右も左も分からない……チュートリアルもない!」

 

周りを見ても木しかない、どう考えても初心者が舞い降りる場所ではないことをすぐに察しながら今できることをひとつずつ行っていく。

武器……は短剣、心の恩人がアインクラッドで使っていたためなんとなく戦い方はわかる。

服装は白と水色を基調とした、まるでアイドルのような衣装に身を包んでいた。

せめてチュートリアルがあれば、その嘆きは虚しく宙に消えていく、と思われたが路頭に迷うヨシノの後ろから何者かが歩いてくる気配。

 

「やぁやぁ迷える少女よ───お姉さんがわかりやすく説明してあげようか」

「いいんです、か………って、え──?」

 

後ろを振り向くとそこには、黒い衣装に身を包み赤を基調とした弓を背負ったプレイヤーが立っていた。

 

「私はサキ、お困りの女の子に手を差し伸べる優しいお姉さんだよ──なんてね」

 

 

 


ヨシノ目線

 

言いたいことは沢山あった。

でも、全部聞くのは、ちゃんと話すのは、はる兄が1番したいことだってわかるから、ボクはただ一言。

 

「……サキねえの馬鹿」

「ひどいなぁ……」

 

死んだと思ってた、帰ってこなかった()()()()()()()()()()、サキねえが目の前にいる。

 

「……後で、お説教だからね」

「全部ちゃんと、説明したげるよ──それはそうと、なんでALOに?」

「えっとね、はる兄が───」

 

サキねえもなんでALOにいるの?という質問を飲み込んで事情を説明すると「なるほど理解した」と独り言を吐いたあと、手早くチュートリアルをしてくれた。

 

このゲームの世界観設定?がややこしいとか、空を飛ぶことが出来るけど制限があるとか、飛び方とか。

ボクの種族は歌妖精族(レプラコーン)、武器と魔法両方とも長けてる訳じゃない代わりに、歌うことで色んな能力を付与できる種族みたい。

SAOでも似たスキルがあったらしいけど、あれははる兄に止められた。

 

現実でも動けるようになったけど、やっと歌を、声を伝えられる。

ボクの、夢が叶う。

 

「サキねえの種族は?」

「ん?私はねぇ……風妖精族(シルフ)、魔法に強くてちょっと飛行も得意な種族ってとこかな」

「カエデちゃんは何を選んだのかな……って、そうだ!合流!」

 

サキねえの事ですっかり忘れかけてたけど、本来の目的であるカエデちゃんと事件を解決するためにも合流しないといけない。

ボクの言葉に何かを考えてたサキねえは「広いとこ行こう」ってボクの手を引いて急に飛び立つ。

向かった先は、ALOの中で一番大きいって説明されたアルンという街。

 

 

「あ、よしのん見て!」

 

街に着いたと同時にサキねえが指さした先には、大きなステージ。

ロストソングに設営されてたものと同じくらいの、かなり大人数が立てそうなくらいの、スピーカーとマイクまで用意されている。

 

「ボクも、立てたらな……」

 

誰かの為に用意されたであろうステージ、ちょっと歌うのが好きなだけのボクには立てるような舞台じゃない。

わかっているのに、つい口に出してしまった。

 

それを聞いた通りすがりの女性プレイヤーが突然ボクの手を引いてステージの上に連れて行かれた。

 

「ここはフリーステージ、歌いたいならいいんだよ」

「え、でも……」

「歌いたいんでしょ?」

「……うん、でも人前で歌うの──」

「そんなの些細なこと、ほら一曲どうぞ!」

 

マイクを渡された。

ステージに立って何度もやり取りをしていたからか、通りすがりのプレイヤーが立ち止まりステージに近づいてくる。

逃げ出したい、歌うのは好きだけど、こんな大きなステージで歌うのは、すごく怖い。

 

───いつか、その夢を叶えさせる。

 

ふと、はる兄が言ってくれた言葉を思い出す。

現実で自由に動けなかったボクが、歌うのを、沢山動くことをするために約束してくれた言葉。

SAOにログインしてから、その夢が叶わないと知った時も約束があったからボクは諦めずに戦えた。

 

はる兄はきっと、ボクの歌を、好きだから。

 

 

『……ボクの歌を、声を、聞いてください』

 

誰かの為に響かせることが出来るかはわからない。

でも。

ボクは、歌いたいから。

 

やらなきゃいけないことを優先しなきゃいけない、それもわかってるけど、今は。

歌うんだ。

 

 

 

 

歌い出してからは、何も覚えてない。

いつの間にか沢山増えていた客席の端でサキねえが腕を組みながら聴いてたこと以外は、歌うのに夢中で気づいた時には歌い終わってた。

 

曲が終わると、立ち止まって聞いてくれてたプレイヤーが歓声をあげて、沢山拍手もしてくれて、「隠し玉かよ!!」とか言ってて。

感謝を伝えようとステージにあげてくれた人を探してもその人はいつの間にかいなくなってた。

 

 

 

 

 

「いやぁ、泣いたね」

「本当に、凄かったよヨシノちゃん!」

 

ステージから降りてサキねえのところに行くといつの間にかカエデちゃんも横にいて二人とも歌を褒めてくれた。

嬉しい、本当に凄く嬉しい、けど。

今は余韻に浸ってる暇は無い、かな。

 

「カエデちゃん」

「うん、合流出来たから次は……手がかりを探さないと」

 

本来の目的である『SAOプレイヤーの解放』、その原因がALO内にあるということだけ聞いてたから、黒い人と合流するか聞き込みするか、とにかく目的地を決めないと。

そう思って悩んでいると、ボクの歌を聴いてた人だかりの中から飛び上がった影がこっちに飛んできた。

 

「サキ姉御!援軍部隊はまだですが我々は行けます!」

「……誰?」

 

知らない男の人が三人、サキねえの指示を待つように横に立っている。

姉御?とか呼ばれてるけど、ほんとに誰?

 

「コレはさすがに説明しよう」

 

サキねえは指を鳴らすと三人を指して説明を始めた。

 

 

「「世界樹のグランドクエスト?」」

「そう、それに参加するらしくて……というか多分、そろそろかな」

 

今朝、黒い人──キリトさんがシルフ領とケットシー領の間にある会議場?でサラマンダーの将軍と決闘してその後「人を助けるために世界樹に行く」とシルフ/ケットシーが組んでる同盟に協力を申し出たみたいで、連合軍に入ってたサキねえが部下?手下?を連れて先に行こうとしてた、と。

 

「よしのん達も多分同じ目的地だったんだよね」

「はい、私達は先に行ってるキリトさんの手伝いをするためにログインしたんです」

「なら、行こうか先に。連合軍は準備に手一杯だろうし、あの焦りようだと黒い人(ブラッキー)君待たないだろうしもう行ってるかも」

 

肝心なところが抜けてる、って言いたいけどそれも全部はる兄が怒るだろうから、言葉には出さずに頷いた。

ボクとカエデちゃん、サキねえとその部下?たち、計七人で世界樹の入口に立つ。

 

 

「ラギクンは来る?」

「多分、いいえ……絶対」

「よーし、なら頑張っちゃうぞー」

「ほんと怒られてください」

「二人してひどいなぁ」

 

世界樹にあるグランドクエストの本当の姿が地獄を作り出していることをまだ知らないボク達はそんなことを話しながら中に入った。

 

 

「あなた達は……?」

 

よくわからない炎?みたいなものを手に持った金髪の女性が地上に立っていた。

そして、その遥か上空には、数え切れないほどに湧き出たガーディアンと呼ばれるMOB達が構えているのが見えた。




言え!説明をしろ!
ということで、謎の弓お姉さんことサキです
生きとったんかワレェ!どこで何してたんだお前ェ!
と、いうのはことが済んだら、ね。

人物紹介

ヨシノ
ALO種族:レプラコーン
武器:短剣

歌でバフとデバフを振りまける種族。
アイドルっぽい衣装に身を包んでいるのもそれの影響


サキ
ALO種族:シルフ
武器:弓

SAO、ギルドイベント以降行方不明だった少女。
ALOの経験がいくらかアーガス班よりも豊富で、シルフ領を拠点としていて(脅して)手下にしたプレイヤー三人を雑用として連れ回している。
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