ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
「悪い、リーファ手間かけさせた」
「やっぱ無理だよお……キリトくん」
リーファと呼ばれた金髪の女性が手にしていた黒い炎は、ALOでプレイヤーが倒れた時に残るものだったみたいで、それを蘇生すると全身真っ黒のとんがり髪の男性プレイヤー──キリトさんが現れた。
ボク達が挨拶を済ませるとすぐに空に飛ぼうと剣を抜き構えた。
それをリーファさんが引き止めるとものすごい焦り方で静止を振り切ろうとしている。
「手伝いに来たんだけど、黒い人ブラッキーさん、あの大変な状況の先にお姫様がいるの?」
「君は……あぁ、そうだ。アスナがあの先にいる」
「なら焦るか……でも、一人で突っ込むのは無謀だから──頼りなよ、私たちを」
「……わかった、援護頼む」
サキねえに諭されたキリトさんは一度落ち着くとリーファさんの横にいたレコンさんって人と私たち全員含めて作戦を立てることに。
リーファさんとレコンさんが回復補助、ボクも後衛で歌によるバファー、サキねえが弓で援護射撃、カエデちゃんはサキねえと一緒に後衛の護衛。
それでもかなりキツイって話だけど、こんなのが本当にクリアすると色々貰えるって話のグランドクエストなのかな……?
「よし、行こう」
冷静になったと言ってたキリトさんは私たちを置いていく勢いで飛び立った。
急いで追いかけていくと、すぐにキリトさんはガーディアンと呼ばれるMOBに阻まれて進行が止まる。
戦闘が開始したのを確認して後衛で援護補助を全員に送り、サキねえが全力で弓を打ち続けるけど、それでもキリトさんのまわりには無数のガーディアンが群がっていく。
「カエデちゃん、私たちはいいからキリトくんを手伝って!」
「私もそうした方がいいと思ってました、行きます!」
「私は二人の援護する、──ふっ!」
想定以上にキリトさんにタゲが向いていたため、カエデちゃんがキリトさんを援護することに。
だけどそれでも、状況は変わらない。
それどころか、この世界に慣れてないボクたちには、いくらSAOで培った戦闘能力でもガーディアンを簡単には倒せず苦戦してしまう。
それどころか、弓使いも混ざっているせいで対処しきれず押されかけてる。
「はる兄なら……」
「諦めないだろうね……っ」
サキねえと背中合わせになり今ここにはいない人ならどうするかを口にする。
そう、はる兄なら道が開けるまで諦めない。
ボクは、ボクたちはそんなあの人の背中を見てきたから、ずっと戦えてきたんだ。
「よしのん、そっち行った!」
「……っ、大丈夫!」
ガーディアンは凄く強くて、速い。
そのうえ数が多くて一斉に攻撃をしかけてくる。
「沢山いるなら、聴いてもらうよ!」
悪用してるみたいで少し複雑だけど、レプラコーンが使えるのは味方の支援効果のある歌だけじゃない。
さっき大勢の前で歌ったボクには客が多すぎるけど、それでも一度経験したからこそボクは歌える──いや、戦・え・る・。
深呼吸して歌い出す。
効果は少しの動き低下とステータスダウン。
ほんの少しだけど、それでもSAO経験者の前衛なら、きっと大丈夫。
カエデ目線
「キリトさん!」
「くっ………邪魔すぎる……」
キリトさんの援護をすると前衛まで来たけど、ガーディアン達の微妙な連携が私たちを少しずつ追い詰めてくる。
なんとか対応してはいるけど、それもどれだけもつかわからない。
攻めきれず少し心が折れそうになりかけたその時、後ろから歌声が聴こえてくる。
それと同時に、ガーディアンの群れに何かしらの変化が起きたようで、動きが少しだけ鈍くなり攻撃の速度も下がった。
この気を逃すわけには行かないとキリトさんとアイコンタクトを取り一気に突っ込んでいく。
放たれた弓に当たりそうになるのを上手く避けながら上空、てっぺんの活路を開くため武器を振り続ける。
ソードスキルがあれば、なんて独り言を口にしながら、SAOで得た技術でなんとかガーディアンへの動きに対応し、キリトさんの援護を続ける、けど。
後衛による回復魔法も、ヨシノちゃんの支援もどちらもずっと続くとは限らない。
それ以上に、私たちがダメージを負えば無茶をし続けることもできなくなる。
それは、避けないといけないことだ。
でも、この攻略できない難易度のクエストを突破しないと、囚われてる人達を助けられないのなら。
私が、全て背負えば───
「二人とも避けて!」
私の考えを遮るように、先程入口で少し話したレコンとかいう人が何かを唱えながら猛スピードで私たちの横を抜けていき、そして詠唱を終えると同時にレコンさんを中心に大爆発が起きた。
「───自爆!?」
「……悪い、レコン……犠牲を無駄にはしない──!」
かなり大規模な爆発魔法によりガーディアン達による人壁は半分以上減り、てっぺんが見えるようになった。
そこに向かってキリトさんが飛んでいき、私もそれに合わせてついて行くとさらに新しく湧いたガーディアンがすぐに道を塞ぐように前に飛んできて再び停滞してしまう。
私よりもタゲが集まったキリトさんに大量のガーディアンが一斉に襲いかかる。
なんとか追い払おうと距離を縮めるその隙を狙われ両腕に弓が刺さり一気に体力が削られてしまい回復魔法が追いつかない。
どうにかしようと下に指示を出そうとしたけど、ガーディアン達が後衛にもタゲを向け始めたことで支援も止まり始めて状況は最悪な方に進み始めた。
「やっぱ、私が──」
先輩を見習って決めた覚悟を実行しようとしたその時、目の前のガーディアン達が突然巨大な火球によって吹き飛んだ。
レコンさんの自爆魔法も、ほぼ無駄に終わってしまった。
「こうなったらボクも前線に行く!」
「無茶言うね!それは私がやる仕事だっての」
どれだけ倒しても埒が明かない、目的はキリトさんのてっぺん到達なら前衛で道を開ける方が優先。
そんな考えを出したけどサキねえがすぐに却下。
無茶な突っ込みは、なによりはる兄が良くしていたことだから、今回くらいは真似しようと思ったけど、見透かされてたみたいで「誰に似たんだか」と愚痴を零された。
「弓が広範囲殲滅型ならなぁ……ま、無いこと言っても無駄だから気張りますか」
「……まずい、タゲがこっちに!」
恐れていたこと、ここまでほとんどタゲが向かなかったボク達支援組にガーディアンのタゲが一斉に向き始めてきた。
リーファさんもサキねえもある程度対処出来るくらいには戦闘に慣れてるけど、それも数の暴力には敵わない。
もうこれ以上は無理、その考えが頭を過ぎる。
その隙を狙われ、ガーディアンの攻撃を避け損ねて直撃する──その寸前でガーディアンが消滅。
「なにお通夜みたいな雰囲気出してんだ」
その、聞き慣れた声と同時に大きな火球が上空、カエデちゃん達のところまで飛んでいきガーディアンの群れを半分近く吹き飛ばした。
「ちょっと想定外もいるがそれはそれ、これはこれ。同盟軍を連れて遅れて参上ってとこだな」
声の主がチラリとこちらに目を向けてすぐにガーディアンの討伐を始める。
真横に飛んできたのは連れてくると約束していた女の子。
そして、それに続くように現れたのは武装したシルフと獣耳──ケットシーのプレイヤー達。
「ん、遅いのはいつも」
「今いいとこだったからな?」
そんな会話をガーディアンを倒しながらする二人。
すっかり仲良くて、ちょっと羨ましい。そんな思考を振り払って気持ちを落ち着かせると突然二人が止まり剣を空へ向ける。
「「夕立の霧雨、スタンバイ!」」
その言葉と共に、二人の人影がさらに現れ、一気に前線へと飛んでいく。
「改めて遅れてわるい、シルフ/ケットシー連合軍に合わせて援軍に来た、サラマンダー、ラギと」
「……ケットシー、ハヅキ」
「ナビゲーションピクシー、カンナ!」
妙に機嫌がいい二人と小さな妖精はボクたちよりも慣れた飛行で一気に周囲を蹴散らしていく。
「思いっきり暴れさせてもらう」
紅炎の英雄と呼ばれたプレイヤーが、そう呟いた。