ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
《はじまりの街転移門広場:ハヅキ》
タワークエスト攻略を終えた日から1晩が明け、次の日。
アルゴから届いたメッセージに指定された場所に向かった。
コハルとこれからどうするか、等の話をしていると、転移門から転移のエフェクトが現れ──
「待たせたナ、と言っても時間ぴったりカ」
まずアルゴが転移してきて、そして──
「俺たちは遅れてるけどな」
「お待たせしました!」
と、昨日のタワークエスト5層で突如現れて協力してくれた2人も転移してきた。
結局、昨日は何も話せなかったからちょうどよかったけど、もしかして──
「アルゴから届いたメッセージを書いたのって?」
「あぁ、それは俺だ──とりあえず移動するぞ」
アルゴの後に来た2人のうちの男性プレイヤーはそう答えながらあまり利用されてない気がするはじまりの街にある公園の方に向かっていった。
私とコハル、アルゴともう1人のプレイヤーもそれについて行った。
《湖畔公園:ハヅキ》
攻略に参加しているプレイヤー達からすればあまり関係ないエリア、と呼ばれているこの公園、VRと忘れさせるほどの芝生等の自然が広がっているため、コハルと合流する前は時々ここに来ていた。
クエストNPCが数人いる転移門広場方面から入ってきた私たち5人はそのまま地面が芝生になっている木陰に座った。
「ここらでいいか……とりあえず自己紹介だ。俺はラギ、よろしくな」
「そして私はルナ、よろしくね!」
「私はハヅキ、よろしく」
「私はコハルっていいます、よろしくお願いします」
と、アルゴを除いて全員がそれぞれ自己紹介をした。
ラギ、そう名乗ったプレイヤーは自己紹介が終わると同時に、少し真剣な顔をして続けてこう言った。
「あまり言いたくないが、見られた以上はな………俺は、《管理者権限》を持ってる」
「え……?」
ラギはそう言った。
私とコハル、そしてルナと名乗ったプレイヤーは驚きの声を出した。アルゴだけは知っているようで、何も驚いていないけど……
「管理者権限って……どうして?」
「俺は、このSAOの制作をして今もサーバー管理を続けている《アーガス》の社員だ。そして本来使えないはずの管理者権限を持っていた」
「嘘……」
ラギの発言にコハルがそう呟いた。
アーガス、それはSAOプレイヤーなら誰しも知っている企業の名前だ。
ラギが言った通り、SAOの制作をし、販売をした。
そして、このゲームをデスゲームにした張本人、茅場晶彦もアーガスの人間だ。
「まさか……!」
「勘違いするな、俺はこのゲームをデスゲームに変えた
「……信用しろと?」
ラギの言葉を聞いた私は無意識に剣を装備し、抜刀しようとしていた。
「そんなに信用出来ないなら………
「信用出来るわけない、だからあなたにデュエルを申し込む」
「……受けて立つ」
そんな私とラギの会話を、アルゴは呆れた顔をしながら、コハルとルナは慌てた様子で聞いていた。
デュエルする、ということに決まって数分後、湖畔公園の中心にある障害物の無い大きめの広場に移動した。
《ragiからDUELを申し込まれました、受諾しますか?》
という表示がされたので了承ボタンを押す。
その直後、時間と相手の体力が目線上に表示された。
私とラギは同時に剣を構え、デュエル開始──
の合図と共にラギは地面を勢いよく蹴り、一気に私の近くに接近してきた。
そのままソードスキルのエフェクトを剣に纏わせ、剣を振り下ろす。
それを当たるギリギリで防ぎ、剣を弾いてバランスを崩させて反撃に出ようとソードスキルのモーションを取ろうとしたその時──
バランスを崩したはずのラギはすぐに体制を立て直して私の放とうとしたソードスキルを阻止した。
「あ───」
と、口に出した時点で私の目の前には剣を下から上に切り上げようとするラギの姿があった。
咄嗟に防御の姿勢を取ろうとするけど、ラギの動きの方が早く、私はもろに一撃を受けてしまった。
今の一撃でHPは2割ほど減った。
どれだけステータスに差があるかはわからない、だけどもう一撃同じ攻撃を受ければルール上敗北になる。
それだけはプライド的な何かが許せない。
だからこそ私は剣を構えて反撃に出ようとした。
だが、剣を構える前に、私のお腹の辺りに剣が寸止めで止められていた。
それに気がついたところでタイムアップのアラームが鳴った。
結果はラギの勝利。
「これで信用してもらったか?」
「……なんで動けたの?」
剣を鞘にしまい私に信用出来たか、という質問を投げてきたラギに向けて私も質問を返した。
最後の一撃、ソードスキルのモーションは出てたけど、その前に打ったソードスキルから1、2秒程しか経っていなかった。
本来、ソードスキルを放てば──ステータスで左右はするけど──硬直の時間がある。
だけど、ラギはソードスキルの硬直を受けずにソードスキルを放っていた様子だ。
「βテストやってるならわかると思ってたが……俺が最後に打ったのは《連撃ソードスキル》の1つ《ホリゾンタル・スクエア》だ」
「あ……」
言われて思い出した。
《スラント》や《ヴォーパルストライク》といった単発系ソードスキルしか使えない現在の私のソードスキル欄に薄暗く表示されている1つにその名前があった。
他にも《スキルレコード》、なんてものもあったけど───
「それはさておき、俺の質問に答えてもらおうか」
「信用は出来ない、でも──」
でも、剣を合わせてわかったことがある。
私は一瞬言葉を詰まらせながらも、ラギに向かってこう言った。
「助けてくれてありがとう」
「……俺はお前が信用してくれると信じてるよ、それじゃあな」
私の言葉に戸惑いを見せつつそう返したラギはそのままアルゴに何か話したあと、ルナを連れて転移門広場の方に歩いていった。
その後ろ姿を見送っていると、フレンド申請が飛んできていた。
それを表示されたウィンドウのボタンを押したあと。
「結局、聞けなかった……」
私はそう呟きながら、木陰で休んでいたコハルの元に行った。
「ハヅキ、お疲れ様?」
「ん。そういうコハルはルナと何を話してたの?」
「それはね……内緒」
「えー……」
なんて会話をしながら休んでいると、アルゴが「既に攻略開始されてるかもだけド、2人は2層に行くカ?」と持ちかけてきた。
アルゴの手元には攻略本らしきものが握られていたけど、多分さっきラギが渡したんだろう。
そんなことを考えながら私とコハルは「行きます」と返事して次の日から、第2層のフィールド攻略に向かうことにした。
その日の夜。
私、ハヅキは夢を見ていた。
とはいえ、ゲーム内だから本当に夢を見ているのかは分からないけど。
それは、懐かしい光景だった。
まだ、姉と仲良くしていた頃の夢だった。
まだ、あの頃は誰かを信用する、ということを出来ていた。
なんで誰も信用出来なくなったんだろう。
私は、誰を信用できるのだろう?
お久しぶりです。(挨拶)
ハヅキ編の中間ストーリーです。
まだラギルートで語ってなかった新事実も出てきたりしてますが、それはさておき
結局ラギは信用されなかったですね。まぁ、当たり前。
そんなこんなで次回からはハヅキ編は階層攻略になります。