ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
SAO第二層の攻略を終え、夕立の霧雨と色々な話をした私とコハルはその後、休みを取るために宿屋に向かった。
宿屋に着き、部屋を一部屋借りてその部屋に2人で入る。
時間もかなり遅かったのでそのまま寝ようと(何故かダブルの)布団に入ろうとしたところで、コハルが私を呼び止めてきた。
「コハル……?」
「寝る前に……少し話がしたいの」
そう言ったコハルはどこか真剣で、そして不安そうな表情をしていた。
「明日は一緒にいたい」なんてことをさっき言われたけど、それと何か関係してるのかな?
「うん、聞くよ」
私は短くそう答え、布団に座る。
コハルもその後布団に座り、少し沈黙を作ったあと話を始めた。
「ハヅキ……私、怖いよ……」
「怖い……?」
コハルはそう言いながら私の方を向いて来た。
怖い、そんなことを言ったコハルの声は、いつもとは違い震えていた。
「ハヅキが、私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって、そう思っちゃって……」
「……どうして?」
「ハヅキが第二層のボス戦の時、タゲを取るって走りに行った時、そのまま戻ってこないんじゃないかって……それなのに私、ハヅキに任せちゃって……夕立の霧雨が来てくれなかったらハヅキは……」
「……私は死なないよ」
彼女の思いに対し、そう答えた私だった。
でも、コハルは───
「───そういう事じゃないの!!」
「コハル……?」
私の答えに対し、すぐにそう叫んだ。
「……ごめん、今日は1人で寝るね」
そして、コハルはそのまま外に出ていってしまった。
「何があったんだろ……」
私はそう呟いて一度、布団に倒れ込んだ。
コハルが何を思っているのか、1度も彼女から聞いたことがない。
何か、悩んでいるのかもしれないのに私はそれに気づいてあげられていない。
それなのに私は自分のことばかりを………
そんなことを考えていると、突然、私の元に1件のメッセージが届いた。
────
ハヅキ。
お前が今どこにいるかわからないが、とりあえずはじまりの街にある黒鉄宮に来てくれ。
詳しい説明は後でする。
何があったかは知らないが、コハルが危ない。
────
そんな内容のメッセージの送り主はラギだった。
メッセージのラストにはコハルが危ない、その一言だけが書かれていた。
私は直ぐに黒鉄宮に向かうと、そこにはラギとルナが待っていた。
「お待──」
「んな事はどうでもいい!お前のフレンドリストからコハルを出せ!」
ラギ達に近づき、挨拶をしようとしたところでラギに強めに叫ばれた。
そして、なんでコハルのフレンドを表示しないといけないのか、全く理解できなかった。
「ちょっと、ラギ……?」
「……ルナ、あいつから話聞いたんだろ?今のうちに話してくれ」
「あ、うん……ハヅキちゃん、ラギに言われたことやりながらでいいから聞いて」
「……?」
ルナが私の前に立ってそんなことを言ってきた。
なんだろう?そう思いながらもラギに言われた通り、ウィンドウを操作してフレンドのリストを開こうとした。
「……コハルちゃんから聞いたんだけどね。コハルちゃんずっと悩んでるんだって、『ハヅキにずっと守ってもらってばっかで、私は何も出来てない』って。」
「……そんなの勝手すぎるよ」
ルナからコハルの悩みを聞いた私はそう呟いてフレンドリストからコハルを表示した。
すると、わたしの呟きを聞いたのか、ラギが直ぐに
「あんたらの話に割り込む気は無いが、1度関わったんだ、手助けぐらいはする。……それで、コハルの下に行くか?」
と聞いてきた。
「……行く、行って話をする。」
「わかった、それならよかった。お前ら、俺の肩につかまれ」
「肩……?」
どこにいるのかすらわからないのに、どこに向かおうとしているのだろう。
なんて考えていると、ラギはウィンドウを操作して何かを使用した。
そして───
「転移、『プレイヤーID*****』!」
ラギはそう叫んだ瞬間、私たち3人は転移の光に包まれた。
転移先──
第一層迷宮区
私たち3人が転移した先は、第一層の迷宮区だった。
だけど、転移先にコハルの姿は無かった。
「ラギ、本当にこ──「避けろ!」
どんな手段で転移したのかよくわからないから、正しい場所に着いたのかを疑問に思い質問をしようとしたところで、何度目かの言葉の遮りを受けた。
ラギが避けろと言った途端、私に少しのダメージ。そして──
「体が……動かない……?」
「ラギ……どういうこと……?」
私だけでなく、ルナも麻痺毒を受けていた。
ただ、ラギだけは
「おー、残念残念。いい相手が来たと思ったんだがなぁ……まぁ、俺はこいつの相手でいっか」
物陰から声がして、そこから出てきたのは1人の男性プレイヤーだった。
そして、その男性プレイヤーの後ろには、コハルがいた。
コハルは手を縄か何かで縛られた状態にされていて、さらに麻痺毒を受けているようで、逃げられないようになっていた。
「ハヅキ……」
「おお?お仲間さんか?なら、先にこいつを殺ってお前らに恐怖を植え付けてやるか」
「待てよ」
「あん?あぁ、動ける奴がいたのか。そこから動くなよ?動けばこいつの首がパーンだ。」
唯一動けるラギが前に出ようとしたところで、男性プレイヤーは短剣をコハルの首元に近づけた。
流石に、ラギも動けず、その場に止まってしまった。
その時だった。
「ハヅキ、どけ!」
ラギが急に振り向き、私を突き飛ばした。
その直後、剣と剣がぶつかり合う音が響いた。
私の目の前に広がった光景には、白髪で私よりもさらに体格の小さい
「ラギ──」
「お前はお前のやることをやれ!……悪いが俺はこいつを止めることで手一杯だ」
私より遥かに強いであろうラギがそういうってことは、あのプレイヤーはどれだけ強いのか……
なんてことを考えていると、ラギが戦闘中にも関わらず何かを呟いた。
その瞬間、私とルナの麻痺毒は解除され、動けるようになった。
「そっちは頼んだ………!」
ラギはそう言うと、謎のプレイヤーとどこかに走り去ってしまった。
「おいおい……なんでかは知らねぇが、動けるようになったところでお前らがそっから1歩でも動けばこいつが死ぬぜ?」
「そうはさせない………!」
私は男に対しそう答え、そして何かないかと考えをまとめようとした。
その時。私の目の前にウィンドウが表示された。
その頃。
第一層迷宮区の奥地。
「……ったく、お前の狙いは俺じゃないはずだが?」
「だってお兄さん、面白そうなんだもん。だから───」
ラギと対峙した
「──すぐに殺してあげる」
そして、そう言って一気に接近をして2本の短剣の連撃をラギに与える。
相手の持っている短剣の種類、そして武器を2本装備できるスキル。それはラギが特によく知っていた。
だからこそ対策もわかっている、そう思っていた。
相手の──
短剣の攻撃を受け止めると少しづつではあるが、彼の武器の耐久値が削られていたのだ。
それが彼女の持つスキルの特殊効果の
だからこそ、この戦闘は長引けば彼の方が不利になる。
そう考えた彼はふと気になったことを聞くことにした。
「……なぁ、どっちかが死ぬ前に教えてくれよ、暗殺者サン?」
「なぁに?」
「そのスキルはどうやって手に入れた」
「……あぁ、これ?
「……なるほどな。ならそのスキル、俺に渡してもらおうか」
「嫌だよ!この方が……
スキルの入手法を聞き終えてそのスキルを譲ってもらおうと無理だとわかりきっていたことを聞く。
もちろん、彼女は拒否をした。そして、無邪気な子供のようなことを言ったあと、再び攻撃を始めた。
その時、彼女は気がついた。
いつの間にか、彼の持つ武器が変わっていたことを。
「なに、驚くことじゃない。……お前を止めるにはこれぐらいしないとな!」
「お兄さん……やっぱり面白いね!」
ラギとジャックの鍔迫り合いが再び始まった。
この時、彼は彼女の持っているスキルの、真の力をまだ知らなかった。
そしてその頃。
ハヅキはウィンドウに表示されたとあるスキルの名を叫んだ。
「《シャインキラー》!!」
そう叫び、右腕を前方に出すと、彼女の手は眩い光を放った。
「なんだそ──目が──!?」
「ハヅキ……」
「話はあと、今はあの人を……」
私の元に来たコハルの言葉を遮り剣を男に向けて構える。
「(目を眩ましてる今なら………!)」
私はそう思い、構えた剣に力を込める。
そして、そのままソードスキルのモーションへと移行する。
「…甘いぜ?」
ソードスキル、ヴォーパルストライクが当たる直前で男が剣を取り出して私の攻撃を弾いた。
そして、弾かれた私の剣は宙を舞ってそのままコハルの後ろへと飛んでいってしまった。
「残念だったな、俺はこれでも光には強くてな……それじゃ、お返しだ」
男はニヤつきながら剣を上に振りかぶって私に攻撃をしようとしてくる。
だけど、男の背後から、ソードスキルの光が放たれたのを男は気が付かなかった。
「……ルナ!」
「うん──っ!」
私がそう呼んだ相手、それはもう1人のプレイヤーと対峙するために走り去っていったラギに麻痺毒を解除された
ルナはそのままソードスキル、ソニックリープの動きをとるため、大きくジャンプをしてそのまま剣を振り降ろした。
その攻撃は男に直撃。男の体力は一気に削れた──と思ったけど、HPの現象は赤ゲージで止まり、そのまま男は怯むことなくルナに向けて剣を構えようとした。
後ろからコハルの声が聞こえるけど、私は既に剣を持ってないし、コハルの位置からだと間に合わない。
「──右に避けろ」
ふと、そんな声が聞こえてそれに従い体を右側に避ける、すると──
男の腹にダメージエフェクトが表示され、男のHPはすぐに全損した。
男は何も言わずにそのまま消滅、そして私は剣が飛んできた方を振り向くと、そこにはHPのゲージが半分近く削れた状態のラギが立っていた。
「……お前らに
その発言で私はやっと気づいた。
ラギがあの男を殺ったのだと。
そして1度、男のいた場所を見ると、落ちていた剣は私の使っている剣だった。
「俺の剣は攻撃力が高すぎるからどうしようかと思ったところにちょうど飛んできてな……結局お前の武器を人殺しに使ったわけなんだが……」
「……それより、回復して」
ラギは「助かる」と言ったあと、ポーションを飲んでHPを回復、そしてその後に再び謝罪を始めた。
「改めて、だ。お前の武器を使ったこと、それと遅くなったこと、申し訳ない」
「いいよ、そっちも大変だったみたいだし、それに、ラギが剣を投げてくれなかったら私もルナも危なかった」
「こっちの把握はそれぐらいで頼む……お前らを、殺人者にさせる訳には行かなかったからな」
ラギはそういうと剣をしまいそのまま立ち去ろうとしたが、何かを思い出したかのように立ち止まり、私の方を向いてきた。
「……今日はもう遅いから明日の昼、湖畔公園の芝生のところで待ってる、お前に伝えなきゃ行けないことがあるから来てくれ」
ラギは私にそんなことを言ったあと、さらに言葉を続けた。
お前の持つスキル、《スキルレコード》に関して教えたい。と。
そしてその後、色々とわからないことを残してラギは先に帰っていった。
残された私とコハルの間には少し気まずい空気が流れていた。
「……帰ろ、コハル」
私はコハルの手を掴み、笑顔でそう言った。
コハルは少し戸惑った様子で頷き、そのまま私たちははじまりの街に向かった。
その後、宿に戻った私達は部屋に入り、そして──
「ハヅキ、色々とごめ──んっ!?」
ベットに腰をかけて私に謝罪をしようとしたコハルをそのまま押し倒して、抱きついた後、何が起きたのか理解出来てないコハルの、すごく無防備な口に私の口を合わせ──言わばキスをしてコハルの謝罪を遮った。
「……謝るのは私の方だよ、コハル」
「ど、どういうこと?」
色々と混乱してるコハルから離れ、コハルの横に腰をかけた私はコハルに伝えなければいけないことを伝えた。
「ルナから聞いた、コハルが私に守って貰ってることを気にしてるって。……それは、私も同じだよ、私はコハルがいてくれるからこうやっていつも戦えてる、もし、コハルがいなかったら今頃どうなっていたか分からない……私だけがコハルを助けてるわけじゃないんだよ」
「……そう……なの?」
「うん、だからさ、コハル──」
私は再び、コハルに抱きついて──
「私をひとりにしないで──」
そう呟いた。
「──うん、私はハヅキと一緒にいるよ、一緒に……この世界で戦う」
コハルがそう答えたあと、私とコハルは少しの間はそのまま抱きついていた。
そして、さすがに夜もいい時間だったので、布団に入って寝ようとしたその時。
「──ねぇ、ハヅキ」
「……ん?」
天井の方を向いていた私は、コハルに呼ばれてそっちに体を向けた。
すると──
不意にコハルは私の頬にキスをしてきた。
「……お返し。」
コハルは笑いながらそう言ってきた。
そしてそのまま私達はいつの間にか手を繋ぎながら眠りについていた。
次の日。
夜に私がしたことに対する気まずさに襲われながら、昨日ラギに言われた集合場所、湖畔公園の芝生のあるスペースに到着すると、既にラギが待っていた。
ルナはいない様子だけど………
「信じるなら来いって言った気がするんだがな………まぁ、いいか」
ラギはそういうと私たちに1つのウィンドウを見せてきた。
「それがお前の持つスキル、《スキルレコード》の詳細だ」
ラギの表示したウィンドウには、かなりの数の見たことないスキルが書かれていた。
百合………
ごちそうさまです。
はい、中の人が実年齢そういうの書ける年齢になったので。
試しに書いてみました、セーフですよね?
本編の内容としてはコハルのちょっとした悩みにハヅキが気づかず喧嘩?をしてそのまま出ていった先でPKプレイヤーに捕まって
それを助けて、という感じでした。
ラギvsジャックは何があったのかはかなり先で書きます、はい。
ラギがオレンジになったことに関してもまた後で。
そして次回、ハヅキだけが持つというスキル、スキルレコードの詳細が明らかに……?
キャラステ等はまた次回辺りに。