ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
遡ること小一時間前。
俺、ラギはシズクに叩き起された。
「ライムが……どこか行っちゃった……!」
部屋に入って来た途端にそんなことを涙目で伝えてきたシズクの言葉に補足するようにカエデが現状を説明してくれた。
数分前、起きたらライムが部屋におらず、下のカフェスペースを見てもいなかったため、俺に助けを求めてきた。ということらしい。
「シズク、とりあえず落ち着いてくれ。それで、どこが心当たりは?」
「それが……昨日、先輩が部屋に戻ったあと──」
今にも泣き出しそうなほど目をウルウルさせて俺の方を見てくるシズクを慰めながら、平常を保ってるカエデに話を聞いた。
俺が部屋に戻ったあと、ライムが窓の外を見ながら「あいつには絶対に負けない」なんてことを呟いていたらしい。
あいつ、というのが俺だとすれば何を思ってそんなことを呟いたのかは全くわからないが───
「あまり使いたくはないが……シズク、ライムとフレンドになってるか?」
「う、うん……
「なら表示してくれ」
「わかった……」
俺はシズクにそう指示をしてフレンドリストを表示させた。
幸い、フレンドリストのライムはログアウト──つまり死を意味する──表示にはなっていない。
……そういえば、前にもこんなことあったような──
「──無理か」
「えっ?」
「悪い、思ったより事は最悪の方向に行ってるかもしれない……」
「そんな……」
「おーい!ラギー!」
転移の機能が使えなかったことにより足取りを掴むのが厳しいと思っていたところで、俺の部屋に嵐のような勢いで入ってくる1人──ルナがいた。
「良かった、まだ出てなかったね!」
「それってどういう事だ?というかどこいってたんだ──」
「それはごめん、でも、ライムが向かった場所がわかったの!」
カエデとシズクが部屋に入ってきたのに姿が見えなかったルナは俺の説教紛いの言葉を遮り、ライムの居場所が判明したことを伝えてきた。
ルナはライムが居なくなったことにいち早く気づき、シズクたちを叩き起こしたあと直ぐに宿屋を飛び出して周りのプレイヤーに『水色の髪と黄色い眼』のプレイヤーがどこに行ったか、という質問をし続けていたらしい。
朝早いということもあって外に出てるプレイヤー自体少なく、探すあてが無くなりそうになったところで黒髪黒服装の俺とルナが第一層攻略の時に一緒にいたプレイヤー(キリト)が転移門から帰ってきたところを見かけたルナがキリトに話を聞くと、ちょうど第6層の様子見だけ朝イチにしてきたキリトがその容姿に似たプレイヤーがNPCに話しかけてダンジョンに向かっていった。という情報を得て、それがライムだと思って帰ってきた──ということらしい。
ちなみに後で聞いた話、キリトはアスナと合流するため急いでいて止めはしたが追いかけはしなかったらしい。
「よし、とりあえず第6層のそのダンジョンとやらに向かうぞ!」
「うん!」
「はい!」
俺たち4人はそれぞれ準備を直ぐに済ませ、転移門広場から第6層へと転移した。
(転移が使えなかったのはダンジョンにいたからか……)
移動中、ふとそんなことを考えていた。
原則、SAOでは転移結晶というアイテムが存在しているが、それを使って転移できるのは街などの安全圏にしか行くことは出来ない。
それがもし俺の持つ管理者権限にも反映されているとすればダンジョンにいるライムの元に飛ぶことは出来ない──と、考えたところで何故タワークエストや迷宮区にいた彼女たちの元には飛べたのかという疑問が浮かんできたがそれを頭から消して話に聞いたダンジョンへと案内をしているNPCの元にたどり着いた。
他のプレイヤーが挑戦中だから入れない、なんてことは無く、普通に入れた。
「あっ、先輩!?」
「悪いが俺は先に行ってる!」
転移した直後、俺はそのまま洞窟の奥へと走っていった。
呼び止めてきたカエデに目配せをしてそのまま進んで行った。
雑魚MOBがかなりの数いたが、タゲを向けられながらも無視をして突き進んでいくと───
少し進んだところでそこらのMOBとは違う足音が遠くから聞こえてきた。
その音のする方に向かうとボスのポップする空間ではないであろう場所に今にも何かを攻撃しようとする影が見えた。
そして、その影の足元にはボロボロの姿のプレイヤー、ライムが横たわっていた。
その姿からはHPの減少により動けなくなった以外──まるで全て諦めたかのような──で倒れ込んでいる様子がうかがえる。
「くそっ、間に合え──っ!」
俺は背中に背負っていた【アニールブレード】を抜き、少しだけ接近したところで剣をボスモンスターに向けて投げた。
「とどけ───!」
俺の投げた剣はボスに直撃、それによりボスは動きを止めた。
ライムの無事を確認するためにも広い空間に進み、ライムの近くに寄るとライムはその場に倒れ伏していた。
倒れているライムからは生きる気力すら感じない。
「──ざけんじゃねぇよ!馬鹿野郎!」
俺はライムの胸ぐらを掴み、そう叫んだ後、ボスが攻撃しようとしてきたのに気づき、半ば強引ながらライムを少し後ろに投げ飛ばしたところでライムの腹部に全力で蹴りを入れた。
「ちょっ、先輩!?何やってるんですか!?」
追いついた3人がその様子を見てたようで、それぞれ色々と言って来たのをボスの攻撃を弾きながら聞いた。
悪いがあれでも手は抜いた。なんて伝わらないであろう嘘を呟きながら俺は投げたアニールを拾いそれを【ゼデュースホーリーソード】に持ち替えてボスの方を向いた。
「この雑魚は俺が片す。お前らはその大馬鹿のそばにいてやれ」
ボスに向けて剣を構えながらそういった俺はカエデ達が少し離れたのを確認し、ボスのタゲが向かないようにしながら戦闘を開始した。
「悪いが直ぐに片付けてやるよ──俺は今、最高に怒ってるからな──っ!」
俺の挑発に近い発言に向こうは乗ったか分からないが、大きな腕によるパンチのような攻撃を俺に向けて放ってきた。
俺は避けることなくその攻撃を文字通り
その直後、ボスの左腕の攻撃が放たれた。俺はそれを2連撃目で受け止め、その予想外の攻撃に怯んだ隙に残り2連撃をボスに連続で放つ。
(怯みは一瞬……これなら──っ!)
ソードスキルを受け、少しだけ怯んだボスは再び体勢を立て直して俺に腕を振り下ろしてくる。
危ない、そんな声が後ろから聞こえるが反応する代わりにその心配をかき消すように俺は
1度同じようなことをされたことを学んだのか、ボスは追撃と言わんばかりにもう片方の腕を振り下ろしてくる。
バク転に似た動きでそれを回避し、さすがに2回目は回避されると思ってなかったであろうボスは慌てた様子で乱雑に腕を振り下ろして俺に攻撃を当てようとしてくる。
「悪いがこれで仕留めさせてもらう──っ!」
俺は横に構えた剣に力を入れ、つい最近使えるようになっていたのに気がついたソードスキル《レイジスパイク》のモーションを発動させる。
単発の突きが直撃したことにより、ボスのHPは一気に減少し、そのまま消滅した。
「……寝てるか」
「いえ、多分気絶です──」
「とりあえずここじゃアレだし帰ろう」
ボスを討伐し、ライムの無事を確認した。
疲れてなのか俺のあの蹴りなのかわからないが、意識を落としてる彼女を(何故か俺が)背負いダンジョンの出口へと向かった。
道中の雑魚を無視し、俺たちは《夕立の霧雨》のギルドホームに戻った。
帰還後。
「なん……で──」
ギルドホームに戻ってしばらく経ったところでライムが目を覚ましたという報告を受けて俺は彼女たちの部屋にいた。
俺と目を合わせると直ぐに彼女は俺に向かってそう言った。
「俺はお前らの仲間だ。出会ってまもないとはいえギルドメンバー、大切な1人だ。」
「……何それ──私は、私は──っ!」
彼女はなにか言いたそうに立ち上がった。
ふらつきながら俺の方を向いた彼女の目は真剣な……何かを訴えたいような目をしていた。
そして、彼女の口から言葉が発せられた。
「私は
はい、ボスボッコボコ。
ラギたちの目線(32話ラストシーン)の続きからです。
手加減したと言った腹蹴り、実は手加減してないという事実判明。
そしてライムからの衝撃の発言……