ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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35:人殺しの烙印

「私は人を殺したんだよ──」

 

目が覚め、動けるようになった彼女からそんな発言がされた。

驚いたのは俺だけじゃなく、シズクとカエデも驚いた様子だ。

 

「──みんな、そういう目をするよね」

 

「……詳しく聞かせてくれ」

「いいよ、この際何もかも吐き出す覚悟はできてる」

 

ライムは静かにそう答えると、ベットに腰をかけた。

俺は近くにあった椅子を持ってきて座り、ライムの話を聞く体制になった。

シズク達もライムの横に座り、ライムの方を向いた。

 

「そう凝視されると話しにくいんだけど……まぁ、いいや」

 

そんなことを呟きながらライムは真剣な顔をして話を始めた。

 

 

 

ライム目線

 

「……小学校の頃、私はいわゆるいじめってやつを受けてたんだ」

 

 

 

 

小学校に通っていたある日。

小学五年生になってすぐの時、転校してきた1人の男子が私の容姿について少し弄ってきた。

元々、ボーイッシュな見た目だということに嫌気がさしていた私は軽く流す程度で済ませてその場を切り抜けようとした。

でも、クラス中の男子だけじゃなく、それまで仲良くしていた女子たちまでもが徐々に私の容姿をいじるようになってきた。

まだ、それぐらいなら良かったんだ。

 

そう、ある日──

 

「なぁ、ホントに女なの?」

 

私を弄り出したあの転校してきた男子がそんなことを言ってきた。

更に「ホントに女だって言うなら証拠を見せろよ」なんてことを言ってきた。

要するに……脱げ、そう言ってきたんだ。

もちろん冗談だと思っていた、でも向こうは本気で言ってたみたいで、私が嫌だと言っているのに無理やり服を脱がせてきた。それも教壇の上で。

 

私は学校で、クラスの男女の前で裸にされたんだ。

そんな辱めを受けた私は学校に行くことはなくなった。

 

 

しばらく経った頃、小学6年生になったところで両親に半強制的に学校に行かされた私は嫌だと言ったのに無理やり登校させられクラスに入ると……

あの男子はいなくなり、更にクラスの全員が()()()()()()()()()()()()()()私に接してきた。

でも、それはただ()()()()()()()()()()を知られたくないからやっていたことで、裏では私の悪口なんかが聞こえていた。

 

そんな雰囲気のクラスで唯一私に本当に優しく接してくれた女の子がいた。

 

「ねぇ、名前は?……らいむ?」

「いや……***だよ、間違いやすいけど」

 

クラスの全員が私に色々と噂を立てたりしている中、そんなこと気にしないよ?なんてことを言いながら彼女は明るく接してきた。

彼女と出会ったことで、私は少しだけ変われたような気がしていた。

 

それからずっと、彼女と一緒に生活するようになってから数か月の期間がたったある日。

私が係の用事でクラスから離れた隙に、クラスの女子が彼女に言葉の刃を向けていた。

私がクラスに戻った時には彼女は1人、教室の中に立ち尽くしていた。

 

 

 

その日を境に、クラスの女子の狙いは彼女になり、靴を隠したり、机に色々と落書きをされたり、そんないじめが徐々にエスカレートしていった。

彼女に「誰かに相談したら?」言ったこともあった。でも彼女は「大丈夫!」そう答えて周りの誰かにこのことを相談することは無かった。

 

今思えば、私のことを考えてくれていたのかもしれない。

 

 

時が経ち、小学校卒業を控えたそんな日。

突然、彼女に普段立ち入り禁止の屋上に呼ばれ、行くと彼女はいきなり私に謝ってきた。

 

──ごめんね、クーちゃん。

──私はクーちゃんを傷付けてたんだね……

 

そんなことない、そう否定しても彼女は謝り続けてきた。

ふと、謝るのを辞めた彼女は小学生には少し高い──私が低かっただけかもだけど──柵を乗り越え、縁にたって私の方を振り向くと……

 

──クル、あなたは生きて。

──私の分まで強く生きて、あんな人たちに負けないで。

 

何言ってるのさ、そんなとこに居ないでこっちに来て。そう言ったけど彼女は聞く耳を持たなかった。

 

──ねぇ、クル。

──goodbye My Friend(さよなら、私の親友)

 

彼女はそう言った、そして私の方を向けた体をゆっくりと後ろに倒して行った。

そう、彼女は飛び降りようと体を倒したんだ。

 

すぐに何をする気なのか理解出来ず、ただ落ちていく彼女の姿を見ていることしか出来なかった。

もし、あの時、手を差し伸べていれば──

 

 

その後、彼女が落下した音に気づき落下した場所の様子を見に来た先生たちがすぐに私の元に駆けつけてきて色々と質問を投げてきた。

何を聞かれたかなんて忘れた、いや……そんなことに耳を傾けることも出来ないほど私は今起きたことを理解できなかったんだと思う。

 

彼女が落ちた場所には障害物なんて無く、屋上から落ちた彼女は即死だったらしい。

 

 

 

「私が関わっていなければ……彼女はあんなことにならなかったんだ……」

この場にいる全員に対して私の過去を話し、嫌な記憶を思い出したことでいつの間にか俯いていた私に1人が声をかけてきた。

「……顔を上げろよ、ライム」

「ラギ……私に──《人殺し》に何か言いたいことでも?」

「それがお前の男のフリと()()を求める理由なのはわかった、だが1つ俺は聞きたいことがある」

ため息混じりに私が隠してた秘密を軽く解き明かすと、聞きたいこと、という言葉を出してきた。

 

「生きろと言われたんだろ、なら──()()()()()()()()()()?」

「そ、れは──」

過去を聞いて言葉を失っていた女子3人がさらに驚いた様子で彼の方を見る。

彼の言っている意味は私がいちばん理解している。

 

 

「第六層のダンジョン、そこでお前の元に駆けつけた時、お前から《生きる気力》を全く感じなかった、どうせ、生きてても意味ないから死のう、なんて思っ──「あんたに何がわかるのさ!?」──それはこっちのセリフだ」

 

偉そうに事を言うラギに反論をしながら飛びかかろうとしたところで私を軽く抑えた彼は私の胸ぐらを掴んできた。

 

「その子をお前が殺したかどうかって言うのは俺が口出すことじゃない、だがな……お前の命はその子の生きるはずだった人生を背負ってるんだよ。

お前が友人に救われて今を生きてるならその命を無駄にするな、その子の思いを無駄にするんじゃねぇよ」

 

彼は怒りなのか、ものすごく険しい表情で胸ぐらを掴んだまま私に向けて言葉を放った。

まるで、自分の事のように───

 

「過去は変えられない、変われるのは今を生きる事が出来る自分自身だ。

たとえ何か嫌なことがあったとしても逃げるな、ましてや死ぬなんてことはするんじゃねぇよ──誰かを傷つけたとしても、誰かを失ったとしてもその命だけは捨てるな」

 

彼は説教まがいの言葉を終えると胸ぐらから手を離し、私はバランスを崩しながらベッドに腰をかけた。

 

「なんで……そんなこと言うのさ」

 

「それは──お前の、この《夕立の霧雨》のメンバーだから……あぁいや、俺だけがお前に何かを伝えたいわけじゃない、お前には仲間がいるだろ」

「仲間……」

 

私は自分の隣に座っている2人、そして彼の隣にいる少女を見た。

みんな、少し戸惑いつつも私に笑顔を見せてきた。

 

「失ったものは大きいだろう、でも、お前には()()()()がいる、だから前を向け」

 

「みんな……」

 

私が短くそう言うと、横にいる2人が無言のまま突然抱きついてきた。

泣きそうになったのを堪え、全員に謝罪と感謝を伝えた。

 

そして、先ほどの会話で彼から不意に感じた()()()()()()()を短く聞いた。

 

「でもラギ、なんで()()()()()とかそういうことを──

「──俺は現実で、この手で人を殺して、大切な人を傷つけたんだ」

 

彼はそういうと再び近くにあった椅子に座り、全員と目を合わせ──特にカエデに何かを伝えるように──話を始めた。

 

 

 

「──と、いうことだ」

「それはラギは悪いことなんて……」

「カエデにも同じことを言われたよ」

 

シズクが(何故か)今にも泣きそうな顔でラギに声をかけた。

その返答は否定ではなかった。

 

「たとえ正当防衛だとしても、誰かを殺したことに変わりはないんだ。それに……俺だってライムと同じように()()()()を失ったんだ」

「ラギ……」

「会った時から気になってたんだけど、ラギとカエデってどういう関係なの?恋人……とか?」

「いや、別にそういう関係じゃない──ただ俺たちは……」

 

彼は再びカエデの方を見て、何かを確認したような表情をするとこんなことを口に出した。

 

 

 

「俺とカエデはこの世界、SAOを作り、デスゲームを開始した茅場晶彦の所属している会社──アーガスの社員だ。」




失ったことによる傷は癒えることはない。
それでも、前に進もうと、生きようとするものには必ずその先に未来が待っている。


ということでお久しぶりです。
過去回想、そこそこのボリュームで書きました。
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