ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
ラギ目線
赤服の剣士が何かを呟いた途端、抜いた白銀の剣が形を変え、やつの周りを白い花びらのようなものが囲うように現れた。
「舞い散れ、花たち──!」
「──お前ら、下がれ……っ!」
さらにやつが言葉を加えた途端、俺は全身に嫌な予感を覚え、咄嗟に後ろの3人に後退の指示を出した。
だが、彼女たちが動くよりも、やつの出した花びらのようなものが近づいてくる方が早く、俺を含め全員が巻き込まれてしまう──
「させるか──!」
「……ほう?」
何も出来ずに一方的にやられて終わり。そんな結末は誰も望まない。
数歩下がった俺は右手に持った剣を正面に掲げ、柄を中心として勢いよく回転をかける。
目の前で回転したその剣は円を描きながら向かってきた花びらと激しい音を立てながら衝突。
何とか受け止めることが出来たが、それも時間の問題。奴がこの技の勢いを強めることが出来るのなら確実に剣ごと俺らは攻撃を受けてしまうだろう。
「ハヅキ、剣借りるぞ」
「いいけど……どうするの?」
「……賭ける」
「わかった」
回転の勢いが弱くなっていないことを確認し、奴に気付かれないように小声で後ろにいるハヅキに──彼女が愛用している──剣を受け取り出来るかどうか分からない、最悪俺が死ぬ可能性もある賭けに出た。
「どうした、抵抗しないのか」
「……あぁ、俺以外はな──っ!」
回転し、花びらを受け止めている剣の横から飛び出して奴に向けて地面と平行に剣を構えて光を纏わせる。
「隙あり──」
「それが秘策か、だが惜しかった。あと数秒早く動いていれば止められなかったかもな」
地面を強く蹴り光を纏った剣を突き出す剣技、《ヴォーパルストライク》。
その一撃は確実にやつを仕留める。そう思っていたが、その目論見は簡単に防がれてしまった。
奴が変化させていた剣は一瞬で元の白銀の刀身へと姿を変え、俺の突き技を正面から弾き返した。
そして、俺の崩れた体勢を立て直す暇を奴は与えてくれなかった。
「ア──ク──ド流奥義………!」
何かを呟いたその瞬間、奴の剣は緑色のライトエフェクトをその身に纏わせ、奴は地面を蹴り高く飛び上がり俺目掛けて剣を振り下ろしてきた。
あれは、片手直剣ソードスキル《ソニックリープ》……?
「ラギ──っ!」
立ち上がって防御姿勢を取ろうとしたが間に合わず、その剣技を受けてしまう寸前で素早い動きで俺と奴の前に入り込んだハヅキが先程俺が奴の謎の術──のようなもの──を防ぐために使っていた《ゼデュースホーリーソード》を構えて奴の攻撃を防いだ。
そう思われたが──
「く───ぁ──!?」
奴の剣技は、その剣は、今現在俺とほぼ同じであろうステータスを持ってしても押さえることすらギリギリなほど重く、強かった。
「ハヅキ、下がれ──!」
「無茶……言わないで……!」
体勢を立て直した俺は直ぐに攻撃に移ろうとした、だが奴とハヅキが近すぎて少しでも攻撃をしようとすればハヅキを攻撃してしまう可能性があるため躊躇ってしまった。
それだけではなく、今ハヅキが受け止めている手を緩めれば奴の剣はハヅキを切り裂くだろう。
どうすれば、奴の攻撃を止め、さらにハヅキを下げることが出来るだろうか。
「ルー坊、オレっちがチャンスを作る!受け取れ!」
そんな声とともに俺の背後から1本の短剣が投げられた。
戦闘に割り込まず、後ろで見ていたアルゴはコハルに短剣を渡してそれを俺に向けて投げさせたのだろう。
「……あぁ、ありがとな」
後ろを振り向くことなく感謝を伝え、ハヅキの片手直剣を一度鞘にしまい受け取った短剣を右手に持つ。
持ち替えて直ぐに鍔迫り合いとも呼べない剣同士のぶつかり合いを発生させている2人の男女目掛けて短剣を振りかざす。
「……ちっ」
「ちょっ、危な──」
アルゴからアイコンタクトで伝えられた事を実際にやってみたのだが、見事にその策略に奴はハマった。
そのおかげでハヅキから奴は離れ、少し下がって冷静な顔で俺を見ている。
「言っただろ、お前の相手は俺だ」
「あぁ、俺が殺すのはお前が先、そうだったな」
「その余裕そうな口をすぐに閉ざしてやるよ……!」
そんな挑発のような発言をしながらすぐ後ろで心配そうな顔をしながら俺を見てくる
彼女がどんな気持ちで剣を渡してくれたかはわからない、それでも彼女の気持ちを無駄にすることは──そして、ここでどこの誰かも知らない奴に一方的にやられることだけは俺は望んでない。
「はぁああ!!」
片手直剣に青いライトエフェクトを発生させ、奴に接近してソードスキルの一撃を振り下ろす。
もちろんやつは防ぎ、ぶつかり合った2本の剣からは重く太い金属音が鳴り響く。
だが、俺の剣技はまだ続く。
奴が防いできた剣の軌道をずらすように2連目を振る。
──が、奴はまるで読んでいたかのように鍔迫り合いを起こしている剣に赤いライトエフェクトを発生させ、俺の2連目を防いだ。
3連目、4連目と続いたソードスキルは全て奴の剣技によって防がれた。
やつが使った3連撃のモーションは…《サベージ・フルクラム》に似ていた。
「……やるな、お前」
「それはこっちのセリフだ……!」
ただ一瞬、隙ができるタイミングを狙おうと剣を振り続ける。
だが、俺が奴に攻撃を当てることは1度も無く、全て防がれてしまう。
それだけじゃなく、奴は一切表情を変えずに俺の攻撃を簡単に弾いているのだ。
(こうなったら一か八か……!)
鍔迫り合いをやめ、数歩後ろに下がった俺は何度目かの姿勢をとった。
右半身を後ろ側に引き、剣を地面を水平に、目の前の相手に向けて構える。
この剣技が失敗すれば奴に隙を与えてしまう。そうすれば確実に俺は負ける。いや、この世界で死ぬだろう。
「ソードスキル………」
「そう来るか……アイ─ク───流奥義……」
剣技の名を言おうとしたところで、奴は一瞬笑みを見せたあと少し違うがほぼ同じような構えをとり小声で何かを呟いた。すると俺が剣に纏わせた赤いライトエフェクト──やや黒い気がする──を発生させた。
「「《ヴォーパルストライク》──!」」
奴は俺と寸分の狂いもない剣技の名を口にし、同時に地面を蹴った。
「はぁああ!」
「──はぁあ!」
同時に放たれた剣技によりふたつの剣は剣先で衝突を起こした。
だが……
「く──ぁ──、っ!?」
剣自体の強さも、自身の強さも全て相手の剣士には劣っていた。
衝突中の一瞬の隙に奴は剣を下げて構え直し、新たな剣技をバランスの崩れた俺に向けて放った。
ヴォーパルストライクの体勢のままだったこともあり、その剣技──《スラント》のような──は俺の腹部に命中し、さらに持っていたハヅキから借りた剣は俺の手から弾かれ、遥か後ろに飛ばされてしまった。
「打つ手無し、ここで死ね───」
「………あぁ、そうだな──」
膝を付き立ち尽くす俺に近づき、剣を頭上に構えて振り下ろしてきた。
「───お前がな……!」
バレないように右手を左腰に動かしてとある物に手をかけた。
それを取り出して右手に持ち、薄緑色のライトエフェクトを体の右側に発生させ、奴の剣を避けるように地面を勢いよく蹴り、持っている
振りかざしていた剣を手から離した隙を逃さないように攻撃の続きを──ソードスキルの2連撃目──を再び脇腹に入れた。
「あぁ……見逃していたか───その小刀を」
俺の手に握られていたのは先程アルゴが渡してきた短剣。
何か起きた時に使用できるようにと返さずに持っておいたのが幸を奏した。
「だが───慢心するなよ……
「──なっ!?」
短剣を鞘にしまったその隙をやつは狙い、何かの単語を呟いた。
その途端、奴の手から水蒸気(?)のようなものが発生し爆発。俺の視界は遮られた。
「あと一歩、その慢心がお前の──
ここでお前が死ねばこの罪も生まれない───死ね」
爆風に押され崩れた体勢を立て直すと目の前に先程落としていた剣を拾い、《ヴォーパルストライク》の構えをしライトエフェクトを纏わせて立つやつの姿が蒸気の中から現れた。
「慢心だかなんだか知らないが──
これで決着をつけるぞ───!」
先程の爆発によってか、俺の足元にはハヅキから借りた剣が落ちていた。
それを拾い俺は
先に動いたのは相手。
ヴォーパルストライクの動きで剣を突き出して接近してくる。
「──ここだ……っ!」
奴の攻撃が当たる寸前で俺は構えをやめて体を横に避けて攻撃を回避。
無防備な隙が出来たのを見て右手に持った剣に青色のライトエフェクトを発生させた。
「──っ、はぁぁぁ!!」
防ぐ隙すら与えることなく奴に一撃、二撃と連続して攻撃を入れる。
一瞬の間に振り向いて防ごうとした奴の動きよりも先に三撃目を与え、そして──
「これで──とどめだ……!」
最後の一撃を入れた。
倒せた。そう思ったがそんな事はなく、奴は立っていた。
「──こんな奴だったな。」
「何のことだ?」
「いや、この世界では伝えられねぇ……だが最後に1つ、警告だ」
倒せていなかったと思った奴の体から微かだが金色の光が溢れ出していた。
それが何を意味するのか分からないまま奴の言葉を黙って聞いた。
「──これから先、何が起きても……
仲間だけは捨てるなよ、《英雄》」
そんな言葉を放ったあと、奴は──彼の姿はさらに強くなった金色の光に包まれ消えていった。
最初にみせた謎の術、ソードスキルと同様の動きの剣技、そして最後のやつの発言。
何もわからずに終わってしまった───
「──バカっ……!バカバカバカ!」
「……何がだ?」
あいつが一体何者だったのか、そんなことを考えていると俺は後ろから手を回され、誰かに抱きつかれていた。
抱きついてきたのはハヅキ。俺よりも小柄なその体は少し震え、全力とも思える力で俺を抱きしめていた。
「心配した……心配したんだよ!本当に……死んじゃうんじゃないかって──」
「そんな心配しなくても──」
彼女を慰めるため顔を覗こうと後ろを少し振り向くと──彼女は泣いていた。
ただ数回、言葉を交わしただけの、赤の他人に近い俺のことを心配していたのだろう。彼女はさらに力強く俺を抱きしめ、背中にだが顔をうずめた。
「……悪かった。だけど俺もお前らを守ろうと──」
「
「ハヅキ……?」
「もう、1人は嫌なの……」
「…………」
彼女がどんな意味でこういったのかは俺にはわからない。
それでも、その言葉には嘘偽りもなく、本気で言っていることだけはわかった。
「……ごめん、ハヅキ。もうあんな無茶はしないようにするよ」
「ならいい……けど」
「……ん?」
「何してるんだろ、私」
「あぁ……」
正気になり状況を把握したハヅキは涙目のまま顔を赤くしてゆっくりと俺から離れた。
「……なぁ、ハヅキ」
「何?──って、え?」
俺はお返しと言わんばかりにハヅキを正面から抱きしめた。
彼女はパニックになりながらも俺を突き放すこともせず黙って下を向いた。
「心配してくれてありがとな、ハヅキ」
「……っ//」
彼女の頭を撫でながらそう伝えた俺は直ぐに彼女から離れた。
その後、コハルは何度か頭を下げ感謝を伝えてきて、ずっと黙りっぱなしのハヅキも小声でだがありがとうと言ってきた。
「……そうだ、お前の剣。乱暴に使ったかもしれないが返すよ」
「うん、役に立てて良かった………」
奴に勝てた理由の彼女から借りた剣を返したところで彼女とコハルは2人で何かをコソコソと話し始めた。
それを横目に再び戦いの跡を見た。
もちろん破壊不能オブジェで作られているためほとんど傷はないはずだったが、部屋の至る所に赤い染みがついていた。
「おーい、ルー坊?聞こえてるかー?」
「ん?あぁ、悪い」
「ハーちゃんといい感じダナ?」
「んな事はないって。」
ふと、Lvを確認した。
すると、俺のレベルは何故か2つ上がっていた。
「ラギさん、アルゴさん、そろそろ行きましょう!ハヅキも行きたくてうずうずしてますから!」
「早く。」
「あー、はいはい。」
「にゃハハ、ルー坊、照れてるのか?」
「違うっての。ほら行こうぜ」
奴が去ったからか、先に進む道が開けていた。
先に進んでいくハヅキの後ろ姿を眺めながら俺は1つの決断をした。
──もう、1人は嫌なの。
彼女はそんな事を言った。
コハルという友人がいるのに。
それがどういう意味なのかは俺は知らないしわからないことだ。
それでも、彼女は俺に向けてそう言ってきた。
ハヅキ、お前は……
お前の期待を裏切ったアーガスの一員である俺を信用してくれた。
なら、俺がやることはひとつ。
──俺は。
──
──お前は、俺が必ず守る。
──この体が、傷つき動かなくなってしまったとしても。
──────
─────
───
─
「ここは……」
「森……?」
先に進んだ俺たちの前に広がったのは湿地帯だった第6層に少し似た雰囲気の森だった。
戦闘で疲れた体のまま進むのはマズいと判断した俺たちは何故か時間が経っても解放がされなかった転移門を解放し、第1層に戻ってそこで解散した。
俺は1人で宿泊施設……もといギルドハウスのある通りに進んで行った。
第7層、【雨垂の森】。
ここで俺たちは、新たな争いに巻き込まれることになる──。
めちゃくちゃお久しぶりです。
アリシゼーションWoU始まって少し経ちました。
本当なら14話放送後ぐらいには更新する予定だったんですが色々あって16話の放送前の投稿となります。
戦闘描写の練習第2回。
相手は謎の剣士。
彼は一体誰なんだ……
そして進むラギとハヅキの距離。
使用したSSのエフェクトカラーは他ゲームシリーズとかから流用してますが、違う可能性があります。
【術式を防ぐために使用した技】
スピニングシールド
剣を勢いよく回転させて飛び道具等を防ぐ技。
原作ではアリシゼーション編でキリトがデュソルバートの火矢を防ぐために使用していた。
【アルゴから渡された短剣とそれによる戦略】
レッド・ダガー
第6層攻略前、ハヅキ達がやっていたタワークエストのクリア報酬のひとつ。
武器のステータス等は第8層で作れる短剣より少し弱い程度のもの。
そもそも短剣は使用していなかったラギでも装備できるのは彼の使用しているアカウントになにか秘密があるのだろう。
渡された(投げられた)時にアイコンタクトで伝えた作戦は「リーチの短さを利用して鍔迫り合い中のあの剣士をハヅキから突き放す」というもの
後半でラギが使用したソードスキルは《ラビットバイト》の派生
余談だが決着時に使用したのは片手剣ソードスキル《ホリゾンタルスクエア》。
今日アンケートを実施しました。(第1話~)
次に読んでみたいサブストーリー(EXや番外編扱い)に投票してくださるとそれが公開される……かも?