ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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41:竜と軍

第1層はじまりの街:宿屋通り/夕立の霧雨ギルドハウス(仮)

 

赤服の剣士との激戦を終え、ハヅキ達と共に第7層の様子を少し見て解散した俺は第1層の宿屋通りの一角にある建物の前に立ち、何故か少し落ち着かない気持ちを抑えるために深呼吸をして扉を開けた。

 

「あ、おかえり!」

「お前ら………」

 

扉を開けたところで、時間も時間なので全員寝ているんじゃないかという不安もあったが、そんな考えは直ぐに消し飛んだ。

普段割と早めに寝ているルナ含めた全員が1階ロビーの木造テーブルに座っていた。

 

「起きたらパーティから抜けてるしルナから聞くまではどこ行ったのかわからなくて凄い慌てたんだよ?」

「慌てたどころか今すぐにでも飛び出そうとしてたよ、シズクは」

「それで……『急用で』ってアルゴからメッセージが来たけど何があったの?」

 

と言ったようにシズク、ライム、ルナの順で俺に質問やらをしてきた。

まあまあ落ち着けと抑えながら4人の座っているテーブルの空いている椅子に腰をかけて1つずつ説明をすることに。

 

「お前たちに心配かけたのは悪かった、でもそれには理由があるんだ」

「それって?」

 

ずっと黙ってるカエデを横目に説明を始めた。

まず始めに第6層のエリアボスが何者かによって倒されたということ、それに伴い第6層ボス部屋に現れ行く手を阻んでいるという剣士の話。

俺たちはその剣士とやらが何者で、ボスを倒したのに何故行く手を阻んでいるのかを探るために第6層ボス部屋へと向かい、そこでその剣士と剣を交え、その結果なんとか勝てた。

といったところまでを説明した。

あいつの正体も目的も何も分からないまま、謎を残して奴は消えていったのだが……

 

「よくわからないけど……そんな相手に挑んだの?」

「あ、あぁ……そういう事だ」

「なんで言ってくれないのさ……なんて、理由は何となくわかるけど」

「お察しの通りお前たちに危険が及ぶ可能性があったんだ、何せ相手はどんな強さかもわからなかったし、それに──」

「それに……?」

 

奴の剣の重さや実力は確実に今の俺以上、言ってしまえばSAO開発組の誰も勝てないレベルの強さだった。

でも、奴の使った剣技もそれに伴う動きはまだ本気じゃないのではないかという疑問が浮かんだ。それもそのはず、結局奴が何者かはわからなかったが、この世界……SAO内で使えるソードスキルに酷似したモーションでライトエフェクトすら纏わせて攻撃をしてきた以上、奴が使ってきた剣技はこちらの基準で行けばSAO低層レベル。

もし、奴があれ以上の剣技を使えたとすれば俺に勝ち目はなかっただろうし、最初に使ってきた剣を変化させたあの術式も、まだ全力じゃないような、そんな感じがしたのだ。

 

 

「俺が管理者権限をフルに使えたとしても、どれだけ経験があってもあいつには勝てなかった、なんなら1度死ぬ寸前まで行ったしな」

「そんな………!?」

「そういった危険があったからお前らを連れていかなかったんだ」

「前線に出てる中でも強いはずのラギがってなればそりゃ私達がついて行けば──でも、そうだとしても一言欲しかったな」

「咄嗟の事だったから、なんてことだけじゃ納得してくれないだろうけど。そうだろ、カエデ?」

 

俺は言い訳に近いことを述べながらも、ずっと俯いて黙っている彼女に言葉を向けた。

 

「──ですよ。」

「………?」

 

彼女は以前俯いたまま、聞こえない声量で何かを呟いた。

いや、呟いたと言うよりは………

 

「心配したんですよ!それこそ朝起きて先輩の部屋に行っても返事は返ってこないし、シズク達がいつ飛び出していっちゃうかもわからなくて……せっかくこうやって出会えたのにまた離れ離れになっちゃうんじゃないかって。先輩を探しに出ようとした3人を止められなくて、もし追いかけに行った先で何かあったらって考えちゃって………また、1人になるんじゃないかって……怖かったんです。」

「カエデ……」

 

それは、アーガスで出会ってから1度も聞くことのなかった彼女の本心。

SAOで友人と再び会えてずっと前線に出ようと努力してきた彼女が心のどこかで隠してきた本当の気持ち。

 

「……ダメだな、俺は──」

 

本心を口に出しているうちに顔を上げた彼女の頬には気づかなかったが、涙の跡があった。

それが、何を意味するのかは俺でも理解出来る。

 

「こうやって……誰かを泣かすことしか出来ないんだからさ」

 

赤服の剣士との戦闘が終わったあと、抱きついてきたハヅキ同様、今の彼女も俺が涙を流させてしまった。

誰かを守ろうと戦ってきたはずなのに。行動に移そうとした時には誰かが涙を流しているのだ。

 

「先輩……」

「カエデ……それにお前らも、心配かけた」

 

カエデを始めとし、ここにいる4人の顔を順番に見てから頭を下げ、謝罪の言葉を口に出した。

 

「そこまでしなくていいですよ、先輩。

私達だって、先輩がどれだけ大変だったかは見れば分かりますし」

「そうだよ、ラギ!」

「心配だったのは本当だけどね、それで、次の層への道は?」

「それに関しては問題ない、第7層へと進む道はちゃんと解放されてるし、第7層の転移石はアクティベートをしてある」

 

暗い話を切り替えるためか、ライムが話題を変えてきた。

赤服との戦闘後、今にも倒れそうな体を動かして進んだ道は特に崩壊等もなく、ちゃんと次の階層へ進めるようになっていた。

そして、今までと同様に───

 

「第7層も、β時代とは違うフィールドだったよ」

「そうなりますよね……」

「まぁ、奥まで見てないからどんなフィールドかはあまり知れてないが、それも明日探索しに行けばいいだろ………とりあえず今日は寝かせてくれ」

「うん、了解!」

()()()()、ラギ!」

 

話している途中で、突然眠気──のようなもの──に襲われた俺は会話を止め、女子達が「おやすみ」などと声をかけてきているのを聞きながら自室へと向かった。

その後、布団に入った俺は、気絶したのではないかと言えるほど、直ぐに眠りについた。

 

 

◆◇◆◇

 

同時刻

宿屋通り/普通の宿屋

 

ハヅキside

 

(結局……何も伝えられなかったな……)

 

第6層で起きた件を解決し、ラギやアルゴと別れた私とコハルは普段使用している宿屋に帰り、時刻も遅いのでコハルはそのまま倒れるように布団に入って寝ている。

そんな横で私はあの戦いの光景を思い出していた。

 

 

第6層に現れたというあの赤服の剣士。

私は彼のことを前にも……第5層の迷宮区とボス部屋で見たことがあった。

でも、彼の姿は誰にも見えていなかったみたいだったから、コハルやラギには何も伝えていなかった。

何故、私たちの攻略を助けてくれたのか聞く暇もなく彼とラギは戦闘を始めた。

2人が鍔迫り合いを起こす度、動きや剣の振り方が少しの違いはあったものの、ほぼ同じ動きだった。

第5層で横顔を少し見た時、ふとラギに似ているような気がしたこともあって彼がラギ本人なのでは、なんてことを考えてしまった。

それでも、少しだけ違うところはあった。

剣の振り方、剣技(ソードスキル)の動き、そして彼自身から発せられていた()()のような気配。

 

それだけじゃなかった、赤服の彼はどこか、悲しそうな──

──いつの日か見た、姉とおなじ表情をしていた。

 

ラギは気づいていなかったみたいだけど、私は彼とラギの類似点を見つけていた。それでもその事をラギには伝えられなかった。

いや……多分、伝えてしまったら何かが変わってしまっていたかもしれない──

 

「私は──どうすればよかったのかな……」

 

寝ているコハルの横でそう呟いた私は、言葉にできない気持ちで胸が苦しくなっていた。

()()()のようにどういう気持ちかは分からないけど、それでも私を助けてくれた人に感謝の言葉も伝えられずに私はただ見ているだけだった。

そんな自分に、何も変わらない自分が嫌で、だからこそこのゲームを始めたのに───

 

「コハル……こんな私で……ごめんね」

 

さすがに眠気に負けた私は意識が落ちる前に隣で寝ている彼女の方を向きそんな言葉を口にした。

もちろん、彼女には聞こえていないだろう。それでも、こんな言葉でも、彼女には伝えないと、そう思い口にしていた。

眠気に完全に負け、意識が夢の中に溶けていった。

 

 

 

その横で、眠りについた彼女の頬を伝う涙を拭うコハルの姿があった──。

 

 

◆◇◆◇

 

翌日。

商店通り/武具屋

ラギside

 

(あれは……)

 

女子組の装備を一新しようと俺たちは商店通りに朝イチから向かった。

女子達がそれぞれ「この装備どう?」などと会話をしているなか、周りを見渡していた俺は、1人のNPCの女の子と目が合った。

 

(俺を……見てるのか?)

 

銀髪に黒い瞳という、日本が作り出したゲームとは思えない見た目のその子は、俺が見ているからかもしれないが、ずっと俺の方を向いてきている。

 

「──け─て──」

 

少女は俺の方を向いたまま、表情を一切変えずに何かを喋った。

だが、割と距離があり、尚且つ時間的にざわつき始めたこの場では彼女が俺に何を伝えたのかは口の動き以外では判断が出来なかった。

 

(『たすけて』……?なんでそんなこと……)

 

少女の口の動きから読み取れたのは『たすけて』という言葉。

NPCであるはずの彼女が何故そんなことを伝えてきたのか、今の俺には全く予想もできず………

 

「おーい、ラギー?」

「ん?……あぁ、悪い。それで装備は?」

「じゃーん!……なんてやるほど豪華なものは買えなかったけど……」

「先輩からもらった素材で今までの装備よりはステータス上がりました!」

「一段階上の装備を付けただけ……ってのはさておきラギ、今何見てたんだ?」

 

それぞれお揃いで装備買ったようで、前にフィールドに出た時よりも見た目含めて良くなった雰囲気は出ている。

が、それを潰すような発言を小声でしたライムは俺が違う方を見ていたことに気がついたらしく、質問を投げてきた。

 

一瞬だけ目を逸らし、先程少女がいた場所を見たが、そこに少女の姿はなかった。

 

「あ、あぁ……ちょっとな」

「……?まぁいいや、それじゃ行こうよ、シズク達──って先行ってるんだけど!?ほら、ラギ、急ぐよ!」

「ちょっ、俺も装備──あぁもういい!」

 

ライムからの質問を適当に返して装備を買おうと武具店を覗いたところでライムに袖を引かれて半強制的に転移門広場の方に連れていかれた。

赤服の剣士との戦闘で見て分かるレベルに消耗したアニールブレードの代用品を買おうと思ってたのだが…………

 

 

(いや、それよりも───)

 

悲しみを堪えながら先程の少女の姿を思い返す。

銀髪に黒い瞳。ハヅキより少し小さいぐらいの身長の彼女は……

見た目こそ少し変化していたが、あれは───

 

いつの日かアルゴ達と遭遇した《MHCP》と同じだろう。

 

 

 

 

そんなことを頭の隅で考えているうちにシズク達に追いついた俺らはそのままの勢いで第7層へと転移した。

 

 

 

 

第7層【雨垂の森】

 

「何だとてめぇ!」

「それはこっちのセリフだってんだよ!」

 

転移した直後、言い争っているような声が聞こえた。

声のするほうに向かうとそこには……

 

《ALS》と《DKB》とそれぞれ表示された2人のプレイヤーが予想通り、言い争いをしていた。

そして、両者の右手には、それぞれが使っているであろう武器が握られていた。




お久しぶりですかね?

今回はそういう回。
と続けて第7層へと入りました。


ギルド名の表示は各個人の設定によって変わりますが、ラギの場合、管理者権限とか抜きにしてそのプレイヤーの加入しているギルドの名前がプレイヤーの頭上に表示されます。(設定の変更可能)
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