ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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43:It’s show time

イッツショウタイム。

やつがそう叫んだと同時に、俺の目の前には剣が振り下ろされていた。

 

「──っ!?」

 

反応が一瞬遅れて俺の肩にやつの片手直剣が掠った。

さっきやつに殺された2人のステータスよりかなり高いであろう俺のHPは10分の1ほど減った。

 

「ほらほらほら!まだまだこれからだぜぇ!?」

「くそ……っ!」

 

やつは片手剣をまるで細剣のように持ち連続突きを繰り出してきた。

アニールブレードをライムに渡しており、さらにあの剣はストレージに入れているせいで武器を全く装備していない俺に防ぐ手段などなく、やつの攻撃に身を委ねるような形になってしまい──

 

 

剣先が当たる、そう思ったその時。

俺の体は誰かに突き飛ばされて後ろに倒れていた。

そして、俺の目の前には、大の字で手足を広げてポンチョ男の攻撃を俺から庇ってHPを半分以上失ったプレイヤーが立っていた。

 

「シズク………!?」

「言ったでしょ、ラギ──()()()()()()()()()()()()()()()って。」

「お前……それとこれとは───」

「大丈夫、私が守るよ。ラギ」

 

俺の方を向き、笑顔でそう言った彼女は再びポンチョ男の方に向き直し、剣を構えた。

 

 

◇◆◇◆

 

シズク目線

 

──お前はリーダーだろ。

──なら、お前がメンバーを守れ。

 

彼はさっき、そんなことを私に言ってきた。

彼はその後、言い争っていた二人のもとに行って、そしてその間に私たちは複数人に囲まれてしまった。

咄嗟に「私がリーダー」と言った途端、囲んできたプレイヤーの1人が私の腕をつかみ、首元に剣を突き付けてきた。

あの時、私は抵抗すらできず、なすがままになっていた。

結局、私はみんなを危険な目にあわせるだけで、守るなんてことは出来ない。

 

 

でも、今は()()()()()んじゃない。

彼はあのポンチョの人に武器無しで挑もうとしているんだから。

なら、少しでも時間を────

 

 

「あっ、おいシズク!?」

「……行ってくるね」

 

呼び止めようとしてくれたライムに短く言葉をかけて私は彼の──ラギのもとへ走った。

ポンチョの人が攻撃を防ぐ手段のないラギに向けて連撃を放とうとした。

 

(届いて───っ!)

 

自分でも驚くスピードで地面を走り、ラギとポンチョの人の間に入り込み、真正面から攻撃を受けた。

私のHPは半分以上減り、イエローゲージに突入していた。

 

「シズク………何してんだ!?」

「……ラギは私が守るよ

もう、守られるだけの存在じゃないから。」

 

私は剣を構え、ポンチョの人の方に向けた。

 

「ほう?見るからに弱そうなプレイヤーだが……まぁいい、死にてぇなら遠慮なく殺してやろう」

「あなたには殺される気は無い」

「へっ、言ってくれるじゃねぇか………ほら行くぜぇ!」

「──っ!?」

 

ラギと戦闘していた時よりも遥かに早く、そして確実に私の防御できない隙を狙った攻撃をとめどなくしてきた。

 

相手も片手剣使い、そのはずなのに攻撃の手法は細剣でよく見る突き技のようなもの。

それを片手剣で全て防ぐなんて………

 

「でも──っ!」

 

一撃一撃のダメージがかなり大きいことはわかっている。

今のHPで受けれるのはあと数発。

 

なら、次の一手を受けなければいいだけ。

 

「──そこ……っ!」

 

ポンチョの人の連撃を発動させないために足元の木の根っこを蹴って勢いをつける。

その勢いのまま正面から来た攻撃の一発目の突きを腹で受け──体を貫く形で──ポンチョの人の剣を無理やり奪った。

 

だけど、私のHPは少しずつ、ミリ単位で削れていった。

 

「はっ、俺の剣を奪ったってとこか、だけどよォ、そりゃあおめぇが辛いだけって話よ……それによぉ?こうやって───」

 

武器を私の腹に突き刺したままで手を離したポンチョの人は、そのまま私の前に立ちニヤニヤと笑みを浮かべた。

そして、ふと気づいた時には私の目の前に、誰かの──ポンチョの人のだろう──足があった。

 

「ほらよォ!」

 

顔に、鋭い痛みが走った。

私は目の前の人に顔を蹴られ、その勢いで後ろに吹き飛んでいた。

 

「が───ぁ──」

 

ちょうど後ろにあった木にぶつかり、私は更に痛みを受けた。

そして、私のHPはレッドゾーンをとうに過ぎて、あと数ミリで消えてしまうようなところまで減っている。

 

(あぁ、終わっちゃう、か──でも、これでよかったのかな)

 

HPと共に消えていきそうな意識の中、私の目にはポンチョの人と、そして──

 

「──システムコール。

()()()()()()()()()()、プレイヤーID******」

 

そんな言葉とともに剣を構えたプレイヤーの姿が見え、私の意識はそこで途切れた。

 

◇◆◇◆

 

ラギ目線

 

ポンチョ男の攻撃を防ぎ、そのまま戦闘に入った──とは言い難いが──シズクは戦闘開始前に目の前に剣を落とした。

それは、さっき俺がライムに向けて投げた剣【アニールブレード】だった。

 

(あのバカ………)

 

俺はアニールブレードを拾い上げて立ち上がろうとした。だが──

 

このままシズクが戦闘してるうちに入り込んだとしてもやつの突き技を受けきれるとも思えない。

それだけじゃなく、やつはただ単に強い。

今割り込んでもシズクに攻撃が当たる可能性だってある。

 

(一か八か………)

 

シズクのHPの状況を確認しながら俺はウィンドウを素早い手つきで操作していく。

ログアウトボタン──があったところ──の下に表示されている【administrator】という欄をタップし、その中の一番下にある《呼び出し》という欄をタップ。

そして、その中に表示された《バトルヒーリング》と《*****ID**》を使用可能に設定した。

 

「──じゃあな、ちっせぇ救世主さん」

 

ポンチョ男はそう言って木の根っこ部分に倒れたシズクに向けて剣を振り下ろそうとした。

 

「システムコール。

《バトルフルポーション》、プレイヤーID*****に使用。」

 

「oh......?勇者様のお目覚めか?」

 

「……システムコール、()()()()()()()()、スキルID**、使用」

 

俺は静かに指示された言葉を口にする。

1つはシズクに向けて、そしてもう1つは誰かに向けたものではなく、俺自身に使用。

 

「俺は勇者でもなんでもない───

誰かを助ける者(人殺し)だ。」

 

ポンチョ男に向けて構えた剣を青白く光らせながら一気に接近する。

そのままの勢いでポンチョ男の腹目掛けて1連目の動作を行う。

 

「んなもん食らうかよ!──ちっ!」

 

攻撃を受けようと剣を構え直すために後ろに下がったポンチョ男は木の根に足を取られバランスを崩し、抵抗することも出来ず一撃目の振り下ろしをもろに受けてしまう。

 

「へっ、やってくれる───なっ!?」

 

だが、俺の使用したソードスキルはまだ終わらない。

 

斬り下し2連に水平切り2連を一気にポンチョ男に向けて放つ。

更に左半身を使い攻撃のダメージにより動けないポンチョ男を突き飛ばし、そのまま離れた距離に飛んだポンチョ男に接近する勢いで飛び上がって振り下ろし一撃。

それを右半身でも決め、ポンチョ男のHPを確実に減らしていく。

 

「くっ、てめぇ───だがこれならどうだ!」

「──まだだ!」

 

ヴォーパルストライクに近い動けで俺に接近と攻撃を同時にしてきた男の剣をギリギリで躱し、先ほど使用していたソードスキルの最後の1連を低い姿勢から地面と水平になるように切り上げる形でポンチョ男に命中させた。

 

 

剣技を終え、ソードスキルの硬直を受けている中、ポンチョ男は剣をしまい立ち去ろうとした。

 

「……ここは分が悪いってことか、ちっ、仕方ねぇ……だが、てめぇのその強さ、壊しがいがあるってもんだ──次は殺してやるよ、英雄さんよ」

「待て、さっきのふたりは何の目的であんなことをしたんだ」

「ん?あいつらか?──あぁ、あいつらは俺に見事に騙されて利用されただけの事、それだけだ」

「利用したのかお前……人殺しをするために!?」

「へっ、あんたみたいなやつには分からねぇだろうよ」

 

ポンチョの中で不敵な笑みを浮かべた男は名乗ることなくそのまま立ち去った。

 

「先輩──って、きゃあ!?」

「おっ、と──大丈夫か、お前」

 

ポンチョ男が去ったところで駆け寄ってきたカエデは足元に伸びていた木の根に足を取られてバランスを崩し、俺の方に勢いよく倒れそうになった。

倒れる前になんとか受け止めた俺はカエデを立たせながら破壊不能と思っていた木の根っこを破壊した。

 

「それはこっちのセリフです、先輩こそ大丈夫なんですか?」

「あぁ、俺は一応……それよりシズクは?」

「シズクなら今気を失って……ご覧の通り」

 

カエデに向けて言ったはずの質問は少しあとに俺のところに来たライムが代わりに答えた。

少し落ち込んだ声で答えたライムの背中には、安心したように眠っているシズクが背負われていた。

 

「そうか、よかった……」

「ラギ、大丈夫なの?」

 

どこに行っていたのか、突然俺の後ろの木から顔を出したルナが俺に声をかけてきた。よく見たらルナが何か持ってるような──

なんてことを聞くことも出来ず、少し驚いた俺は少しふらついてバランスを崩してしまった。

 

「先輩、一旦戻りましょう?」

「だな、さすがに今から先に進むってのは俺の気が乗らない」

 

危険が去ったことによりいつの間にか緊張していた体から力が抜け、倒れそうになったのを2人に支えられ、自分がどれだけ疲労していたかを改めて知った俺は先に進むという選択を捨ててギルドハウスに戻ることにした。

 

 

 

 

結局、この層がどんなギミックがあり、どんなクエストが設定されているかも確認出来なかったのはかなり痛手だ。

だが、その分《PK》をするプレイヤーの中にステータスが遥かに高いプレイヤーがいることがわかった。

 

あいつは何が目的であんなことを…………

 

 

そんなことを考えながら、いつの間にか到着したギルドハウスに入り、体を休めることにした。




お久しぶりですになりました
やっぱり遅くなる。

次回は早めに(ry

多分次回は戦闘もない平和な話です



────
ここからは今回でてきた色々の説明

《管理者権限》
春揮(ラギ)が何故か使えた管理者用アカウントにのみ許された権限。
階層を飛ばす、ボスをワンパン、プレイヤーキルを権限でするといったことは不可能だが、大抵の事はできる。
第5層のボス部屋を出たところで彼の管理者権限に新たなシステムが追加されていた。

《ソードスキル解放》
転移に次ぐラギの管理者権限
使用中の武器種のソードスキルを熟練度関係なく使用できるようになる権限。
ただし、全てを利用可能にできるわけでも、永久的に解放する訳では無い。(長くて10分)
ちなみに本文中にでてきた「ID」はソードスキルの登録順(スラントの場合:ID「01」)になり、片手剣→細剣→etc. といったふうに番号が増えていく
ちなみにユニークスキルに関してはラギの管理者権限では解放が不可能

《バトルフルポーション》
名前の通り回復するもの。
指定したプレイヤーID(プレイヤーがSAOに入った順番で付けられる番号)の相手に「ほぼ全て」の状態異常やHPを回復する。
プレイヤーIDは5桁(1万まで)

《ノヴァ・アセンション》
片手剣ソードスキルの中で最上位の剣技。
ラギのソードスキル解放の管理者権限により使えるようになった。
10連撃と記載されてるのみなので、連撃方法は大雑把になってます。
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