ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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44:一時の休息

第7層でPKプレイヤー達と遭遇し、ポンチョ男との戦闘を終えてギルドハウスに戻ってきた俺はシズクを布団に寝かせてそれぞれ各自で休みを取るということになり……

 

俺は今、湖畔公園に来ていた。

もちろんギルドハウスで休むという手もあったが、一人部屋とはいえどこか落ち着かなかったため、せっかくならとこうやって芝生に横になっている。

 

柔らかい芝生の感触も、木々を揺らす風も、公園の端に存在する湖畔の水の音も、ここが本当の現実だと錯覚してしまうほどリアルで、とても心地がいい。

こうやって静かな空間にいると、今自分がデスゲームの中で、命懸けで生きようとしているという事を忘れてしまいそうになる。

 

 

(先輩たち、何してるんかな………)

 

紅く染まった空──といっても次の層の床だけど──を眺めながら現実に残ってるであろう先輩たちを()()()思い出した。

 

 

 

SAOが始まってから早2ヶ月近くが経過した。

あの日、俺は1人先に自宅に帰り、ログイン可能の時間になったところでSAOにログインした。

そして2人のプレイヤーと遭遇して特訓と称した狩りをし、夕方、ちょうど5時ぐらいに全プレイヤーが転移門広場に集められた。

プレイヤーたちが困惑する中、アーガスでナーヴギアやSAOを開発した天才、《茅場晶彦》によるデスゲーム宣言が行われ、俺たち1万人のプレイヤーはログアウトが不可能に。

あれからしばらく経った今、俺はいくつか不安を抱えていた。

1つは楓を除いてアーガス社員の中でSAOの開発に関わった人間が俺だけということ。

そしてもう1つ、俺には心配がある。

 

 

 

少し前、第3層の攻略が終わった時──つまりは俺とルナが修行をしている期間に1度、俺は剣士の碑を見に行った。

そしてその時俺は一つの名前を見つけた。

 

その名は《Yoshino》。

もちろん違う可能性だってある、だけどそれ以外にそれらしき名前はなかったこともあって「もしかしたら」という不安が襲ってきた。

彼女がSAOにログインする可能性が無いわけじゃない。むしろ()()()()()()()()()()()だ、彼女は喜んでログインするだろう。

もし本当に彼女がこの世界にログインしているのならば俺は───

 

 

 

そんなことを考えていると、芝生を歩く足音が俺に向かって近づいてきた。

 

「ラギ、ここにいたんだ」

「心配かけたか?」

「ううん、そういう訳じゃないよ」

「……何かあるのか?ルナ」

 

俺の真横で止まった足音の正体、ルナがまるで不思議なものでも見るかのような表情で俺の顔を覗いてきた。

上から覗いたあと俺と同じように芝生に横になったルナは突然俺の腕に抱きついて──

 

「シズクちゃん達と一緒になってからあまり二人でいる時間無かったから……あ、変な意味とかじゃないよ?」

「……ならどんな意味でこの行動を」

「ただほら、その……少しでもいいから二人でいたいなーって」

「あのメンバーといる時も何度か……って、ルナ?」

 

告白に近い言葉に返すのを困りながらも会話をしていたが、ふと俺の腕に抱きついているルナが少し抱きつく力を強めて、さらに少しだけ体が震えて……

 

「ラギ、無理してるもん………

私が初めて会った時からずっとそう、ラギは気付いてないかもしれないけど、すごく無理してる………

それなのに私やシズクちゃん、他の2人の事も1人で守ろうとして、1人で全部背負って、第6層から帰ってきた時も今日のあの時も、私達を守ることばっかり考えて……」

「俺はそんなつもりじゃ……」

「カエデちゃんだって言ってたけど、私も怖い。SAOにいるうちにラギが私たちからすごく遠くに行っちゃうんじゃないかって、いつもラギが戦ってる時に思っちゃって……

一人ぼっちだった私がこの世界で初めて会って一緒にいるようになったラギがどんどん離れていっちゃうのが……私は嫌だよ」

「そう、か……」

 

ルナの言葉に対して俺はそんな返答しか出来ず、そのままずっと抱きついているルナを見ることしか出来なかった。

()()()()()があった俺は誰かを守ろうとして動いていた、その結果守れたことは何度かあった。だけどそれは守ったことで何かを得ていた訳ではなく、むしろ周りの……特にルナやカエデには心配をかけてしまっていた。

それでも、俺は誰かを守るということだけは───

 

 

「俺はお前らと離れるつもりは無いし、だからといって誰かを守ることを辞めるつもりもないよ」

「ラギ……でもそれじゃあラギは──」

「俺だって、ルナやみんなと同じように守られるだけで生きていたくはないんだ。

多少無理はするかもしれないけど、誰かを目の前で失うのは二度としたくないからさ、もちろん心配をかけるようなこともしないようにするよ」

「……なんか上手くまとめられた気がする」

「気のせいだよ、それよりこの状況どうするんだ」

「……えいっ」

 

俺が改めての約束をしたあと、少しムスッとした顔を見せたルナは腕に抱きついていた手を離し、突然俺の体に抱きついてきた。

もちろん俺にはそういう趣味はないんだが、はたから見たらヤバいやつなわけで……

 

「ルナ?」

「今まで一緒にいてくれなかった分」

「なんだそれ……」

「しばらくこうさせて………」

 

先程よりもかなり弱く抱きついてきたルナは震え声でそう言った。

拒否する気もなかった俺はそのままルナの気が済むまでこのままの状態でいた。

 

 

数分後。

さすがに抱きつくのを辞めたルナと同時に立ち上がりほぼ同時に笑った後、いつの間にか暗くなっていた空を見上げた。

すると……

 

「ねぇラギ」

「ん?」

「明日1日だけでいいから、2人きりでいたいな」

 

夜空を見上げた俺の袖を引いたルナは少し照れながらそんなことを言った。

 

「心配かけたんだもんな、いいよ、もちろん」

「ありがと、ラギ」

「あぁ、こちらこそ」

 

そんな会話をした俺たちはその後、夕立の霧雨のギルドハウスへと帰還した。

 

目を覚ましたシズクがとても申し訳なさそうに頭を下げてきたり、突然居なくなった俺とルナがカエデに叱られたりしたあと、俺たちは作戦会議……のようなものを開いた。

 

そして………

 

「で、俺はルナと2人だけの休日を取れたわけなんだけども」

「事情は聞かないでおくよ、ラギ」

「そうしてくれると助かる、それでなんで俺の部屋に来たんだ?」

「明日3人で過ごす私たちが言えたことじゃないんだけど、少し気になったことを聞いてさ」

「気になったこと?」

 

会議が終わったあと、就寝となった俺たちはそれぞれ部屋に戻った、はずがライムだけ何故か俺の部屋に入ってきて色々と質問攻めにあった。まぁ特に明日1日は休もうという話を会議で出したことが原因だったけど。

そんなことを話すためだけに部屋に入ってくるようなことはしないと察して本題を振った。

 

「まだ未確定だし噂程度なんだけども、ここ数日間、数人の女性プレイヤーが行方不明になってるらしくて」

「ログアウトしてる、って訳じゃ無いんだよな」

「私も聞いた話だからなんとも、でもまぁ行方不明ってことだしログインしてる状態らしいよ」

「噂程度じゃまだなんとも言えないけど……まぁ警戒する必要はありそうだな」

「ありがと、話はこれだけ」

「ん。おやすみ、ライム」

 

不穏な話を聞いたあと、ライムはすごく眠そうにしながら俺の部屋を出ていった。

プレイヤーの行方不明、普通ありえないことだとは思う。

ましてやログアウト不可であるこの世界で姿を見せないって言うのはかなり謎だ。

もちろん表に出れなくなるプレイヤーも1部はいるがそれが行方不明扱いにはならないはず………

 

 

 

なんてことを考えているうちに、俺も眠気がかなり来てそのまま意識が闇に消えていった。

 

 

 

 

次の日

シズクたち3人を置いて俺とルナは2人きりの時間を満喫するのだった………。




お久しぶりになったよね



はい、なんか色々不安要素多い回でした。
ルナさんリメイクのヒロインなのでは……!?

甘えまくるルナさん、さすがっす。
次回はそんな彼女と2人きりで過ごす1日。

もちろん事故は起きますとも、それがSAO。
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