ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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45:叶わぬ思いと一夜の思い出

次の日。

第一層:はじまりの街

 

今日一日ルナと2人で過ごすという約束を果たすため、俺は一足先に転移門広場に来ていた。

 

「女の子には準備の時間があるの!」

 

と、ルナに言われて渋々1人先に待ち合わせ場所に指定されたここに来たのだが………

 

「何してるんダ?」

 

転移門の4つ角の柱のひとつに背中を預けてルナを待っていると、聞き馴染みのある声が俺に聞こえてきた。

目の前には第一層からの付き合い──と言っても共に活動してる期間は短いのだが──情報屋、アルゴが立っていた。

だがいつものフードを被った姿ではなく、今の彼女は果たして情報屋なのかと疑うほど開放的な軽装をしている。

 

「それはこっちが聞きたい、なんだそのカッコ」

「見て分からないのカ、新調した戦闘用の装備だヨ。」

「今までのやつでも十分じゃなかったか?」

「あっちは防御のステが高めだったんでナ、これは動きやすさと見た目重視で選んだわけダ。どうだ?似合ってるカ?」

 

フードを取った姿を正直覚えていない、なんて言えずに彼女の現装備を何故か深く見た俺はこの装備にどこか見覚えが──

 

「なんか、忍者っぽい」

「ム、聞き捨てならないゾ、ルー坊」

「悪い悪い、それで、新装備のためにうろついてた訳じゃないんだろ?」

「お、誰かを待ってるような表情のルー坊、鋭いナ」

「……そこは触れないでくれ」

「ま、オレっちはこれからハーちゃん達とタワークエストの攻略に行くところダ」

 

装備の感想を答えたところですぐに話題を変えた俺に対してさらに話題を変えながら返答したアルゴはウィンドウを操作しながら本来の目的を軽く答えた。

第6層でやつと戦ってからあまり経ってないが、あの日、着いてくる直前まで彼女達は徐々に更新されていくタワークエストに挑戦している途中だった。

その攻略の続きと考えればアルゴも手伝いに行くのは普通か……

 

 

「ルー坊は待ち合わせの途中みたいだからナ、ハーちゃん達にはよろしく言っとくヨ」

「別にそんなことしなくていいっての、それよりアルゴ──」

「ン、なんダ?」

「女性が行方不明になってるって噂が流れてるだろ?」

「それに関してはオレっちも調査の途中ダ。……ま、噂程度に収めておいた方がプレイヤーたちは気が楽だろうから情報は()()()()()()()()()()出さないでおく」

「そうしてくれると助かる……じゃ、また後で」

「リョーかい」

 

昨日、ライムが話していた女性プレイヤーの失踪情報、噂程度の話だと適当に考えていたが、もし本当に………

アルゴが黒鉄宮の方に歩いて行ったのを見送りながらそんなことを考えること数分、俺の方に向かってくる足音が一つ。

 

「お待たせ、ラギ!」

「ん、遅かった………な?」

 

下を向いていた顔を上げるとそこにはルナがいた。だが、いつもの戦闘用及びギルドハウスで着ている服装とは違い、今のルナは白のワンピース──に似せた服に麦わら帽子という現実で見るような格好をしていた。

 

「どこでそんな服を………」

「実は……商店通りの裏道にステータス無視の見た目重視な装備屋があって、そこで買ったんだ。

ね、どう?似合ってるかな?」

「あぁ、いいと思うよ」

「……なんか冷たい」

「いや、これでも俺なりの感想なんだけど……」

「ま、そんなことはいいや!行こ、ラギ!」

 

こうして、転移門広場に突然現れた現実チックなプレイヤー(ルナ)に手を引かれ、俺は一日のみのデート…?に出発した。

まずはどこに行くか、と言っても現実とは違いSAOにはレジャー施設や屋内外で遊べるような場所は少ない。

あったとしてもかなり限られていたり、プレイヤーの力量が必要になるバトルをメインとしたようなものばかり。

そんな、出かけるには場所の少ないこの世界で何をするのだろう、なんて考えは彼女には無いらしく、俺は手を引かれながら商店通りへと小走りで向かっていった。

 

 

 

 

「見て見てこれ!綺麗じゃない!?」

「あぁ、確かにキレイだな……」

 

そんなこんなで一発目に来たのは商店通りの裏路地にあるとある古臭い店。

その一角に、小さなアクセサリーなどの装飾品が並べられていた。

指輪のようなものから、首飾り、髪飾り、ブレスレット等、現実の女子達が見れば喜ぶ品揃えなのだろうが、特にそういうものには興味のない俺からすれば身につける小物程度に見えてしまう。

 

「……ステアップは無いのか」

「む、そういう所見るんだ………」

 

そんな商品のひとつに触れると、値段とともにステータスが表示される。

値段はそこそこお高いものから安いものまであるが、その全てにステータスが【NULL】と表記されている。

なんの効果もない装備品か、と心の中で考えていたはずが、声に出ていたらしく、ルナはムッとした表情で俺の横腹をつついてきた。

 

「悪い、つい……」

「もう……」

 

数多くのアクセサリーを見た彼女の表情は、終始機嫌が悪かったような……。

そんな彼女を横目で見ていると、先に外に行ってて、と言われてしまい、俺は言われた通り外で待っていると……

何かを購入した音と共に彼女が店から出てきた。

 

「何か買ったのか?」

「……アクセサリーに興味無いラギには関係なーい」

「んな事言うなよ……悪かったって」

「それじゃ次のお店行こ!」

「了解。」

 

しばらく機嫌の戻らなかった彼女に連れられ、俺は裏路地にある数多くの店を巡った。

そして、ずっと歩き回った疲れを癒すため、俺たちはとある場所に足を運んだ。

 

 

 

 

 

SAO第二層

浴混の洞窟

 

俺たちが向かったのは、第二層迷宮区攻略の会議が開かれるというタイミングで1部プレイヤーが受けたクエストのクリア報酬として発見されたダンジョンの奥地にある知る人ぞ知る秘湯。

第4層攻略辺りには来ようと話していたものの、色々と立て続けに起きていたため、先延ばしになってしまっていたのを思い出し、来てみたのだが……

 

 

「「なんで混浴なんだ(なの)!?」」

 

入口には装備用なのか、何十枚とバスタオルが置かれていて、入口は男女別に用意されていた。

それを見て安心していざ入ってみたら、広い空間にThe温泉と言えるものが広がっていた。だが、感心しているのもつかの間、俺の真横から一切の仕切りなしにルナの声が聞こえたのだ。

嫌な予感を覚えながら横を見てみると、入口に置いてあったバスタオルに身を包むことさえせずにその場に立っているルナの姿があった。

向こうもそれに気づいたところで戻ることをせずに無言で温泉に体を入れた。

俺もそれなりの距離を空けた場所に入ったあと、ほぼ同時に混浴であることを突っ込んだ。

だがそれも虚しく、誰もいない空間に俺たちの声が響くだけだった。

 

 

「………見た?」

「見てない」

「……嘘だ」

「ちょっとチラっと見えただけで見てない」

「……見てるじゃん、それ」

「仕方ないだろ、バスタオルしてないそっちが悪い」

「なんで開き直ってるのさ………」

 

なんて会話をお互い繰り返した後、温泉から出た俺たちは癒すために入ったはずの温泉でどっと疲れたため、結局前日と同様に湖畔公園に来ていた。

 

 

「またここに来ちゃったな」

「うーん……もっといい所があればなぁ」

「その言い方じゃここが悪いみたいだな……」

 

芝生に転がった昨日とは違い、湖畔公園の名の通り、公園の横に広がる湖の音を聞きながらベンチに座った俺らは、近くに売っていた団子──に似たもの──を食べながら愚痴のように聞こえる話をしていた。

 

「──ねぇ、ラギ。」

「ん?なんだ?」

 

「……楽しい?」

 

そして、不意にルナは話題を変え………

 

「楽しいって……何がさ?」

「……私と、みんなといるの、楽しい?」

 

突然、ルナはそんな質問をしてきた。

それは、いつものように無邪気で、笑顔を見せる彼女とは違う声のトーンで俺に聞いてきた。

 

正直、彼女に聞かれるまでは深く考えることは無かった。

この日常を「楽しい」と思えるのか、それとも別の感情を得ているのか、それは俺にも分からない。

何故彼女がこんなことを聞いてきたのかもわからない、でも───

 

「俺はさ、ルナ───」

 

楽しいか、楽しくないかは答えられない。

どんな感情で、彼女達と過ごしているのかは、今の俺には分からない。

 

「俺は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それが、俺の答えだ。

 

 

 

「……そっか」

「そういうルナはどうなんだ?」

「私?私はね………」

 

ルナは無言で立ち上がり、目の前に広がる夕日に照らされた湖の方を向きながらたった一言を呟いた。

 

「私は───みんなが、ラギが好きだよ」

 

夕日を背に振り返った彼女が静かにそう答えると、狙ったかのように優しい風が彼女の髪を揺らした。

 

「ねぇ、ラギ───」

 

俺の名前を呼んだ彼女はゆっくりと近づいて俺の前に立つと、ウィンドウを操作して何かを取り出した素振りを見せた。

 

「これからもずっと、私のことは忘れないでね」

 

そんなことを口にしたあと、俺の左手に何かをつけ、そのまま俺の頬にキスをした。

 

 

「お前のことを忘れるわけないだろ、ルナ。

それと──ありがとな」

「……うんっ!」

 

ルナが俺から離れたところで左手を見ると、俺の人差し指には月を模した宝石が装飾された指輪がつけられていた。

きっと、あのアクセサリー屋でルナが購入していたものだろう。

 

 

「それじゃ、帰ろ、ラギ」

「あぁ、行こう───俺たちの《ホーム》に」

 

 

先を歩くルナの後ろ姿を見ながら俺はありもしない《嫌な不安》を感じていた。

 

 

もし、この世界で彼女が死んでしまったら。

目の前で、助けることが出来なかったら。

俺は、どうするのだろう。

 

そんなことを考えながら、夕立の霧雨のギルドハウスに帰った。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

その日の夜。

夕立の霧雨ギルドホーム

女子4人部屋

ルナ目線

 

帰宅後、遅かったこともあり先に寝てしまったラギと一日中何をしていたのかを私はシズクちゃんに聞かれていた。

 

「ねぇねぇ、ラギが付けてたあの指輪、ルナのプレゼント?」

「ん、そうだけど……」

「アピールすごいなー……もしかして、ルナちゃんもラギのこと好き?」

「………好きだよ、でも──」

「……でも?」

 

 

シズクちゃんに聞かれたことに対し、正確な答えは出せない。

私は、ラギの事はすごく好き。その気持ちは誰にも負けてない。それぐらいには好き。

だけど、それでも彼は───

 

 

「私じゃダメだよ………」

「ダメって……何が?」

「……私じゃ、ラギは──」

 

彼に、私の気持ちは届かない。

どれだけ好きだと叫んでも、彼にその思いは伝わらない。

それだけじゃない。

私じゃ、私がそばにいるだけでは───

 

 

「ラギは、本当の笑顔を出せない───」

 

いつの間にか、頬を流れるものがあった。

泣かないと決めていたはずなのに、それでも《それ》は意志とは関係なく私の頬を流れていく。

 

「ルナ……」

「ごめん、みんな……こんな暗い雰囲気にしちゃって」

「……もう遅いから寝よう」

 

私の言葉に対し、何も言わずにライムちゃんは部屋の明かりを消した。

そのあと、ライムちゃんが私のベットの縁に座り私の気持ちが落ち着くまで話をしてくれた。

それに安心したのか、私は頬に涙を残したまま眠りについていた。




1ヶ月も待たせたな

申し訳ないです。ホント済まないと思ってる



お久しぶりなので今回だけ色々と中ででてきたものの説明を

アルゴ(新装備)
情報屋として活動する彼女が突然装備を変更し、いつもつけているフードを外した。
装備の特徴として動きやすさと見た目重視と発言した通りスピードも今まで以上になっている。
が、それはフィールドに出た時、及び戦闘時だけの装備であり情報屋の活動中は顔を隠す為にフード付きの服装になる。
ちなみに装備だけでなく武器も新規を獲得しているとかいないとか……



ルナとプレゼント
SAOリメイク前(悪剣)では第一層にて出番が終わってしまった分、ヒロインらしさを出している。好意も抱いてます。
そんな彼女がプレゼントした指輪は……

『ルナの指輪』
無名の指輪。
三日月を模した赤い宝石が装飾されている。
何の性能も無いが、暖かな気持ちが込められている。

ラギの不安
もし、ルナが死んでしまったら。
彼女に対するそんな気持ちが彼に何かを及ぼそうとしている。


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