ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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46:それぞれの思い、届かぬ想い

第一層はじまりの街

展望台エリア:カフェテリア

 

(ラギとルナのデートと同日)

 

快く「いってらっしゃい」と答えたものの、その間にクエストを受けるようなこともレベリングに出かけることもしないと決めてしまった夕立の霧雨3人ははじまりの街の中心部から少し離れた場所にある展望台にひっそりと作られたカフェにて時間を潰すことにした。

 

 

 

が、毎日同じ部屋で寝ている3人の集まりということもあり、日常的な話はほとんど話題が無くなってしまい、注文した飲み物が来るまで3人は全く口を開かず、静かな空気が流れていた………

 

 

「あーもう!せっかく私たち3人だけになったんだから何かしないと!」

 

飲み物が到着して少し経ち、やっと第一声を発したのはリーダーであるシズク。

机を強く叩き立ち上がった彼女はそんなことを言ったが………

 

「って言われても……」

「何をすればいいのか……」

「うーん………そうなんだよね……」

 

言い出した彼女もほか2人も何か出来ることを考えるが何も思いつかず、結局また沈黙が生まれてしまった。

 

 

 

「……ねぇ、シズク」

「どうしたのライム?」

「……ラギのこと、どう思ってるんだ?」

「───ふぇ?」

 

 

沈黙から数分、口を開いたライムは突然シズクに質問を投げた。

不意打ち過ぎた質問に変な声が出た彼女は少し停止してから我に返り返答をするが……

 

 

「私は……ラギの事───

好きだって思ってる」

 

人に伝えるテンションとは程遠い声色で2人の方を向きそう答えたシズクは表情を曇らせて言葉を続けた。

 

「でも……

ラギは私には振り向かないよ」

 

シズクは俯いてそう呟いた。

 

「シズクちゃん……」

「そんなことないと思うけど?」

「そう、かな……?」

 

俯いたままの彼女の様子を見てフォローするように言葉をかけたライムは注文したコーヒーに似た何かを少し飲んだあと、彼女を励ますように「可能性」を話した。

 

「ラギが何を考えてるかわからないし、私たち含めて周りに女子が多いけど……好きって気持ちを伝えればきっと思いは届くと思う」

「そうなら、いいな」

 

ライムの言葉が届いたのか、彼女は2人の方を向き直して小さく笑った。

そんな彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいた………

 

 

「……そういうふたりはどう思ってるの?」

「やっぱ聞かれるか……」

「私だけみっともない姿見せちゃったし2人にも気持ちを聞きたいの!」

 

吹っ切れたのか、リーダーらしく場を仕切る彼女に流されてライムとカエデはそれぞれが思ってる彼への気持ちを話すことになり……

 

「私は……好きとかそういう気持ちは──無い。

言葉にしにくいんだけど……私にとっては──

『心強い味方』、かな」

 

飲み物が入ったカップを片手に彼に対する気持ちを答えたライムはなんとも言えない表情をしていた。

 

「それ好きってことじゃないの?」

「違うっての、それに──」

「それに?」

「……いや、なんでもないよ。

それで、カエデは?」

 

好きという感覚ではないと否定したライムは何かを言おうとしたが、誤魔化してカエデに話を振った。

 

「わ、私は……え、っと──

先輩の事は……好きだと思ってる」

「「知ってる」」

 

ライムとシズクの告白を聞いていた彼女から、少し戸惑いながら気持ちが発せられた。

察していた2人は同時に同じ反応をした。

 

「え、何その反応……」

「ま、わかりやすかったから」

「むぅ……2人ともわかってて聞いたの?」

「「うん」」

 

まさか自分の気持ちが知られているとは思わずに勇気をだして告白したカエデは机に突っ伏して赤くなった頬を隠した。

そんな様子を見た2人は思わず笑ってしまい、カエデもそれにつられて笑顔になった。

 

 

ずっと、こんな時間が続けばいい。カエデはそんなことを思いながら2人にとある提案をした。

 

「ねぇ、3人で展望台のてっぺんにある鐘鳴らそうよ」

「賛成!ね、ライムも行くよ!」

「わかってるって、いつの間にか時間もいい感じだし最後にやっていこう」

 

彼女がした提案、それはここ展望台エリアの一番高いところにある鐘を鳴らそうというもの。

2人は拒否せずに賛成の意を示したところで3人ともカフェテリアを離れて鐘の所へ向かった。

 

 

「それじゃ、せーので行くよ!」

鐘から伸びた縄を3人で掴んだところでリーダーのシズクが合図を決めた。

2人は無言で頷き、彼女もそれを確認した。

そして───

 

「「「せーの──!」」」

 

それぞれの思いを込めて縄を動かした。

はじまりの街転移門広場にある大きな鐘には劣るものの、それなりに大きな音を鳴り響かせた。

その鐘の音は、心を安らかにしてくれるような、そんな優しい音だった。

 

「……さ、帰ろっか!」

「そうだね、帰ろう」

「うん!」

 

余韻に浸ったあと、彼女たちは自分たちのギルドハウスに帰っていった。

そして、そこでもう1人、彼に思いを馳せる少女がいたことを知る──。

 

 

 

◇◆◇◆

夕立の霧雨ギルドハウス

女子部屋

ライム目線

 

部屋の明かりを消して3人が寝たところで私はさっきのルナの発言を思い返していた。

 

「笑顔を出せない……ね」

 

彼女はそんな発言をした。

ラギに対しての発言だと理解している、だけど──

 

「……ラギは罪だらけだな」

 

彼に対しての色々な思いを聞いた私はとある覚悟を決めた。

 

 

「……一度、本気でぶつかるしかない──やろう」

 

 

彼───ラギと。

自分の実力全てを、そして彼女達の気持ちを代わりに伝えるために。

 

 

 

 

 

その直後。

ラギのもとに1件のメッセージが届いていた──。

 

『ラギへ。

明日、湖畔公園に来てくれ』

 

と、たった一言を添えて。




2話投稿。
ルナ×ラギの方を書いておきながら裏側でなにか起きないわけがないということで仲良し3人組(夕立の霧雨)のとても平和な回。

シズクとカエデの彼に対する思い。
ライムのふつーな思い。

そんな気持ちも、当人には届かない……


展望台エリア及び鳴らせる鐘ははじまりの街に無いかもですが湖畔公園も無いかもなので無問題。
ちなみに元ネタはSAOホロリアです。




そして次回。
2人の気持ちを聞いた彼女は、彼に対しての思いが変化し……
その思いをぶつけるため、剣をとる───。
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