ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
次の日。
早朝
第一層はじまりの街【湖畔公園】
朝早く、日が昇り始めたぐらいの時間に俺は湖畔公園に来ていた。
理由はただ一つ。
昨日、寝ている間にライムから送られてきたメッセージ、そこに指定されていたのがここだったのだ。
「……なんでこんなところに呼んだんだ」
「話がしたくてね」
待つこと数分、近づいてきた気配を感じて後ろにいる彼女に質問を投げる。
彼女は静かにそう答えたのを確認し、俺が彼女の方を向く、そして………
「話ってなんだ?」
「……このギルドから脱退してくれ」
ライムは声色を一変させて俺にそう伝えてきた。
「断る。冗談でもそんなこと言われてわかりました、とはならないだろ
理由があるなら話せよ、ライム」
「理由、ね。そんなのわかってるんじゃないの?」
「……わかってたら質問してねぇよ」
「そりゃそうだ………率直に言わせてもらう。
あんたがあのギルドにいたら、全員が楽しく過ごせないんだよ」
楽しく過ごせない。彼女はそんなことを言った。
そして、その原因が俺にあると。
何を馬鹿なことを………
───先輩のことが心配なんです
──ラギ、無茶はダメだよ……
ふと、ここ数日で聞いた言葉が脳裏に響いた。
2つの声の主は、相手である俺に向かって、悲しそうな顔で言葉を発していた。
(……あぁ、確かに。俺がいなければ───)
声の主である2人を悲しませることも無いだろう。
更にはギルドメンバー全員を危険な目に遭わせることも無くなるはずだ。
「……でもな、ライム」
「……なに?」
「──アイツらが俺と一緒にいて楽しくないなんて一言でも発したか?」
「無いね。それが?」
「当人から言われれば俺も少しは考えが違っただろうけどな
……当人でもないお前に言われる筋合いはないんだよ」
「そっか、そりゃそうだ……なら、私がやることはひとつ」
ライムとの短い言い争いは彼女によって止められ、そして──
俺の元に1件のメッセージが届いた。
──ライムからデュエルの申込がありました。
「……受けろ、ラギ」
「わかった、受けて立つ」
承諾ボタンを押してデュエルの詳細が表示された。
ルールは《半減決着》、アーガス内では《制限時間モード》と呼んでいたはずのもの。
制限時間は10分、向こうが決めたものに俺が承認した。
「もしあんたが負けたら、あのギルドから抜けてもらう」
「……いいぜ、それで」
ライムが淡々と勝敗時の条件を言った。
その言葉に、どれだけ本気かが伝わってくる。もちろん承諾する気は無いのだが、あいつの気持ちを受けるためにも条件をのんだ。
「……行くぞ」
お互いに剣を持ち、デュエルが開始した。
お互いが構えてすぐ、ライムが先に動いた。
少し離れた位置にいる俺の元に走ってきて右手に持った剣を普通に振り下ろしてきた。
振り下ろされた剣が当たる前に防御の姿勢をとってダメージの発生を防いだ。
互いにぶつかった剣は──仮想のデータの塊ではあるが──火花のようなエフェクトを発生させた。
力では押し切れないと考えたのか、ライムは数歩後ろに下がり姿勢を低くして剣をかまえた。
そして、地面を強く蹴り、俺のすぐ近くまで来たところで高く飛び、《ソニックリープ》に近い動きで剣を振り下ろした。
「喰らえ──っ!」
振り下ろされた剣を受け止め、すぐに弾き返す。
だがライムはこうなることをわかっていたのか、すぐに体勢を立て直してソードスキルでは無い普通の連撃を様々な角度から放ってきた。
(………遅い──っ!)
数連撃が終わったところで未だ続く連撃を止めるため、受け止めるだけにしていた剣を持ち直して彼女の攻撃の隙ができたところになぎ払いのような一撃を放った。
彼女は間一髪で避け、剣を構え直すと、薄赤色の光を纏わせながら水平切りのモーションをとり、《ホリゾンタル》を発動した。
レベルの差で普通に防げる威力ではあるが、このまま防ぎ続けるだけじゃ埒が明かない、と考えた俺は咄嗟に右手に持っている剣に光を纏わせながら垂直切り、《バーチカル》を発動させてライムの剣と再度鍔迫り合いを発生させた。
「──は、──の気持ちを──ない」
鍔迫り合いが起きた瞬間に、ライムが小さく何かを呟いた。
「なんだ?」
「……お前は3人の気持ちを考えてない、そう言ったんだ──っ!」
彼女に聞き返すと、そんな返答をし、鍔迫り合いを起こしている剣にを持つ手に力を込めて俺を押して剣を弾いた。
「何も………知らないくせに──!」
「──っ!」
バランスを崩した俺目掛けてライムは剣を振り下ろした。
その剣に青白い光が纏いソードスキル《バーチカル》となり無防備な俺に直撃した。
「……本気で来いよ、ラギ。
手を抜いて負けるなんてさせないから」
「あぁ、本気で行かせてもらおうか」
ライムのソードスキルが直撃したことで俺のHPは2割ほど減った。
本気で来いと言われた以上、その言葉通り、本気で行かせてもらうしかないだろう。
「ふっ───!」
「早──くそっ!」
ソードスキル発動後の硬直にて動けないライムの隙をつくように《ホリゾンタル》を放つ。
だが、間一髪で防御の姿勢をとったライムには攻撃は当たらなかった。
「次の一撃で決める」
「やれるもんならやってみな」
目線上に表示された残り時間は早くもあと1分を切っていた。
ライムの方が残体力が多いため、このまま向こうが耐久すれば勝ちになる訳だが、今回はそう言うのが目的ではないため、向こうも最後の一瞬まで本気で戦うらしい。
「……はあぁぁ!!」
先に行動したのはライム。
俺の頭上から振り下ろされた剣には薄緑色の光が発生し、ソードスキルのモーションを発動させた。
「──これが私の、本気だァァァ!!」
さすがの俺もソードスキル発動時の光でどのソードスキルが発動するかまでは理解できない。
だが、片手直剣で垂直に振り下ろすモーションから始まるソードスキルはいくつかある。
(ライムが使えるかは別だが……これで決める──っ!)
ライムが振り下ろしてきた剣をギリギリで回避。
そして、一か八かの勘は当たり、ライムは2撃目の垂直切りのモーションを始めた。
「そこだ───っ!」
彼女のソードスキルが当たる寸前で俺はソードスキルの発動を意味する薄水色の光を剣に纏わせた。
そして、並行切りの動きで彼女の剣を受け止める。
「──っ、ま、だだ……!」
剣を受け止められた彼女は1歩だけ下がり、ソードスキルの3撃目を放った。
「それは俺もだよ……!」
再び振り下ろされた剣を水平切りで受け止めつつ、俺は彼女の剣の軌道を反らすように剣を移動させた。
彼女はソードスキルの勢いが残ったまま俺の横へ剣を振り下ろした。
「……これで──ラストだ!」
彼女はまだソードスキルを終えず、体勢を立て直しながら4撃目を俺の死角から放った。
このままでは当たる。
なんて考えま持たずに俺は自分のソードスキルの3撃目を振り向く勢いに乗せて放ち、彼女の攻撃を防いだ。
そして、三度になる軌道逸らしを行い隙が出来た彼女に最後の4撃目をヒットさせた。
それと同時にデュエル終了のアラートが鳴った。
「……やっぱり、勝てなかったか」
「まさかお前が《バーチカルスクエア》を使えるとはな……
それで、結局俺の気持ちは伝わったのか?」
「んなわけ、むしろわからなくなったよ」
デュエル終了後、彼女は剣をしまい、悔しそうに呟いた。
未だに彼女がデュエルしようと言ってきたことの理由が分からないんだが……
「ねぇ、ラギ」
「なんだ?」
「一つだけ、聞かせてくれ」
「……あぁ」
彼女は真剣な眼差しで俺を見てきた。
そして、質問をした。
「あんたは、私たちのことをどう思ってるんだ」
「どうって……ギルドメンバー、仲間と思ってるよ」
「……それだけ?」
「正直なことを言えってか。
俺は、お前らのことは好きだと思ってるよ」
「……は?」
「そして、お前らが俺のことを好きなのはわかってる。」
彼女は思ってた答えと違う、といった顔をして少しフリーズしたあと、突然俺の胸ぐらを掴んできた。
「……なら、その気持ちがわかってるなら──
なんで、なんでその気持ちを受け取らないんだよ!!」
彼女は震えていた。
それが怒りか悲しみかは俺には分からないが………
「全員が俺の事を好きだって思ってることは薄々気づいてた。
でもな、ライム」
「……何」
「もし、誰かの気持ちを受け取ってしまった時、選ばなかったヤツらの気持ちはどうなる」
「それは……」
「それだけじゃない。
俺はさ、怖いんだよ」
「怖い?」
「もし、好きになった人が、この世界で死んでしまったら
俺は同じ過ちを繰り返すことになるんだ」
目の前で誰かが傷ついていく光景。
俺は、もう二度とそんな光景は見たくない。
だからこそ、好きであることすら拒もうとしているのだ。
「……俺の気持ちはそんなとこだ。
悪いな、ライム。
「なっ、その言い方まるで私も好きみたいじゃない!?」
「……さぁな」
「なんだよそれ……って、帰ろうとしてる!?」
自分の考えはあらかた伝えた。
といったところでライムを少しからかいながらギルドハウスに帰ろうと歩みを宿屋通りに向けた。
朝早いのか、
「……そうだ、さっきのお前の要求だが」
「ギルドなら抜けろなんて言わな「10層、俺がギルドにいるのはそこまでだ」……は?」
「お前の強さを見てわかった。もう俺の助力はいらないだろ?」
「待てよ、シズクたちがどう思うか──」
とんでもないことを伝えたのは理解している。そして、ライムの反応も当たり前だ。
──なんて考えていたその時だった。
『プレイヤー2名、
そんなアナウンスと共に俺たちは強制的に転移させられた。
────
???
「……まずいな」
「まずいって、何が」
「──前を見てみろ」
転移した直後、俺は嫌な予感がして周りの様子を見て最悪の状況だと呟いた。
転移前に聞こえたアナウンス、それが何を意味しているのかは不本意だが理解している。
そして、転移した先には俺たちだけでなく、巨大な影が目の前にはあった。
「なんだよ……あいつ」
「──あれは、『イルファング・ザ・コボルトロード』
SAO第一層のボスモンスターだ。」
俺たちの目の前には俺が数ヶ月前に戦ったことのあるモンスターが武器を持って立っていた。
(まさか……消したはずだが──)
目の前にいるモンスターのことも含め、この空間が何か、考えたくはなかったが──
このエリアは
俺が身勝手に作り、消されたはずの『
そして、このエリアは───
死ぬことを前提に作られている。
筆が乗った
1ヶ月空いてますすみません。
ラギの気持ち、ライムの気持ちがそれぞれぶつかり、伝わらず言葉で伝えた。
その結果は、何かを得られたのだろうか──
そして、次回。
突然転移させられたラギ達の運命は──!?