ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
間違いないだろう。
ここは、
そして、俺とライムの目の前には、第一層の階層守護モンスター、【イルファング・ザ・コボルドロード】が立っている。
「おいラギ!なんなんだよアレ!」
「……このエリアに出てくる
「再起……?このエリアのこと何か知ってるなら教えろよ、ボスのタグが向いてない今のうちに!」
「端的に言うぞ、ここは──
「なっ……なんだよそれ……」
俺に問い詰めてきたライムは詳細を聞いた直後、状況を把握したのか声に力が無くなった。
先程までの元気などどこかに飛んでいったかのようにその場に立ち尽くしている彼女は小声で何かを呟いたあと、吹っ切れたのか剣を装備してコボルドロードの方へ走っていった。
「待て!……あのバカ──!」
(何考えてんだ……)
接近してくるライムに気づいたのか、コボルドは彼女にタグを向けた。
そして、装備しているノダチを構えてライムに向けて振り下ろした。
彼女は防ぐ素振りを一切見せずコボルドに接近していく。
(レベル差は明らかだ、使いたくないんだが……)
「システムコール…!」
そう口にした俺の視野には《片手直剣ソードスキル全開放》と表示された。
それを確認したうえでライムのほうへ少し走ったところで地面を強く蹴り、右手に装備した片手直剣を大きく振り下ろすモーションを起こし、ソードスキルを発生させる。
コボルドのノダチが彼女に当たるよりも早く、ソードスキルを発動させ、ノダチの軌道をずらし、彼女への直撃を避けた。
その勢いのままコボルドのほうへ向き発動したソードスキルの残りの連撃を与える。
高所からの振り下ろしの一撃目に続き、地面と水平に四連撃、さらに止めずに地面と水平に四連撃、そしてそのままコボルドの腹に向けて最後の一撃となる突きをした。
合計で十連撃、これだけの連撃を食らわせればさすがにHPもかなり減ったはず……
そう思っていたが、コボルドの三本あるHPは一本目の半分ほどしか減っていなかった。
「くそっ……10レベ差だけってわけじゃないのか──
ライム!合わせるぞ!」
「……り」
片手直剣のSAO内最奥義、《ノヴァ・アセンション》をヒットさせたにも関わらずあまりにも減ってないコボルドのHPはほとんど減っていない。
それならとライムと合わせて攻撃をしようと声をかけるが、ライムは小声で何かをつぶやくだけで、俺の声には答えなかった。
そんな俺らの状態などお構い無しと言わんばかりに、俺にタゲを向けたコボルドは攻撃の構えをとってすぐさまそれを行動に移した。
「……ふざけんじゃ───ねぇぇ!!」
ボスの攻撃を間一髪避けたと同時に、俺のすぐ横にいるライムに向けて剣──では無く拳で1発頬を殴った。
「痛った……何すんのさ!?」
「それはこっちのセリフだ馬鹿!ぼーっとしてるんじゃねぇよ!」
殴られたことによる痛みで我に返ったのか、ライムは半ギレで質問をした。
未だ止まぬコボルドの攻撃を防ぎながら彼女に怒りをぶつけ、その勢いでボスにバーチカルを当てる。
「お前はここで死にたいのか!?」
「そんなわけな──「なら剣をとれ!戦え!」そんなこと言ったって……」
「わかってる、俺だって正直もう無理だろって思ってるよ。でもな──
運命なんか誰にもわからないだろ?……抗え、運命に」
「何それ、励ましのつもり?──ラギ、攻撃来る!」
俺のちょっとカッコつけた励ましが効いたのか、彼女は剣を装備した。
と同時にコボルドが攻撃してくることを伝えてくれたため、俺も防ぐ体制になりコボルドの攻撃は難なく防いだ。
「片手直剣のソードスキルであの減りだ、正直勝ち目は薄い。
それだけじゃなくここじゃ管理者権限もソードスキルの解放ぐらいしか使えないみたいだ。長い耐久戦になるぞ」
「もう理解したってば、私もこの《地獄》を」
「なら結構……行くぞ!」
俺とライムは同時に地面を蹴り左右に別れた。
コボルドのタゲは──当たり前だが──未だに俺の方に向いたまま。
それを利用して俺がコボルドの気を引き、その隙にライムが攻撃をする、という作戦を目線で伝えてみたのだが、なんとか伝わってくれたみたいでライムはコボルドの背後へと回った。
「来い、コボルド!」
「Uruuuaa!!」
俺らの作戦通り、コボルドのタゲは俺に向いた。そして挑発すると俺に向けてそのノダチをおおきく振り下ろした。
ノダチを受け止め、一気に弾き返す、するとコボルドはバランスを崩す。
その隙を狙い背後に回ったライムが手に持つ剣に光を纏わせ、攻撃をする。
「ラギ、スイッチ!」
「あぁ、任せろ!」
ライムの放ったソードスキル《バーチカル》を無防備で受けたコボルドは、背中を押されたことにより体勢が元に戻り、再び攻撃をしようと構えをとる。
そして、コボルドの攻撃は三度俺に向かってきた。
俺は《ホリゾンタル》に近い動きで振り下ろされたノダチを受け止めると、今度は弾き返すのではなく
予想外の動きに驚いたのか、コボルドの動きが止まる。
そこに狙いを定めて片手直剣単発技《ヴォーパルストライク》を放つ。
コボルドは腹部に直撃した勢いでノックバックが発生し、後ろへと飛んでいった。
地面に仰向けに倒れたコボルドのHPは、やっと1本目がなくなったところで止まっていた。
「これでやっと3分の1か……ライム、大丈夫か?」
「減ってるってわかっただけまだマシ、それよりラギこそ大丈夫なのか?」
「悪いが残り3分で管理者権限のソードスキル解放が消える。それを超えれば使えるのはスクエアまでだ」
「話してる余裕もないってことか……それより、また来る」
彼女はまだやれると薄く笑いながら答えた。
先程までの表情とはかなり違っていたのを確認しつつも現状は最悪だと再認識した。
会話を終えたところでコボルドは立ち上がり再度攻撃の構えをとった。そして、地面を一気にけったコボルドは俺たち──正確にはライムの方に──接近して、左側に構えたノダチを大きく振りかぶった。
いきなりの攻撃で構える暇もなかったライムはノダチをモロにくらい俺の後ろへ吹き飛ばされた。
このクエストの仕様か、エリアに入る前はパーティになっていなかったライムといつの間にかパーティを組んでいた。
そのため、お互いのHPは確認できるのだが──
コボルドの攻撃をもろに受けたライムのHPは、3分の2以上、レッドゾーンまで減っていた。
そして彼女はその場に倒れ込んだまま、動かなくなっている。
(回復に行ったところでその隙にやられるだけだ…どうすれば……)
などと考えている間にもコボルドは止まらず、次は俺に攻撃をしてきた。
防ぎ、弾き返すが攻撃に移すタイミングも無く、俺はコボルドの攻撃を防御することしか出来なくなってしまった。
だが、一つだけ、この場から動かずともライムのHPを回復する手段はある。
それをしようにもコボルドの攻撃はさらに激しくなっていき、隙が生まれない。
このまま押し切られてしまえば俺も危ないのだが……
「くっ……そ……!」
コボルドは確実に俺を仕留めるためにか、一気に攻撃の威力を上げた。
ギリギリ受け止めたが、片手直剣ではノダチを受け止めきれず、すこしずつ押し込まれ、コボルドのノダチが俺の肩に当たり、HPがじわじわと減っていく。
(どう……すれば……!)
さらにノダチが深く入り、ついにはHPがレッドゾーンまで行き、もうダメかと思ったその時────
《SS適合テストを開始します、開始のためモンスターは初期位置へ移動》
《繰り返します───SS適合テスト────》
HPがあと数ミリというところでそんなアナウンスがエリア全体に鳴り響き、俺の目線上にメッセージウィンドウが表示された。
さらにはコボルドからタゲが外され、最初にいた場所に戻っていた。
───
システムメッセージ
プレイヤー:ragi、raimuのSS適合性をチェックします
なおこのテストが終わるまではエクストラスキル等の使用が不可となります
───
突然始まった適合テストとやらの詳細がメッセージには表示されていた。とはいえ何がクリア条件なのかは全く書かれておらず、何をすればいいのかわからないままだ。
まずはテスト参加者に含まれているライムのHPを回復しようと思ったが──
「ポーションの使用制限……!?」
コボルドのタゲが向いてないうちに彼女の元に駆け寄ってポーションを使おうとしたところでウィンドウに使用制限が書かれていた。
ポーション他回復アイテムの使用制限は全て含めて3回のみ。しかもパーティメンバーでその回数は共通。
2人で1個ずつポーションを使うとしても回復できる量はせいぜい全体の2割ほど、イエローゲージの半分程度しか回復はできないだろう。
となればポーションを使うのは決まっている。
◇◆◇◆
痛い。なんて言葉で表せるのか分からないけど、ほんの少し、私の体は強い衝撃を受けた。
そして、ほんの少し気を失っていた私が、目を覚ました時には、私のHPはほぼMAXの状態のままだった。
「なん……で……?」
目の前にいる彼にそう問いかける。
目線上にはよく分からないメッセージも出ているけどそんなことは別。
今、私の前にいる彼のHPゲージは赤く、死ぬ寸前を示している。
「悪いな、SS適合テストとやらでポーションに使用制限が出来たみたいだ。
だから、お前に全部使った」
「馬鹿なの……?もし次あんたが攻撃を受ければ………」
「その前に倒せばいいってことだろ、管理者権限はもちろん他も使えなくなってるけど……まぁ、なんとかなる──だからお前はそこで待ってろ」
彼は笑顔でそう答えると立ち上がり目の前のボスの方に向いた。
数歩前に出てから剣を構え、戦闘態勢になった。
それに気づいたのか、コボルドは彼にターゲットを向け、攻撃の構えをとった。
(このままじゃ……ラギが………
私が、動かないと──!)
仰向けに倒れた体を起こして傍に落ちている剣をとる。
コボルドの攻撃よりもはやく、地面を蹴りソードスキルのモーションを発動させる───
◆◇◆◇
再びタゲを向けたコボルドはノダチを深く構えそのまま俺の方に向かって突進するように近づき、そのノダチを振りかぶった。はずが、コボルドの攻撃は俺に当たるよりも前に阻止された。
俺とコボルドの間には、ソードスキルを終えた直後のライムが立っていた。
「私だって戦う!さっきそう言ったでしょ!」
「お前……あぁ、そうだったな──同時にソードスキル、行くぞ!」
「了解!」
突然攻撃を防がれたことによりバランスを崩したコボルドに向けて俺とライムのソードスキルが同時に炸裂。
その時だった。
俺の放った《ホリゾンタル》とライムの使った《バーチカル》のモーションが終わったと同時に、コボルドにどこからともなく追加攻撃のようなダメージが数発発生した。
それだけでなく、ソードスキルを使用した直後の俺らは何の縛りもなく、普通に動けた。
そして──
《クロッシングスキルの発動を確認。未確証の為再度発動を要求します》
というシステムアナウンスがエリアに響いた。
「クロッシングスキル……?ラギ、なんだそれ?」
「わからないが、お前の方にも出てるだろうSS適合テストと関係してるのは間違いないだろうな───攻撃来るぞ!」
「あぁもうゆっくり話させろっての───!」
再度同じような攻撃のモーションで振り下ろしてくるコボルドのノダチをライムが受け止め、その間に俺がソードスキルではない普通の連撃を数発与える。
それによりよろけたコボルドに向けて俺とライムが同時に《ホリゾンタル》を放つ。すると、先程と同様にコボルドに追加攻撃のような物が発動した。
そのまま、コボルドのHPは尽き、ポリゴンの欠片となり散っていった。
《SS適合テストの完了。及びゲリラクエストを終了》
というアナウンスメッセージと共に俺らは強制的に転移させられた。
───────
はじまりの街
湖畔公園
「……終わった、のか」
「───バカ!」
「ちょっ、急になんだ──って何泣いてるんだ?」
「泣いてない……ただ心配しただけ」
俺たちは何事も無かったかのように湖畔公園へと戻っていた。
ただ、普通ではありえないぐらいの経験値とドロップアイテムを獲得して。
危険を顧みずやった賭けに勝って安堵した俺に横から彼女が抱きついてきた。
バランスを崩しながらも彼女の体を支えると、今にも泣き出しそうなほど、瞳が潤んでいた。
相も変わらずツンデレらしい発言をした彼女はほっとした様子で頬を伝いそうになる涙を拭って俺から離れると
「なんであんな無茶したのさ、ラギ」
「1人何も考えず突っ込んで言ったやつには言われたくないんだけど?
まぁ、無茶だったことは謝る、すまん」
「いや、頭下げろとは言って「お前にそんな顔させてしまったんだ、これぐらいはな」……そういや、私たちそんなことで争ってたんだっけ」
「あぁ、解決したはずなのにその直後にそんな顔させたらダメだろ?」
「いいよ、私は。あの二人に同じことしたら許さないってことだから」
「へいへい、ツンデレは置いといてそろそろギルドハウスに行くぞ」
「ツンデレじゃねぇぇ!!」
情緒不安定としか言えないライムの反応に
そしてその後。
朝早くからギルドハウスを出た俺らが夕方まで帰ってこなかったことに関して残った3人(特にカエデ)にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。
夜まで続いたお叱りの後、定期的に行われるギルド内会議で俺らはゲリラクエストのことについて、そこで何が起きたのか、そしてそこで手に入れた《クロッシングスキル》といえ名前のスキルを手に入れたことに関してを伝えた。
色々話し合った結果、今後同じようなことになった時に俺たちのレベルでは太刀打ち出来ない相手が現れてしまった場合にこの《クロッシングスキル》を使用できるようにするために俺らはしばらくの間レベリングを兼ねた特訓をすることにした。
といっても、第七層が攻略されるまでの間なのだが。
そんなことを決めてからはや1週間が経過した頃。
俺たちは次の層、第八層にて《敵》と遭遇することになる───。
お待たせしました。
毎月1話更新になりかけてるというかなってる。
ゲリラクエストなるものが発動し、現れたはディアベル殺害装置()
苦戦していた2人の元に現れたのは《SS適合テスト》。
内容もわからず戦うと突然《クロッシングスキル》なるものが発動
何とかボスを倒した2人は帰宅後、怒られました。
そして改めて実力が足りないと気づいたラギは全員で特訓をすることに。
次回、何かが起きる……!?
──────
《クロッシングスキル》
獲得者:ライム(ラギはライムの恩恵を受けたのみ)
ゲリラクエスト中、突然発動した《SS適合テスト》のクリア報酬…?
発動者は2人~最大4人まで
発動条件は《ソードスキルを発動者で同時に撃つこと》及び《親密度(目には見えない数値)が高いこと》。
発動すると使ったソードスキルに加えて2連~最大10連の追撃が発生(盾持ちなどにはあまり効果無し)
ただし連撃数の多いソードスキルの場合追撃が発動しない(ノヴァアセンションなど)