ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

58 / 130
EX:犯罪組織《アーガス》

2022年

11月10日

東京都内某所

アーガス社内

 

 

『ですから、事件とも言えるこの一件は、同社の茅場晶彦氏率いるアーガスそのものの組織がグルで発生させたものだと言えます』

『1万人をも()()()()()()に監禁し、内部で死んだ場合、こちらの世界でも死ぬというシステムを作り出し100人も既に殺したあの会社こそ──』

 

「もう言いたい放題だな」

 

男は休憩──とは言えない──時間にタブレットに映し出されたニュースを見ていた。

ソードアート・オンライン、その正式サービス、それと同時に起こった1万人ものプレイヤー達のログアウト不能からの茅場晶彦による《現実も死ぬ》デスゲームの開幕宣言から既に4日が経過していた。

当日はマスコミもサイバーテロだのなんだのって話をあげていたが、犯人である茅場晶彦の雲隠れが発覚した途端、開発運営をしたアーガス本社に矛先を向け、()()()()()()()()()()()()()()()()というありもしない話を報道し始めていた。

マスコミが報道を変えてすぐ、アーガス社の前には既に亡くなった100人の遺族を含む1000人以上のデモ隊が集まり、「私の子供を返して」といった声を上げた。

それに悪ノリしたVR反対派もこの2日程で増え、今は1500、下手したらそれ以上の人間がアーガスの前に密集している。

 

「突破されるのも時間の問題っすよ、白澤さん。」

「むしろあの人数相手に突破されてないってことが凄いと思う、とはいえ……」

 

男は再び手元のタブレットを覗く。

 

『自衛隊や総務省の一部役員が動くという話を聞きましたが、その辺りはどういった意図があっての事なのでしょうか?菊───』

 

先ほどからつけっぱなしのニュースに出ていた総務省の人間だと名乗った男性にキャスターが投げた質問、それが意味するのは……

 

「不穏なこと言ってるけど、今はそれよりも()達のやるべきことをやるわよ」

「それ当日にも聞きましたよ、木田先輩」

「仕方ないじゃない、やれることは限られてる。

でも、()()()()()()()()()()も限られてるんだから」

「わかってますよ、自衛隊だか総務省だか知らないですけど、出来る限りは死守します」

 

男はタブレットの電源を落とし立ち上がると自分のデスクに戻って行った。

 

 

 

 

 

 

それから2ヶ月ほどが経過したある日──。

 

「総務省、S()A()O()()()()()の菊岡誠二郎です、よろしく」

「現アーガス代表……代理の白澤直樹です」

 

この日、アーガスに緊迫した空気が張りつめていた。

サービス開始から数日間ニュースで流れていた自衛隊や総務省のアーガス閉鎖という計画が実行され、今こうやってアーガス社に総務省の代表──かはわからない──男が数人の自衛官を連れてきたのだ。

 

「君たちには申し訳ないが、アーガスを離れてもらおうと提案をしようと思ってね」

「申し訳ないですが、それはできません」

「ふむ、それはどうしてかな?今やSAOを作ってこんな事件を起こした君たちは信頼も失っているだろう?」

「それは………」

「何か理由でもあるのかな?」

 

菊岡は一切表情を変えずにただ静かに今現在のアーガス代表を務めている白澤に問いを投げた。

だが、白澤は答えることは無かった。

理由は明確、()()()()の存在を知られてしまえばただでさえ低いアーガス社の信頼はさらに下がり、本当に封鎖ということになりかねない。

それだけでなく、今ここを封鎖されてしまい、サーバーを管理する者がいなくなるということは内部にいる人間にも少なからず影響が起きるのだ。

 

 

「菊岡さん、でしたっけ」

「あぁ、そうだ、僕は菊岡、そういう君は?」

「私は木田、こう見えて白澤の先輩。

そんなことはどうでもいいんです、菊岡さん、そちらの質問に答える前にこちらの質問を聞いていただけないでしょうか?」

 

 

返答に詰まった白澤の後ろで様子を見ていた上司、木田がただ静かに自己紹介を込めた発言をした。

その声は、一見冷静を保っているが、アーガス社員であれば誰でもわかる。

()()は怒っていた。

 

「ほう、質問かい?」

「えぇ、一つだけ。

なぜあなた方はここを閉鎖しようとしているんです?」

「あー……そうか、そこか」

 

菊岡は頭を数回掻き、眼鏡をくいっと動かすと、先程までとは違う声のトーンで質問に答えた。

 

「それは単純さ、今君たちアーガス社員は()()()()()()()()()()()という話が上がっている。

そこに一部市民が「あいつらはサーバーを停止させて1万人の命を奪うつもりだ!」なんて声が上がってきたもんだから、それを阻止するために、そして──

君たちが同様の事件を再び起こさないように監視するために僕たち総務省と自衛隊が動いたのさ」

「そんな身勝手な事が許されると?」

「自衛隊が動いたということはだよ、木田くん。

さすがに1万人もの命を仮想世界という1つの空間に幽閉した会社を野放しにしておくわけにはいかないんだろう、政府直々に『アーガス社の閉鎖及びサーバー管理元の変更』の指示が出されたんだよ」

「……なるほど、わかりました」

「木田さんっ!?」

「先輩、何を………」

 

菊岡の発言に対し納得したことを伝えたところで黙って話を聞いていた白澤と遠藤の2人が前に出ようとしたのを抑え、「まぁ待て」というハンドサインを後ろに送った()()は菊岡に向けて5本の指を立てた。

 

「閉鎖はどうせすることになるとは思ってましたよ、ただし、黙って指示に従うつもりはありません。

総務省、自衛隊の2組にアーガス内部にあるSAOサーバーの管理を託すことは了承します、ですが………

5つ、こちらの条件を守っていただけるなら、指示に従うことにします」

「ふむ、その条件とは?」

「……こちらに書いてあります。菊岡さん、あなただけが読んでください」

「わかった、いいだろう」

 

代表代理よりも代表っぽい()()はポケットからメモ用紙を取り出してそれを菊岡に渡した。

その用意の良さから既にこういった状況になるということはわかっていたようだが……

 

 

───

メモ用紙

アーガス社SAOサーバー管理権受け渡し条件

1.現アーガス社員の次の職場及び住処を用意する

2.SAOサーバー管理として白澤と木田のみはアーガス社に残す

3.特殊医療室の出入りは残された白澤と木田だけにさせる

4.デモ隊及びマスコミの報道を停止させる

5.代表役以外は資料の閲覧を禁ずる

───

 

「なるほど。まぁ妥当ではあるが……この3番は──」

「公言しないならお教えします、菊岡さんにのみになりますが」

「名前からして何かあるのだろう、なら部下たちは外でデモ隊の阻止に尽力させてもらうよ。」

 

メモを見て納得したのか、少し表情の和らいだ菊岡は部下に指示を飛ばしてそのまま木田に連れられアーガスの奥に行ってしまった。

指示を聞いた総務省及び自衛隊の部下たちはぞろぞろとアーガスの外に出ていった。

 

 

◇◆◇◆

特殊医療室前

 

「本当は、本人に合わせるのが1番なんですけども、見ての通り……」

「…………なるほど、ね。」

 

木田に連れられて特殊医療室の前に来た菊岡はガラス越しに見た室内の光景に言葉を失った。

彼の目には頭に見たことの無い機械が覆いかぶさったまま大きなベッドに横たわる少女が映った。

そんな彼女はもちろんの事だが服を着ていてあまりよく見えないが、それでもはっきりと分かるほどの火傷を半身に受けた状態で身体中に栄養を送るためのチューブを始めとした様々なコードなどが貼り付けられていた。

 

「彼女はとある事情でこういった状態にあります、もちろんですが彼女は現実では体を動かすことさえまだ不可能です

そこで私たち、というよりは()()()が生み出したもう1つのフルダイブマシンによって今彼女は仮想世界で意識を保っています」

「だが、その仮想世界というのが」

「えぇ、その通り。」

 

菊岡は既に察していた、アーガスが起こしたことに関しての話で彼女の存在を知らされた時点で。

 

「彼女は今、デスゲームの中にいるんです」

「あぁ、そういうことになるんだろうね」

 

静かに眼鏡をくいっとあげた彼は再び少女の入っている部屋に目を向けた。

 

「私たちには彼女をSAOにログインさせてしまったことの責任があります。もしここであなた方だけに任せてしまえば彼女の体調管理含めた全てが疎かになってしまうかもしれない。

それだけは絶対にさせる訳には行かないんですよ」

「我々には任せられない、と」

 

「国に喧嘩売る覚悟はさすがにないですが、それでも言わせてもらいますよ

 

あなた方には彼女を守ることだけじゃなく囚われている1万の人間の命を全て託す訳には行かない。

彼女がいつか現実で笑って過ごせるようになるまで面倒を見るって約束したんです、だから。

彼女を、彼女だけじゃなく他の人間の命も全て、私たちアーガス社員は背負ってるんです」

 

「なるほどね、わかった。」

「それじゃあ?」

「我々総務省と自衛官だけではあの膨大なサーバーをいじることは難しいと感じててね、それ込みで君と白澤代表の2人と、数人の社員は残ってもらうよ

ただ、全員残れって言うのはさすがに厳しいからそれはあのメモ通り対応させてもらう」

「……ありがとうございます、それと──」

 

渋ることもしなかった菊岡の反応に戸惑いながら内心「行ける」などという考えを浮かべた木田は特殊医療室の横にある部屋に1人、SAOにログインしたままの少女がいることを伝えると菊岡は直ぐに病院へ搬送する手当をし、その後白澤と木田に挨拶をして一度帰っていった。

その時には既に、アーガスに来ていたデモ隊達はいなくなっていたのを見てあの男がどれだけ大きな力を持っているか悟った木田であった。

 

 

 

それから数日後。

アーガスの社員は三分の一を残してこの日、実質の解散を迎えた。

だが、残された社員たちにはまだやるべき事があった。

 

「うん、やっぱり僕達だけじゃ何しでかすか分からなかったから良かった」

「ほんとそれが怖かったんです」

「まぁいいだろう、結果的には」

「はぁ………」

 

SAO内部の状況(ログ)を確認しながら呑気に話してくる菊岡に不安を覚える木田なのであった………。

 

 

 

「内部は如月と後輩ちゃんに託すしかないっすね」

「だからこそ私たちはこうやって外部からの驚異を防ぐんだ」

「了解」

 

SAOにログインしたアーガス社員の2人に無謀に近い希望を託した。

 

その希望が、SAO内部の運命を左右するとは今の彼らは知りもしないのだった………。




アーガス社内のお話です
SAOリメイク前はアーガスにいる程度しか書いていませんでしたがこちらで書きました。
白澤と木田の詳しい設定を知りたい方は「眠猫の玉手箱」で検索!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。