ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
2022年
某日
アーガス社内ではレアアイテムの効果についての論争が起こっていた。
というのも、とてもくだらないものではあるのだが。
「デバフを和らげるだけでもかなりありがたいと思うのだけど?」
「いえ、和らげたところでしばらくしたら吹雪起こすモンスターが現れて寒さもデバフも防げないって何ですか、それもレアアイテム手に入れないとまともに攻略できないってそもそもそんな難易度だと変態以外は攻略を捨てることになりますよ」
「ほう、言ってくれるじゃない?なら何か策が?」
とある層の
そして、反論に呆れた
と、用意周到、彼は既に案をメモに書いていた。
・レアアイテムを装備した上で鉄系装備を外す、それにより更に寒さを和らげ、凍傷デバフの発生を遅らせる
・ただしそれをしないと寒さにより足が動かなくなり立てなくなりダメージをくらい続ける(HPは必ず1で止まる)
「ふーん、なるほど?」
「なんですかその不満そうな感じ」
「いいわよ、これぐらいなら攻略も少しはできるでしょ、多分」
「あとはそのレアアイテムのドロ率ですね」
「そりゃ、0.03%ぐらいで」
「どこのソシャゲの最高レアですか、さすがに却下ですよ」
そして現在。
SAO第八層
氷雪エリア
新しく解放されて間もないこの層に、3人の女子が様子見がてらの探索に来ていた。
そして────
「「寒い!!」」
「にゃハハ……これはビックリだナ」
彼女らを迎え入れた第八層のフィールドによって凍えていた。
彼女らの目の前に広がったのは一面銀色の雪原、ただ広いだけではなく洞窟のようなものも奥に見えている。
そして、何よりこのフィールドは気温が低かった。
当たり前といえばそれまでだが、一面雪景色になる程の気温、氷点下にかなり近いレベルの気温設定がされているのだ。
「コハル……大丈夫?」
「薄着だから………」
「まだ長袖だからイイだろ、2人ハ」
「寒いからそれ関係ない……とりあえず進もう」
「うん………」
そんなこと知る由もない少女達はそれまで平気に過ごせていたため装備を変えずにこの層に来た。
その結果、ハヅキはパーカーのような装備で多少は寒さを凌ぎ、ハヅキのパートナーであるコハルは長袖を着てはいるものの寒さを防げるような暖かい装備では無い。そして、着いてきた情報屋のアルゴは薄着どころか半袖であった。
寒さをどうにかすることは不可能と考えたハヅキは2人に先に進むことを提案した。
だが、このときの彼女たちは先に潜むものがいることを知らずに進んで行った───。
────
ハヅキ目線
極寒の地に着いてからはや5分ほど。
リアルで寒い地域に住んでいる私は多少大丈夫だけど、コハルとアルゴはずっと震えながら私の後を着いてくる。
探索を始めてから時間が経っていないはずなのに、私たちは既に限界が近づいていた。
「これ……普通に進むの……厳しい」
「そう……だね………」
コハルは耐えきれず、立ち止まってその場でブルブルと震えている。
すると、パーティのHP欄でコハルのHPが徐々に減少し始め、さらにはHPの上には氷の結晶のようなアイコンが表示された。
「立ち止まるのもダメだゾ、凍傷まで有り得るからナ」
「それを早く言って………何かないの、アルゴ」
ついには言葉も発さなくなってしまったコハルを何とか背負って転移門の方へと方向を変えて戻っていく。
その道中で何か知ってそうなアルゴに質問をした。
「ルー坊から預かり物ならあるんだケド……」
「それを使えばこの状況が変えられる?」
「うーん……そうなんだけど、1つ問題があってナ…」
「問題……?」
「ここで使えるだろう装備はこれ、《グレイシャードロップリング》、寒さに強くなり凍傷系のデバフを受けないんだけド、ルー坊から渡されたのは……2個なんダ」
「とりあえずコハルに1個渡して……あと一つは───」
転移門前に到着した私とコハル、そしてアルゴは寒さに凍えながらウィンドウを操作した。
結局、防寒アクセの《グレイシャードロップリング》を装備するのは私とコハルになり、アルゴは少しだけ暖かい転移門にて転移してくるプレイヤーたちを止める役割を担うことにして、私たちは2人で8層の奥へ進んでいくことになった。
「ハヅキ……さっきはごめん」
「いいよ、この装備をしてないと進めないなんてわからないんだし」
凍傷のデバフの効果が消え、フィールドによる寒さも半減された事で進めるようになった雪の道には
それから数分後、探索を進めていると先程までは全くポップしていなかったモンスター達が少しずつ姿を見せるようになり、2人で息を合わせて討伐。
タワークエストを進めている私たちはその分もあってかレベルは少し高い、そのためモンスター1、2匹ならそんなに苦戦はしない。
「寒さも少し慣れてきたしこのまま迷宮区前まで行こ、コハル」
「そうだね、進も──くちゅん」
「……大丈夫?」
「う、うん……」
コハルが可愛いくしゃみをしたところで私は少し違和感を覚えた。
さっき、この層に来て間もなく、寒さに負けて動けなくなったのはコハルが先だった。
私とコハルとアルゴは同じように寒さへの体制をもつ防具などは着ていないはずなのに、何故──
「おーい!誰かー!」
「プレイヤーの声……行こ、ハヅキ!」
「あ、うん───」
私の考えは、進行方向とは少しズレた方から聞こえた声によりかき消されていた。
「あ、いいところに来た!こいつら倒すの手伝ってくれねぇか!」
声のした方に行くとそこには、大量───10体は軽く超えているであろう───のモンスターに囲まれたプレイヤーが動けずその場に留まっていた。
あれだけのモンスターが1人に対してタゲを向けるってことはあるのだろうか、という考えはタワークエストに何度もいってる経験が否定した。
「今助けます!行くよハ───「あぁ、逝け」───え?」
コハルが装備を構えてモンスター達にソードスキルを放とうとしたその時、囲まれているプレイヤーは不意にそんなことを言った。
「悪ぃな、そいつは俺の《テイムモンスター》なんだ。だから俺を襲いはしないし俺の言うことだけ聞く───傍から見りゃモンスターの擦り付け、ってとこだな」
「ハメたってこと──!?」
「ハメるのは──あぁいや、下手なことは言わないとこっと。
まぁせいぜい死ぬまで頑張ってくれや」
そういうと男は不敵な笑みを浮かべて奥へと走り去ってしまった。
そして、去り際に指示を出したのか、大量のモンスター(テイム済み?)が私とコハルにタゲを向けてきた。
大きな蜘蛛型モンスター、ペンギンみたいなモンスター、マントヒヒ?のモンスター。
と、このフィールドのモンスターであろう3種がそれぞれ4体から5体、それ全てを相手にするのはさすがに辛い。
それだけじゃなく、私たち───特に、コハルに最悪の事態が起きた。
「吹雪───!?」
モンスター達が向かってくる中、突然猛吹雪が発生。
それにより私とコハルに《凍傷》のデバフが再発生した。
そして、そのデバフによりダメージだけでなく、コハルは──
「ハヅ………キ、ごめ、ん──」
その場に膝を着く形で倒れ込んでしまった。
凍傷のデバフを受けている私も同じようになるはず、だけどそんなことは無く、私は何とか動くことは出来る。
でも、これだけの数をコハルを守りながら倒すのはさすがに厳しい。
「ハヅキだけでも……逃げ、て───」
「そんなこと出来るわけない!私が何とかして倒すから………待ってて」
「無茶、だよ……」
迫り来るモンスターに向けて剣を構える。
もしかしたら、無理かもしれない。
コハルも、守れないかもしれない。
でも、ここで抗わないと、どっちにしろ死んでしまう。
「せやぁぁぁ!!」
一気に地面を蹴りモンスターへ接近。
ソードスキルではない普通の振り下ろし攻撃をマントヒヒに似たモンスターへと向ける。
でも────
『キシャアアア!!』
「う、そ──っ!?」
蜘蛛型とペンギンのモンスターがそれを防ぐように私に攻撃をし、それにより弾かれた勢いで隙が出来た私にマントヒヒのパンチが直撃した。
「ハヅキ……!」
私が攻撃を仕掛けたことにより、コハルに向いていたタゲも全て私に向いた。
トドメを刺せると感知したのか、モンスターたちは私に向かって近付いてくる。
(あーあ、ダメ、だった……)
そんなことを心の中でつぶやく。
ふと、私の頭の中にとある日の記憶がフラッシュバックした。
────ごめんね、ハヅキ
あれは、いつの日かの、姉の言葉。
何故、今思い出す?
なんで、
わからない。
わからない、それでも。
ここで死んでしまえば、私は───
コハルと、アルゴと、そして……ラギと。
もう二度と会えなくなってしまう。
そんなの。
そんなこと、誰が望むんだろう。
「……助けて──
私を、コハルを───」
寒さと恐怖に震えながら言葉を発する。
「助けて………ラギ───」
そんな私の声が届いたのか、今にも攻撃をしてきそうだったモンスターがダメージエフェクトと共に消え、その代わりに1人のプレイヤーの姿が現れた。
「大丈夫か、ハヅキ」
その声は、無意識に呼んだ人の声だった。
助けて欲しいと、そう願った。その相手。
「ラギ………」
お久しぶりですね(挨拶)
第八層攻略開始です。
SAOIFとちょっと(というかかなり)違う感じのストーリーを展開していきます。
え、今までも違った?
次回、少女の願いは彼に届く。
《グレイシャードロップリング》
登場:SAOIFイベントストーリー
効果:凍傷デバフを和らげることの出来る物。ただし、この装備だけでは寒さを防ぐことは出来ない。
詳しいことは次回
コハルがより一層のダメージを受けている理由
《あるもの》を装備している。