ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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クリスマス記念という名目の過去回想(次回ラストの1シーンから続く)


49.5:姉妹の聖夜、少女の救済者

第八層攻略中。

死ぬ寸前に私、ハヅキはある日の出来事を思い出した。

思い出す理由も意味もないはずなのに。

 

 

 

私がまだ、小学六年生のある日。

雪が降りしきる12月。

既に周りと距離を置き始めていた私は部屋で黙々と本を読んでいた。

 

「ねぇ、はー」

「……なに?おねえちゃん」

 

別の部屋にいる姉が私の部屋に入ってきてそう伝えてきた。

その右手には紙のようなものが握られていた。

 

「たまには一緒に出掛けない?」

「どうして?」

「ほら、はーと2人で出かけることって無かったから、ほらこれ。」

 

姉は少し物寂しそうにそう言うと手に持っていた紙を私に見せてきた。

「……別にいいでしょ、出かけなくても」

そう呟きながらその紙を見る。

そこには、「クリスマスイベント招待状」と書かれていて、色々と詳細も載っていた。

 

「ね、行こうよ」

「お母さんたちと行ってきてよ、私はいいから」

「……はーと行きたいんだよ、私は」

「そう……なんだ」

 

拒否を選んだ私の答えを聞いた姉は、静かにそういうと部屋から出ていってしまった。

 

「別に……私と行く必要ないでしょ……」

 

1人になった私は、ベッドに仰向けに倒れてそう呟いた。

 

 

 

そして12月24日。

世間一般に呼ばれているクリスマスとやらのイブの日。

 

「うぅ寒……大丈夫、はー?」

「寒い……」

 

結局、姉と一緒に出かけた私は、文字通り肌を刺すような寒さに震えていた。

 

「こんなに寒いなんてね……まぁ、雪も降ってるし仕方ないんだけど……」

「……へくち」

「あ、可愛いくしゃみ。……じゃなくて本当に寒いからさすがに───はー、そこのお店行こ!」

「ちょっとまっ──」

 

凍える私の手を急に引き、姉はとある店へと入った。

私の手を引くその手は、暖かかった。

 

 

 

「すみません、これください」

 

姉が入ったのは街角にある服屋で、姉はそこである物を買った。

 

「あら、姉妹かしら?クリスマスの夜に2人でお出かけ?」

「はい!私の()()()妹です」

「ちょっとおねえちゃん……」

「ふふっ、いい姉妹ね。おまけでこれあげちゃう」

 

店員さんは袋に何かが入った箱を入れ、姉に手渡した。

私と姉は感謝を伝えて店を出た。

 

 

「はー、ちょっとそこに止まって。」

「……?」

 

店を出た所で姉は袋から先程買ったものを取り出した。

そして、私の前に立つとそれを私の首へとまわした。

 

「……よし、私の思った通り!」

「おねえちゃん……これは?」

「ん、マフラーだよ。はーへのプレゼント」

 

私の首には、すごくモコモコで暖かい()()のマフラーが巻かれていた。

更に私の髪には月を模した髪留めが付けられていた。

そして、姉の髪には太陽を模した髪留めが付いていた。

 

「これ……」

「さっき店員さんがくれたやつ。似合ってるね、はー」

「……おねえちゃんも似合ってる」

「うん、ありがと」

 

姉は笑顔でそう伝えると、場所を移動しようとまたまたどこかへ向かった。

向かった先は、この街では1番であろう広場に設置されたクリスマスツリー、その周りにあるベンチに座った。

さすがは聖夜、カップルが大半を占めている。

そんな中に私と姉がいるという状態だ。

 

 

「……これからどこ行くの?」

「行く場所は決めてる。前にみせた招待状、あれが使える所に行くよ」

「それじゃはやくいこ?」

「その前に、ちょっとだけいい?」

「……?」

 

私の横に座っている姉は突然、私を横から抱きしめてきた。

 

「おねえ……ちゃん?」

「はー、そのままじっとしてて」

「……うん」

 

姉は震えた声で私にそう伝えた。

私を抱きしめる手も、少し震えていた。

 

「……ごめんね、はー」

「……?なんで、謝るの?」

「はーがどれだけ大変な思いしてるか、私にはわかるよ」

「……っ、それ……」

「私ははーがどんな事されたかも聞いてるんだ。お母さんたちがはーに対してどういう考えなのかもわかってる。」

 

姉は静かに、少し強くそう言った。

わかっているのなら、それなら助けてくれたら良かったのに………

 

 

「私は()()はーのことを助けることは出来ない………

ううん。私だけじゃあなたを救えない」

「……」

「でもね、はー。

これだけは覚えておいて欲しい」

「何……?」

「私は、お母さんたちは、あなたが思ってるようなことは考えてないよ。

もし、お母さんたちがあなたを恨んでいるなら、あなたは今頃本当に相手されてないだろうし、それに……」

 

 

姉は私を抱きしめる手の力をさらに強めた。

そして───

 

「私だって、こうやって一緒に出かけたりするのは、あなたを好きだからだよ」

「おねえちゃん……本当に?」

「うん、もちろん。本当だよ、この気持ちは」

「……そう、なんだ」

「──だから、ね。」

 

姉は私を抱きしめるのを辞め、私の目を見て言葉を伝えてきた。

 

「ごめんね、()()

「……謝らないで、おねえちゃん」

「謝らせて、葉月。

こうでもしないと、あなたに悲しい顔をさせちゃうから」

「……うん」

 

しばらくの間、何度も姉は私に謝ってきた。

いつもみたいに「はー」とは呼ばず、私の名前を呼んで。

途中、姉は再度私を抱きしめ、涙を流した。

それほどまでに、姉は私のことを───

 

 

「……変なとこ見せちゃったね。さ、行こ。はー」

「う、うん……」

 

 

はー呼びに戻った姉は私の手を引き、場所を移動した。

 

「これ……って」

「どう?すっごいキレイでしょ!」

 

目の前には、無数にきらめく光の景色、イルミネーションが広がっていた。

目に映る全てが煌めいていて、私が抱えていた悩みもどこかに消えていくような、そんな雰囲気に満たされていた。

 

「あ、れ……」

「どうしたの、って……いいよ、今は」

「ごめ、ん──」

 

気づいたら私は涙を流していた。

横に立つ姉は静かに微笑んでくれて、私はしばらくその場で泣いてしまった。

 

 

その後、しばらく景色を楽しんだ私達は帰路に着いた。

先を歩く姉の後ろ姿は、どこか寂しそうで、でも、楽しそうだった。

 

「あ、そうだ」

「……?」

 

ふと、立ち止まった姉は、私の方に振り向くと──

私の右手を左手で掴み、私の横に立った。

 

「たまには、こうして帰ろ。いいでしょ、葉月」

「……うん、ありがとう、日和おねえちゃん」

 

私達は家に着くまでの間、ずっと手を繋いで帰って行った。

繋いだ姉の左手は、とても優しく、そしてすごく暖かかった。

 

 

 

それから数ヶ月後。

中学に入った私と対照的に、姉は中学三年生の受験期に入ったこともあり、関わる時間は減った。

それだけでなく、両親の姉に対する圧と、それによる私への影響が大きくなっていた。

その頃には、クリスマスを過ごした頃の私たちの関係とは程遠く、仲のいい姉妹と呼べなくなっていた。

そして、私の心は少しずつ閉ざされていた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

なんで、そんなことを今思い出したのだろう。

()()()()()()()()()()姉のことを、ここで思い出した。

あの時のような暖かさは、私には今無い。

凍える体に、モンスターの刃が振りかざされそうになっている。

もう、体は動かない。

コハルを助けないといけないのに、助けないと──

 

 

 

無理。

無理だ。

私は両親にも、姉にも助けられずにいた。

そんな私には誰かを救う方法なんて分からない。

はず、なのに。

誰も助けてくれないと思っているはずなのに。

 

 

ここで死んでしまえば、あの時の姉の言葉さえ忘れてしまう。

コハルと出会って、こうやって戦ってきた事も忘れてしまう。

そんなの、嫌だ。

でも、動けない。

誰か、助けてくれる人が居れば……

 

 

──俺はお前を信じる。

 

そうだ。彼なら

助けてくれるかもしれない。

 

 

「助けて………ラギ───」

 

 

 

その声が、届いたのか。

私の目の前にいたはずのモンスター達は消滅していた。

それと入れ替わるように、誰かが剣を右手に持ちモンスター達を倒していく。

 

「……助けに来たぞ、 ハヅキ」

「あ……ぁ……」

 

この世界で、コハル以外に私を()()()()()()相手。

きっと、救ってくれる、そう感じてる、そんな人。

 

 

ラギが、そこに立っていた。




12時に投稿しようとした。無理だ。

桜花姉妹のクリスマス
マフラー買って髪留め貰って
姉が抱きしめて
妹は泣いて

そんな彼女たちの関係は、今はもう歪になってしまった。

そして時は現在。
過去のことを思い返した彼女は助けを求める。
救ってくれる可能性など、低いはずなのに。
だが英雄は、その声を聞き、駆けつける。



次回、彼らが剣をとり戦う。
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