ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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50:助ける者

ハヅキ達がモンスターテイマーの罠にハマる数分前。

 

 

俺、ラギと夕立の霧雨は()()()()()()()を終えて現在の最新層である第8層へと転移していた。

装備も新しく新調した俺たち4人を待っていたのは極寒の地。

それとたまに連絡がつかなくなる事が気にかかる情報屋、アルゴだった。

 

「いいとこに来た、ルー坊!例の装備オレっちにも渡してくれないカ?」

「渡したはずだが……なんでここにいるんだ?」

「話すと長くなるんだけど、ハーちゃん達と一緒に来たんだヨ」

 

いきなりあのレア装備を寄越せと言ったアルゴから事情をある程度聞く前に大体話の流れがわかった俺はアルゴの言葉を遮る。

 

「それで指輪渡して自分はこのセーフティエリアに来た、と」

「ご名答、てことでもう一つくれないカ」

「悪いが4人分しかない、大人しくここで待っててくれ……それより、シズク」

「う、うん……()()()()()()()()

 

アルゴに残念なお知らせを伝えたところで、少し険しい顔をしているシズクに話を振る。

といっても、その理由は俺にも見えていることなのだが。

 

「アルゴ、悪いがはじまりの街他各地に行って『第8層にはまだ入らないでくれ』って情報を回してくれ」

「どういうことダ?……まさかと思うケド」

「お察しの通り、このフィールド状況が素のものじゃないってことだ」

「理由を教えてくれって言いたいところだケド、今はそれよりって感じだナ?」

「あぁ、悪いが小一時間だけは全プレイヤーが入ってこないように止めてくれ……キリト達から伝えれば多少は減るだろうから」

「了解ダ、後できっちり聞かせてもらうヨ」

「……助かる、また後でな」

 

今にも飛び出しそうなシズクを抑えながらアルゴに大仕事を頼んだ。

転移石に触れて操作を始めようとするアルゴと無言でハイタッチを交わして俺たち『夕立の霧雨』はフィールドの奥へと進んでいく。

 

「……それで、何が見えてるんだ2人は」

「俺の索敵よりシズクの索敵スキルの方が広範囲に見えてるだろ、まぁ簡単に言うと……『プレイヤーが多数のモンスターに囲まれてる』」

「それって……っていうかこのフィールドで!?」

「詳しくは囲まれてる本人たちに聞くしかないだろ……行くぞ」

 

先に進む足を早めながら状況の読めていないライムとカエデとルナに説明をする。

俺とシズクはそれぞれ『索敵スキル』を取得している。

とはいえ俺よりシズクの方が使用頻度が上──になるようにした──のため、熟練度が高く索敵範囲もかなり広い。

とはいえ、誰が囲まれているのかまではわからない。

 

(お前じゃないよな──ハヅキ……)

 

そんな不安を抱えつつ索敵スキルが拾ったプレイヤーの位置まで一気に移動する。

 

 

そして───

 

「……ラギ!あそこ!」

「あぁ、俺も目視できてる──悪いが先に行くぞ!」

「あ、ちょっ──」

 

進むこと数分、道中でモンスターに囲まれているプレイヤー達の姿が目視できるようになった。

俺の視野に映ったのは2人、そのうち1人は膝をつき倒れているのだが、あの二人は明らかに見覚えのある姿で。

未だ立ち戦おうとしているフード付きの服を着た少女が剣を構えて攻撃をする。が、3種類程のモンスター達は連携を組み彼女の攻撃を弾く。

バランスを崩した彼女に一体の攻撃が炸裂し、彼女はもう一人のそばに倒れ伏してしまう。

そして、彼女が再び剣を取るよりも早く、モンスター達がいっせいに攻撃をしようとモーションを始める。

 

(間に合え───っ!)

 

地面を一気にけり、彼女を守るため剣を取りソードスキルの発動がすぐできるように構えを作る。

少女に攻撃が当たる寸前で俺はモンスター達へ剣技を発動する。

広範囲に一気に攻撃するスキル、《ホリゾンタル》を地面に着地するよりも早く発動した。

彼女が幾分かダメージを入れていたのか、モンスター達はその一撃で倒れた。

未だ奥に控えている大量のモンスター達が俺にタゲを向ける前に、後ろに倒れる少女へと顔だけ振り向かせて声をかける。

 

「──助けに来たぞ、ハヅキ」

「……ラ、ギ」

「待ってろ、すぐ終わらせる」

 

掠れた声で俺の名を呼んだ彼女へ優しく言葉をかけ、モンスター達に再び剣を向ける。

見た限り奥にいるのは5匹ほど、もちろん俺だけで倒せない相手ではない。だが、俺の後ろには2人がいる。それを守りながらは()()()()()()()()()

 

「……さて、と」

 

後ろから複数の足音が聞こえたのを確認し、短く息を吐いてとある言葉を叫ぶ。

 

「───夕立の霧雨、攻撃開始!」

 

「「了解!!」」

 

俺の声と同時に、俺の横から2人の影が前に飛び出す。

 

「ライム、クロッシング!」

「言われなくても……行くよ、シズク!」

 

2人は同時にソードスキルを発動し、その追加攻撃まで一気にモンスター達へと炸裂させる。

前に出たライムとシズクはモンスター倒れたのを確認してハイタッチを交わす。

その間に、俺の後ろではカエデとルナが2人のHPの回復を施す。

 

「モンスター達は残ってはいるが去っていったな、大丈夫──ではないな、2人とも」

「私より、コハルが──」

 

そう震えた声で伝えてきたハヅキの横にて倒れているコハルのHPはイエローゾーンとレッドゾーンを行き来している。

見るからに凍傷、それも()()()()()()()()()()をつけている。

2人を安全な場所に連れていきたいが、それよりも優先することが見つかってしまった。

 

「ハヅキたちはお前ら4人に任せてもいいか」

「どういうこと……?」

「あのモンスター、テイムモンスターだろ」

 

多少無茶とわかっていながらシズクに提案をする。

案の定な答えに明確な理由をつけるためハヅキに質問をする。

あのモンスター達は通常のモンスターと違い、カーソルが存在していなかった。

それは、俺がいつぞやに遭遇したテイムモンスターを連れた少女が詳しく教えてくれたことで、だからこそあのモンスター達はテイムされたモンスター達である確率が高い。

 

「う、うん……テイムしたプレイヤーに──ハメられたの」

「そいつは今どこに?」

「奥に行ったと思う、けど……追うの?」

「あぁ、お前らには悪いがそいつを倒さないとだからな……って、ハヅキ?」

 

シズク達に頼んだと意志を少し伝えつつハヅキとコハルに謝ろうとした、が、彼女は俺の袖を強く引き、立ち上がろうとした。

 

「……これは私達──私がけりをつけたい。連れて行って」

「──ダメって言っても着いてくるんだろ」

「当たり前、でしょ」

 

先程からずっと袖を引いてくる彼女からは絶対に着いていくという意志を感じる。

そんな押されてしまえばさすがに否定はできない。もちろん、それだけが理由という訳でもないのだが。

 

「……悪いが俺たちは先に行く、コハルのこと、任せたぞ」

「うん、ギルドハウスで待ってる」

「頼んだ、それと──これを」

 

リーダーであるシズクに無茶を言いつつ彼女へとある物を渡した。

 

「これは?」

「コハルの新しい装備……としてプレゼントだ。このフィールドじゃ鉄装備は自殺行為だからな」

 

渡したのは多少ではあるが防寒性のある上着──のような装備を送った。

寒いところで鉄のような寒さを伝えやすいというのはアーガス内で寒いところに住んでいた人がこっそりと設定されたいやらしいシステムだ。

そして、鉄装備をしているプレイヤーは凍傷のダメージが倍近くにあがるため、このようなフィールドでは別の装備に変える必要があるのだ。

もちろん、それを公表していないため、普通のプレイヤーは初見で引き下がろうと考えたりするのだが……

 

「……コハルには説明しておいてくれ」

「『絶対に帰ってくる』、でしょ?」

「あぁ、そうだな……よし、行くぞ、ハヅキ」

「うん……待っててね、コハル」

 

俺はシズクにあとを任し、ハヅキは気を失っているコハルに小さく言葉をなげかけて先に進んでいった。

シズク達も俺を止めることなく、転移門の方へと歩いていった。

 

「……ねぇ、ラギ」

「……何だ?」

「ありがと、助けてくれて」

「あぁ、そんなことか……まぁ、なんだ──」

 

突然感謝を述べてきた彼女の顔を見ると、泣いた跡があった。

それを見た途端、出かけた言葉とは違う台詞が出てしまう。

 

「──お前は、俺が助ける。そう決めたから、助けたんだ」

「……うん」

 

不意打ちだったのか、彼女は静かに頷いた。

 

 

「それで、ラギはこの寒さの原因とかわかってるの?」

「まぁ、一応は予測はついてるが……っと、敵さんのお出ましだ」

 

先に進む俺たち──というか俺──の索敵スキルに一人のプレイヤーの反応があった。

ハヅキ達をハメたのは、ハヅキ達より先にいて普通にしている以上、明らかにこのプレイヤーしかいないだろう。

 

「やぁやぁ、お兄さん方。クエストに手伝って欲しいんだけど、いいかい?」

「……断ったら?」

「いやぁ、酷いじゃない。断るなんてさぁ?」

「私達にモンスターを擦り付けておいて……どの口を」

 

敵意を見せないようにしているのは口調から伝わってくる。

だが、俺の横にいるハヅキは明らかに目の前のプレイヤーを敵視している。

 

「あら、なんの事かなぁ、わからないなぁ」

「あくまでしらを切るつもりか、お前」

「……うるさいなぁ」

 

男は右手を上にあげ、指を鳴らした。

 

 

その直後、俺たちの周りにあった樹木から10を超えるであろうプレイヤー達がポンチョ姿をして飛び出してきた。

 

「英雄気取りの糞ガキ共はここで死ね!」

 

索敵に引っかからなかった事だけでない。

プレイヤー以外の反応が奥から近づいていた。

 

『……hyoaaaa!!』

 

そんな鳴き声を響かせながら、モンスターは姿を現した。

氷の巨蝶のようなモンスターがポンチョ姿のプレイヤー達の後ろにて羽ばたくと突然吹雪が発生した。

 

(あいつが……)

 

巨蝶が吹雪を起こしたことで俺の予感は確実なものになった。

あのモンスターが、フィールドの以上な寒さを作り出している()()()()()()()だ。

そして、そんなフィールドボスの頭の上には──

 

 

モンスターである証拠のカーソルが存在していなかった。




今年終わりなのか
早すぎませんかまだ50話なんですけど?


てなわけで2020年最後の話となります。
ちょいと予定より話の速度が速いけどまぁ、こんなもんでしょ

次回はフィールドボス&ポンチョプレイヤー達というかなり絶望的な状況……!?



────
ラギがアルゴに指示をした理由
フィールド内に広がる凍傷ダメージを受けるほどの寒さ。
それは誰も予期せぬレベルであり、普通に進むことすら出来ない状態を作り出している。
それを解除するには本文中ラストに出てきたモンスターを倒す必要があるため、ラギは他プレイヤーが来ないようにアルゴを介した。
誰がこの指示をちゃんと受け入れるのだろうか。


夕立の霧雨の連携
同じ学校に通う2人と仲のいいカエデだからこそできる無言の連携
スキル所持者のライムとシズクのクロッシングスキルを発動できるのも仲の良さが関係している。
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