ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
第8層
雪原エリア
「さぁ、死んでもらおうか」
そう言ったテイマーが指を鳴らして現れたのはポンチョを着た複数人、そして
それに対しこちらは俺とハヅキの二人のみ。
どう考えても絶望的状況、だが.........
「ラギ、どうするの」
「ここで引き下がらねぇだろ、
「…もちろん」
俺も、俺の後ろにいる彼女も当たり前だがこんなところで諦めて殺されるような馬鹿じゃない。
誰がどう見ても絶望的な状態だが、それでも多少なりの抵抗はする。
そうすれば向こう側の隙が生まれてくれる。なんてことを考えながら右手に持った剣を静かに下ろし、後ろに立つ彼女に視線を送る。
彼女は真剣な顔をしながらもキョトンとして俺の方を見てくる。
それを確認したところで再びテイマーの方へ向き直す。
「ほう、諦めてくれたって事ですかい?」
「……そうするって分かるなら俺らをこの人数で囲まないだろ」
「いぇす。その通り、勘が鋭いですね」
「だから俺らも諦めねぇってことだ───ハヅキ、踏め!」
テイマーと会話を繰り広げている途中で彼女へとただ一言叫ぶ。それと共に俺は体制を低くし、剣を地面と平行に持ち上げる。
音しか聞こえないが彼女は俺の言葉を理解してくれたのか、一瞬で助走をつけて俺の真上に飛び俺が構えた剣を足場にして高く飛び上がった。
「な、何して──そういう事か!」
「行かせるか……っ!」
突然の俺らの行動に理解が追いついていないポンチョ姿のプレイヤー達はやっと理解したのか、彼女に一斉に攻撃を仕掛けようと武器を構えた。
彼女へ攻撃をされないためにテイマー含めたプレイヤー達の攻撃を一気に止めるためテイマー達の背後、つまりフィールドボスモンスターとテイマーの間へと移動する。
その間に俺へと攻撃をしてこないのを見た限り、完全に狙いは彼女に向いているのだろう。
それを見れば各個勝手に動くと言うより複数人で一目標を制すというやり方をやっているのだろう。
「なら、こっちのもんだ───」
「ちっ、邪魔……するな!」
前に立ち塞がった俺を退けるために全員が一斉に武器を振り下ろす。
相手の武器のリーチのギリギリの距離まで下がり、隙を作ったところに反撃として剣技の構えをとる。
「せやァァ!!」
地面を一気に踏み込み、少し滑りかけながらプレイヤー達に向けて片手直剣ソードスキル ≪ホリゾンタル≫を発動させる。
何人かはギリギリで避けたようだが、半数以上は防ぐこともできず俺の攻撃をもろに受けて後ずさった.
ポンチョプレイヤーたちが後ろに下がったとほぼ同時に俺の背後、つまり今ボスモンスターとハヅキがいる方から猛吹雪が発生した。
◇◆◇◆
ハヅキ目線
ラギが作ったボスモンスターへの攻撃チャンス、彼が持ち上げた剣を踏み台にして高く飛び上がった私はポンチョのプレイヤーたちの頭上を超え、地上よりも高い位置に飛んでいるボスへ空中から攻撃を仕掛けるために飛びながら剣を構える。
(ラギの考えを無駄にするわけにいかない…‼)
凍える手に精一杯の力を籠める。
それに応えるように右手に持つ片手直剣に赤色の光が発生し、さらに剣に炎がまとった。
「ここ……だぁぁぁ!!」
空中でソードスキルを発動した私は振り下ろしの一発、体を回転させながら2連目、一度着地してすぐに飛び上がり切り上げの三連目、その勢いのまま斜めに斬り下ろした。
『h……hyoaaaaaa!?』
発動したソードスキル《イグナイト・スクエア》の四連撃を全てヒットさせたところでボスモンスターはダメージの発生で叫び声を上げた。
その瞬間、私の視界は一瞬で白くなった───
◆◇◆◇
ラギ目線
たった数瞬、全身が嫌な予感を察知した。
……最悪だ。
まさか、よりによって
こういう時に、一部モンスターの仕様が働くとは──。
「……ハヅキ!」
吹き荒れる雪の中、発生源の目の前にいた彼女の名を叫ぶ。
風の音とボスモンスターの叫び声により彼女の安否が分からない。
「へ、ざまぁねぇな!ざ──ぁ?」
彼女の返答ではなく、俺の後ろに立っていた
「お、お前何しやがっ──あぁ!?」
「く、そ……この人殺──し──」
1人にHPの消滅が起こってすぐ、続けて2人、3人とHPの消滅が発生した。
もちろん、俺がやったわけじゃない。
彼らのHPを全損させたのは間違いなく、今も鳴き続けているフィールドボスモンスターだろう。
『hyoaaaa....hyoooaaaa!!!』
奴が叫ぶ度に、吹雪が強くなる。
視界も白くなり何も見えなくなっていく。
VRとは思えない程に寒さが体を蝕む。
「お前ら、この不始末どうしてくれ──って……」
ほんの一瞬、ボスの方を向いたうちに、俺の後ろにいたはずのプレイヤーたちは、テイマー一人を除いて全員が消滅していた。
もちろん、逃げたという可能性もあるが、仲間が消滅していくのを何度も目の前で見たんだ、そう簡単に逃げるという選択肢を取れるように思えない。
……それがたとえ、殺人者だろうと。この状況を見てすぐに逃げると言う選択はできないだろう。
「……悪いことは言わない、お前だけでも去れ」
「は、はぁ!?何言ってんだ……」
「そうか、そりゃそうだ──こいつはお前がやった事だからな」
「そ、そうだ、だからこいつを操っ「出来るならやってみろよ」……は?」
ハヅキを助けることが優先なのはもちろんの事だが、このテイマーをどうにかしないといけない。
とはいえこいつをここで仕留めてどうにかなる話でもない。
だからこうやって話してみたのだが、こいつ……
「ボスの頭を見てみろ、あれを見てもまだアイツを操れるなんて言えるか」
「……な、なんでだよ、なんで──」
殺人を計画してたやつに教える気はなかったが、明らかな弱さやこの態度から見るからに、前の層で遭遇したプレイヤーたちと同様、誰かに利用されたと見える。
なら多少、改心の余地はあげようと思い今の現状を伝える。
吹雪で見ずらいが、既にボスモンスターは──
「……俺の
テイマーのボスモンスターをテイムするスキルの効果は無効化されている。
その理由は明らかだ。
「あのボスは一部の階層ボスと同じように、『HPが半減すると別行動を起こす』タイプだ。
このボスの場合、『スキルによるデバフ無効』と『行動の変化』ってとこだ」
「そ、そんな奴に勝てるわけ……」
「──お前は黙って帰れ。それだけしてくれれば勝てる」
吹雪に包まれたボスモンスターに武器を向けながらテイマーへ帰るように促す。
「……お前は何するんだ」
「言っただろ、『勝つ』って」
わかった帰ると言ってくれれば助かったのだが、テイマーは帰ろうとしない。
テイムしたモンスターの心配なのか、あとから俺を殺ろうとしているのかはわからないし知る気もないが、帰ってくれないと俺の仕事が増える。
「勝つなんて言ってもこの吹雪だろ?こんなのどうやって避けるってんだ?」
「ったく。策があるってこと、それだけだ。それと……
──お前を殺したくない。さっさと失せろ」
多少、どれだけまずい状況なのかを伝えるために発言の声色を変える。
ここまで関わった以上、目の前で死なれたくない。だから、恐怖を与えてでも帰ってもらう。
「なんだよ……あぁ、いいや。こんなことになったのは俺のせいだけど、この状況を打破出来ない、だからあとは頼んじまっていいか」
「……戻ったら自首でもしてろ」
「そうさせてもらうよ」
少し諦めたように転移結晶を取り出したテイマーは謝りながら転移した。
あいつには後で聞きたいことがある。そのためにも──
「せ、やぁぁ、ぁぁ!!」
動き出そうとしたその時。
吹雪の轟音の中、掠れ、途切れた声が聞こえた。
そして、吹雪の中、吹雪をかき消すように赤く燃える炎が空に四角を描いた。
「は……ぁ、……ら、ぎ」
少しだけ和らいだ吹雪の中、剣を片手に持ってボスの前に立つ影が震えた声で俺の名を呼んだ。
「……悪い、邪魔なやつに帰ってもらってた」
「しぬ、かと……おもっ、た……じゃん──ばか」
彼女の体は何度も震え、あの吹雪の中で耐えていたのが不思議なほど冷たくなっていた。
「あとは任せろ、俺がやる」
「う、ん……」
彼女は俺より後ろに下がり、安全であろう位置へ移動した。
それを確認したところで改めて剣を構える。
「……バトル、フルポーション」
そう呟き、続けてプレイヤーのIDを口にした俺は地面を蹴りボスを囲う吹雪の中へと入っていった──。
「待たせたな、あとは俺が相手だ──!!」
あけましておめでとうございます()
SAOリメイク新年1話目です。遅い
他の二次創作に力を注いだらこんなに間開きました
申し訳ない。
次回は早く投稿出来たらいいな