ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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52:標的穿つは必殺の槍

吹雪の中に突っ込んだ俺はすぐさまソードスキルを発動する。

まずはこの猛吹雪を抑えることが優先、いくらボスモンスターとはいえ攻撃を受ければ行動を停止するだろう。

 

「──っ!」

 

だが、そう簡単に攻撃を通させてくれる訳もなく、ボスモンスターは自分の周りを囲う吹雪を全て一方向、俺のいる方へ向けて勢いを強めた上で放ってきた。

足元も不安定ななか、なんとかバランスを保ちながら攻撃を避ける。

が、それを予測していたかのようにボスモンスターは吹雪の方向を俺の避けた先へとすぐさま移動させた。

そして俺は防ぐことが出来ずに身体を蝕むレベルの吹雪をもろに受け続けてしまう。

 

このままくらい続ければ、すぐに俺のHPは尽きる。

相手もそれは理解しているだろう、その証拠として今もこうやって俺に向けて吹雪を起こしている。

これを止めるためにボスへ攻撃を仕掛けようとしてこのざまだ。なら、直接狙いに行かずに攻撃を与えるしかない。

 

そのためにも一瞬でも隙を作らないと行けないのだが、そんなことを易々とさせてくれるほど馬鹿に設定されていない。

それだけじゃなく、これは一種のクエストボスを兼ねたモンスター。となればこいつを動かしているシステムはカーディナルが関わっていると言っても過言ではない。

そんな奴に単体で挑むなんてどんな馬鹿だ。

 

「……まぁ、ここにいるんだけどな」

 

なんて誰にも聞かれていないことをいいことに自分で自分にツッコミを入れる。

こんなことを考え続けている今だってボスの攻撃は続いている。さらに、先程よりも激しさを増しているのが伝わってくる。

防御に回り続ければこっちがジリ貧になって負けるだけだ。

となればやはり隙を作るしかないのだが……

 

──ねぇ、いいこと教えてあげる

 

ふと、ある人の言葉が脳裏に浮かんだ。

こんな状況だというのに、一体どうしてこんなことを思い出したのか。

ある日、弓と矢を構えた()()が静かな声で呟いた言葉。

 

 

「──そうか、なるほど」

 

その時はわけも分からず聞き流していたことだったが、今この時、こんなタイミングで役に立つとは思わなかった。

 

──いい、如月君

 

あぁ、そうだ。

 

──剣道でも、弓道でも、どんな時でも役に立つことだから、覚えておいて

 

隙をあまり見せないような相手へ、確実に隙を生む手段。

それを彼女は無駄に真剣な顔で伝えてきた。

 

──ほんの一瞬、コンマ一秒でもこちらが動ける時があるなら

 

「……その時が()を作る瞬間」

 

脳裏に浮かんだ彼女の言葉を復唱する。

ただあの一言が、今この時に勝機を見出してくれた。

 

「──ここだっ!」

 

ボスの吹雪を防いでいた剣を1度提げ、横へ回避する。

もちろん、先程と同様にボスは俺の避けた方へ攻撃を向ける。

たったその一瞬を逃さずに、俺が編み出した技、《スピニングシールド》を発動して吹雪を剣による盾で防いだ。

のを確認した直後、剣によって弾かれ続けている吹雪が全方向に飛び散り始めたことでボスは俺を見失った。

先程まで無かった一瞬の隙を狙い、別で装備した片手直剣を構えてソードスキル、《ホリゾンタル・スクエア》を発動させる。

 

地面を蹴り高く飛び上がり、その勢いのまま垂直斬り下しの一撃、地面に着く前に水平斬りを一撃。ここで、ボスが反撃をしようとするが、それよりも早く地上に着地する寸前にもう一度水平斬りをし、ボスの反撃を阻止する。

最後の一撃を当てようとしたその時、ボスの体の前に氷の槍のようなものが突然現れ、俺目掛けて槍が振り下ろされた。

 

「──せやァァ!!」

 

《ホリゾンタル・スクエア》が既に三連撃まで発動しているため、この一撃で受け止めるしかない。

だが、相手の槍は氷。鋭利さが凄まじいだろうがこっちもその鋭さは負けていない、はず。

そんな賭けをしながら四撃目を槍に向けて振り下ろす。

普段と違うモーションで発動したにもかかわらず、しっかりとシステムアシストが発動し、ソードスキルの勢いを残して鉄剣と氷槍が衝突する。

 

ソードスキルが発動しきったのか、剣が纏っていた光は少しずつ薄くなっていく。

もし、この勢いが無くなってしまえば抑えきれずにこの槍に貫かれてしまう。

もちろんそんなことは避けたいが、この状況では他に槍を防ぐ手段などどこにもない。

 

せめて、この槍さえどうにかすれば……

()()()()()()いてくれれば───

 

槍を何とか抑えながら対抗策を考えていたその時。

パキィン、という音と共に俺の使っていた《アイロンブレード》の刀身がヒビを入れた直後に砕け散った。

そして、体勢を立て直す前に、俺の目の前に氷槍があった。

 

 

善戦した気はするが、あと一歩足りなかった

ここまで、か……

 

 

 

「……はぁぁぁ!!」

 

俺を貫くよりも早く、氷で出来た槍は、突然現れた攻撃により軌道を変えて俺の斜め後ろへ突き刺さった。

ふと周りを見ると、先程までボスを囲んでいた吹雪は止み、周囲が見えるようになっていた。

それもあり、こうやって助太刀してくれたのだろう。

 

「……何か策、ないの」

 

俺の前に立った()()は右手の剣を構えながら俺の方に向いてそう聞いてきた。

 

 

「あるが……時間が必要だ」

「なら、私に任せて」

「体力はもう大丈夫なのか」

「回復してくれたのはラギでしょ、それより、その策に任せていいの?」

 

「……あぁ、時間を作ってくれれば()()()

「わかった、3分は持ちこたえる」

「了解、頼んだ……()()()

 

 

先行してボスと戦い、吹雪に巻き込まれてかなりの凍傷ダメージを受けていた彼女は、まだ動くのがやっとのはずなのに戦闘に参加している。

今にでも倒れそうな彼女の行動を無駄にする訳には行かない。

 

「バトル、フルポーション──!」

 

()()()()でしか使わないと決めている管理者権限を発動し、俺とハヅキへ全回復のコマンドを使用。

そして、管理者権限とは別に使用するスキルの為に、とある言葉を呟いた。

 

 

「──来い、カラドボルグ!」

 

そう呟いたと同時に、俺の手には槍のように鋭く長い片手直剣が握られていた。

カラドボルグ、俺がこっそりと入れたシステムの一つ、スキルを発動させるために必須の装備。

これだけの強敵なら使っても惜しくはない。

 

 

「もう、持たない──」

「……待たせた、下がってくれ」

 

ボスのタゲを引き、やつの出す吹雪を全て一人で押えていた彼女に限界が訪れたとほぼ同じタイミングで俺は(カラドボルグ)を構え、発動可能の状態にした。

そして、俺の言葉を聞いた彼女が後ろに下がったのを見てからスキルを発動。

 

「心を穿て───ゲイ・ボルグ!!」

 

そう口にして投げた剣は一直線にボスの方へ向かう。

が、ボスもそう簡単に攻撃を通させまいと先程と似た氷の槍を作り出してカラドボルグと衝突、だが、()()()()()()()()カラドボルグの勢いに勝てず粉々に砕け散った。

 

予備を作っていないボスの身体をカラドボルグが容赦なく貫く。

一度だけでなく、幾度も。標的(ボス)を確実に殺すまで、そのHPを刈り取る。

 

 

『hyaaaooo!!!』

『hiyoaaooaoaa!!』

 

 

聞き取りずらい叫び声を上げながら暴れるボスは、最後のあがきと言わんばかりに吹雪を発生させる。が、それが俺たちに到達するよりも先に、ボスのHPが全損し、そのまま消滅した。

 

 

 

「……勝った、のか」

 

ボスの消滅を確認して一安心したのか、俺はその場に倒れてしまった。

 

「え、ちょっ、ラギ……!?」

 

 

そんな彼女の言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。




お久しぶりにはならなかったと思う

最近、寒すぎるのにこの話で脳内凍傷になるかと思った
更新してなかったこの間、ずっと他の作家さんの小説読み漁ってました。


──────────
用語等の補足

この作品での凍傷
完全デバフ
効果:全体的にステータスがダウン
鉄装備を付けているとほぼ即死レベルには体への負荷が凄い
特定のアイテムがない限り凍傷ダメージをもろ受けのまま進むことになるため今回のような案件はかなり鬼畜


カラドボルグ
ゲイ・ボルグ
前にも説明。
如月春揮(ラギ)がアーガス所属中にこっそり作りSAOに入れ込んだスキルとそれを発動するための武器
槍に近い片手直剣であり、とある作品をもとにして作りました。
ゲイ・ボルグを発動する時には必ず、現在の体力の5割が削られるため、イエローゲージで撃とうものなら反撃受けたら大変なことに
それを警戒して管理者権限による体力全回復を施した。
ちなみにカラドボルグの耐久値は使用する度に削られているので残り使用回数は限られている。
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