ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
翌日
「──なんでや!」
「……何が」
昨日の一事件から一夜、俺率いる夕立の霧雨、ハヅキとコハル、さらには何故かアルゴが第一層トールバーナの円形広場に集まっていた。
そして、そんな俺らの前にはキバオウ率いるALS、リンドという男率いるDKBの2ギルドが複数人を連れて立っている。
何故こんなことになっているのか、それは───
昨日、湖畔公園でハヅキと話し、自分の本心を伝えた俺はその後ギルドハウスにハヅキと共に帰った。
シズクたちに泣きつかれたり詳細を聞かれたりなど、戻ってからしばらく彼女たちと話していた。
すると、アルゴがやってきて「みんな、お呼び出しダ」と言って一つの伝言を伝えてきた。
『あす朝10:00、円形広場で話をしようやないか。
来ないなんてことは言わせへんで!』
と。言葉の癖から伝言の主に察しはつくが、何故あいつが俺らと話をするなんて気になったのか、それは全く分からない。
だが、逃げるのも違うということで、翌日──つまりは今日──指定された全員で円形広場に向かった。
そして、到着した俺らがステージ前に立つと、同じくステージ前に立っているキバオウから冒頭の発言が飛び出した。
「何で、やないやろ」
キバオウは険しい顔で俺にそう言う。
「心当たり無いんだが」
次はキバオウでは無く、リンドが前に出て俺になにか言いたそうな顔を見せる。
「とぼけないでいただきたい。君達は──」
さらに険しい顔を浮かべたリンドは言葉を続けた。
「……俺たち2ギルドのメンバーを1人ずつ殺しただろう」
「そんなこと……っ」
「待て、シズク」
「でも……」
リンドの言葉に反論しようとしたシズクを抑え、俺は2ギルドのリーダーである2人の方を向き直して思い当たることに対する言葉を並べる。
「お前らの言う1人ずつは第七層にいたアイツらのことだろ。
──全く。無知ってのは困るもんだな」
「「なんだと(やて)!?」」
「あいつらの死因はお前らにある、そう説明するべきか」
「どういうことや、ラギはん」
「事を説明する。だからひとまず───」
突っかかってくる2人を静かにさせつつ、俺は客席──と言えるのか分からないが──に座っている2ギルドのメンバー達に視線を向ける。
「──静かにしろよ、お前ら」
それを見図ってリンドとキバオウに第七層で起きた出来事を説明した。
PKプレイヤーに騙されてPKをするように指示されていたこと、そして、数人倒したところでそいつらがあのポンチョ男に殺されたこと。
「なんやそれ……」
「……信じろというのか」
「信じないならそれでいい、だが俺の後ろにいる4人は証人だぞ」
すると、客席に座っていた安っぽい装備の男が発言をした。
「そんなやつの戯言聞く必要ないっすよ、リンドさん。
それに、そいつの仲間の4人だって、そいつに騙されてるか脅されたりしてるに決まっ──」
「……それ以上口を開くな」
「なんすか、そのカオ。図星ですか?」
発言をしたプレイヤーの方を見ると、煽るような言葉を並べてきた。
一歩、そいつの方に近づこうとしたその時──
「やめんかぁ!」
キバオウが間に入り制止した。
元はと言えばこいつが原因のところがあるんだが、まぁいいだろう。
「ラギはんが本当のことを言ってるかは次の話で決めさせてもらうわ。
単刀直入に聞くが、昨日の一件はなんや?」
「それはオレっちも説明に入らせてもらうヨ」
「君は情報屋のアルゴか」
「その通り、それで、そっちのトゲトゲ。何が聞きたいンだ」
さすがはほぼ全ての攻略情報を出してると言っても間違いのないアルゴ、キバオウは別としてリンドや他のプレイヤーにも名前を知られているとは。
なんて考えていると、キバオウは俺とアルゴを交互に見てから少し考えた様子を見せたあと、俺に向かい言葉を放った。
「昨日、突然この情報屋がわいらに『第八層には行かない方がいいヨ』なんて言うもんやから事情を聞いたんや。そしたら『お前たちのことを考えての警告だヨ』って言ってどっか行ってもうた。その後別のプレイヤーから聞いたんや『第八層は地獄だ』ってな。それで、お前さんらが情報を回したって話を噂程度に聞いたんや」
「なるほど、アルゴ以外の情報源が気になるところだが…それよりも説明をしろってことか」
「せや、何か知っとるんやろ、お前さんら」
これは……本当のことを言うしか無さそうだ。
「わかった、こちらの言えること全て話させてもらう」
シズク達の様子を少しだけ伺いながら俺とアルゴは事の経緯を話し始めた。
数分後──
「そんで、お前さんとそこの
「あぁ、そういうことだ」
「それなら、俺たちだって協力すれば……」
「お前らに協力を求めたところで、来るやつは少ないだろうよ。
現にこの状態を見ろ、俺らの言葉を信じてる奴がいるか?」
少なくとも協力をすればいいのではと言ってくるリンド以外に協力的な奴はいない。
今もざわついてる中には「ビーターの仲間だろ」だの「あんなやつ信じていいのか」だとか聞こえてくる。
「そりゃそうでしょーよ。前線に出てるからって信用に繋がるわけじゃあるまいし、それにあなた方、第六層もあれだけの噂が立ってて危ないって迷宮区に行って攻略したらしいじゃないすか」
先程発言したどちらかのギルドメンバーの一人がまた言葉を発した。
「なんやて?第六層を攻略したのはお前さんらなんか」
「……余計なことを」
男は静かに笑みを浮かべながら俺らを見下すように顔を上げる。
やはり、見覚えのないやつだが……
「本当は自分たちが潔白だって言いたいだけなんじゃ無いですか?」
「何が言いたい」
「だから───」
男は立ち上がり俺を指さした。
そして、言葉を続けた。
「あんたがこのゲームのGM、茅場晶彦の《グル》なんじゃないかって事ですよ」
「根拠もなしによく言えるな」
「根拠?そんなものあんたの後ろにいる女共がそうでしょ。
どうせ権限とかで洗脳でも何でもしたんでしょうよ、それで言う事聞かないと殺すとか脅しとけばそうやって仲間になるってもんですよ
さらには階層攻略やボス戦までこなしちゃうなんて、怪しいどころか自分がそういう者だって言ってるようなもんじゃないですか」
「お前……っ!」
先程のシズクと同様に、男の発言に対して前に出て抗議しようとしたライムを抑える。
向こうはこっちがこうするってことはわかっているはず。
なら、あいつの言葉に乗っかる必要も無い。
「……なぁ、キバオウさん」
「なんや」
「要はアンタらが言いたいのは
「せや、そう言ってるやろ」
「なら提案だ」
「なんや?」
「───情報屋の力なんて借りるな」
俺のその一言で周りが、なんなら夕立の霧雨までもがザワつく。
そりゃなんの説明も無けりゃこういう反応になるわけだ。
(下手にシズク達に言葉を向けられれば苦しむのは俺じゃない、なら──)
「ど、どういうことや、ラギはん」
「──だから、俺が言いたいのは」
ステージの上に立つ。
キバオウとリンドを順に見て、客席の方を見回したあと、言葉を発する。
「お前らは人の力だけで勝ち上がってきた
人が得た情報をまるで自らの物だと言い張って強がっているだけに過ぎないんだよ」
俺のこの一言に物申そうと、一人のプレイヤーが立った。
「なんだと!?」
「何か言われればそうやって噛み付くだけだ。
思い返してみろ、お前らが自力で得た情報はなんだ」
半分無視をしつつ、こいつらのこれまでの動きを見る。
第一層はこのギルドが出来ていた訳では無いし、第四層までほとんどがキリトや他のプレイヤーが情報屋にボスの情報を流していた。
そして第5層では、お互いがクエストでボスの情報を得てはいたが、ギルド間のくだらないいざこざで口論になり、第三者の介入のお陰でちゃんとしたボスの情報を見つけ出せたわけだ。
そして、それ以降。
第六層はあの赤服がボスを倒したことで情報は意味を成さなかった。
第七層でやっと少しは動き始めたと思えばギルド間のいざこざ、だけでなく両ギルドはメンバーを1人ずつ失った。
そんなやつらが今こうやってここで偉そうにしている。
「──お前らが見ている情報は、誰からの情報だ?」
「……ネズミ印の、アルゴの攻略本」
俺の質問にいち早く答えたのは、たまたまそれを取り出していた──暇になり始めた──ハヅキだった。
「そう、オレっちのダ。」
「……お前らは知らないだろうが、この本の情報の出処はアルゴ5割、そして──」
「ルー坊が5割だヨ」
いつの間にかアルゴが横に立ち、俺の言葉に説明を加えた。
「つまり、お前らは
それを良くもまぁ『お前の仲間は洗脳されてる』だの何だと言ってくれるよ」
「……お前さんは、何が言いたいんや」
「まだわからないのか、鈍感だな。
俺が言いたいのは───」
ウィンドウを手早く操作し、とあるアイテムを装備する。
そして、言葉を続けた。
「信用出来ない相手に生かせて貰ってるんだ。
そんな奴らを罵倒する力があるなら攻略に当ててみろよ。
そうだな……
「そんな偉そうなこと言われて誰が『はい、そうで───
「出来ないならここで死ね」
「なっ──」
装備した赤を基調とした服を揺らしながら剣を抜き、キバオウへ向ける。
「このゲームは遊びじゃねぇんだ。
人の得た物を自分の物だと言い張りながら生き延びてるような奴らが前線で戦ってればいつか死ぬ、モンスターによって殺される。
もちろん、俺はそれは構わない、だが。
──そうやって前線で死なれるぐらいならここで死ね
お前らがやってるのは生死の境目を歩き続けるデスゲームだってことを理解してないんだろ?
なら、ちゃっちゃと死んで、邪魔が無くなったと喜ばれるように努力するんだな」
「お前……言いたいように言いやがって!」
「そ、そうだ!何を勝手に!」
一部のプレイヤーは立ち上がり剣を抜いて俺に向かってくる。
こういうところが甘いって話をしてるんだが……。
「死ぬのはお前だァ!くたば──ぐっ!?」
プレイヤー2人は同時に剣を振り下ろす。
だが、その剣は当たることは無かった。
「……別に、ここは圏内なんだが」
「いやぁ、つい手が出ちゃったヨ」
「ったく、お前も悪だな」
「誰かさんのせいだナ」
アルゴが2人の剣を抑えていた。
「だから言ってるだろ、お前らがどれだけ自分たちで戦えるか、証明する手段は第八層と第九層を攻略しろって」
「……これ以上話しても無駄やな」
「……だな」
キバオウとリンドはやっと察してくれたらしく、顔を見合せたあと自分たちのギルドの方へ向き、指示を出した。
「あんたら!ラギはん達に遅れ取りたくないやろ!
……言われたぶん取り返そうや!」
「俺達もそうだ、自分たちの強さ、証明しよう」
そんなギルドリーダーの言葉に反応するメンバーは数人だけ。
それもそうだろう。これだけのことを言ったんだ、のり気になるヤツなんて──
「なぁにボーッとしとるんや!はよ行かんかボケェ!」
一番初めに噛み付いてきたキバオウがALSのメンバーへ鼓舞──と言えるのか微妙だが──を送った。
なにか言いたそうな顔をしながら出ていくメンバーの背中を見送ったキバオウは振り返り俺に指を指す。
「偉そうな口聞いた事は詫びへんからな。
……ただ、多少の後押しにはなった気がするわ」
「そりゃよかった」
「絶対負けへんから、待っとれ!」
キバオウはそう言って立ち去った。
続いてリンドが「ありがとう」とだけ述べてメンバーを引連れて帰って行った。
数分後。
「あー!もー!」
「うるさいな……何だよ、シズク」
2ギルドが去った後、しばらくの沈黙をかき消したのはシズクだった。
彼女は怒ったような少し泣きそうな、そんなよく分からない表情をしている。
「好き勝手言われたのが腹たってるの!」
「……私も」
その好き勝手言われたっていうのは俺になのかあいつらなのか分からないが、とにかく彼女とカエデは怒っている。
「落ち着けって、一応は解決したんだし」
「あれを解決っていうのカ、ルー坊」
「……正直、ギルド間の抗争は止められるものじゃない。
それは、このゲームが始まる前、言わばアーガスの開発に携わっていた頃から同じだ」
「そう、ですね……」
アーガスでは、ギルドというものでは無いが各開発グループごとで何かと問題が起きていた。
それは、システム面だけではなく、今回のような人間関係の問題が多かったぐらいだ。
止めていたのはだいたい同じ人だったが、毎回何か起こすのも大体は同じ社員だった。
俺やカエデが入った前後もそれが起きていたらしく、その光景を見たカエデは止めようと争いに巻き込まれることもあった。
そんな開発環境の中作られたこのゲームは──いや、どんな仕事環境でも、他プレイヤーと何か行うという協力型のゲームでは仲間同士であろうと殺し合いも起きる。
それを止めようとすることこそ無謀だ。
「だから、そんな顔するなよ、お前ら」
「……うん」
俺はなんの躊躇いもなくシズクの頭を撫でた。
隣でアルゴが何か呟いた気がするが、そんなこと気にせずにこれからどうするかの相談を始める。
「俺が勝手に攻略には参加しないって言ったからな……さてどうしたものか」
「それなら、それぞれ別行動でどう?」
「それぞれって、私達も入ってる?」
ライムの提案にハヅキが質問をした。
明らかに自分たちは対象外だと思ってた顔をしている。
「うん、ここにいる全員を指したつもりだけど…」
「私とコハルは攻略以外にもやることはあるから、階層が進む間はそっち進めるよ」
ハヅキのやりたいことって言うのは大体予想はつくが、それ以上に──
あいつ、夕立の霧雨と話した事あったのか……
「それじゃあ私達もそういう感じでいこう」
「あー、それなんだが──」
続いてシズクの提案に答えたのは俺。
「アイツらがこの二層クリアするまでの間、毎日じゃないがソロで出ていいか」
「それは……何かあるの?」
「悪い、お前らの為だ、言うことは出来ない」
「そっか……ま、いいや」
「シズク……?」
シズクはしんみりとした顔をいつもの笑顔に戻し、俺の前に立つ。
「どんな理由があるか聞きたいけど、私たちのことを心配してくれてのことでしょ?
なら、許すけど──」
そう言い、さらに言葉を続ける。
「……ギルドハウスには必ず戻ってきてね」
「あぁ、約束する」
シズクは小指だけ立てた状態で右手を出てきた。
それが何を意味するのかはすぐに分かり、その小指に俺の小指を絡ませて約束をした。
これが俗に言う指切り(ry か、などと考えながら改めて全員の方を向く。
「色々あったけど、俺のわがままに巻き込んですまん」
そう言って頭を下げる。
「いいよ、ラギ」
「そうだよ、気にしなくていいって!」
「そーだゾ、ルー坊」
「あの時のラギさん、かっこよかったです」
「……お前ら」
ルナ、シズク、アルゴ、コハルがそう言ってくれた。
他のみんなも一切怒った様子はない。
「──ありがとう」
自然と、そんな言葉が出ていた。
さらに数分後
「さーて!帰ろ!」
「あ、待てシズク!」
「シズクちゃん……!」
「待ってー!」
各自解散となり、夕立の霧雨の女子達が出口へ走っていった。
その背中を見送っていると、アルゴとハヅキが声をかけてきた。
「「ラギ(ルー坊)、その装備何(ダ)?」」
「……説明しなきゃダメか?」
「「当たり前でしょ(ダロ)」」
2人はお構い無しに距離を詰めてくる。
この組み合わせ、背の低さとか相まってお似合いのような気がする。
「……こいつは《紅炎の黒衣》、第八層で戦ったモンスターからドロップしたやつだ」
「あ、あの鳥ポ──モンスター?」
「おい今何言おうした」
あの戦闘が終わった後、何故かこの黒衣がストレージに入っていた。
効果は色々と書かれているが、普通の装備よりも明らかに強いのを見ると、これは──
「色々な効果が付与された結果、一個の特殊な装備として生成されたみたいだ」
「そんな装備を持ってたとはナ、効果とか詳しく……」
「それは明日行以降な」
「はいヨ、そんじゃオレっちも帰るとするかね……」
アルゴはそう呟きながら広場の出口に向かっていく。
「……ラギ」
「ん?」
「ラギさん」
「……?」
アルゴを見送っていると、不意に2人から腕を掴まれた。
「「手伝って(ください)!」」
彼女達にとある手伝いを頼まれた俺は2人と別れ、トールバーナの噴水前で待っていたシズクたちと合流してギルドハウスに帰った。
ハヅキ達の手伝いをするのは、数日後──。
お久しぶり?デス!
今期のアニメ、めちゃくちゃ良かった、泣けた。
SAOPRの情報も出ましたし、本格的に書いて早く先に進めようと思います。
今回は2ギルドがラギに八つ当たりをするというどう見てもお前らが悪いパターンのそれです。
そして、第一層のキリトさんに似た装備羽織って宣言する系のラギさん。
第八層と第九層を他人に任せてます。
ハヅキ達に頼まれたこととはいったい──?
ようごせつめいのコーナー
紅炎の黒衣
種:胴装備(服)
紅色メインで黒い線が所々に入っているラギの新装備
高い攻撃力上昇効果と移動速度毎時2%アップ、さらに攻撃時確率でモンスターに火傷デバフを付与する
ラギ曰く「寒さにも強いぞこれ」だそう。