ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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EX:ボアを倒して30日、社内最強になりかけてました。

SAOサービス開始前

ソードアート・オンラインαテスト中

 

第一層 第一フィールド

 

 

「……せいっと」

 

私は今、SAO内最弱(個人調べ)のモンスター、ボアを狩っている。否、()()()()()()()

誘ってくれた同期に置いてかれて数時間、やることも無いためこうやってボアを狩る作業をしている。

 

「なぁんでこんなことになったんやろ……」

 

誰にも聞かれてないことをいいことにそんなことを呟く。

というのも事の始まりは二日ほど前のこと。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

私は上司の宮田という人にいきなり「内部設計班に移ってくれ」と言われた。

 

「え、事業部変更?」

「うん、そう言った」

「なんでそないこと言うんですか?

……はっ、もしかして役に立てないから地下の労働施設に送られたり」

 

妙な想像をする。

別に借金とかないから違うとは思うけど、というか違うのだけど、それでもいきなりの移動命令は嫌な予感とかしちゃう。

 

「いや、んなわけねぇよ?

これでも社員の体調とか気にしなきゃ行けない役割も背負ってるから色々判断して君を変更させようと思ってるんだよ」

「いやいやいや、だからなんでそこで私になるんです?」

「アーガス社内だと君まだそんなに長くいるメンバーじゃないから

とりあえず各個の状況を見たら君だった、ただそれだけの事だよ」

「よーするに『あ、こいつ暇してそうだし移動させてもいいんじゃね』的な感じで選ばれたってことですね?」

「……めんどくさいからそういうことだ」

 

宮田さんは頭を掻きながら適当に返事をした。

 

「む、めんどくさいって言いましたね」

「明日から移動だ、準備しておけよ」

「無視しないでくださぁい!!」

 

 

そんなこんなで私は内部設計班に移動することになってしまった。

そして翌日、私は内部設計班の開発室にいた。

 

 

「えっと……元外部設計班の北沢です」

「なんでかしこまってるんですか

あなた、割かし古参じゃないですか」

「いや、外部設計班ならともかくこっちじゃ私なんてヒヨっ子ですからね?」

「んじゃすっごくこき使いますね」

「お?やるか?喧嘩なら買うで」

 

売り言葉に買い言葉。

一応はこっちが上司、いくら事業部的に下っ端だろうがジブンのほうが立場は上ってことを思い知らせてやらんとな。

こちとら地元で鍛えた鉄板素手触り(ただの事故)がある。どんとかかってこんしゃい。

 

 

「何してんだお前ら」

 

あつい闘志(?)を燃やしていると出入り口から宮田さんが顔をのぞかせた。

 

「あ、宮田さん、おはようございます

聞いてください、この人喧嘩売ってきたんですよ」

「ほう?詳しく聞こうじゃあないか」

「いや、俺は別に喧嘩売ったわけじゃ「問答無用」……ぴえん」

 

内部班の一人は言い訳をする暇もなく外へ連れ出されていった、なんか少し前にはやった気がする言葉をつぶやきながら。

 

「あの…なんか、すみません」

 

私とあの人のやりとりをずっと静かに見ていた社員に謝罪をして自分の席に着いた。

 

 

 

 

 

そんな出来事から数か月が経ったある日、SAOのαテストが開始した。

開始当日、内部班で仲良くなった同期の子に「一緒にやりませんか?」と誘われたんやけど、上層で大きなバグがあったとかでその子は参加できなくなってしまった。

なので、慣らすために第一層の雑魚モブであるボアを狩ることにした。

 

 

……のだけど。

なんでかわからんが攻撃が全く当たらん。

こりゃ致命的なバグでも見つけてもたかと思ったら、通りかかった社員から半笑いで動きの訂正を受けた。

どうやら私に問題があるとか何とか。

失礼にもほどがあるってもんでしょ、こちとらこれが初VRですよ?

そんな転生系の小説みたく何の苦労もせずに魔王倒したり、最強の剣士になったり、不老不死で世界最強でスローライフ過ごしたり、死に戻りしながらも問題解決したり……はここならできるけど。

とにかくそんなすごいことできる人じゃない、少なくとも私は。

 

「…そうか」

 

死に戻りしながら…じゃなく、雑魚モンスターを一日数匹倒し続けるだけでも何かバグとか見つかるかもしれんやん。

てなことなら早速実行だ。

 

 

というわけで、私はボアを狩り続けるだけのαテストを開始した。

一日目安は20匹、それだけ狩ったら本仕事に戻る、その繰り返し。

ちなみにだけど管理者権限のレベルが高い人は自身のレベルを自由に操作できるらしいけど、それは根幹を担当してる人のみに許されている。チートや、チーターや。

 

 

 

 

ボア狩りから二週間が経過したある日。

私のスキル欄に見覚えのないスキルがあった。

名は「弓(弓兵)」、どうやら弓を使うらしいけど、ある条件を満たすと弓に剣を装着できるらしい。

どこかで見たことあるけど、アーチャーを名乗る者に弓使いは少ないらしい、どゆこと。

弓兵とは、という真理を求めると守護者とかがうるさそうだから黙ろう、うん。

 

「スナイプアロー…っと」

 

管理者権限の一つ、《SS全開放》を使い、ソードスキルごとの構えを確認。

弓SSの最上位のスナイプアローを放つ。

 

 

「うっそぉ……」

 

放った一本の矢は分裂して私の正面、100度ぐらいの角度に一斉に飛んで行った。

ボア相手だからまだ真価がわからないけど威力と範囲は明らかに強い。

例えるなら某スマブラのピンク玉の切り札、ウルトラ剣ぐらいかそれよりもう少し強いぐらい。うん、このたとえはちゃうね。

 

……とにかく、こんな武器を獲得した私は日課のボア狩りを続け、遂に30日が経ったある日。

私ははじまりの街、その中の宿屋に呼び出されていた。

 

 

 

 

「レベル上げすぎだ」

「そないことないでしょ、さすがに……」

 

宮田さんに呼ばれた私は自分のステータスを確認する。

すると、私のレベルは70後半だった。

 

「うそ……私のレベル、高すぎ……?」

「茶番はいいから、ちょっと説明してもらおうか」

「説明ってなんですか」

「なんでそんなレベルになったのかを教えろって事だよ」

 

「そんなこと言われたってただボアを狩り続けただけですよ?

ほんとに、ただ毎日のように25匹ずつぐらいで狩り続けただけ。

それでこのレベルになるわけないでしょ?何かのバグですよ」

「おい心の声混ざってるだろ」

「そないこと無いですよ?」

「……とりあえず教えろ」

 

なんでこの人ちょっとキレ気味なんだろう。

別に本音なんて口にはしてないのになぁ……

なんて思いながら宮田さんに事の経緯を話した。

 

 

「ボアを狩り続けたらそのレベルになった?」

「は、はい」

「どんだけ倒したんだよ」

「毎日25匹ずつぐらいです」

「……割に合わなくねぇか」

 

ごもっともです、私だってせめてレベル30程度だと思ってた。

でも、ほんの少し()()が判明してる。

それは───

 

「まぁいい、問題点が発覚しただけまだマシだ

俺と新田はそこら辺の修正するからお前も手伝え」

 

原因を話そうと口を開く前に宮田さんはそう言った。

ただ一つ、私の怒りを呼び出す発言があった。

 

「………い」

「ん?」

「毎回なんで()()()()()だけこき使うんですか!!」

「いや別に新田だけこき使ってるわけじゃないだろ?」

「……すみません先に落ちます」

「あ、おい……っ!」

 

宮田さんが引き留めようと伸ばした手が届くより前に私はログアウト処理が施されてその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

そんな出来事から数ヶ月後───

私とあっちゃんは外部設計班にて仕事をしていた。

そして、今()()と一緒に動いてる新入社員の如月君にあの出来事の話をしていた。私の隣にはあっちゃんがいる。

 

「……それで、外部設計班にその新田さんと一緒に戻ったんですか」

「いやぁ、我ながら少し上の人に対して本気でぶつかっちゃったね」

「あの時の琴海ちゃん、カッコよかったよ」

 

如月君は少し呆れたようなトーンで事の結末を口にした。

宮田の前でログアウトした後、私はあっちゃんのもとに行き一度真摯に向き合い話をした。

その後、ガチギレの宮田に呼び出された私だったけど、あっちゃんから聞かされた話を掘り起こしてみたらあら大変、否定しないんだなこれが。

その辺を踏まえて思いっきり指差しで宣言した。

 

「『いくら上司だろうが他人の命の危険を脅かす命令は聞けない』、ですか」

「恥ずかしいからリピートしないで」

 

……とにかく、そう宣言したら向こうは黙ってしまった。

追い討ちをかけるように私はちゃんと相手の目を見て言い放った。

 

「『この班に私達がいる意味は無いから戻らせていただきます』、と」

「……如月君って意地悪だよね」

「ふふっ、でも琴海ちゃんがあそこまで言ってくれてなかったらほんとにどうなっていたか分からないよ」

「せやけど、あれぐらい言わんとほら、本当にあっちゃんが危ないと思ったんよ」

「うん、ありがとう」

 

なんで話したことに対してリピートするんだろう如月君。

なんか面白いけどちょっと意地悪すぎる気がする。

 

「お二人の仲はよくわかったんですけど、一ついいですか」

「んー?なんでも聞いてくれていいよ?」

「その、北沢先輩が使った弓スキルなんですけど」

「あぁ、あれは強かったね」

「いや、そこは設定上そう言う作りなんです

……じゃなくて、あのスキル実は──」

 

如月君は少し話すのを躊躇いながらも衝撃の事実を口にした。

 

「ゆ、ユニークスキルだったん?」

「俺も知ったのはつい最近、宮田さんじゃない方の上司に言われて認識したんですけど

ログを見てみたらαテストからずっと誰かが使ってる様子があったんですが

あれ、()()()()()()()スキルだったらしいんです」

「ほぇ?」

「つまりですね、先輩はずっと未実装スキルでボアを狩り続けてたってことです」

 

これが、場が凍るということなのだろうか。

私はもちろん隣に座るあっちゃんも固まっていた。

確かにあの弓スキル異常に強いとは思ってたけど、なんなら片手剣より使い勝手良かったし変な感じはしたけども、それがまさかユニークスキルで、それも実装予定の無いスキルなんて誰が思うのさ?

 

「……とりあえず、こっちで何とかします」

「如月君、その件は絶対に宮田には言わんといてね」

「えぇ、何となく察してるので個人的に処理します」

 

元はと言えばあの人が悪いところがある。

そんな人に私が見つけてたバグを半年放置してたなんて知られたくはない。

その辺を如月君は把握してくれたらしく、小さく微笑んでくれた。何この子ギャップ凄くない?

 

「それじゃ、俺は業務に戻ります」

「ん、行ってらー」

 

コーヒーを飲み終えてカップを食洗機に入れた如月君は内部設計班の事業部のほうへ歩いて行った。

 

しばしの沈黙が流れたあと…

 

「ねえ琴海ちゃん、近々こっちの班にも新入社員が入ってくるらしいよ」

「え、そなの?」

 

あっちゃんから初耳の情報が出た。

外部班という事は大体女の子だと思う。

 

「噂だからわからないけど、なんか茅場さんが連れてくるとかなんとか」

「へぇ……どんな子かな」

「ふふっ、琴海ちゃん、後輩が来ると楽しそうだね」

「そりゃ楽しみでしょ、そういうあっちゃんは楽しみじゃないの?」

「私、そういうのはないかな…」

「えー、ないのかあ」

 

別にこういう感覚を持っても変じゃないでしょ、後輩に色々と教えてあげられるし。

私が特別変ってわけじゃないよね?

 

「あ、そろそろ私達も戻ろっか」

「そうだね、行こ」

 

私達もコーヒーを飲み終え、ちょっと雑談をした後に自分たちの事業部へ戻った。

 

 

まさか、私のボア狩りがSAO管理者内()()最強になり、それがこの後のSAOのモンスターポップと経験値に大きな影響を与えることになっていたなんて、この時の私は知る由も無かった。




新キャラ、爆誕

今話は如月春揮がアーガスに入るよりも少し前の話。
前回、モンスターポップ数問題を個人的に話してたラギですが、その問題の話がこちらとなっております。
転生系って、何かしら強つよなパワー持ちがちですよね


今回のタイトルは最近はまってる作品のパク…リスペクトです。



弓スキル
SAOゲーム世界線ではシノンが取得したもの
ユニークスキルじゃなかった気がするけど、少なからず一人しか取得していないあたりユニークスキルでも問題は無いと思う
SS名や仕様は完全にオリジナル



新キャラについては後日、別投稿で詳細を。
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