ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
第一層宿屋通り【夕立の霧雨ギルドハウス】
ラギの部屋
キリト達と別れた俺はギルドハウスに帰りシズク達にはデュエルしてきたとだけ伝え自室に入った。
少しゆっくりしようと思った矢先、部屋のドアがノックされ、ライムが入ってきた。
「……ちょっと、いいかな」
「もう夜遅いんだが、また不安事か?」
「いや、それもそうなんだけど………」
彼女が夜、寝る頃にこうやって部屋に来るのは二度目だが、今回は前回のようにキッパリと事を話してくれず、歯切れの悪い反応を彼女が見せる。
「──一緒に、寝てくれない?」
「……へ?」
彼女が恥ずかしそうに少し目を逸らしながらそんなことを言ってきた。
いきなりすぎて変な声が出てしまったのだが、とにかく何故彼女はそんなことを……
「へ?じゃないっての、だから……一緒に寝たいって言ってるの」
「……催淫かなにかでも受けたか」
「殴るよ?」
「冗談だっての。ほら、横開けるから入れよ」
「ん、お言葉に甘える」
何かしらの理由があると察し、彼女が横になれるスペースを空ける。
彼女は少し躊躇いながらも空けたスペースに横になる。
ダブルベッドじゃないため、かなりギリギリではあるが、何とか二人で一つのベッドに入った。
「狭…もう少しそっち行ってよ」
「お前なぁ…これでもギリギリなんだよ、一人用だし」
「はいはい、わかりましたよー。近すぎるでしょ……」
彼女が入ったことで狭くなったベッドの縁ギリギリまで下がるが、さすがにシングルベッドに二人は無理がある。
そんなことお構い無しのようにもっと空けろと言う彼女に反論してみると自然な返しと共に小声でなにか聞こえた。
「近いって思うなら俺は床で寝るよ」
「聞こ──いや、そこまでしなくていいから!」
冗談半分でベットから降り、床に寝ようと体勢を低くしたところで彼女に腕を掴まれ、ベットに引き戻された。
勢いよく倒れ、顔を上げると目の前に彼女の顔があった。
「……何見てんの」
「いや、理不尽かよ」
彼女が引っ張ったから目が合ったというのに睨みつけられるって理不尽だろ。
なんて考えていると、言葉にしていたらしく、彼女は少し笑った。
「冗談だって。……でも、あまりこっち見ないで」
「わかったよ、上向いて寝ればいいんだろ」
「ん、それでお願い」
この距離なら向き合っても変わらないような気がする、と言いたくなったが本題に入れないため心の内に秘めて天井を見る。
すると、まだこっちに向いて横になってる彼女が話を始めた。
「ラギは……私のことどう見てる」
「どう、って──」
「
彼女は静かな声で、そしてどこか真剣にそんなことを聞いてきた。
「答える前に逆に聞かせろ──
なんでそんなこと聞いてくるんだ、お前」
質問を質問で返す形になるが、何か深い意味を持った質問じゃなきゃこんな夜に二人きりで聞こうとなんてしないだろう。
そういう意図もあり彼女に理由を聞く。
「──ラギはさ、これだけ女の子に囲まれてるのに、誰か一人に手を出そうと……言っちゃえば
ライムはそう言った。
襲う、つまり
確かに、俺の周りには女子が多い、というか女子と関わる機会が多すぎてそう見えるだけだったりするのだが。
「俺はお前らをそういう目で見たことは無いし、ましてや襲おうなんて考えちゃいない」
「なんで」
「なんでって、お前な……」
「
「……まさか」
俺の返答に対しての彼女の返答で俺の中にあった嫌な予感は的中した。
何故彼女が急にこんなことを聞いてきたのか、
「大丈夫、純血は守ってるから」
「…何が大丈夫なんだか」
大丈夫と口にする彼女の声と体は震えている。
それは、思い出したくない事を思い出してそれを隠しながら俺に相談という体で話しているのだから当たり前の反応で、前に聞いた彼女の過去にはまだ続きがあるのだろうと察することができる。
「無理に、話さなくていい、だからもう――」
「それじゃダメなんだ」
「ライム……」
「──話すよ、ラギに。
私の、
慌てて彼女を止めようと横をむくと、真剣な顔で俺の方を見ていた。
そして、止める暇なく彼女は過去を話し始めた。
◇◆◇◆◇◆
事の始まりは中学1年生の時。
小学生の時に起こったあの出来事もやっと落ち着くといったある日。
私は《特別支援学級》に通っていたこともあって同じ学年の生徒とはほとんど関わりがなかった。
でも、その日だけは文化祭という一大行事らしくて、同級生と一緒にならないといけなくなって、私とシズクともう一人はそれぞれ一緒に行動しながら同級生たちの輪の中に入った。
ある一件で私だけになったその時に事は起こった。
文化祭のメインである校舎から少し外れた中庭のような場所で私達は休憩をしていた。
「ちょっと先生に呼ばれたから私たち教室行ってくるね!」
「ん、私もついてくよ?」
「うーん……先に出し物見て回ってていいよ?」
「そうは言われても……」
シズク達についていこうとしても彼女達は拒否をしてくるばかり。
何とかして一緒に行こうとしたけど、彼女は「すぐ戻ってくるから、大丈夫!」と言って教室にむかっていった。
一人になった私は仕方なく出し物を見て回るために校舎に入ろうとした。
その時だった。
「いいカモ見っけ♪」
「……っ!?」
背後からそんな声が聞こえて振り向いた瞬間、口に布が当てられ、それを嗅いだ途端に私の意識は少しずつ落ちていった。
薄暗い倉庫内
ぼやけた意識の先に、二人ほどが立っているのが見えた。
「アニキ、こいつ本当に女っすか?」
「何言ってんだ、女子制服着てんだし間違いなく女だろ」
「でも、めっちゃ男っぽくないすか」
「うるせえなあ、本当に女かは確かめりゃいいんだよ」
そんな会話が聞こえたと思えば、片方が私の制服に手をかけ、ボタンを外し始めた。
「……やめ、て」
「何だ、起きたのか?
悪ぃがやめてと言われて辞めるやつァいないんだな、これが」
制服のボタンを外す手を止めない男を止めるため手を伸ばしたけど、両手が体を後ろに回され、縛られて動かせない。
「やっと気づいたんすね、残念ながら意識ないうちに縛らせてもらったっすよ」
「……ってことだ、無駄な抵抗しないで俺たちに身を委ねな」
抵抗出来ずに男に制服のボタンを全て外されてしまう。
「なんだ、見た目もだが胸も男みてぇだなぁ?」
「……触、るな…っ!」
「そう言われたらやるしかねぇな。
お望み通り無い胸を堪能させてもらお──痛っ」
躊躇うことなく触ろうとしてくる男の腹に唯一自由に動かせる足で蹴りを入れた。
男は少し怯んだ様子を見せたけど、直ぐに立て直して私の目の前に立った。
「大人しくしとけば優しくしてやったってのに、お前がその気なら俺らがいくら乱暴しようが文句ねぇよな。
おいお前、こいつの足抑えろ」
「りょーかいっす、アニキ!」
「──っ!」
立て直した男は私の喉を締めるように掴み、もう1人に指示を出した。
もう一人は私の両足を掴み、壁に抑えてそしてスカートに手をかけた。
「……ぁ…や、め……」
「抵抗しなけりゃ痛い目見なくて済むんだぜ?
でもお前は少しでも手をかけちまったんだから、これは仕方ないんだよ、わかるか?」
首を絞められたことで息が出来なくなり、抵抗する力も無くなって来たところで男に手をかけられていたスカートが脱がされる。
薄れてきた意識の中聞こえた男の言葉を真に受け、私は既に男たちの行為に身を委ねかけていた。
スカートが完全に脱がされ、ついには下着も脱がされてしまうというところで、薄暗かった部屋に突然陽の光が差し込んだ。
男達も急なことで驚いたのか、私を離して光の入った方を向いていた。
「道に迷ったんだが……どうやら迷って正解だったみたいだな」
「なんだ兄ちゃん、ここは単なる倉庫だぞ?来ていい理由な「そこの生徒を見りゃ何してたかなんてわかるぞ」──ちっ」
逆光と男達の影で見えないけど、
「俺たちはこの子を助けてただけだぜ?な、相棒」
「お、おうともアニキ!俺たちゃここに縛られてた可哀想なこの子を救ってただけだって」
「──へぇ」
男達は偽りを口にしたけど、彼は聞く耳を立ててないような反応をした後──
「悪いがそんなこと信じられない、だから──」
彼がそう言ったことは直後、男達が突然その場に倒れた。
◆◇◆◇◆◇
「その後、私は遅すぎる恐怖に襲われて、助けてくれようとした彼を拒んだ。
それから何があったのかは覚えてないけどね」
彼女は涙目になりながら震えた声で事の顛末を話し終えた。
男に襲われ、抵抗できないまま純血を奪われる寸前まで行った、それが彼女が男嫌いになった原因。
「……よく、耐えたな」
「ラギ……?」
前回聞いた話をシズク達も聞いたこと無かったのを見た感じだとこの話もまともに話すのは俺が初めてだろう。
自分の経験を話さず内に秘めて今まで生きてきたのだ。
「その出来事から、よくここまで耐えたな、ライム」
「な、んで……」
「恥辱を受けて、友人を失って、襲われそうになった。
それでもお前は今まで弱音を吐かずにここまで来た、そうだろ?」
「……」
「そんなの、普通だったらどこかで崩れる。でもお前は耐えた」
「……違う」
「お前は──」
「やめてっ…!」
彼女に伝えたいことを伝えようとするが、途中で彼女に突き飛ばされてしまう。
その勢いでベッドから転げ落ちたが、そんなこと気にせずに立ち上がり落ちた俺に心配そうな、不安そうな顔を見せてくる彼女の両肩を掴み、正面を向く。
「私は……確かにずっと黙ってた、シズクやカエデ、ここにはいない
でもそれは──ただ彼女達に話すことで関係が変わるのが嫌だったから、彼女達が私を襲った奴らの標的になるのが怖かったからであって、耐えて来た訳じゃない」
「お前は───」
「ただ巻き込みたくないから自分の中に塞ぎ込んで、自分だけじゃなく周りを騙しながら生きてきただけなの」
「──馬鹿野郎」
「──っ!?」
真正面から最後まで言い切った彼女の肩に置いた手に力を入れ、俺自身の思いを彼女に伝える。
「お前は確かに彼女達に何も言わなかったのかもしれない、でも──
お前がそうしたおかげで彼女達は何もされなかったんだろ」
「それは──そうだけど」
「ならそのことを悔やむなよ、塞ぎ込むこと自体は体に毒だしいつか身を滅ぼす可能性がある。
でも、お前は自分の身を削りながらも彼女達を守った」
「──うん」
「お前は強いんだよ、肝心なところは抜けてるが」
自分がされた事に対して誰にも言わずに塞ぎ込んだ彼女は、仲間達には笑顔を見せて自分の辛さを包み隠して生きてきた。
その理由は心配されたくないだとか事件に巻き込みたくないといったものが主となり、それが結果的に彼女達を守っていると本人は気づかなかった。
色々なことをされてきたライムの精神状態を考えればそこまで気にすることは出来ないと思うが、彼女は強さを持っている。
「……あ、れ、なんで……」
「時には泣いたっていいんだよ、ずっと抱え込めばいつか中身が崩れてしまう。
だから、辛い時は泣いてもいいんだ、ライム」
「ラギ……ごめ、ん……」
ずっと塞ぎ込んできた彼女の辛さが少し開放されたようで、彼女の頬には涙が流れた。
泣いてもいいと伝えたら体の後ろに手を回す形で彼女が抱きついてきたため、優しく抱きつき返して右手を彼女の頭に乗せる。
しばらくの間、彼女の涙が止まるまでこの状態のままだった。
数分後、泣き止んだ彼女は突然照れた様子で顔を逸らした。
いつもの調子に戻ったと察した俺はベッドの中に戻り横になる。
「落ち着いたか」
「……うん、なんとか」
「──
「……え?」
続けて彼女も横になったところでお互いに向き合う状態で確認をとった。
そして、思い出したある出来事の情景を思い出していた俺はあることをつい口に出していた。
「あの時って……まさか──」
「その話はまたいずれ、な」
「待ってよ、それじゃ──」
「……ライム」
「な、何……」
話を逸らして布団に入った俺を止めようとする彼女の名を呼ぶ。
「夕立の霧雨はお前に任せる」
「──っ」
「無意識下だったかもしれないがお前は彼女達を守る力がある。
俺と違ってお前は強い、だからお前にこのギルドを託す」
それは、前に彼女に伝えたギルド脱退の決意。
俺が抜ければこのギルドは不安定になるかもしれないという心配があったが、彼女と話して大丈夫だと確認出来た。
故に彼女に任せる。
「──分かった」
彼女は一言そう言って俺の横に入ってきた。
部屋の明かりを消してすぐ、彼女は横向きに寝ている俺の背中に手を当ててきた。
「──ありがとう」
「……俺は何もしてないよ」
「ううん、ラギは
「……救えたなら良かったよ」
そんな会話をした後、ライムから寝息が聞こえ、俺も眠気に襲われて眠りについた。
翌日
朝起きた時にはライムは部屋におらず、一回ホールで女子達と色々と話をしていた。
昨晩何があったのかをシズク達に問い詰められながらも
お久しぶりです
1ヶ月1話投稿が当たり前になってきた私です。
といっても落ち着き始めたので今月からは……投稿増やせるかなぁ
そんなことはさておき今回の話は内容が内容だったので投稿が遅れました
描写するのが辛い、という書き始めてから精神状態が落ち込みつつあり今に至ります
ちなみに添い寝回という扱いです。