ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
翌日
SAO第一層【黒鉄宮】
「ねむ……」
ウィンドウを操作する手を止めて大きく欠伸をする。
昨日の一件があったからか寝不足気味で少しでも気を抜くと寝そうになる危ない状態になっていた。
そして、俺が今ここにいるのはある約束をしたからなのだが、当の本人達はまだ来ていない。
「眠そうだナ、ルー坊」
近づいてくる足音に気が付き顔を上げると、当人達では無くアルゴが前に立っていた。
二ヒヒ、と言いたげな顔で俺の方を向いてくる彼女は新調した装備を着てお馴染みの鼠髭ペイントだけでなく素顔を晒している。
「すっかり顔出しする様になったな」
「目立つ奴と一緒にいると、隠す意味も無くなっちゃってナ。とはいえさすがに正体明かせない時はいつもの着てるヨ」
「そーですかい」
今となれば鼠のアルゴはその活躍はもちろん、素顔も知られている有名人だ。
その知名度を作ったのは第二層でキリトやアスナと
「にしてもどうしてここに来たんだ、今日から暫くは昨日話した一件の調査をするんだろ?」
「そのつもりではあるんだけナ、ちょっと話しておかないといけないことがあって」
「それなら帰ってきた後でもいいんじゃないのか?」
「だったら今ここにいないヨ」
「……確かに」
いつになく真剣な彼女の威圧――のようなもの――を察して言葉を訂正する。
最重要なことは自分のやることを後回しにしてまで真っ先に伝えてくれる彼女がこうも真剣な様子である以上、何かあるのかもしれない、そう直感的に思った。
「端的に言うヨ」
「あぁ……」
「……***は――」
彼女があることを口にした、それを聞いた俺は言葉を失った。
もともとそんな雰囲気はなかったし、そういうことは
「証拠は」
「……ルー坊は、ディアベルの言葉を覚えてるカ?」
「――忘れるわけないだろ」
ディアベル、自称
そして第一層ボス戦で彼はたった一人の犠牲者となった。
だが、彼が先陣を切ったのはただボスの動きを知らずに突っ込んだ以外にも理由があった。
彼は第一層攻略の前夜、アルゴに第一層で唯一の死者となる旨を伝えていたらしい。
ほかのベータテスターに矛が向かないために自分がボスの攻撃を引き受け、モーションを把握してもらい
そして、彼は最初から後を任せる人物を決めていた。
それが俺とキリトだったのだ。
だが、ディアベルの策略虚しく、ボスの持つスキルを知り、LAを取ったキリトは《ビーター》と呼ばれるようになり、後を託されていたキリトは前線には立つものの、リーダー格として動くことはなかった。
「……オレっちは、止めたんだけどナ」
「彼の気持ちは最悪な方にこの世界を動かした……までは言い過ぎだと思うが、あいつの犠牲が今の二大ギルドのいざこざを生んだ」
「……そう、だナ」
アルゴは彼の発言を受け、全力で止めようとしたらしい。
だが当日、ボス戦の犠牲者が出てないことを確認するため黒鉄宮の剣士の碑を見ていた、彼女が見たのは文字色が薄くなり、横一直線に線を引かれた――死亡したときの表記――ディアベルの名前だった。
「……それで、彼と
「いいや、直接的な関係はないヨ」
「なら何のためにディアベルの話を」
「『後を託す』、これなら伝わるカ?」
「まさか――!?」
アルゴの発言に嫌な予感がして彼女の顔を見る。
「もちロン、確証のないことだ。でも、オレっちは一度、
彼女が言うには本人に直接聞いたわけではなく、本人がある時に口にした言葉がたまたま聞こえたとのこと。
内容全てを聞き取れた訳では無いが、聞こえた部分だけでもこうしてアルゴが相談してくるようなことだったということ。
「……何考えてんだ」
「それはオレっちにもわからナイ、ただ言えることは──」
「俺に任せるつもりだ、ってことだろ」
「あぁ、その通りだヨ」
ディアベルが俺やキリトに後を託したように、
まだ本当にそうなのかはわからないが、もしそうだとすれば残された彼女が一番悲しむだろうし、そんなことは許すはずがない。
そして何より、本当にやろうとしているのであればディアベルの時と何も変わらない。
「後を託そうと身を滅ぼしたところで、その責を受けるのは残された俺達だろ。
──絶対にそんなことはさせない」
「オレっちもその気だヨ、せっかく知り合えた仲間だし、何より──」
「「大切だから」──だろ?」
「……考えは同じだったナ」
アルゴの思いを察して同時に言葉を放つ。
やれやれといった様子で呆れた顔を見せる彼女は髭ペイントを触っている。
「そうだルー坊、もう一つ報告ダ」
「ん、なんだ?」
髭ペイントを触る手を止めて彼女は更なる報告を口にする。
「女性プレイヤーの行方不明が起きてるって話、それが……」
彼女は途中で言葉を詰まらせる。
少し嫌な予感がして聞き返そうとする俺を「まぁ待て」と言わんばかりに止めて言葉を続けた。
「……表沙汰になり始めてる」
小さくそう言った彼女はとあるニュース記事を表示させて俺にみせてくる。
「まだ単なる噂程度で出回ってるのが救いだナ」
ニュース記事には「恐怖の噂、SAO内行方不明事件」などという名前で書かれた見出しと信ぴょう性の薄い噂をまとめたものが書かれている。
「そういえば被害者が出てるならその周りの人間が情報屋に問い合わせたりしないか?」
「そう言われると思ってナ、同業他者に聞いたんだが、そういった被害なんかは相談されてないらしいゾ」
「そうか……って、お前直接聞いたのかよ」
「安心しロ、オレっちもそこは考えて聞き方は工夫してル」
「ならいいが……」
アルゴが相談をした情報屋が情報を漏らして記事を書いたのではないかという不安が湧いてきたが、さすがにアルゴもそれを警戒して聞く相手は限って聞き方もある程度ぼかしたらしいから情報屋による漏洩はないと考えていいだろう。
となれば誰が情報を表に出したのかということになるのだが──
「ルー坊、リアルでこんな噂聞いたことあるカ?」
「噂?何だ急に」
「……『事件の犯人は、半分近くが第一発見者』」
彼女の言葉に嫌な予感がする。
もし本当にそれがこの事件に関係しているのであればこの記事は……
いや、待てよ?
「この記事って、誰が書いたんだ」
「そう聞かれると思って回答を準備してたヨ、この記事はMMOトゥモローみたいに一部のプレイヤー達が集めた情報をギルドとして活動してるヤツらが記事として書き上げるスタイルじゃない、
「ってことは書いた本人が犯人ってことになるのか?」
「もちロン、確証はないケド……ありえない事じゃない」
「とりあえずはその犯人を探すことが優先か……」
ため息を吐きながら黒鉄宮の壁に背を預ける。
アルゴも俺の言葉に賛同して「ウム」とか言いながら頷いている。
「……それよりルー坊、こんなところでナニを?」
「ハヅキ達の手伝いだよ、タワークエストの」
「夕立の霧雨は?」
「あいつらならレベリングにでも行ってるんじゃないか?」
「どこ行くかぐらい聞いとけよナ」
他愛もない話をしていてふと思い出したが、シズク達が今どこに行ってるのかは把握していない。
厄介事に巻き込まれてなければいいんだが──
「仕方ないだろ俺もどこに行くのか言ってないんだから」
「……まぁいいヨ、それよりお二人の到着ダ」
呆れたような仕草をする彼女はいち早く音に気づき、入口から入ってくる2人の少女達に目線を向けた。
ハヅキは向けられた視線にビクッとなっていたが、コハルはどこか悩んでいるような様子を見ながらこちらに近づいてくる。
「アルゴも来るの?」
「いや、たまたま会っただけで他に用があるってよ」
「悪いナ、お二人共」
「いえ、お気になさらず」
少し期待の目を向けたハヅキの質問に返答し、アルゴも謝罪をする。
それに対してのコハルの反応もいつもより素っ気ないような、そんな感じがするのだが……
「それじゃお姫様二人も来たことだしオレっちはお暇するヨ」
「「お姫様!?」」
アルゴの冗談交じりの発言には同時に反応して顔を赤く染めた。
情緒不安定なのか、単に不意打ちを受けたからの反応なのかわからない。
「──気をつけなヨ」
壁から背を離した俺にアルゴは去り際にそんなことを言った。
わかってる。
どんなことがあろうと俺が助ける。
「俺達も行くか、タワークエスト」
「うん!」
「はい!」
どちらかが傷つき失うようなことだけは絶対に避けなければ。
もう二度と、同じことは
ちょっと期間開きましたおはようございます
手伝い回だと思っただろう
一話間に入れることにしました。
次回はハヅキ達の手伝い、もといタワークエスト回
何も起きなければいいんですけどね