ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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60:絶望と希望(救い)∕タワークエスト(5)

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タワークエスト14F

mission:全ての敵を倒せ

報酬:宝石剣【***】

───

 

妙にやる気のあるコハルに催促されながらもハヅキがクエストを受注し、転送された先には妙に広い部屋があった。

そして部屋の中心にミノタウロス型のボスが一体立っている。

それだけのはずだが、この部屋中に嫌な気配が漂っているような気がする。

 

「…気、抜くなよ」

「もちろん」

「わかってます」

 

2人が横一列に並んだのを確認して武器をとる。

一応の注意をかけて緊張感を持たせたところで突撃の合図を出す。

 

「……GO!」

 

俺の合図と同時にボス左右と目の前に分かれて一斉に攻撃をしかける。

ありきたりながら一番確実にダメージを与えられる戦法。

の、はずだったが。

 

「……ラギ、下がって!」

 

ソードスキルを発動させようと剣を右斜め後ろに構えたところでハヅキに下がるよう指示をされた。

指示に従い下がるとボスは持っていた長刀を半円形に振り回した。

 

振り始めから終わりまでの位置は、俺たち3人がいた場所全てを範囲に捉えていた。

 

「……危ねぇ」

「ラギ!大丈夫!?」

「あぁ、間一髪避けられた」

「どうすれば……」

 

散った俺たちはボスの攻撃を避けた結果間近に集まっていた。

ここまで範囲の大きい攻撃だとは予想出来なかった。

下手すれば、全方位を長刀の振り回しでカバーできてしまう。

 

「上か」

「「上?」」

 

何かないかとボスを頭から見ていくと、見るからに弱点と言える物が頭にあった。

頭の上に十字、いやクロスに刻まれた傷がある、そこを狙えればダメージを多く与えられるはず。

 

「何が言いたいかはわかったけど、あの振り回しがある以上は狙えないよ」

「何ならハヅキの斬撃も防がれるかもな」

「それじゃあ、どうすれば……」

 

弱点を見つけたところで攻撃出来る訳では無い。

何とかして相手の隙を───

 

「……隙か」

 

自分の思考内で出た言葉に対して反応してしまう。

そして、そんな自分に反して一つの打開策が頭に浮かぶ。

 

「策ならある」

「えっ?」

「……俺が奴の攻撃を止める」

「それじゃラギさんが……」

「これしかないならやるだけだ、……来るぞ!」

 

話しているうちに近づいてきていたボスの攻撃を避け彼女達に視線を送る。

不安そうな顔をしているコハルとボスの様子を伺いながらもこちらをチラチラと見ているハヅキの姿を確認し、ボスが長刀を構えたところで剣を前に出して防御の姿勢をとる。

 

「くっ……!?」

 

流石の体格差と重さによって膝をつきそうになる。

だがここで押されてしまえば俺は間違いなく全損、そして彼女達にもダメージが行ってしまう。

 

「ラギさ──「コハル、やるよ!」う、うん!」

 

助けに来ようとするコハルを止めたハヅキがソードスキルを発動させた。

長刀を両手で持ち振り下ろしている状態のボスには防ぐ手段は無い。

 

「──ハヅキ!」

 

そう思っていたが、ボスは長刀を手放し、ソードスキルを放った彼女に向けて右手を振り下ろした。

システムアシストにより発動したソードスキルをキャンセルすることは出来ないため、ハヅキは攻撃を防ぐことが出来ない。

 

振り下ろされた拳が彼女にあたる寸前でコハルが間に入り防いだ。

だが、ボスの腕力は彼女の防御を軽々しく弾き飛ばしてハヅキ共々横に吹き飛ばされてしまった。

 

「お前ら!?」

 

吹き飛ばされた彼女達は壁にあたりその場に崩れ落ちた。

そのまま2人は起き上がる気配が無い。

 

「くそ……っ!」

 

ボスは2人の倒れている方に向き一歩ずつ近づいていく。

短剣を投げるがタゲは2人に向いたまま。

 

「させるかっ!」

 

ボスの攻撃が2人に届く距離になる前にボスの前に立つ。

一瞬でタゲを変えたボスは俺目掛けて長刀を振り下ろしてくる。

 

さっき受けた時は受け止めようとして押されてしまった。

ならば、()()()()()()()()()()だけのこと。

 

「──そこだ!」

 

斜めに振り下ろされた長刀を垂直になるように構えた剣で防ぎ、自分への負担が少ないうちに長刀を逸らした。

後ろに倒れている2人に当たらないように逸らした長刀は勢いそのままに地面に衝突して金属の音を発生させる。

ボスミノは長刀を手放して右腕を振り下ろしてくるが、当たる寸前で避ける。

避けられるとは思ってなかったような様子を見せたボスは連続して左右の腕を振り下ろす。

連続攻撃の途中、ほんの一瞬だけ止まった隙を狙い《スラント》を放ち右腕に攻撃をする。

もちろんそれだけで怯むほど柔い相手じゃないことは理解している、だからこそ『ほんの一瞬の隙』を作っただけ。

 

「──追撃頼む」

「了解!」

 

スラントを発動させようとした瞬間、後ろから微かに物音がしたことに気がついた俺はソードスキルを発動して後ろに立つ彼女の為に剣を地面に水平に構える。

 

「飛べ!」

「──うんっ!」

 

地面を蹴り、俺の剣を踏んだ彼女を空中に飛ばすように剣を天井に向けて振り上げる。

飛んだ彼女は空中でソードスキルを放ち、ボスの頭にある十字の傷に《シャープネイル》を命中させた。

 

「ナイス」

「う、うん……」

 

ソードスキルを撃ち終えて俺の横に着地した彼女を褒める。

そして、弱点を攻撃されたことでバランスを崩しながら数歩後ろに下がったボスにさらに追撃をしようと一歩踏み出したその時。

 

「ラギ、横!」

「……え?」

 

ズン、という重い音が目の前のボスとは違う方から聞こえた。

その瞬間、俺の右側から大きな拳が向かってきていた。

ハヅキは先に気づき回避したが、俺は反応が遅れて避けることの出来ないところまで拳が迫ってきていた。

 

「まず──」

 

当たると覚悟したその時、俺の体は何者かに突き飛ばされた。

それと同時に重々しい音が響き、俺を突き飛ばした本人が拳をモロに受けて後ろに大きく吹き飛ばされた。

 

「……は?」

 

吹き飛ばされた彼女が地面に落ちた直後、彼女の着ていた装備が砕けて消えるエフェクトが発生した。

 

「──コハル!」

 

その場に力なく倒れた彼女の名を叫ぶ。

起き上がる様子のない彼女に()()()のミノタウロスが近づいていく。

 

「ハヅキ、止め──」

 

ハヅキにコハルの方に近づいているミノタウロスを止めるように指示を送るが、彼女はパートナーが倒れている状況を呑めずにその場に立ち尽くしている。

 

「……ハヅキ」

 

彼女の名前を呼ぶが返事は無い。

ただ、何かをずっと呟いているだけ。

 

「──お前が守れ」

 

俺はそれだけを伝えて()()()()のミノタウロスが再度振り下ろしてくる拳を受け止める。

が、コハルの装備を一撃で砕くだけの力、俺のステータスでも抑え込むことなど出来るわけ無く、押されてしまう。

 

「俺がやるのは時間稼ぎだけだ──」

 

先程までその場に立ち尽くしていた彼女の足音を聞き笑みをこぼす。

二体目のミノタウロスが彼女達に向かわないようにする、それだけが俺のやることだと、そう口にした。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

ハヅキ目線

 

どうして。

彼女は、どうして体を張った?

()()、彼に手を伸ばさなかったから?

だとしても、彼なら庇う必要も無く何かしらの手段で防ぐかもしれない。

 

「私の……せい」

 

自分のせいで彼女はあんな状態になってる。

私が

私が動いていれば

 

()()()()()()()──

 

「ごめん……なさい」

 

誰にも聞こえない声でそんなことを呟いた。

それと同時に私はラギに肩を掴まれた。

 

そして──

 

「お前が守れ」

 

そう一言残して後に現れた方のボスに向かって走っていった。

 

「……ばか」

 

そうだ

私は──

 

「私が、守らなきゃ」

 

そう呟き一体目の方へ走っていく。

 

「間に合え──!」

 

刀の届く範囲よりも外から思いっきり地面をけって空中へ飛ぶ。

倒れて動かない彼女からタゲを外させるためには単発のソードスキルじゃ足りない。

なら──

 

「はあぁぁ!!」

 

空中で赤く光った片手剣が炎を纏う。

それを確認して直ぐに剣を振り下ろして4連撃を命中させる。

頭の傷跡に命中したことでミノタウロスが怯み数歩後ずさる。

 

「……コハル、待っててね」

 

後ろに倒れてる彼女に聞こえてないだろうけど言葉をかける。

すぐに前に向き直して近づいてくるボスが振り下ろしてくる刀を避けて刀の上に乗って再び空中へ。

もちろんボスも無防備な私に向けて右腕を振ってくる。

巨体から繰り出された腕は私の身軽さなら避けやすいため少しか体をずらして回避出来る。

 

「──倒す」

 

振られた拳を回避して奴の頭に向けてソードスキルの構えを取る。

 

(イグナイトスクエアじゃ足りない……なら)

 

右手の構えを少しだけ変え、別のソードスキル……新しいスキルレコードを発動させるための構えを取る。

 

「ここだ──っ!」

 

ボスの頭に斜め切りから始まる連撃を繰り出した。

そして、一撃目から続けて4つ、計5つの連撃で青白い線が星を描く。

 

スキルレコード、()()()()()作られる技の数々。

私の想いか、誰かの思いかはわからない。

それでも、誰かが私に力を貸してくれるからこの技を放てる。

 

星屑の雨(スターダスト・レイン)、それがこのソードスキルの名前。

……名前のわりにはそこまですごいソードスキルじゃないけど

 

「……よし」

 

スターダストレインのダメージでボスのHPは全損してポリゴンの欠片となり消滅した。

それを確認しながら地面に落下してラギの方を見る。

 

「ラギ!」

 

彼は2体目のボスの攻撃をずっと防ぎ続けていた。

そう、思っていた。

 

「え……?」

 

ボスのHPを見ると、既にラスト1ゲージになっていた。

 

私の声に気がついた彼はボスの攻撃を弾きソードスキルの構えをとった。

でも、その構えは私は見た事のない物だった。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

ラギ目線

 

「──やるか」

 

一体目が消滅したことを確認した俺はクイックチェンジで武器を変更し、ソードスキルを放つ構えをとる。

 

イメージを集中させる、標的を討つ為の一撃を武器に込める。

 

「──()()、抜錨」

 

その言葉で右手に持つ槍に光が纏う。

 

「ロンゴミニアド──!」

 

ミノタウロスの右手が迫る中、そう言葉にして槍をボスに向ける。

すると、槍に纏った光がボスに向かい放たれ、一瞬でそのHPを全損させた。

 

 

 

「──っ」

 

放った衝撃と疲労で膝をついた。

【Congratulation】のファンファーレと後ろから近づいてくる二つの足音を聞きながら俺の意識は闇に落ちていった。

 

 




はいお久しぶりです。

自分で書いておいてですがオリジナルボスってかなり書きにくいものでした。


それはさておき
ラギを体を張って守ったコハル、そしてハヅキの自責。
複雑な心境が多そうな2人ですね

スキルレコードも新技がまた出ました
詳細は下に



次回は、早く更新しなきゃ


─────
スキルレコード:星屑の雨(スターダストレイン)
イグナイトスクエアに次ぐスキルレコード
こちらは熟練度等で開放される方のソードスキル
星型に連撃をする合計5連撃。

────
ソードスキル(?):ロンゴミニアド
ラギが放った一撃
武器(槍)に光を纏わせ標的を穿つ力を持つ
放つのに極限の集中力を必要とするため使用者の神経がかなりすり減る
詳細は次回
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