ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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62:未踏破ダンジョン

ラギ達がタワークエストを開始する少し前

 

少し出かけてくる、と言ってまた一人でどこかに行ったラギに少しの嫉妬をしながらも彼女達、夕立の霧雨女子組はギルドハウスの一階で会議をしていた。

 

「はい!今日はダンジョン行こ!」

「うん、気持ちはわかるけど落ち着きなよ」

「シズクちゃんいつもよりテンション高い……」

 

ビシッと手を挙げて発言をしたシズクの手を降ろして静めたライムとその様子を眺めるカエデ。

この3人はいつもなら買い物など街中を探索したり近場の弱めのモンスター狩りをしているだけなのだが、毎日のようにそれだけでは暇であり故にやることを探している途中だった。

だが、今日は珍しくルナも不在ということで他層の街探索もする気が起きないため頭を悩ましていた。

そこで突然思いついたかのようにシズクが手を挙げて今に至る。

 

「それに、行くって言ったって何層のどこに行くのさ」

「それなら街で聞いたんだけど……ほらここ」

 

勢いがおさまったシズクに呆れながら質問をしたライムに待ってましたと言わんばかりにシズクがウィンドウを操作してあるものを表示させる。

それは、ラギがリーダーであるシズクに渡していた各層のマップ。

昨日、出かけるならマップ持っといた方がいいということで渡されたらしいが、このマップは事細かにどこに何があるかなどが記載されているため彼女の頭では処理が難しくて開いてすぐそっと閉じたとのこと。

 

「第4層の……ここ」

「そこだけ何も書かれてない……?」

「そうなの、そしてここ辺りに誰も入ったことの無いダンジョンがあるんじゃないかって言われてるんだって」

「誰も入ったこと無い……そんなこと有り得るの?ライムちゃん」

「そんなに詳しくないけど、前にラギに『攻略には使われない少し高難易度のダンジョンが各層に存在してるかもしれない』って不確かな情報を貰ったから、もしかしたらそれかも」

 

カエデの疑問に対して前日にラギから聞いていたことを口にするライム。

本当にそんなダンジョンが存在しているのだが、知る由もない3人には確証のないことで彼女達の思考は無駄に混乱してしまう。

 

「『考える前に行動』だね!」

「ゴウの口癖じゃんかそれ」

「えへへ、そうそれ!」

「……懐かしいなぁ」

 

シズクが口にした言葉に対してツッコミを入れるライム、そんな2人を見ながら懐かしいと零すカエデ。

ゴウは夕立の霧雨である3人にとって大切な仲間の名前であるが、訳あってこの世界にはログインしていない。

そんな彼がよく口にしていたのがシズクが言った言葉だ。

 

「ま、たまには考えないでいくのもありか」

「そ、だから行こ!」

「……大丈夫かなぁ」

 

ゴウだけでなく、彼──ラギの影響を多少なりと受けているシズクとライムの考えにほんの少しだけ不安を感じるカエデだった。

 

そして、そんな不安が的中するなど、誰も想定していなかった───

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

第4層

未踏破ダンジョン【復讐の洞窟】

 

「「たすけてぇぇ!?」」

 

マップ通りに進み目的地であったダンジョンに到着した3人。

意気込んでいざ突入してみればダンジョン内には敵対モブがこれでもかと言わんばかりに配置されていた。

シズクが「よし着いたー!」と大声で叫んだことで周りのモブのタゲが彼女に集まり、その横にいたカエデも巻き込みながら追われている。

 

「何やってんのさ……」

 

そんな様子を見ていたライムは呆れた声を漏らす。

彼女もこの状況には苦笑いするしかないが、追われ続けてしまえばいつかスタミナが尽きてモンスターたちに襲われてしまう危険性があるため剣を抜いた。

 

「頭下げて!」

 

ライムは剣を構えて追われ続けている2人に指示を送る。

とっさに頭を下げた2人を飛び越えてモンスターの前に立ち、すぐにソードスキル《ホリゾンタル》を放った。

 

「あとは任せた!」

「「了解!」」

 

ソードスキルの事後硬直により動けないライムは自身の作った時間で武器を装備した2人に攻撃を指示する。

シズクはその場から高く飛び上がりライムの頭上から、カエデは地面を蹴ってライムの前に立ちそれぞれソードスキルを放つ。

 

「せやあぁぁ!!」

「そりゃあ!」

 

片方は《ソニックリープ》を、もう片方は《バーチカル》を使いそれぞれモンスターを攻撃した。

複数体いるモンスター達はそれぞれバラバラにダメージを受けたがトドメとはならず怯みながらも攻撃をした2人にタゲを向ける。

だがモンスター共はまさか続けて攻撃が来るなど思っておらず硬直している2人に近づいてしまう。

それを理解していたかのように2人の後ろから出てきた人影は右手の剣に光を纏わせてトドメとなる攻撃を放った。

 

この一撃で残っていた体力は全損しモンスター達は跡形もなく消滅した。

 

 

 

「……まったく、大声出すから」

「ごめん……」

「でも、前から練習してた作戦成功したから……」

「それとこれとは別、とにかく油断しないこと、いい?」

「「……はーい」」

 

落ち着いた3人は一度入口に戻り休憩をしていた。

落ち着きを取り戻したところでライムによる説教が始まり2人は反論せずに静かに謝ることしか出来なかった。

 

「ま、何とかなったからいいけど……」

「ほんっとにごめん!」

「だから大声出さないでって言ってるでしょ」

「あっ……ごめん」

 

そんなやり取りをしているうちに少し溜まった疲れをとることが出来た3人は再びダンジョンの攻略を始めるのだった。

 

 

 

 

 

「シズク、クロッシング行くよ!」

「……うんっ!」

 

それから数分後、ダンジョンの中盤まで来た3人は狼系の中ボスと戦闘していた。

先制攻撃をしてきた狼の爪をカエデが抑えてシズクとライムが同時に攻撃を放つ、という戦略を使い狼に同時攻撃と共にクロッシングスキルによる追加の攻撃を与えた。

 

「カエデ、スイッチ!」

「うん──はぁぁ!!」

 

クロッシングスキルの効果で怯んだモンスターに再起の暇を与えずカエデがすかさず攻撃を続ける。

それによりモンスターのHPは半分を切った。

 

「よし、これなら行ける!」

「……ほんとにこんな簡単に行くのか?」

「それって、どういう──」

 

ダンジョン内のモンスターと比べて少しだけ強い狼のHPを一気に半分まで減らすことが出来た事で勝てると確信したシズクとは反してライムは疑問の声をあげる。

それに対して首を傾げるカエデの言葉が最後まで行く前にライムの疑問が現実となった。

 

 

「gyaoooo!!」

 

「「「っ!?」」」

 

突然、鼓膜を破るほどの声量で狼が叫んだ。

それも一瞬ではなく何秒も、禍々しさすら覚えてしまうほどの黒い声で。

 

「──、──!」

 

ライムは咄嗟に2人に指示を送るが2人とも耳を塞ぎシズクに至っては膝をつきその場にしゃがみこんでいる。

 

そして狼の叫びも単なる妨害ならまだ良かったが──

 

 

「ら、いむ……!」

「シズク、どうしたの!?」

「……モンスターが集まってきてる」

「──そう、か」

 

叫びが一旦やんだタイミングで苦しそうにしながらもシズクは唯一まともに動ける状態のライムに警告を送る。

彼女の警告の意味をすぐに理解したライムは小さく、絶望したように言葉を発した。

 

シズクは唯一この中で索敵のスキルを使用しており、尚且つその範囲は半径30メートルという広範囲を索敵できる。

そんな彼女の索敵には狼の叫びに気づいたモンスター達がこちらに向かってきている状態を確認した。

 

ただ、それだけでも絶望しかないのだが。

剣を構えようとした彼女と地面に伏せてる2人の後ろに突然、モンスターの出現エフェクトが現れた。

 

「は──」

 

ライムはそう呟いた瞬間に目にも止まらぬ早さで繰り出された攻撃により後ろの方へ吹き飛ばされてしまう。

一撃でHPが半分以上減り、彼女は地面に倒れてしまう。

 

ライムが吹き飛ばされたということを感じたカエデは顔を上げた。

 

そこには───

 

「brrraa!!」

 

 

「第……四層、ボス……ヒッポカンプ……?」

 

彼女たちが第4層の迷宮区にて戦闘をしたボス、【ウィスゲー ザ ヒッポカンプ(Wythege the Hippocampus)】がいた。

だが、戦った時とは姿が少し違い、口には巨大な長剣を咥えていた。

 

 

「barrrrr!!」

 

 

そしてボスの咆哮は何かを消そうとする禍々しさと

対象を許さないという恨みの混ざったものであった。

 

名をrevenge tragedy

 

目に映る物を殺すまで止まらぬ狂気。

 

「か、えで──!」

 

 

姿を変えたボスはカエデにタゲを向けた。

それを先に察知したライムが注意を促すも、先程の狼モンスターの叫びにより体が自由に動かない彼女は逃げようとするが上手く立てない。

 

そして、そんなカエデにボスは近づき、口に咥えた剣を振り下ろした。

 

 

カエデは目を瞑って死を覚悟した。

 

 

──だが。

風を切るような音が聞こえた直後、カエデの前に人影が現れてボスの攻撃を軽く弾き返した。

 

「大丈夫か、おまえら」

 

3人とさほど変わらないであろう見た目の少年はボスの方を向きながら後ろに倒れている3人にそう聞いた。

 

「え……?」

 

そして答えを出す前にシズクは驚いたような声を上げて言葉を出した。

 

「周りのモンスターが、全部消えてる──?」

 

彼女の索敵スキルには先程までいたはずの大量のモンスターたちが狼含めほぼ全ての反応が消えていた。

それはつまり、誰かに倒されたということで……

 

「立てるなら一緒にやるぞ、無理なら安全な場所で回復してろ」

「で、でも……」

「……一人でボスクラスを倒すのは慣れてる」

 

少年は静かにそう言うと背中に背負っていた鞘から剣を抜いた。

 

「戦闘開始だ」




久しぶりです
今月末にしてやっと今月初の更新とか
ふざけてるんですかね、俺

それはさておき今回は夕立の霧雨3人のダンジョン攻略回
安全に終わるわけはないんですがね

突然現れたボスモンスター、その姿は4層ボスに似ているがどこか違う
そんなボスに手を出す暇もなく壊滅状態の3人
そんな3人の前に現れたのはラギ……では無く見知らぬ少年

彼はいったい……?




ちなみに今回と次回は他作品とのコラボです
誰とのコラボなのかは次回のあらすじに書かせていただきます




途中にでてきた用語説明

ラギの渡した各層のマップ
各層のダンジョンやクエストNPCの位置などほぼ全ての情報が書かれたマップのデータの複製
作成者はラギとアルゴ(ほぼアルゴ)

ゴウ
本編でも触れられているが夕立の霧雨の一員。
訳ありでリアルに残っている。

索敵スキル
戦闘面よりサポート面に力を入れたいというシズクの気持ちに答えるためラギが取らせたスキル
使い続けているため索敵範囲はラギよりも高い。
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