ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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63:聖剣使い (コラボ回)

ライム目線

 

「なに、あれ……?」

 

シズクが震えながら声を出した。

無理もないだろう、私たちの前に現れた彼が鞘から抜いた剣は一言でいえば「普通の片手直剣ではない」のだ。

 

「戦闘開始だ」

 

そう言った彼は右手に持った剣でボスの咥えた剣を抑え込みすぐに弾き返した。

ボスが怯んだ事を確認したのか、構えを直して直剣を振り下ろし連撃を与える。

一見普通の斬撃だが、一撃ごとの威力は片手直剣で出せない程のものであり、ボスは一方的に押されている。

 

そう、見えたのだが──

 

 

「……下がれ!」

 

何かを察知した彼はすぐ側に倒れてるカエデに向かってそう叫んだ。

でもカエデはまだ立ち上がることもやっとで動ける状態じゃなかった。

 

「どっちか今すぐこいつを抱え……」

 

彼が言い終える前に警告の正体が判明した。

剣を抑えられて為す術の無いはずのボスが地面に前足を強く叩きつけ、その勢いによって衝撃波が発生したのだ。

 

「こいつは何とかするから上手く避けろ!」

「んな事言ったって──って、シズク!?」

 

ボスのいる空間全体に響いた衝撃波を間一髪で避けたと同時にシズクがボスに向かって走っていった。

ボスの近くまで行った彼女は《ヴォーパルストライク》でボスに攻撃を与えようとするが……

 

「──え?」

 

ボスの目が一瞬光ったと思えばソードスキルを放ってるシズクの目の前に大きな水の柱が発生し、彼女の勢いを殺した。

それだけでなく再び目が光り、彼女の足元から水の柱が発生し、彼女は吹き飛ばされてしまう。

 

「シズク!」

「私は……大丈夫」

「一人で突っ込むなんて無茶はするな、俺はお前達の事情は知らないけど目の前で死なれたくは無い」

「ごめん……」

 

急いでシズクのもとに走り寄るとボスからタゲを取りながらも彼が近づいてきて説教に近いことを言った。

 

「シズク、なんであんなことを?」

「……私も、ううん。

私が皆を守らなきゃ行けないんだ、だから──」

 

シズクは少し震えながらそう言った。

 

「……馬鹿」

「えっ?」

「あんただけに全て任せたくてリーダーをやってもらってるんじゃないっての

……リーダーはみんなを守るだけが仕事じゃない、だから──」

 

彼女の頭に手を置き慰めの言葉を言った後、私は立ち上がり剣を構え直した。

そして後ろで驚いた様子のままの彼女に言葉を続けた。

 

「一緒に勝と、シズク」

「ライム……うん、一緒にやろう!」

 

彼女も立ち上がり私の横に立つ。

二人で拳を合わせて覚悟を改めて走り出す。

 

「話がまとまったならとりあえずそこに寝てるやつ何とかしたあと手伝え!」

「言われなくても……っ!」

 

ボスの攻撃が当たる前にカエデを抱えて後ろに下がり彼女を安全な位置に寝かせて戦線に復帰する。

 

「スイッチ!」

「……あぁ!」

 

ボスに接近して直ぐに攻撃を抑え続けてくれていた彼が隙を作るためにボスの攻撃を弾いた。

その一瞬を逃さぬように《ソニックリープ》を発動させて勢いで一気に接近。

ほぼ垂直の一撃を与えてすぐ、私の後ろから別技を発動させたシズクと入れ替わる。

 

「ライム、連続で!」

「あぁ!」

 

攻撃を終えたところで硬直に襲われた私を守るように前に立った彼女はボスの足蹴りを防ぎ通常の斬撃を数発与えた。

それが終わったと同時に彼女と入れ替わり攻撃を加える。

二連撃を与えたところで再びシズクが攻撃を行う。

ボスに行動させないように一瞬すら逃さずに繰り返しボスのHPはあっという間に残り1ゲージまで減っていた。

 

「これなら倒しきれる……!」

 

ボスのHPを確認したシズクが連撃の途中でそういった

だが──

 

『kyuaaaa!!』

 

「っ!?」

「まず──っ!」

 

突然ボスが叫び私達の足元が揺れた。

直後、さっき起こった水の柱の発生エフェクトと同じものが浮かび上がった。

 

「シズク──!」

「間に合わ……」

 

モロに喰らえば計り知れないダメージを受けてしまうため避けようとしたが間に合わず私とシズクは巻き込まれてしまうと半ば諦めかけたその時──

 

「……それぞれ左右に避けろ」

「「えっ?」」

 

突然の指示に戸惑いながら少しだけ避けると水の柱が発生する直前に後ろに立っていた彼が《ヴォーパルストライク》で私たちの間を抜けてボスへ攻撃した。

彼の発動したソードスキルは水柱が発生するよりも速く進みボスにダメージを与えた。

 

「決め手がある、だからお前らで10秒だけ持ちこたえてくれ」

「……わかった」

「了解!」

 

攻撃を終えて少し後ろに下がった彼がそんな指示を出てきた。

決め手というのがなんなのか分からないけど今は少しでも希望を見出す方が確実に倒せると感じて彼に任せることに。

 

「シズク、もう一回連携行くぞ!」

「うん……っ!」

 

シズクと言葉を交わし再びボスへの攻撃を開始。

先程と同様に二撃で交代を繰り返す形でダメージを与えていきボスが攻撃を出せないように押え付ける。

だがボスも負けじと前足で攻撃をしようと動くがそこで私達の背後から突然大きく光が発生した。

 

「お前ら、下がってろ」

 

彼のそんな言葉が聞こえ二人で同時に下がったその直後だった。

 

 

「──喰らえ」

 

先程発生した光は垂直に構えられた彼の剣から発せられたものでその光がより一層強くなった。

そして、彼が小さく笑みを零すと同時にボス目掛けて剣が振り下ろされた。

 

「───!」

 

光の剣となった()()はボスに直撃した。

振り下ろしと同時に何か言っていたが死を感じとったのかボスが雄叫びを上げたことで彼の声はかき消されてしまった。

 

振り下ろし終えたと同時に発生した爆風で前が見えなくなったが、勝利のファンファーレが鳴り響いたことでボスが倒れたということを確認した。

 

「倒し……た?」

「……勝てたね」

 

安心しきったシズクがその場に座り込み私の方を見てきた。

それに続き彼が近づいてきて言葉を発した。

 

「お疲れ様」

「えっと……ありがとう」

 

思ったより優しく行ってきたため返事に困り助けてくれたお礼を述べる。

 

「礼はいいよ、たまたま通り掛かっただけだから」

「来てくれてなかったら今頃私たち全員死んでたかもしれないから……」

「……はぁ」

「だから何かお礼させて!」

 

シズクが引き下がらずになにかお礼出来ないかと提案した。

彼は少し考える素振りを見せ……

 

「なら、ボスのドロップ品で出た武器は貰ってく」

「えっ、それだけ?」

「あぁ、これだけ貰う」

「そっか……」

 

少し残念がるシズクに戸惑いつつ剣を鞘にしまう彼の姿にどこか既視感を覚えつつも無意識のうちに質問を飛ばしていた。

 

「さっきのスキル……あれは?」

「この世界じゃスキルの詮索は禁止だ、悪いが教えられない」

「そういやそうだった」

 

ラギが自分のスキルを躊躇いなく説明してくるせいですっかりスキルを詮索することはタブーだと言うことを忘れていた。

それは当たり前だってことを今更思い出した。

 

「……それじゃ、そろそろ帰る」

「改めてありがと、助かった」

 

私たちに背中を向けてダンジョンの入口へ向かおうとする彼に再度例を伝えると無言で小さく頷いたような気がした。

彼が帰るのを見送ろうとしたらシズクが突然立ち上がった。

 

「名前ー!」

「はっ?」

 

立ち上がったシズクはいきなり大声でそんなことを言い出した。

いや、確かに聞いてないけどもその聞き方は……

 

「……AL、それが名前だ」

 

彼──ALは少しこっちを振り向いて名乗った。

その顔は困惑した様子だった。

 

「私はシズク、それで2人がライムとカエデ!」

「ちょ、シズク?」

「またいつか会えたらちゃんとお礼させて!」

 

ALにお礼を断られたことにまだ納得いってなかったシズクは自己紹介を返しながらそんなことを言った。

彼も困惑してその場に固まってしまうが直ぐに右手を上げた。

 

「あぁ、またいつか会えたら……な」

 

そう言って彼は出口に向かっていった。

 

 

 

それから数分後───

 

「ん……」

「起きたね」

 

カエデが目を覚まして体を起こした。

 

「あれ……ボスは…?」

「ある人が助けてくれて何とか倒したよ」

「……力になれなくてごめんね」

「いいよ、シズクも私も無事だし」

「うん……」

 

ボスが現れてすぐに気を失ったことを申し訳なさそうにしてる彼女は俯いてしまう。

何か変に落ち込んでるように見えるけど……

 

「そんな顔してたら()()が悲しむよ」

「ライム……」

「さ、落ち込んでも何も始まらないから、帰ろう、カエデ」

「……ありがとう」

 

泣きそうになってるカエデを励ましモンスター達が来ないように見張ってるシズクと合流して出口へ向かう。

その途中もカエデの表情は暗く、何か起こすんじゃないかと不安になってしまうが妙にテンションの高いシズクによってそんな不安もどこかに吹き飛んだ。

 

 

 

 

ギルドハウス帰宅後

 

何故か物凄く疲れた様子のラギが一階のカフェスペースで休んでいた。

 

「……なるほど」

 

全く話を聞いてなさそうな様子で頷く彼に一発殴りでも入れてやろうかと思ったけどシズクがあれこれと今日の出来事を話すのを辞めないせいでその気も失せてしまう。

 

「そんな状況になってたなんてな……」

 

彼は私たち3人を順番に見て何かを考える様子を見せたあと立ち上がった。

 

「黙ってた俺の責任もある……

この際だ、お前らには話しとくか」

「……何を?」

 

彼は真剣に、それでいてどこか優しくそう言った。

 

「今この世界で起きてる2つの問題について、お前らに話そう」




彼の者のが構えるは極光を放ちし聖なる剣
その剣の光は如何なるものでも討ち果たす
聖剣の名は────





マジで遅くなって申し訳なさ過ぎて申し訳ない(?)
何故か今年終わりそうなんだけど、あと一ヶ月ってマ?

物凄く遅くなりました今回と前回の2話は連続してコラボ回となっております
コラボ相手は下のこちら

まっちゃんさん(ポテト以下略)
ソードアート・オンライン ~たった一人の為の英雄~
https://syosetu.org/novel/232920/

に登場する主人公、AL君をお借りしました
彼が持つ剣は一体何なのか、それは向こうの作品で判明します、割と早めに

ちなみに彼の剣から放たれた光の剣は作者の許可を貰った上でこちらのオリジナル奥義(元ネタあり)を使用しました。
本編の1部にコラボ回が入ったのはつまりそういうことです

次回からは通常な話に戻ります

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