ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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64:歪み始めた世界

ラギ目線

 

 

「お前らに話そう、この世界で起きてる問題について」

 

帰ってきたシズク達から話を聞いた俺は彼女らが遭遇したボスがどうして現れたのかを説明するために、もっと言えば彼女らに危険な目にあって欲しくないためにアルゴとのみ話を進めていたことについて説明を始めた。

 

「まず一つ目はお前らも遭遇したボスモンスター、《ヒッポカンプ》の亜種……いや、()()()()()()についてだ」

「リポップ……って、どういう意味?」

 

さほど難しくはない英語に首を傾げるシズクに1から説明しようとしたところで先にライムが口を挟んだ。

 

「ポップっていうのがフィールドにモンスターが湧くこと、だとしたらリポップってのはつまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そうでしょ?」

「あぁ、ご名答だ」

 

彼女の説明に頷き足りない部分を補足する。

 

カエデは知ってると思うがMOBはポップを繰り返すようシステムが組まれている。

……まぁ、ポップについてはもっと細かく設定があるんだが今話すと混乱させるかもしれないから黙っておこう。

 

話を戻して()()()M()O()B()は同じ見た目、強さの複製が大量に用意されてるからポップする。

だけど、その法則に沿わない設定を成されてるやつがいる。

それが《階層ボス》だ。

あいつらは各層に一体、それぞれ色んな裏設定を付けられながら配置されてるボスモンスター、本来のSAOでは一度倒された、つまりは攻略されたボスは再度出現する事は無いようになってる。

もちろん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()し、そういったやつをデスゲームでやってもプレイヤー達は乗り気にはならないだろうからな。

 

でも、現状は違う。

原因不明だが、現在に至るまでで既に4体のボスリポップが確認された。

 

 

「……これを見てくれ」

「──え?」

 

説明の途中で俺が取り出したウィンドウを覗いたシズクが言葉を失った。

それに続き2人も画面を覗き同じく言葉を失う。

 

「ラギ、これって……」

「今現在、お前達の戦った第4層ボス含めた4体のボスリポップ、そこに鉢合わせたと思われるプレイヤーの数、お前達と助けてくれたっていうALを含めた4人を足して20人だ」

「……そのうち、生きてるのは?」

「……10人」

 

俺の静かな回答に「そんな……」と零すシズク、そういう反応になるのはわかっていた。

 

「ただ、俺も分からないのがお前らを除く6人の生存者だ」

「……え?ラギとアルゴとほか4人とかじゃ?」

「いや、アルゴも情報だけ得てその場にはいなかったらしいし俺も情報を受け取っただけだ」

「となれば誰が……」

 

正体不明の6人について俺達じゃないことを説明したことでシズク少し考える素振りを始めたところで突然俺宛にメッセが送られてきた。

送り主、そしてその内容は───

 

「………」

「ラギ、メッセージ来て……ラギ?」

「悪い、なんでもない」

「ふーん……?」

 

シズクにメッセージの中身を見られそうになり咄嗟に閉じる。

他2人にも不思議そうな目をされたが見せていいものかわからないため何事も無いと話を続けた。

 

「とりあえず話を戻すが、ボスのリポップは既に20人が遭遇し、そのうち10人は犠牲になってる。

最悪、お前らも死んでたかもしれないしな」

「それは……」

 

先程聞いた限り、彼女達が遭遇したボスは所謂【狂化】した状態だろう。

彼女らはダンジョンの最奥でフォールドボスを倒したと思っていたがそこでリポップボスが出現して手も足も出なかったらしい。

もし、彼の助けがなければ3人とも今ここでこうやって話をすることすら出来なくなっていたかもしれない。

自分の無力さを、助けに行けなかったことへの苛立ち。

それに反して数日前に会った彼に技を教えたことが少なからずプラスに働いたのだと言うことに安堵している。

そんな俺自身が、とても──

 

「……まぁ、結果的に無事だったからいいが

もし、本当に危険な場合は呼んでくれよ。どこにいたって助けに行くから」

「ボスがいくらか変化してたんだけど、それについては?」

「あぁあれか、あれは──」

 

ライムの質問に答える前にずっとこっちを見たまま固まってるカエデに視線を移す。

数秒見つめるとやっと気づいた彼女はハッとした様子を見せた。

 

「えっ、私ですか?」

「お前がわかってると思ってるんだがまさか忘れて……?」

「私はその……ちょっと気を失っててボスの姿一切見てないんですよね……」

「……は?」

「その、すみません……」

 

説明しようとしていたことに対して知ってる一人に任せようとしたが当の本人であるカエデはボス戦の間気を失っていたとのこと。

「ボスが急に現れてギャオーって叫んだの」というシズクの説明があったのだが、まさかその前後で気を失ったんじゃないよな……?

 

「……まぁいい、見てなかったなら俺が説明するだけだ」

 

呆れに近い声でそう呟いた俺はシステムウィンドウを開きアルゴへ渡すように書いていたメモ用紙を取り出した。

 

「きょーか?」

「なんでお前はそうIQ下がったような喋り方になるんだ」

「眠いから……」

「手短に話すから頑張って聞いてくれ」

「はーい……」

 

欠伸をして目を擦るシズクを何とか起こそうと体を前後に揺らすライム。

時間が時間のため無理もない、説明してるうちに時刻は10時を過ぎていたのだ。

 

「これは【狂化】、ある種のデバフだ」

「デバフ……?」

「1から説明するよ」

 

疑問の目をしたシズクにもわかるように狂化の詳細を話し始めた。

 

それが、モンスターとプレイヤー問わず発現する事象であること。

それは開発段階で組み込まれたシステムではなく、バグのようなもの……と仮定されていること。

発現すれば対象のステータスが、モンスターであれば行動や武器、レベルまでもが変化するものであること。

開発段階で既に消されたはずの事象であったこと。

 

そして──

 

「狂化は、解除するにはその対象を殺す必要がある」

「……つまり、プレイヤーにそれが発動すれば」

「あぁ、殺さなきゃいけない」

 

俺が軽く言ったことで沈黙が訪れる。

 

「でも先輩、アレはもう起きないって……」

「俺もそう思ってたよ、でも実際に狂化は起きてる」

 

 

まず、第6層で夕立の霧雨と遭遇した時。あの時は単純な火力が上がっただけで済んではいたがそれでもカラドボルグが無ければ危なかっただろう。

他にも一部モンスターが妙なレベルの高さをしていたりそれによる被害も報告されてる。

そして、プレイヤーにもその現象は起きてる。

 

「どういった原因で起きてるのかは分からない、だから対策のしようがないんだ」

「それじゃあもし、この──「それ以上は口に出すな」……ごめん」

 

シズクが何を言おうとしたのかはわかる。

もちろん、プレイヤーにも起きると言われてる以上、この中の誰かが狂化を受けてしまう可能性だってある。

そうなれば他の手段が見当たらない限りは俺はそいつを──

 

「そんな狂化をお前達が戦ったリポップボスは受けてたんだろうな。

行動パターンに幾つか違うところがあったり、なにより口に咥えてた剣がその証拠だろう」

「他のリポップボスにはそういうものは無かったの?」

「行動パターンに少し変化はあったが火力が上がってるといった報告はない……というか、戦ったヤツらが犠牲者数以外の報告を一切してないんだよ」

「その人達、6人でボス倒したってことだよな?そんな事有り得るのか?」

「そこなんだよ、1番の疑問は」

 

ボスに起こった変化を報告していないパーティ、遭遇者20人のうちの6人。

その全員がパーティを組んでいるのか、はたまた複数のパーティかはわからないがどんなやつであろうと最高6人でリポップしたボスを倒せるのだろうか?

もちろん、その疑問だけで見ればシズク達は4人でボスを倒してるのだが。

その6人が一体誰なのか、その見当がつかない。

 

キリトやアスナは遭遇した時点で俺やアルゴに報告するだろうし──というかキリトに関してはリポップボスに関しては俺が話した時に初耳だった──他の連中、つまりALS等は絶対にありえない。

 

ボスを6人で倒せるほどの実力者となれば名は広まってるはずだが、今のところ名を聞く奴らは全員そもそも勝てないか勝てたとしても報告は入れるタイプが大体だ。

 

「まぁ、それについては情報を集めてみるよ、時間も遅いし今日はここまでにしよう」

「うん……わかったー……」

「ほらシズク、ここで寝ない」

「うみゅ……」

 

話の途中から寝ていたシズクのことも考えて報告会を兼ねた会議はここで終わった。

ほぼ寝かけてるシズクはライムに連れられて部屋に行った。

 

 

カフェスペースには俺とカエデだけが残った。

 

「先輩、一ついいですか?」

「ん、そのために残ったんだろ」

 

カエデにも早く寝るよう催促するつもりではあったが、彼女の顔は少し不安そうにしていた。

 

「私達に隠してる事ないですか?」

「……何を?」

「噂で聞いたんです、()()()()()()()()()()()()()()()()()って」

 

彼女の口から出たのは少し前にライムから言われたことだった。

噂でってことはライムは他の奴らには伝えてなかったのだろう。

 

「黙ってたつもりじゃないんだ、ただ不確定で尚且つ話せばお前らに危険が及ぶと思ってな」

「話すと……ですか?」

「あぁ、理由は簡単だ──

そのことを警戒しすぎる故に相手に悟られてそれを逆手に取られるかもしれないんだ」

「そう……ですか」

「それに今回は言った通り俺が抱えて俺に被害が及ぶって事じゃなくて、お前ら4人が危険だから尚更伝えられなかった」

「……わかりました。

一応、みんなには伝えておきますけど……いつも通りに過ごしますね」

「そうしてくれると助かる」

 

カエデは頷いて話すことを話したからか大きな欠伸をした。

恥ずかしがりながらも「おやすみなさい」と一言口にして部屋に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ルナ、今日も帰ってこないんだな」

 

一人になった俺はこの空間にはいない一人の名前を呟いた。

そして、彼女たちとの会話の途中で送られてきたメッセージを開き、返信を送った。

 

 

──傍観者は傍観者として、そんなつまらないこと言ってる場合じゃないぞ

 

と。




お久しぶりですかね

戦闘はない回でしたが説明多い回でした

リポップボスが発現し、そのボスが狂化しているという最悪な事態の連鎖
そんな奴を倒した夕立の霧雨、そして謎の6人。その正体とは……?


夕立の霧雨がAL君の使ったものについて質問しなかったのはラギが隠しそうだからというもの、事実その通り聞かれても隠す気でいた。

途中で送られてきたメッセージ、その内容とは一体なんなのか


今年中にあと数話書きたい
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