ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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65:見誤った実力

ハヅキ達のタワークエストを手伝い、シズク達にこの世界で起きてる事象について教えた日から約一ヶ月半程が経過したある日。

 

俺たち【夕立の霧雨】は第九層のボス部屋にいた。

 

 

というのも、遡ること前日。

各自レベリングをしたり、()()()()()()()()()()()()()()()()りなど様々なことがギルド内で起きていた時、突然俺達のギルドハウスへとキバオウがやって来たのだ。

 

「偉そうなこと言うて悪かった、だからお前さんら───」

「攻略に手を貸してくれへんか!!」

 

と、入ってくるとすぐに頭を下げてそう言ってきた。

断る理由もなくどうしたのかと聞くと、俺達が2ギルドへ攻略を任せた──正直丸投げだった──後に地道且つ慎重に攻略を進めていた彼らはやはり対立を起こしながらも第八層のボスをつい2週間前に攻略した。

その情報は俺らにも届いたが、それから今日までも攻略を続けていたのだが、やはり第八層時点でもキツかったらしくレベリングするだけでも限界が近かったとのこと。

そして、迷宮区を見つけたはいいがその道中に中ボスが三体配置されていてレベルも足りていないため逃げてしまいその後相談した結果嫌がりながらも俺達やキリト達に協力を、前線への完全復活をしてもらおうと頼みに来たということしい。

 

「身勝手ってことは分かっとる、もちろん態度が許されるとも思えん

でも、これ以上わいらだけじゃどうにもならないんや」

「まぁ、正直無理なことだってのは俺が一番分かってたよ」

「せやろな、あんたに課せられた条件は最初に聞いた時点で無理と悟ってたわ。

ベータテスター共の先行して進んで得られた情報、そんなもんに頼らずに進んでくってのがどれだけ厳しいことか痛感させられた

それ故に、ラギはん、そしてそのギルメンのあんたらに《協力》して欲しいんや!」

 

キバオウは再度頭を下げた。

ここまで弱気になってるトゲトゲ頭を初期の俺が予想出来たか、って思えるところもあるがそれはさておき。

攻略への復帰を潔く許可しようとしたところで俺の後ろに立ってた一人が発言した。

 

「そんな事より、一発殴らせろ」

 

俺の横に立ちそう言ったのはどこかキレ気味のライムだった。

 

「……ラギが許そうが私は許せない

あんたの仲間が、PKをするプレイヤーに騙されて動いてたせいでラギやシズク、私達は危険な目にあったんだよ

もちろん当事者じゃないからお前が責められるりゆうはないかもしれないけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()私達に被害が及んだ

その分ぐらいは殴らせろ、キバオウ」

 

ライムの発言は第七層での出来事についてだろう。

今回攻略を任せた2ギルドのメンバー一人ずつがPKプレイヤーに利用されてPKに加担して俺たちはそれにハメられた。

あれ以降2ギルドと顔合わせをした時にその件については話してはいたが両ギルドのリーダーはこれといった謝罪は行わなかった。

ライムはそんな2人に苛立っていたのだろう。

 

「……好きにせい」

 

キバオウは静かにそう言った。

 

「……っ!」

 

ライムは数歩前に出てその勢いを使って右拳をキバオウに振りかざした。

どれだけ本気か伝わるその威力が乗ったパンチがキバオウに当たる前に彼女の腕を掴み止めた。

 

「な、何すんのさ」

「……ライム」

「……なに」

「お前の気持ちは分かる。()()()()()()()()()()()()()、でも。

今こいつを殴り飛ばそうが、処そうが殺人に加担するプレイヤーは減らない

原因は確かに監督不行きのこいつらにもあるかもだがそれ以上に普通のプレイヤーを利用してPKをさせてる奴らが一番の問題だ。

だから、今はビンタの一発ぐらいで許してやれ」

「ビンタはいいんだ……」

 

彼女がシズクやカエデを守るという意志を持っているのは既にわかってる事だ。

でも、あの革ポンチョ達が動き続ける限りは危険は減らない。

そのため、キバオウに対してはグーパンではなく平手打ちの一撃で許す、それが俺の考えだ。

それに対してシズクが小声で何か言った気がするがそんなことはどうでもいい。

 

「それじゃ、覚悟──!」

 

そんな彼女の一言が発せられたあと、妙にリアルな音でキバオウの頬が叩かれた。

 

「……ありがとな、ラギはん」

「その感謝は叩かれた事への感謝か」

「んなわけないやろ!」

「ま、だろうな」

 

思ったより威力があったようで頬を擦りながらキバオウは感謝を伝えてきた。

こいつから感謝されるとは……

 

「俺たち夕立の霧雨は明日迷宮区に入るよ」

「わかった、それを頭に入れてわいらもリンドはんと相談して進むことにするわ」

「……言っとくが、ボスのLAをこっちがとっても文句は言うなよ」

「仕方ないわ、その辺は何も言わん」

「あぁ、そうしてくれると助かる」

 

 

 

こうして、俺たちは前線に復帰したのだった。

 

 

と言ったところで翌日、俺たちは第九層の迷宮区にて三体の中ボスクラスを難なく倒して2ギルドと合流したところでボス戦を開始した。

ボスの情報も彼らが集めていたものを提供してもらい対策を練り作戦を決めたことで多少苦戦は強いられたものの犠牲は無くボス戦を終えた。

 

 

 

そして──

 

次の層である第10層へと続く階段を登りきり、扉を開くとそこには──

 

 

「和風……!」

 

第一層以降は無かった大きな街、つまり主街区となる城下町があった。

第10層のコンセプトは和。

日本では京都や奈良といった場所にあるような茶屋やお寺、入れはしないが大きな城まで建っている。

さらに季節は秋で固定されているため和風に合う紅葉の木が至る所に生えている。

 

 

「紅葉といえば……そうか」

 

紅葉と聞いて思い出したことがあり景色に見とれてる一人の横に立つ。

 

「そうですね、紅葉は別称として楓があります」

「悪い、名前に触れられるの嫌いだったりするか?」

「いえ、むしろ嬉しいです、だって──」

 

彼女は少し走って紅葉の木の下に立った。

 

「紅葉って、こんなに綺麗なんですから──」

 

彼女がそう言うと静かに風が吹いた。

その風に彼女の髪が揺られ陽の光を浴びて仄かに明るくなった。

でも、どこか彼女は寂しそうだ。

 

「あぁ、そうだな……」

 

俺は足元の紅葉を拾い上げて天に掲げる。

 

「本当に、綺麗だ」

 

ここがVRの中だと忘れてしまいそうになるぐらい、リアルで美しい。

いつか、リアルでもこの景色を見よう。

 

「おーい!ラギ、カエデー!」

「シズクが行方不明になりかねないから来てくれー!」

 

 

いつの間にか街の奥へ行っていた2人に呼ばれて我に返る。

声の方に向いてみるとシズクが今すぐにでも走り出しそうにしているのをライムが何とか抑えているところだった。

 

「今行く……さ、行こうぜカエデ」

「はいっ!行きましょう、先輩!」

 

紅葉に見入っていたカエデに声をかけて2人の元に走っていく。

何度かあったことのはずだが、ここ最近は各個で活動していたため少し懐かしく思える。

 

 

あと少し、か……

 

様々な感情を抱きながら俺は間近に迫った彼女達との()()を感じたのだった───。

 

 

 

 

 

 

 

第10層到着の翌日。

シズク達3人がそれぞれ役割を分けて街の各地へわかれたところで唯一暇を貰った俺は甘味処に立ち寄っていた。

 

「あ、ラギ……」

「こんにちは、ラギさん。

今日は一人ですか?」

 

甘味にはそこまで興味が無いものの、前のタワークエスト以来会っていなかった2人を見かけたから寄ったのだ。

声をかける前にハヅキが俺に気づき何故か気まずそうにしながら俺の名前を呟き、それに続いてコハルが挨拶をした。

 

「いや、今ちょうどギルメンが調達に行ってるとこだ、そういうお前達は?」

「私たちは今さっきフィールドの様子見てから街の探索してたとこ、それとコハルの誕生日を祝ってた」

「ちょ、ハヅキ、それは言わなくていいよ!?」

「誕生日……前もって言ってくれればなぁ」

 

今日は2月23日、ちょうどコハルの誕生日だったらしい。

当人は誕生日プレゼントはいらないと拒否してくるが聞いてしまった以上は何か用意してあげたい。

 

「プレゼントはまた後日渡すよ」

「でも……」

「いいだろ、たまには」

「ラギがこういうこと言ってくれるの珍しいし遠慮しない方がいいよ」

「どういう意味だそれ」

 

ハヅキの何気に酷い一言にツッコミを入れる。

誰かの生まれた日を祝うってのは限りあることだしそれに……

 

「ここは現実じゃない、それでもこうやって甘味を食べたり日常的な話をしたり誕生日を祝ったり

そういったことを出来ることは、羨ましいしいい事だと思うよ」

「そう、だね……」

 

デスゲームと化したこの世界は死と隣り合わせで日々緊張感と恐怖心が広がっている。

それは、前線に立つプレイヤーだけでは無い、むしろ下層のプレイヤーほど気持ちは変わっていく。

夕立の霧雨のように戦闘時と通常時で気持ちを切り替えることも当たり前のように見えるがそう簡単に出来るものでもない。

 

「その気持ち忘れないようにな」

「うん、ありがと」

「はいっ!」

 

ハヅキ達の返事を聞いたところでシズクからメッセージによる召集がかけられた。

待たせると3人から怒られるため2人に別れを告げてシズクたちの所へ向かった。

 

 

 

 

合流後

 

「そーいや、開発時代この層のフィールドに幽霊系のモンスターが出るって設定だったな」

「「えっ」」

 

うろ覚え且つ変化している可能性のある開発時のデータを思い出して呟くとシズクとカエデが声を合わせて驚いた。

 

「ま、倒せない訳じゃないしお化けって言っても単なるデータの塊だ、気にせず行こう」

「データの塊でもオバケはオバケだからー!」

「意外と見て見たら可愛いとかあるかもしれないぞ?」

「絶対無い!」

「さ、それはどうかな」

 

 

そんな会話をしながら俺たちはフィールドへ繋がる門を抜けていった。




メリークリスマス!
今年は特別編描きませんよ、何故か前回のクリスマスからあまり進んでないので書くとしても未来の話になっちまうんですね

今回はThe日常
SAOというデスゲームを変更が加わったとはいえ経験してるベータテスターからの情報を得ずに挑むということがどれほど危険であるかをその身で味わったキバオウがついに諦めて前線組であるキリトやアスナ、そして夕立の霧雨へ助け舟を求めました。(といっても全員レベリングのために8層にいってたんですが)
これによりついに本格的な攻略へ参加する夕立の霧雨メンバー
10層へ到着した彼女らを待つものとは


ここから物語は加速する──。


次回、また少し時が飛びます


(今話の中盤のハヅキたちの話は番外編のコハル誕生日回の続きです)
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