ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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66.亡き者の忘却

第10層到着から一週間。

シズクたちが警戒していたオバケ系──アンデッドモンスター──と扱われるサムライモンスターが徘徊するフィールドを進んで行った俺達は途中にある神社に立ち寄っていた。

 

『おお、参拝ですか』

 

鳥居の前に立ち入ろうとしたところでNPCのおじいさんが声をかけてきた。

 

「はい、せっかくなのでお参りでもしようかと」

『そうですか、ではお進み下さい』

 

おじいさんは先に進むことを許可してくれた、というか許可制なのかこれ。

なんてツッコミを心の中でしながら前に進もうとすると急に体が重くなった。

 

「──っ!?」

「ラギ!?」

「お前何を……!」

 

『ふむ、そのお方は()()()()、もしくは()()()()()をしておりますな』

 

「「……っ!」」

「……なるほど、それでデバフが《血塗れ》か」

 

いつの間にか俺のHPの上に黒背景に赤い斑点──血痕とかそこら辺だろう──のマークと共に『デバフ:血塗れの剣士──を付与しました』などというメッセージが表示された。

俺の《血塗れた手》という効果の意味は心当たりがある、現実(リアル)での出来事、そして今日に至るまで、俺がこの世界で起こしたことの2つのどちらかだろう。

もしかしたら、両方という意味もあるのかもしれないが。

 

NPCの発言が意味するものは言ってしまえば《悪事を企む心を持つ》か《その手で人を殺した》──文字通り血に塗れた手をしているか、という事だろう。

 

「なんでラギだけに……っ!」

「それが、お前の行動の真実って事だろうよ」

 

一切のデバフを受けていない3人のうちライムがNPCへ怒りをぶつけた。

どういった区別の仕方をしているのかは全く分からないがもし、血塗れた手が意味するものが現実での事だとするのであればライムは自分にも同じデバフを受けると考えたのだろう。

だが実際にデバフを受けたのは俺だけ、つまりは彼女が気負っていた《友人を自分が殺した》という思いは思い込みだということになる。

もちろん、現実で手を汚した事のあるやつを区別出来るわけもないからこの場合は()()()()()()()()()()プレイヤーへデバフが付与される仕組みになっている。

 

「でも先輩だって……」

「……俺のことはいいよ、とにかく、このクエストを終わらせるぞ」

「クエスト……あ、ほんとだいつの間に」

 

色々考えているとNPCの頭上にクエストの発動を意味するビックリマークが浮かんでいた。

 

この流れで発生したクエスト、となればどんな内容かはだいたいわかる。

 

「どうされました?」

『貴方様の汚れ、それは亡き者を引き寄せてしまいます。それ故に貴方様には厄災が降り注いでしまうでしょう』

「厄災……って何だ?」

『血塗れた者へ引き寄せられる亡き者達の中でも特に長く、大きく残り続けている亡霊がいるのです。

その者が──』

 

NPCの会話途中、神社内に突然モンスターがポップし始めた。

 

『話の途中ですがあれが亡き者です、貴方様にのみ刃を向けてしまうのでお気をつけてください』

「あぁ、忠告助かるよ──お前ら、話の通りだ」

「「「了解!」」」

 

シズクやカエデなら何か文句のひとつでも言いそうだったが何も言わずに了承してくれた。

戦闘の開始と同時にクエストの受注を知らせるメッセージが表示された。

【亡き者の忘却】、それがこのクエストの名前だ。

 

血塗れた者を自らの地へ引きずり込もうとする亡霊達、汚れた者は同類と見るってことか。

カーディナルシステムも酷なもんを作るもんだ。

 

 

 

 

「ラギ、タゲ集まりすぎてる!」

「俺にしか集まらないんだからこの数は仕方ないだろ!」

 

亡き者──10層のフィールドに配置されていたサムライモンスター──との戦闘中、ライムが俺に注意をしてきた。

確かに20体ぐらいは多すぎる、ほんとにこんなクエスト作りやがって……

 

「ライム、クロッシング行くぞ!」

「え、ラギと?」

「一掃する!」

「……わかった!」

 

少し嫌がった様子の彼女と息を合わせて同時にソードスキルを放つ。

その後続いて光のクロスがサムライモンスター達の集団内に発生した。

 

 

 

それから数分後。

 

「やっと倒せた……」

「ざっと数えて50ってとこか」

「そんなに倒したんだ……」

 

地面に座り込んだシズクの横に立ち肩を叩く。

途中で()()を使おうとしたのを無理やり止めたのだが彼女にはむやみに使うなと釘をさしておこう。

 

「それで、倒したがどうなるんだ?」

「聞いて見りゃわかるだろ」

 

『お、おぉ……倒されてしまったのですか』

 

NPCの反応は関心や感動といったものではなく恐怖だった。

 

『亡き者共を駆逐した以上、貴方様は厄災が降り注ぐでしょう……

かの塔、その奥深くにその者は眠っておりますがアレは恐ろしきものです

刃を振るい、白き蛇を守護として使いそして──血塗れた者を殺すでしょう』

 

「え──?」

「……先輩を、殺、す?」

 

『えぇ、そのお方はかの亡霊によって──』

「わかった、喧嘩売ったのは俺だしそれ以上の説明はいいよ」

『左様ですか。お気をつけてください』

「あぁ」

 

NPCとの会話を終えるとクエストがクリアされた。

報酬はそんなにいいものでは無かったが何よりこの層のボスに関する情報を得られただけでも十分だろう。

ただ一つ、一人の犠牲という問題も抱えることになったんだが。

 

 

 

 

それから数時間後、クエストクリアによって得られた情報をキバオウ達に送ったが「ワイらは今回パスや」と、参加を断られてしまった。

理由を聞く必要もなかったため他に頼めるヤツらにメッセージを送った。

 

「待ってください、先輩」

「なんだ?」

「なんでそんな平然としてるんですか」

「そんな気負うもんじゃないだろ

たった一人の犠牲で済むんなら」

「そんなの勝手すぎます!」

「……俺はただ死ぬ気は無い」

「え?」

 

カエデに対して一言だけ伝えると複数の足音が近づいてきた。

 

「来てやったぜラギ!」

「俺達も来たよ」

「あぁ、助かる」

 

俺のメッセージに応じてくれたのはクライン率いるギルド風林火山、それにキリトとアスナ、そして……

 

「誰だ、お前?」

「……名乗る必要などない」

「その子は俺が連れてきた……というより着いてきたんだ」

「キリトが?」

 

知った顔の中に一人だけ仮面を被り顔を隠したプレイヤーがいた。

キリトが連れてきたって話だけどどことなく見覚えが……

 

「それより行かないの、ラギ」

「お前らも来たのか」

 

仮面の人物の正体を探ろうとしていたら袖を引かれた。

先に進もうとしているのはハヅキとコハルだった。

 

「ん、久しぶりのボス戦だからね」

「そういやお前達はそうか」

「うん、久しぶり」

「無茶するなよ」

「それはラギも、だよ」

「……そうだな」

 

挨拶として一言だけ伝えると彼女は静かに答えた。

一週間前に抱えていたものが嘘のように明るいその顔に隣にいたコハルも無言ながら安心した様子だ。

 

「さ、みんな準備はいいか?」

「おうよ!」

「いつでも大丈夫だぜ」

「行きましょう」

 

俺の質問にクライン、キリト、アスナの順に答え、他のメンバーもそれぞれの反応を見せる。

その中で一人、先程の仮面のプレイヤーが誰かにメッセージを送っているようだったが、俺の視線に気づいたのか送信して直ぐにウィンドウを閉じてしまった。

 

「……何」

「いや、()()()()()と思ってな」

「変なの」

「お前にだけは言われたくねぇ」

 

どこか懐かしく感じるそんなやり取りをして改めて今回の指揮を執る。

 

「人数は心もとないけど、このメンツならなんとかなる……はずだ。

まぁ……なんだ──」

 

迷宮区ボス部屋の扉前に立った俺は参加するメンバー全員の顔を一度見回す。

 

もしかしたら、最後になるかもしれないからな。

 

「……ラギ?」

「どうしたの?」

 

「悪いな、ちょっとだけな──

改めて───勝とうぜ」

 

俺はただ一言、今は亡き騎士(ナイト)と同じ言葉を口にしてアニールブレードを空高く掲げる。

 

「「「おう!!」」」

 

全員の士気が高まったのを確認して扉を開けて中へ入っていく。

 

 

 

扉の先には城に入る前の城門、そしてそこへ続く道を表す灯篭が等間隔に並んでいる。

左右と俺たちの入ってきた扉の壁はそれぞれよくある城壁に使われている石で出来ている。

 

完全に城攻めの雰囲気を出している部屋の奥には胡座をする形でボスが座っていたが、俺たちが近づいたことで立ち上がり腰から長刀を抜いた。

 

サムライの亡霊の中で特に実力がありそれ故に強力な亡霊と化したモンスター。

名を《カガチ・ザ・サムライロード》。

ロード()とも呼ばれるため亡霊の中でも特別であることは確かだ。

それだけでなく、此度のサムライロードは少し違う。

 

──血塗れた者を殺すでしょう

 

NPCの言葉が正しければアレは血塗れのデバフを得たままの俺を殺しにくるだろう。

 

全く、厄介極まりない。

 

「かかってこい、侍の王」

 

俺は既に抜いていた剣を構えそう言った。




気づいた時には年末
多分あと一話ぐらいは更新出来ると思いたい



第10層はリメイク前では手抜きで書いてたところがあるから力を入れました
え、夕立の霧雨編全体的に手抜きだった?
ちょっと表出なさい、悪いことはしないから


それはさておき血塗れという厄介なデバフを受けたラギは自分を犠牲にすることで攻略を進ませようとしている
そんなボス戦には見慣れない者もいるようだが一体……?
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