ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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69:大切な仲間として

「夕立の霧雨から抜ける」

 

俺がそう言った瞬間、シズクとカエデが表情を変えた。

ライムは紅葉の木に背を預けて静かに目を逸らしている。

 

「抜ける……って、どういうこと?」

「そのままの意味だ」

「待ってよ、意味わかんないよ」

 

シズクが俺を見ながら声を震わせている。

無理もない、当たり前の反応だろう。

だが───

 

「俺がこのギルドにいる必要はもうない、だから今日ここで抜ける。

ただそう言っただけだぞ」

「だから……抜ける必要なんて……」

「無い、わけないだろ」

「理由を教えてよ」

「理由、ね」

 

ライムの方を横目で見るとどこか呆れた顔をしている。

何を伝えたいのかは分からないが「早くしろ」と言いたそうだ。

 

「そもそもこのギルドにサポートとして俺は入ってただけだ。

その条件が今回で終わったんだよ」

「条件……?」

「お前、ハヅキを誘う時なんて言ったんだ」

「えっと……」

 

少し前に彼女と話した時に俺がこのギルドを抜けると伝えたが、彼女が誘われた時に()()()()()でサポートを探していた。

それがハヅキとコハルを誘うためだけに伝えたことの可能性もあるが他であっても《サポート》には変わりないだろう。

 

「第10層辺りまで一緒に戦ってくれる人を探してる、そんなことを言ったんじゃないのか?」

「……確かに言ったけど、それは──」

「ハヅキ達をギルドに入れる時だけの話なら、俺はサポートとしてじゃなかったってことか」

「……ラギは、ギルドメンバーとして──」

 

シズクとしては正式なメンバーとして俺を誘った。

なら、一つ質問が浮かぶ。

 

「ギルドメンバーとして受け入れたなら一つ聞かせろ」

「……何?」

「お前ら、俺を頼りすぎじゃねぇか」

 

俺のその言葉で表情を暗くしたシズクは静かに俯いた。

ライムは驚いた様子で俺を見てくるが、何も喋ろうとしない。

 

「頼りすぎ……って、そんなこと……」

「そんな事ないですよ!!」

 

シズクが否定するよりも早く、そして大声で否定を口にしたのは今まで黙っていたカエデだった。

彼女の表情は悲しみではなく怒りだ。

 

「先輩が私たちより強いから、少しでも追いつこうとみんな頑張ってるんですよ

その途中で危険になったから先輩の力を借りようとしてるだけなんですよ」

「俺がいるから無茶なことが出来る、そう思ってるんじゃないのか」

「違い──」

「違わないだろ」

「なんでそんなこと言うんですか!?」

 

言い合っている中で彼女が俺の胸ぐらを掴んできた。

力が入っているのもあるだろうが、それ以外の理由もあって彼女の手は震えている。

 

「俺が、お前らの身の安全をどれだけ気にし続けてきたかお前らはわからないだろ」

「それは……」

「……まぁお前らが俺のことを頼らなくてもいいっていうなら尚更俺がこのギルドにいる理由も、お前らを守る必要も無いだろ」

 

掴んでくる手を離して彼女たちに背を向けてそう言った。

中々に強引だが、これで彼女達と──

 

「本当に、抜ける気なんですか」

「そう言ってるだろ、俺はもう行く」

「待ってください、先輩」

 

彼女たちのもとを去ろうとする俺の腕をカエデが掴んだ。

振り向いてみると彼女は剣を右手に持っていた。

 

「その気が変わらないのはわかってます、それでも……

シズクやライム、そして私の気持ちを少しぐらいは考えてください

──私と、デュエルしてください」

「……やる必要あるか?」

「もし、私が勝ったら少しは夕立の霧雨に残ることも考えてください」

「……勝ったら、な」

 

彼女の言葉からどれだけ本気なのかが伝わってくる。

ここで引けば俺がどれだけ薄情なやつかって話だな、まったく……

 

やるからには、本気でやらせてもらおう。

 

「転移」

 

俺のその言葉でここにいる4人全員がとある場所へ転移した。

 

 

 

 

第10層フィールド【呪いの神社】

 

「ここって……」

「ここなら圏外の中でも安全な場所で尚且つ誰も来ない場所だ」

 

俺たちが転移したのは第10層ボスの情報を呪いという形で俺に伝えてくれやがったクエストを受けた神社だ。

ここは一応圏外ながらモンスターの湧きが発生しない特殊な場所になっている、というのをアルゴから聞いた。

誰かに見られて困るわけじゃないが()()()が起きても大丈夫なように念の為に誰も来ないであろうここに来たという訳だ。

 

「さぁ、始めようか」

「はい、先輩」

 

お互いに剣を持ちデュエルの受領をする。

数秒のカウントが終わると同時に地面を蹴り彼女へ一気に接近する。

 

 

カエデの戦法を俺は知らない、そしてカエデは俺の戦い方を知っている、だがそれがハンデになるわけじゃない。

彼女が知ってる俺の戦い方は()()()だけだ。

 

「はやい……っ!」

「ふっ……!」

 

戦闘が開始した瞬間に俺が彼女の付近へ一気に近づき剣を振る。

カエデも夕立の霧雨で一番攻撃速度の高いライムと何度もデュエルしてる(らしい)だけの事はあり、すぐに反応して防いでくる。

それを読み防がれたと同時にぶつかり合った剣の軌道をずらして彼女へ掠らせた。

 

「なっ!?」

 

彼女は驚きながらも数歩後ろに下がる。

その隙を逃さず《ヴォーパルストライク》の構えをとり彼女へ接近を試みる。

とはいえ、一度でもソードスキルを放てばこっちに不利が生じる可能性もあるため無闇に打つ訳には行かない。

そのため今は()()()()をソードスキルに近づけてシステムが発動をアシストするギリギリのところでただの直進行動にする。

こんな無茶をすれば相手に大きな隙を与えられるだろう。

 

「ソードスキルじゃない……なら!」

 

彼女はすぐにソードスキルじゃないことに気がついたがそこまでは読み通り。

さらに後ろに飛び下がった彼女が《ヴォーパルストライク》の構えを取りすぐに発動させてきた。

避けて硬直中の隙を狙い攻撃すればいいが彼女が考え無しで突っ込むことは無い。

それを念頭に入れておけばやることはひとつ。

 

 

彼女の剣が俺へ届く前に今度こそしっかり発動する構えで《ヴォーパルストライク》を放ち彼女の剣先へと衝突させる。

衝突中の一瞬で俺はわざと体勢を崩してソードスキルを途中でキャンセルして彼女の足元へしゃがみこむ。

隙のできた彼女へ《バーチカル》を切り上げる形で発動して彼女はもろに受けて後ろに吹き飛ばされる。

 

そして、この一撃でデュエル終了の合図が鳴り響いた───。

 

 

「……俺の勝ちだな」

「……はい」

 

仰向けに倒れた彼女の横に座り声をかける。

彼女は静かに答えるだけでそれ以上のことは言わなかった。

ただ……

 

 

「先輩、失礼します」

「ん、何を──」

 

突然起き上がったと思えばカエデは俺を引き寄せて抱きついてきた。




お久しぶりです
夕立の霧雨ラスト2話、そのうちの一話です。


ギルドから抜けようとするラギを止めるシズクとカエデ、それに反して知っているために何も言えないライム。
そんな彼女達の思いをカエデとデュエルする形で受けることに。



ヴォーパルストライク中の体勢崩しからの攻撃は
第6層で彼が戦い、この場で彼だけが知ってる赤服の剣士が利用した手法です。誰も覚えてない


次回、夕立の霧雨編最終回──!
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