ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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勢いとネタです。
本編との間接的な繋がりのあるEX枠にも入らないので下の方に置いておきます。

また、本編(52話)時点から時を進めてかなり先の時間軸での話になります
つまりは多少ネタバレもあります


番外編:モテるってこういうことじゃない(バレンタイン)

時は2026年

2月14日

この日、世間から多少ではあるが離されている雰囲気のあるSAO帰還者学校の生徒も、文化には例外無く忙しくなっていた。

 

……個人的にはそれよりもALOで出会った彼女との関係の方が重要なのだが。

 

 

 

世はバレンタインで騒がしい。

バレンタインっていうのが女子が真心とか好きの気持ちとかを込めて作ったチョコレートを男子にプレゼントするというものだということは知っている。

そして、男子たちは女子から貰えるチョコを本命か義理か友チョコかでソワソワするため雰囲気も空気も騒がしくなる。

 

もちろん、現実はチョコレートのように甘くはなく、チョコレートを貰えること自体がレアであり、貰えない男の方が多い。むしろ女子間のチョコレートの方が多いのではと思うほど、男子へ渡すチョコレートが少ない。

そんな中貰えた人間は周りから恨まれたりして大変だ。時には殴り合いまであるとか聞いたこともある。

 

 

そんなにやばいイベント、早く風化させた方がいいんじゃないのか。

学校内であろうと騒がしくするし、どれだけ作ってきたのかわからないけどこの日だけ大荷物の女子とかいるし、チョコレート貰ったことを自慢して周りに妬まれる奴とか出てくるんだから、友情が崩れる前に辞めさせた方がいいって。

 

 

 

などと考えを巡らせている俺、如月春揮は今、帰還者学校の中にある1年前まで使われていなかった部屋にてセッティングされたパソコンの前でコーヒーを飲んでいる。

 

 

「……はぁ、静かだ」

 

 

この教室が本校舎と離れた場所の1番遠いところにあるため、どれだけ騒がしいのか想像もつかないこの時期の生徒たちの声もほとんど聞こえない。

俺が何故そんな離れた場所にいるか?

話せば長くなるのだが、端的に言えば「義務教育終えたけどその腕見込んで生徒達に何か教えてよ」という学校側の無茶を葉月が了承してしまったことでこの学校に来ることになってしまったのが初動、その後教えることなんて特になかったことで暇が増えてしまったが、とりあえずいて欲しいということで空き教室で別のことを勝手にやっている、といったところだ。

 

「……にしても、下駄箱に置くかね」

 

学校で使用しているパソコンの横には、綺麗に梱包された箱が置いてある。

これがあったのは朝、職員室に顔を出さないといけないため職員用下駄箱の俺の靴入れに置いてあったのだ。

 

最初は「今更この置き方か」と思ったが、差出人もわからないため、ツッコミどころは増えた。

結局誰が置いたのかは分からず仕舞いで時間が過ぎて今は午後2時過ぎ。

食べてしまおうかと思ったのだが、これを置いた本人が誰なのかわからないうちはやめておくことにした。

 

 

他のよくいるメンバーはどこに行ったかって?

あいつらなら今授業を受けてる最中だ。

ただ、この学校、帰還者達の集まりってこともあるからかこういう時期は特別授業として調理実習だとか用意しているみたいで、彼女達もそっちに参加しているかもしれない。

 

 

一緒に過ごしている葉月が昨日の夜中台所で作業しているのをこっそり見てしまったのだが、翌日(今日)がバレンタインならやってたことは明確だろう。

その葉月も年齢的には今年で20歳行くのだが、「みんなと一緒に過ごしたい」と自ら言ってきたため周りの生徒達と授業を受けている。

 

……まぁ、こっちの事情はおいておくとして。

 

 

 

そろそろ、授業が終わる時間だ。

つまり、彼女達がこちらに来る時間というわけだ。

 

 

「───い!───き!」

 

締め切ったこの教室でも聞こえるほど大きく何かを叫ぶ女子の声が校舎内に響き渡る。

声の主が誰なのかは大体把握出来るのだが、今日はやけに足音が多い。

ということは人数が多いのだが──

 

 

「春揮!いる!?」

 

ダァンという不安になる音が鳴るほどの勢いで扉を開けた少女……雫は第一声にそんなことを発した。

調理実習が終わってからそんなに時間が経っていないはずなのだが、鞄まで持って来ている当たり、全力疾走してきたのだろう。

 

「そんなに大きい声出さなくてもいるっての、それで、その人数はなんだ」

 

雫の後ろから顔をのぞかせたのは4人、いつもなら来ない3人がいるからか大人数に見えてしまう。というか実際俺としては多い。

まぁ、調理実習終わった後でこの日で女子達となれば、さすがの俺も察しはついているけど………

 

 

「春揮に渡したいものがあるの!」

 

 

ほらな、察しの通りだろ?

 

「はい、これ、バレンタインチョコ!」

 

「……え?」

 

雫がそう言って渡してきたのは右手に持った紙袋。

大体はこの中身がひとつだと思うのだが、彼女が、否、彼女達が差し出してきた紙袋には1個や2個じゃない量のチョコレートが入っている。

 

「なんでこんな大量にあるんだ」

「それは私から説明するよ」

 

俺の疑問に対して声を上げたのは来夢(ライム)、珍しく積極的に話すと感心する間もなく説明を始めた。

 

「まず私と雫と楓は雨宮家に集まってチョコレートを作った。その時点で試作や友チョコを含めて大量に作ってたんだけど、今日の調理実習で1()()3()()は作ろうってなって元の量から増加した、ってわけ」

 

なるほど、と感心する訳もなく、呆れた俺は黙って申し訳なさそうにしてる1人に声をかけた。

 

「で、葉月、お前は」

「……作りすぎた」

「昨日台所が騒がしいと思ったらその量作ってたのか……」

 

彼女…葉月は俯いて俺に紙袋を手渡してきた。

中にはこれでもかというほどのチョコが入っていた。

 

「ざっと30ぐらいか…」

 

雫、来夢、楓、葉月の四人から渡されたチョコの総数は見た限り30はある。

これでも多いのはわかっているが、今日はこのいつメンだけでなく、もう一人があっけにとられながらこちらを見ている。

 

「お前もこの量だったり....?」

「私は実習に参加しなかったので一つだけです」

 

少し不安になり彼女に聞くと安心できる言葉が返ってきた。

それと同時に衝撃の事実が発せられた。

 

「参加しなくてもいい時間だったのかよ、お前らこの量あるのになぜ参加した」

「だって明日奈が参加しようって…」

「言い訳はしなくていい、見苦しいから」

 

和人側(あっち)のメンツに誘われたなんて言い訳は受けつけていない。

あっちの圧力は時々凄いが、今回は拒否することもできただろう。

それをしなかったってことはつまり、調()()()()()()と言えるだろう。

 

「さすがにこの量すべて食えないっての」

 

ますます彼女たちに対して呆れを感じつつある俺は全員の紙袋を開封してチョコを取り出した。

律儀にこの学校は箱まで様々な種類を用意しているのだが、見事に全員違う箱だ。

なんてことも考えはしたが、それよりも量が多すぎる。こんなに食ったら死ぬぞ

 

 

「苦しそうな顔してる中申し訳ないんですけどこれ…」

「そういえば受け取ってなかったな、()()

 

葉月の友人…パートナーの彼女、小春は一個、小さな箱を両手でしっかりと差し出してきた。

渡し方といいこの箱といい、雫たちとはいろんな意味で違うような…

 

「あの……こ、これ――」

 

受け取った直後、彼女の頬は赤く染まった。

それが何を意味するのかは俺にもわかったが、さすがに違うだろうと頭の中で否定をするが....

 

「ほ、本命…です──っ!」

 

そんな彼女の声が教室に響いた。

本命、好きな人とか大切な人に贈るとされるチョコの総称。

彼女の場合確実に葉月に渡すべきだと思うのだが、なぜ俺に?

 

 

「日頃の感謝を込めたんです、みんなの量には勝てないですが....」

「いや、ありがとう。小春」

「はいっ!」

 

変に聞くといわゆる女子のプライドというやつを傷つけてしまう可能性があると悟り、彼女に感謝だけを伝える。

すると、小春は少し照れながら満面の笑みで答えた。

 

 

そんなやり取りを横で見てる女子たちがしばらく動かなくなっていたのは言うまでもないだろう…。

 

 

それから数分後、さすがに一人では食べきれないということで和人と明日奈を除いたあっち側のメンバーをエギル経営の【ダイシーカフェ】に誘ってみんなでチョコを食べることにした。

俺は小春の一個とほか三人の2つを食べることに。

 

 

「まったく、罪な男よね、あんたって」

「すごいモテモテですね、春揮さん」

 

雫たち全員が別席に集まっている中、わざとらしく俺の席の向かい側に座ったリズとシリカはそんなことを言ってくる。

 

「モテるってこういうことじゃないだろ」

 

 

「あんたってホント不思議よね、何で周りにこんなに女子が集まるのかしら」

「あはは…それを言えばお兄ちゃんも似た感じかと」

「確かに、というかあいつのほうが人数としては多いわね」

 

隣のテーブルに座っている直葉と詩乃はそんな会話を繰り広げた。

クラインも呼ぼうとしたが、見事に忘れていたので俺とエギルしか男はいない。

なんて空間を作ってしまったのかと後悔しながら彼女たちから貰ったチョコを口に運んだ。

 

「うまい…」

 

そう呟けたのは、まだ三箱目を食べ始めたころだった──

 

 

この後、チョコに軽いトラウマを持つぐらいにはチョコを食べた俺はふと、それぞれがくれたチョコの箱の裏に一人一枚ずつの手紙が入っていることに気が付いた。

内容はそれぞれの思いをつずったものだった。

 

 

 

「ありがとな、お前ら」

 

 

そう、誰にも聞こえない大きさの声で呟いた。




今話の時間軸
SAO編が終わったあと、マザーズロザリオ編の途中。
帰還者学校にて起きた話。


各キャラ
春揮:本編でも名前の出てる主人公、PN「ラギ」
葉月:本編中にも出てはいるメインキャラ、PN「ハヅキ」
雫、来夢、楓:それぞれ夕立の霧雨のメンバー、左からPN「シズク」、「ライム」、「カエデ」
小春:本編でハヅキと共に行動しているある意味ヒロイン、SAOIFの公式が発表した本名でもある。PN「コハル」

原作キャラに対しての春揮の現実世界での呼び方
キリト、アスナ、シノン、リーファ=本名呼び
クライン、エギル、シリカ、リズ=PN呼び


小春の本命発言
・単純な好意
・葉月と一緒にいる春揮へ感謝の思い
・ほかの女子に負けないようにアピールした
などの理由がある
ちなみにチョコを両手で渡した彼女のイメージはSAOIFに出てくる【ひたむきチョコ】コハルのスキレコイラストだったりする
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