ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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73:ゼロから始まる武器作成

翌日

第一層:トールバーナ

 

コハルと行動を共にした翌日、俺たちはトールバーナの噴水に腰をかけていた。

 

「待たせちゃったわね、あんた達」

「ちょうど来たとこだよ」

 

解散後に送ったメッセージの集合時間より小一時間がたったところで呼んだ人物、リズことリズベットがやってきた。

コハルの武器を新調するにあたり、一番信用と実績が高い鍛冶屋が彼女だ。

前日の呼び出しにもかかわらずちゃんと来てくれたあたりしっかりしてる。

 

「久しぶりね、コハル」

「はい、お久しぶりです」

「まさかラギとコハルが知り合いだったとはね」

「それはこっちのセリフだ」

 

リズとコハルが知り合いじゃないと思ってどう紹介しようか迷っていた時間を返して欲しい。

なんて本人達に言っても無駄だ。

 

「コハル達が武器関連の色々知らなかったから教えてあげたのよ、前に

それ以来あってなかったけど、なんか大変なことになってるみたいね」

「あぁ、メッセージした通りだ」

 

先に述べた通り昨日別れた時にリズにはメッセージを送っておいた。

そこにある程度事の経緯をハヅキとコハルという名前を出さずに記載したのだ。

まさか知り合いだったとは。

 

「ま、あんたが何考えてるのかもわからなかったから今のあの子がどんな考えなのかなんてわからないわね

とりあえず、コハルが使いたい武器を教えてちょうだい」

「あ、はい私は……短剣を使いたいです」

 

リズとはサービス開始して間もなく会って鍛冶屋として始めたての彼女のクエストを手伝った経緯がある。

その時に色々とあったのだが今はその時の話はしなくていいだろう。

それよりも、コハルの使用武器がひっかかる。

 

「短剣……今まで細剣だったよな?」

「はい、でも()()()()()()()()()()()()()()()ので、これを機に武器変しようかなと」

「……なるほど」

 

彼女が含みのある言い方をしたが、その内容はすぐに理解できる。

いつも前衛にいたのはハヅキで、コハルは彼女のサポートや他のプレイヤーたちの手伝いをするといった戦法をとっていた。

第10層で俺が目を覚ましたあの時も二人はそれぞれ出来ることをしていたが、あの時もコハルなりに気持ちの迷いがあったのだろう。

それを言えば迷いがあったのはあいつの方だろうが……

なんて考えを回しているうちにリズも納得した様子でウィンドウを操作している。

 

「短剣で良さそうな武器の素材なら……」

「【青碧の宝玉】、でどうだ?」

「あんたそれ……本気?」

「βテストの時はこの層の適正レベルを超えてたな」

「無茶すぎない?」

 

青碧の宝玉、名前の通り碧色と呼ばれる青緑色の宝玉。

βテスト──といっても存在を見たのはαテスト──の時には極限まで出現率の低いレアポップモンスターからドロップするか今俺たちが話していたもう一つの入手手段──エリアボスの討伐による確定ドロップだ。

だが、これにはいくつか問題がある、それが()()()()ため誰もボスに挑むことは無かったのだ。

というのもボスが出てくるのは30層のフィールドなのだが、攻略時にはエネミーネームが赤黒い、つまりは遥かにレベルが高い設定になっており、その設定レベルの適正は第50層のボスをレイドで倒すことの出来る最低レベルだ。

 

「──死ぬかもしれない」

「なら無理して取りに行く必要は」

「本人の意思に決めてもらおうか」

 

リズの言ってることは分かる。

それこそ、《死に戻り》が可能なら考え無しに挑戦し続けることも不可能ではないが、今は違う。

それ故に無理に行く必要は無いはずだ。

だが、それを決めるのは鍛冶屋でも俺でもない。

 

 

「……行きます、危険かもしれないけど強くなれるなら」

「そんなことだと思ったわよ…まったく」

「今すぐ行きたいところだがさすがにレベル差があるからな、小一時間待ってくれるか」

「「……?」」

 

我ながら無茶な挑戦を彼女に勧めてしまった責任を取るためにもある程度助っ人を集める。

現在の戦力でエリアボスを倒すのは骨どころか灰すら残らないかもしれない、笑えねぇけど。

どれぐらい来てくれるかわからないが少しは戦力が増えるだろう。

 

 

 

~~小一時間後

 

「んで、よしのん他を差し置いてなぜ私なのか聞こうじゃないか」

「高圧的なのやめようよ、他にも人いるし……」

「いーや、アッちゃんは優しすぎる!後輩くんはほっとくと意地悪するからね!」

「とりあえず自己紹介しようよ……」

 

呼んだ助っ人何人かのうち来てくれたのはメッセージを受け取った本人とその横にいた(らしい)女性の二人組だ。

前は仮面とボイスチェンジャーのダブルコンボだったがそれを全く外して素のままで到着早々俺を壁ドンした。

【破壊不能オブジェクト】と表示されるぐらいの勢いで出されたグーパンに()()()で済ませた女性は落ち着かせながらも自己紹介を始めた。

 

「キタちゃんがすみません……私は《ヤヨイ∕yayoi》です、きさ──ラギ君に呼ばれて来ました」

「私は何も悪くない!あ、私は《ミコト∕mikoto》、後輩くんに呼ばれてアッちゃんと一緒に来たよ!よろしく!」

 

二人とも見事に呼び方とプレイヤーネームが違う。おまけに片方は言い換えたように見せかけて本名を思いっきり言った。

 

「後輩……?」

「あ、気にしないでぇ」

「は、はぁ……」

「ラギさん、どういう関係なんですか」

「……ノーコメント」

 

この二人を呼んだことに少し後悔している。

とはいえこんな奴らだが実力は確かだ。

 

何故かと聞かれたらバレないようにこう答える。

 

()()()()()()だと。

 

 

 

「そんで後輩くん、アレは強いよ?」

「それは承知の上で二人を呼んだんです」

「それなら漁船に乗った気持ちでいるといいさ」

「泥舟でしょ、崩壊しかけの」

「ホント君嫌な人だね」

「お互い様でしょうよ」

 

挑戦前にリズの鍛冶屋へと移動して全員の装備(俺の防具以外)の修繕をやってもらっている。

その待機中、部屋着になったミコトが俺の横に座り少し心配そうに聞いてくる。

彼女なりにも今回のボス挑戦は心配しているようだ。

 

「でも、ラギ君がいるって確認した時はキタちゃん凄く情緒不安定だったよね」

「やめて言わないで!?」

「キタちゃん……ねぇ」

「え、そっち?」

「何か?」

「二人とも嫌がらせしないでくれへん?」

「「はい、ごめんなさい」」

「絶対思っとらんね!?」

 

そんなやり取りをしているとコハルが俺たちの会話を興味津々に聞いていた。

 

「…なんか、先輩背低くないです?」

「む、何言っとんの」

 

ミコトの横に座ったコハルと彼女を交互に見るとミコトの背がやけに低い。

それこそハヅキと同じか、少し高いぐらいだ。

この中ではミコトが1番小さい。

 

「いい話の途中だけど、武具手直し終わったわよ」

「お、ナイスタイミング!」

「流したな……」

 

運良く話が遮られてホッとした様子でリズの元へ駆けていく。

後で聞いた話、彼女に備えられたアカウント権限が様々なエラーを起こして顔と髪型以外は元から設定していた──デスゲーム開始直前まで使っていた背の高さが反映されたらしい。

 

「そんじゃリーダー、指揮よろしく」

「え、俺?」

「そりゃそうでしょ、あんたよ」

 

突然のリーダー発言と共に全員の視線が俺に向いた。

満場一致で俺がリーダーに相応しいという雰囲気が漂っている。

 

「……ったく、わかった、請け負う」

「そう来ないと!ほら行くよ後輩くん!」

「結局あんたが指揮とるんかい」

「あはは……」

 

そんなこんなで呼んだ2人を入れて5人になった俺たちは目的の30層へ向かった。

 

 

 

その道中。

 

「……それにしても、後輩くん何か思い詰めてない?」

「ん、気づきますか」

「こう見えて人の顔伺うの得意やから、それで何を悩んどるん?」

「今回のボス戦に行く理由にもなるんですけど──」

 

フィールドを進んでいる間にミコトが俺の顔を横目に見てきた。

質問に対し、コハルにも話していないあることを話した。

 

「─勝手な理由ですよね、こんなの」

「そんなこと無いと思うよ。

大切だって思う人を守りたいなら、どんな理由であっても守りなよ」

「そうだね、キタちゃんの言う通りだと思うよ」

「……ありがとうございます」

「ん、どういたしまして」

 

今、この場にいない──どこで何をしてるかもわからない少女一人を救うために、俺は無理をしてでも先に進む。

たとえ、俺自身が犠牲になっても──。

 

「さて、話も終わりだけど本番はここからだ」

「ですね……」

「でっか……」

 

ボスのポップする特定の場所まで踏み込んだことで300メートル程先に大きく黒いシークレットが現れた。

 

青碧の宝石、それを守護するガーディアンを担う……はずの黒き死神。

 

「総員……戦闘開始!」

 

全員が武器を構えた瞬間にボスが片手の鎌をコハルへと振り下ろした──。




ハヅキ捜索前のコハルの武器新調
そのためにある日知り合ったリズの協力の元とあるアイテムを取りに行くことに



本作は
・各層に攻略とは全く関係ないところでエリアボスが出現する(超高レベル)
という設定を入れてます


駆けつけた二人が一体誰なのかはいずれ明らかになります
ラギ描写で呼び捨てにしてるのはミスじゃないです



次回、早々ピンチが──?
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