ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~ 作:桜花 如月
「コハル!」
そう叫ぶが、動くよりも早く振り下ろされた鎌は既にコハルの体に触れる寸前まできていた。
間に合わない──
「させるかぁ!」
鎌があと数センチでコハルに当たるというところでミコトが攻撃を防いだ。
その間にボスへヤヨイが攻撃を与える。
「大丈夫かコハル!?」
「は、はい何とか……」
「……悪い」
急いで駆け寄り彼女が無事であることを確認し、謝罪の言葉を口にした。
守ると誓ったそばから何してんだ俺は──っ!
「まぁ落ち着きなよ、後輩くん」
「でも──」
「──焦りが一番の事故に繋がるよ」
「……えぇ」
ミコトの言葉が重く響く。
確かに、彼女を守ることを考えすぎて焦っているかもしれない。
でも、守ると決めた以上は彼女に───
──前衛に私も立ちたいんです
──ずっと、守られてばっかりだから
「何ぼっとしてんの!」
「あぶねっ!」
ふと頭に流れた2つの言葉、それを聞いてるうちに死神は鎌を振り下ろしていた。
全く気づけなかったがまたしてもミコトに助けられ間一髪で避けた。
「攻撃を防ぐだけが誰かを守ること、そんな訳無いのにな」
女性とは思えない腕力に投げられた俺は着地を軽くして息を整える。
後でミコトには感謝と嫌味の一つでも言おうと胸に秘めながらそんなこととは別に焦りすぎた自分に喝を入れる。
「先輩方、ほんの少しだけ時間貰います」
「ん、いいけどどうすんの?」
「……守るなら、冷静じゃないとでしょ?」
「うーん?」
俺の文言に首を傾げた先輩を横目に俺はコハルへ武器を投げた。
──────
コハル目線
「え、ラギさんっ!?」
「悪い!」
どうやってボスへ攻撃をしながら防御も行おうかと考えていると突然ラギさんから短剣が飛ばされてきた。
さっき振り下ろされた鎌と同じぐらいのスピードで飛んできたそれをなんとか掴むと体がほんの少し後ろに下がった。
(どれだけ強く投げたんだろ……)
改めて装備してみると少し重い。つまり私の筋力ステータスでは足りないぐらいの武器スペックってこと。
そんな武器をラギさんはあの勢いで投げてきた。
「ってそれ私が今朝頑張って作った物じゃない!?」
「えっ?」
「おっと話の途中だがタゲはこっちだぞ!」
「話逸らすなー!」
前衛でちょこちょこと攻撃をしていたリズさんが集合した時に少し眠そうだったのは私が今持ってる短剣を作っていたかららしい。
でも、何故ラギさんは作ってもらった武器を私に……
「コハル!短剣スキルがセット出来てなかったら今のうちにやれ!」
「それならもうしてあります!」
「ならいい、
「それって……」
「──後で話す!」
ラギさんはそう言ってボスの鎌を受け止め、同時にソードスキルを放って鎌を弾き飛ばした。
鎌が弾かれたボスは体勢を崩した。そこにミコトさんとヤヨイさんが一斉に攻撃し、さらにリズさんが頭上から片手棍を振り下ろす。
追撃を加えるようにラギさんが緑色のライトエフェクトを剣に纏う。
あれはきっと《サベージ・フルクラム》、三連撃の片手直剣ソードスキル。
「ただ前に立って敵の攻撃を防ぐだけが《守る》事じゃない。それをお前と──俺の後輩たちが教えてくれた」
「それって──」
「俺は、お前を、そしてハヅキに手を差し伸べる。《選ぶための道標》を。
──吹っ切れた、どうしようもない奴らに囲まれて過ごしたおかげでな」
ラギさんはとても晴れた笑顔でそう言う。
夕立の霧雨でラギさんがどんなことをしていたのか、そして私があの人に何をしてあげられたのかは分からないけど……
「傍にいる、一緒に剣を振るう、ただそれだけでも《守る》ことは出来る
あいつは……きっと他のやり方でしか守れないかもしれないけど、それにはお前が必要だ」
「……はい」
バックステップで私の近くに下がってきたラギさんは静かにそう口にする。
私が、彼女を……大好きなハヅキを守れる、それが実際に出来るのかはわからない、でも。
「なら、私はもっと強くならなきゃ」
「あぁ……そういう答えになるか」
「え?」
「いや、なんでも──それがお前の
突然私の前に布状の物が飛び出した。
それは──
「
そうすれば、
──────
ラギ目線
彼女に渡したのは黒色──正確には少し紺色っぽいスカーフ。
ただの装飾品に見えるがあれはハヅキが着ている《深淵の霊衣》のアクセ装備だ。
ハヅキの装備ほどのスキル量では無いがほんの少し装備して気付いたがスキルスロットの中に未開放でなおかつスキル名が不明な欄がひとつあった。
そこに入るものがなんなのかわからなかったが、ハヅキが前にスキルを使用した際に「こうしたいって願ってみた」なんて言ってたあたりシステムがプレイヤーの何かしらを読み取りスキルに具現化しているかもしれない。
それが事実かを確かめてみるためにもハヅキに渡して追加スキルを発生させるつもりで持っていた。
手に入れた経緯としては「一度限りのクエストボスのLA」だ。
長くなったがコハルは今、ハヅキと同じようにスキルレコードを使用できる状態になった。
そういう意味での《同じ》だ。
「ほら後輩くん!何して──コハルちゃん?」
「すみません、遅れました!」
装備を終えた彼女と同時に走り出し、まず俺が先程やったようにボスの攻撃を弾く。
そしてその隙にミコトやリズ達が攻撃し、最後に──
「ハヅキを……救う──っ!!」
彼女のスキルが、意志が具現化したスキルレコードが発動する。
「コハルの追撃を援護する!」
「おーけー!任せんしゃい!」
「うん!やるよ!」
「タンクは任せなさい!」
先程と同様にボスへ隙を作る。
もう一度、コハルがスキルを撃つために。
「──これでっ!」
彼女の連続攻撃がボスへと降り注ぐ。
そして、苦戦すると思われていたボスは彼女の獲得したスキルによってわりと早く倒せたのだった。
小一時間後
第一層:トールバーナ《リズの鍛冶屋》
「よし、出来たわよ!」
「ありがとうございます!」
あの後、無事ドロップした宝石を素材にリズが短剣を作成した。
名を《宝石剣:翠∕蒼剣》。
「どっちよ」
「蒼剣、そっちが武器名だな、それより……」
「はい、宝石剣……ハヅキも持ってました」
蒼なのか翠なのか、なんなら宝石名は蒼碧だ。
蒼要素が多いから蒼剣というほうが正しい。
そして、そんな紛らわしい武器だが、ハヅキも同じような宝石剣を持っている。
タワークエストで手に入れたと言っていたが当人は使ってないらしいし、名前も不明という。
「スキルレコードに加えて武器もあいつとお揃いだ」
「はい、後は……」
「当の本人がどこにいるか手がかりが欲しいところだな」
「焦りは禁物だって、後輩くん」
「んな事言ったって……」
ミコトが俺の肩を強く叩く。
少し腹立ち強めに払って彼女に反論しようとすると……
「コハルちゃんはまだそのスキルレコードに慣れてないし、武器にも慣れてない、
意外にもヤヨイ先輩の方からそんなことを言われた。
普段大人しい人が言うと妙に説得力がある。
「なら仕方ないか……コハル、もう少し特訓するか」
「そう……ですね…」
コハルは少し落ち込みながら返事した。
本当に、
そう、思っていた。
コハルの武器作成から1ヶ月後、ある一件が起きたことが俺に伝えられるまでは──。
ボス名がタイトルです。
成長の糧にされるタイプのボスです、たまにいるよねそういうの
次回から、本格的に新章……多分!
コハルのスキルレコード
オリジナル(イメージスキル)
ラピッド・ブレイズ
8連撃と強めのスキル、だが隙も大きくさらにタゲを拾いやすい。
《誰かを救いたい》という気持ちを剣術へ向けた彼女の意思表示。
深淵装備
3つあるうちの2つ目、服の次は首巻、スカーフ。
ちなみにもうひとつは──