ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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75:最悪へのカウントダウン

コハルの武器を作成してから1ヶ月後。

俺はアルゴに呼ばれコハルとともにトールバーナの円形広場に来ていた。

そこには、重い空気が流れていた。

 

 

「……ルー坊、話さないとイケナイことがアル」

「わざわざこんなあまり人がいないところに呼んだってことは……」

「想像通り、()()()に関してだヨ」

 

アルゴはいつもの何か裏がありそうな声色では無く、何一つ裏のない本気のトーンをしている。

言いたいことは俺もコハルも理解している。というのも──

 

 

 

ここ数日間、とある噂がプレイヤー達の中で流れていた。

事は一週間前、遂に通り抜けることのできた迷いの森にて素材集め中のパーティが何者かに襲われるという一件が起きていた。

あまりいいことでは無いがそれだけなら現在のSAOなら割と起きていることであり、ここまで大きな話にはならない。

問題は()()襲われたか、ということだ。

運良く逃げ延びたプレイヤーの情報によると、少なからず上位の実力者であり、その見た目が()()()()()()()()()()()()()という。

その時点で最近名を聞く「笑う棺桶(ラフィン・コフィン)」という殺人ギルドの一員だということはほぼ確定。

そして、そのプレイヤーは逃げる中、うっすらと見えたフードの中の顔をこう言った。

 

()()()()()()()()()()()と。

 

「で、でも……それでハヅキと確定するのは……」

「オレっちもルー坊も信じたくなくて情報を集めてたんダ。それでこれ以上ない情報を得タ」

「それって……?」

()()()()()()()()()()()を使ってきたって話だ」

 

アルゴの言葉に続けて俺が言った証言を聞いたコハルは信じたくないという表情を見せる。

それはそうだろう、β時代からの仲で正式サービス開始からも──一ヶ月ほど離れていたが──ずっと一緒にやってきた友人がこんなことをしているなど信じることは出来ないだろう。

もちろん俺だって、情報を聞いたアルゴだって信じたくはない。

情報を流した男が虚偽を伝えているかもしれない。

彼女が行方不明になったことは嫌でも表に出てしまったのだから。

 

「……俺がコハルと二人で行動した、その時点でハヅキがいなくなったかもしれないって噂になったからな

そこで『行方不明になった青眼の少女が人を殺した』って情報を流せば信じる奴らが多い」

 

その情報が嘘であれホントであれ皆信じてしまうだろう。

 

「お二人は本当だって言うんですか?」

「……証人がいなければ()()()()()()()()()()で済ませられたんだがな」

「噂を流した人がデマを流して──「そいつじゃないんだ、証人は」──えっ?」

 

俺も馬鹿じゃないから噂をすぐに信じるようなことはしない。

だが噂では無く、実際に遭遇した奴が知り合いにいるとなれば信じるしかないだろう。

 

 

「そこで隠れてないで出て来いよ」

「……ったく、気付くの早すぎるでしょ」

 

円形広場の出入口、階段の上にある大きな柱の影に知った奴が立っている。

それは────

 

「そりゃ嫌でもお前の気配はわかるよ──ライム」

「なにそれキモ……」

 

軽快なリズムで石段を降りてきた少女は少し引き気味な様子。

 

「なんでライムが……?」

「なに、まだ話してなかったの」

「ちょうど話すとこだったんだよ」

 

少し不機嫌気味な彼女を横目に説明を始めた。

 

──────────────

数日前

第十層:主街区外れの一軒家

 

件の噂が流れてすぐ、俺は夕立の霧雨に呼ばれ新規のギルドハウス──宿屋ではないちゃんとした家──に来ていた。

 

「どういうことなの!?」

「落ち着け」

「そ、そうだよライム……とりあえず何があったか言わないと」

「……わかった」

 

入ってすぐにライムに胸ぐらを捕まれて殴られそうになる。

それを制止して落ち着かせて何があったのかを話してもらう。

 

 

事が起きたのは先日、噂が本当か確認するのとレベリングを兼ねて迷いの森を進んでいた時。

剣と剣がぶつかり合う音が聞こえて様子を見に向かったところ、噂通りの革ポンチョを着た低身長のプレイヤーと一般の男性プレイヤーが戦っていた。

戦闘は互角に見えたが一瞬男性プレイヤーが油断した瞬間に勝負は決した──男性プレイヤーが殺されるという形で。

 

ソードスキルを放ったことでかぶっていたフードがとれ、PKを行ったプレイヤーの顔が明らかになった、それがハヅキだった。

 

 

「……それ以上見てるなら容赦しない」

「なんで……何してんの」

「……()()()()()()の」

 

彼女はそれだけ言って森の奥へと消えていった。

 

そして、その真偽を確認するために俺が呼ばれた、ということらしい。

 

 

「別に、あんたが彼女のために私たちを巻き込みたくないからギルドを抜けたって事は理解してるよ、でも──それなら、なんでこんなことになってる」

「……俺が知りたいよ、何故あいつがあんなことをしたのか」

「なら、どうするの」

「……お前達に飛び火してることもわかってる、だからこそこの一件は早くケリを付けたい──なんて言ってもお前らの力を借りる訳にはいかないが」

 

そこまで言った途端、シズクとカエデが同時に机を叩き立ち上がった。

 

「「手伝う(います)!!」」

「……本気か?」

「あんたが無茶なことしてるのは慣れたよ、それに()()()()だけはもうコリゴリ。だから──頼りなよ、私たちを」

 

直前までキレてたライムも仕方ないと言いたげの顔をしながらも協力を申し出してきた。

 

「……俺の我儘に付き合わせて悪い」

「何、今更言う?」

「そ、ラギの我儘は今に始まったことじゃないよ」

 

何か複雑な気持ちだが、()()()()()()()がハヅキであること、そして彼女を連れ戻すための協力体制をこの時に得た。

 

 

─────────

 

「本当にハヅキだった、それは間違いない」

「……そんな」

「迷いの森に行けば確実に遭遇するかもしれないが、ただ会って話すだけってのは無理だろうな」

「ルー坊、わざわざライムまで呼んだって事は既に ()()()あるだロ?」

「鋭いな情報屋は」

「そりゃ長い間ルー坊の考えを聞いてきたからだろうナ、それでその何かはなんダ?」

 

意味深に笑を零したアルゴに催促されながら全員に見えるようにウィンドウを表示する。

それは、昨日突如《aki》と言う名前のプレイヤーから送られてきたメッセージ。

 

 

---------

《ギルドイベント》ってやつが開催されるみたい。

もしかしたら蒼眼ちゃんそこに参加するかもしれないよ

もちろん確証はないけど、()()()は参加する気でいる

---------

 

「ギルドイベント……そんなものがなんで?」

 

コハルが首を傾げるのは無理もない。

現在のSAOは確実にアーガスがシステムを弄れるはずがない。なのにまるでソシャゲの定期イベントのように開催されるのは有り得ないはず。

 

「ギルドイベントね、詳細はどんな?」

「これだ」

 

追加で《mikoto》から送られてきたメッセージを見せる。

そこにはギルドイベントの詳細、どんな形で行われるのかが書かれている。

 

 

------------

ギルドイベント

・参加したギルドがそれぞれモンスターを倒したりアイテムを集めて稼いだポイントを競う

・開催地は()()()()

-------------

 

何か得られるという訳では無いらしいから参加する必要は無い。

そう思い無視しようと思ったがメッセージの送り主も蒼眼のプレイヤーが噂を集めていたらしく、それ故にこの話題を俺にもちかけてきた。

つまり──

 

「血盟騎士団はもちろん、大規模なギルドはこのイベントに乗り気はないだろう、それこそ今噂のプレイヤーが居るエリアでなんて。

だが、中小規模のギルドはそういったイベントに参加する可能性がある」

「──なるほど、()()()()って訳」

 

ライムの言う通り、ラフィンコフィンからすれば大規模ギルドのメンバーを狙うよりも中小……夕立の霧雨や星屑の流星といったギルドを狙った方が《確実に殺せる》というところが大きい。

もちろん、大規模ギルドのメンバーを減らして攻略の難易度をあげるということもやり手としてはあるだろうが、前線に立つプレイヤーほど一筋縄で殺れるほど弱くない。その辺を含めれば狙いやすい奴らが集まるであろうこのイベントに参加しない選択肢はないだろう。

あいつが本当にラフィンコフィンの仲間になっているのであれば連れ戻す、そうじゃないなら人違いだったと言う真実ができる──なんて甘く行けばいいが。

 

「──最悪の場合も考えないとだな」

「ラギ?」

「ラギさんまさか──」

「いや、そうならないようにする為に夕立の霧雨に力を借りたんだ」

「……ならいいけど」

 

3人が心配そうな顔で俺見てくる。

冗談……では無いが現状のあいつを止めるためには剣を交える可能性が高い。もしもあいつが戻る気のない場合は──

 

 

「ギルドイベントまでそんなに時間が無いはず、だからこそそれぞれ準備をしてくれ」

「おっけ、シズク達にもそう伝えとく」

「ルー坊はどうするんダ?」

「コハルの準備があるがその前に行くところがある。だから一日だけはアルゴと行動してくれないか?」

「え、いいですけど……どこに行くんです?」

 

彼女を救うためには夕立の霧雨だけの協力じゃ足りない。

そのためにも他の協力者を募る。

キリトやクラインでは無い、頼りになる協力者を。

 

「──俺の妹達に会いに行く」

 

「「……え?」」

「妹……?」

 

3人とも驚いた様子だが深くは語らずこの場は解散となった。

その後、ライムから後日来てくれとメッセージを受け取り俺はコハルを送ってから自身の宿屋へと帰った。

 

 

 

───────

第一層:宿屋

 

ハヅキがいなくなってから彼女が関わっていたプレイヤー、コハルや夕立の霧雨に他のプレイヤー達が問い詰めたり、圏外で攻撃を仕掛けるということが多くあったらしい。

俺はそもそも表に出ることが少なかったり変装して過ごしてたおかげで害はすくなったが夕立の霧雨は前線に立てなくなるぐらい他プレイヤーから攻撃を受けたと聞いた。

それ故にライムは服装を大きく替えて人目につかないように円形広場に来たのだが

 

「はやく、どうにかしないとか」

 

薄暗い宿屋の天井に向かってそう呟いてから俺は眠りについた。

 

 

 

 

翌日、俺は知った顔に会い行った。

 

 

 

 

 

──《運命》の日まであと一週間。




お久しぶりです

新章開幕です
正確にはまだ準備編になります

ハヅキが行方不明になって一ヶ月、事態はやっぱり良くない方へ
一般プレイヤーをキルした彼女は一体何を思っているのか──

本編内に記載したように彼女の行動で関わったプレイヤー達(キリアス等原作キャラを除く)が他プレイヤーから襲われたりなど被害が起きています。これがSAOか

それを少しでも避けるため夕立の霧雨はそれぞれ目立たないような服装に変えてます
それでも勘のいいヤツらに気づかれてるけど……

ちなみにライムの服装ですが
・黒い帽子
・水色のパーカー
・装備として使ってるズボン
です


ギルドイベント開幕まで(SAO内)あと一週間。
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